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更新日:2024年5月24日

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4.K事件(令和3年(不)第27号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、組合が、会社に対し、組合員1名に対するハラスメント等について団体交渉を申し入れたところ、会社は、3度は団交に応じたものの、その後の団交の申入れには、組合の要求は応じることが困難なものか、応じる必要がないものである等を理由として応じなかったこと、また、会社が、組合員1名について、組合加入以降、年次有給休暇の削減等の不利益取扱いを行ったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)会社のA組合員に対する以下の行為は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて
      • ア 組合が主張する会社のA組合員に対する行為は、(ア)給与明細書において19日と記載されていた有給休暇の残日数を、翌月の給与明細書において4日と記載したこと、(イ)他の従業員と同じ時期に、A組合員に不払残業代を支払わなかったこと、(ウ)給与明細を翌月にA組合員に送付したこと、(エ)A組合員の傷病手当金の手続を1か月間行わなかったこと、(オ)年度の勤務カレンダーを5月にA組合員に送付したこと、(カ)改定された会社の就業規則を翌月にA組合員に送付したこと、である。
      • イ 上記(ア)から(カ)の会社の行為は、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
    • (2)会社において、以下のような行為が行われたといえるか。いえるとすれば、当該行為は、会社によるA組合員が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて
      • ア 組合が主張する会社おいて行われた行為は、(ア)B部長が、A組合員が使用していたパソコンを覗き見し、ログインパスワードを変更し、LANを切った行為及びA組合員の机の中のものを撤去した行為、(イ)管理部長が会社の従業員に対し、「A組合員に連絡の取り合いは禁止」だと指示した行為、である。
      • イ 上記(ア)及び(イ)の会社における行為は、行われたとみることができない、又は、A組合員に不利益が生じたとみることはできないことから、この点に係る組合の申立ては棄却する。
    • (3)本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか、について
      • ア 本件団交申入れにおける要求事項(a)ハラスメントの事実確認のために団交にB部長を出席させること、(b)B部長を懲戒解雇処分にすること、(c)団交の場でB部長からA組合員に直接謝罪すること、は、ハラスメントの事実を確認することや、B部長の処分及びA組合員への謝罪を含め、A組合員の復帰後の職場環境について協議することを求めるものであり、A組合員の「労働条件その他の待遇」と密接に関係するものであるといえ、また、使用者にとって処分可能であるから、義務的団交事項に当たるといえる。
      • イ そこで、要求事項(a)、(b)及び(c)について会社が団交に応じないことに、正当な理由があるかについてみる。
        この点、会社は、ハラスメント問題について、組合の要求に誠実に対応しており、残りの組合の要求は、応じるのが困難なものか、応じる必要のないものであり、会社は組合に対して受け入れられない合理的な理由を説明し、対案を提案したが組合からの譲歩がほとんどなく、それ以上の進展は全く見込めず、団交拒否には正当な理由があったことは明らかである旨主張するので、以下、要求事項ごとに検討する。
        • (ア)要求事項(a)について
          要求事項(a)に関して、会社は、B部長を出席させない理由を説明し、ハラスメントの調査結果やB部長に事実確認を行った結果を説明し、B部長が出席しないまでも実質的な協議を行おうとしているにもかかわらず、組合の要求に変化はなく、組合と会社との主張は対立し、平行線をたどっており、これ以上の進展は見込めなかったといわざるを得ないため、会社の主張は首肯できる。
          したがって、要求事項(a)については、会社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由があるといえる。
        • (イ)要求事項(b)について
          要求事項(b)に関して、会社は、団交において、会社が決定したB部長の処分の内容や理由を繰り返し説明していることが認められ、一方組合は、B部長の懲戒解雇を求め続け、その姿勢に変化はなく、組合と会社との主張は対立し、平行線をたどっており、これ以上の進展は見込めなかったといわざるを得ないため、会社の主張は首肯できる。
          したがって、要求事項(b)については、会社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由があるといえる。
        • (ウ)要求事項(c)について
          組合が、会社に対し、B部長からA組合員に直接謝罪することを求めた団交の場では、会社は、まずは書面で回答する旨述べたのみで、以降組合と会社との間で団交は開催されていないことから、当該要求事項について、会社は、団交において回答や説明を一切行っていないといえ、それ以上の進展は全く見込めない状況に至っていたとはいえず、団交に応じない正当な理由とはならない。
          確かに、会社は、組合に対し、書面にて一定のやり取りは行っているものの、会社からの代替案やB部長を団交の場で謝罪させることができない理由等については、本件団交申入れを受けて開催される団交において説明をすべきことであり、これらの書面のやり取りのみをもって、団交に応じない正当な理由にはなり得ない。
      • ウ 以上のとおりであるから、本件団交申入れのうち、要求事項(c)にかかる会社の対応は正当な理由のない団交拒否であって、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
  3. 命令内容
    • (1)団交応諾
    • (2)誓約文の手交
    • (3)その他の申立ての棄却

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