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更新日:2024年5月24日

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4.A事件(平成30年(不)第37号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、(1)組合に対し、組合の運営する労働者供給事業を通じて日々雇用労働者の供給依頼を行っていた会社が、日々雇用労働者の供給の依頼を打ち切ったこと、(2)組合が、日々雇用労働者の雇入れ再開等について団体交渉を申し入れたところ、会社がこれに応じなかったことが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)会社が、A事業所に所属する組合員らの労働組合法上の使用者に当たるかについて
      組合の労働者供給事業における、会社からの供給依頼は、組合員の就労の端緒となるものであり、組合員の基本的な労働条件等に係る事項である。
      組合と会社との間では、契約書は締結されていないものの実質的に労働者供給契約が成立し、少なくとも約25年間にわたり継続し恒常化した労働者供給の実態がある中で、A事業所を通じて供給されていた組合員(以下「労供組合員」という。)にとっても、近い将来において会社での就労の機会を得ることについて、いずれの組合員であるかは特定できないものの、集団として契約に基づく就労への期待権が発生していたといえる。
      会社が組合に対して、労供組合員の供給の申込みをしなくなったことにより、組合は、自らが運営する労働者供給事業に影響を受け、そのことについて団交を申し入れているのであるから、職業安定法により、労働組合、職員団体等に限り労働者供給事業が認められているという法の趣旨を踏まえると、本件の状況下においては、組合及び組合の構成員である労供組合員らと会社との間には、労働者供給事業に関わる限りにおいて、労使関係が成立しているといえ、その範囲内において、会社は、労供組合員らの労働組合法上の使用者に当たるといえる。
    • (2)会社が、組合のA事業所に対し、日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことについて
      • ア まず、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについてみる。
        個々の労供組合員に、会社に対して将来にわたり雇用継続を期待できる特段の事情があったとはいえず、また、労働者供給事業による就労先は、会社のみに限定されたものではないことも踏まえると、会社が組合に対し、労供組合員の供給を依頼しなかったことにより、労供組合員が不利益を被ったとはいえない。
        したがって、その余を判断するまでもなく、会社が組合に対し、労供組合員の供給を依頼しなかったことは、組合員に対する不利益取扱いには当たらず、この点に関する申立てを棄却する。
      • イ 次に、支配介入に当たるかについてみる。
        • (ア)会社は、労働者供給の依頼先を変更した理由について、(a)組合による労働者の安定供給に対する不安がある旨、(b)会社における
          稼働の経験が豊富な労協組合員が他の労働組合に移籍した旨主張する。
          • (a)について、会社は、労働者供給の停止が再度行われる可能性が高かったことやA事業所の代表に対する信頼が失われたことを理由として挙げるが、会社の主張は、いずれも不自然である。
          • (b)については、会社は、A事業所が、供給する労供組合員の人選を行っており、会社側が特定の者を選定して常用する状況にはなかった旨を自ら主張している。そうであれば、労働者供給の依頼先変更の理由として、稼働実績の豊富な労供組合員の移籍を主張することと整合しない。
        • (イ)なお、会社は、組合と密接な関係にある申立外会社に対して、誘導員の派遣依頼を継続していたことをもって、労働者供給の依頼先を変更したのは、組合嫌悪による組合排除が理由ではない旨主張するが、会社の理由が不自然であることに変わりはない。
        • (ウ)以上のとおりであるから、会社は、合理的な理由なく、日々雇用労働者の供給を依頼しなくなり、これにより、組合の運営である労働者供給事業に影響を与え、組合を弱体化させるものといえ、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
    • (3)団交申入れに対する会社の対応について
      組合が、労供組合員の供給依頼停止の解除などを要求事項として団交申入れを行ったのに対し、会社は、「使用者」に該当しないので、団交には応じない旨回答している。
      この点につき、会社は、会社に使用者性が認められない以上、会社に組合からの団交申入れに応じる義務はない旨主張するが、会社が、労供組合員らの使用者であると認められることは、前記判断のとおりであり、会社の主張は採用できない。
      なお、会社は、一部の要求について文書で回答した旨主張するが、文書で回答したことのみをもって、会社の団交応諾義務が免ぜられるものではない。
      以上のとおりであるから、かかる会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
  3. 命令内容
    • (1)誓約文の交付
    • (2)その他の申立ての棄却
      ※なお、本件命令に対して、組合及び会社は、それぞれ、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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