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更新日:2025年1月31日

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8.D事件(令和4年(不)第23号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、(1)組合員1名が職場復帰した際、会社が、労働協約を無視して、労使の合意なく同人の休業日を変更したこと、(2)組合が、同組合員の職場復帰後の労働条件等について、団体交渉を申し入れたところ、会社が、これに応じなかったことが、不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)会社が、組合と協議を行うことなく、A組合員の休日のうち、日曜日を土曜日に変更したことは、組合に対する支配介入に当たるかについて

ア 組合及び分会と会社との間で締結された協定書には、「組合員に影響を与える問題(身分・解雇・賃金・労働条件等の変更)について、会社は事前に組合と協議して、労使合意の上で円満に行う。」との条項があるところ、会社は、出勤日の変更が労働条件の変更に当たることについては争っていない。

したがって、会社が、組合と協議を行うことなく、A組合員の休日のうち、日曜日を土曜日に変更したことは、労働協約違反に当たることは明らかである。そして、労働協約違反は、当該労働協約を締結した労働組合を無視ないし軽視する行為であり、支配介入に当たるというべきである。

イ この点につき、会社は、支配介入に当たるには、組合活動を阻害する行為や会社がそのような目的を持っていることが必要であるが、本件の経過からすれば、支配介入に当たらない旨主張する。

しかし、会社は、労働協約の内容を無視し、組合の同意がない状況で、組合員本人に直接休日の変更を持ち掛けており、かかる会社の行為は、組合活動を阻害するものといわざるを得ず、支配介入に当たる。

ウ 以上のとおりであるから、会社が、組合と協議を行うことなく、A組合員の休日のうち、日曜日を土曜日に変更したことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(2)本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるかについて

ア 会社は、本件団交申入れに対する会社の対応は、そもそも団交拒否に当たらない旨主張するので、以下検討する。

(ア)会社代理人弁護士と組合担当者との間のやり取りからすると、会社は、団交拒否の意思表示はしていない。

しかし、一見したところでは使用者が団交を拒否していない場合においても、使用者が、交渉の実施を困難にするような日時、場所、方式を設定し、理由なくこれに固執するなど、その態度が事実上交渉の拒否とみなし得る場合には、団交拒否に当たるというべきである。そこで、以下、具体的な状況についてみる。

(イ)組合と会社との間で問題となっていた団交方式について検討するに、会社は、団交の会場を探したが、期限が一週間に迫っていたこと等から予約の空きのある会場を見つけることができなかった旨、そのため、やむを得ず、組合に対してZOOMや事業所付近の公園で団交を行うことを提案した旨主張する。

a 団交は、労使双方が相対峙して行うのが原則であるところ、まず、会社がZOOMでの団交開催を提案した理由についてみる。

会社が組合に対し、団交の会場を見つけることができなかったと説明したとする疎明はない。また、本件団交申入書には、場所について、会社又は組合事務所と記載しているのであるから、会社又は組合事務所で団交を行うことも可能であるところ、これらの場所で団交を行うことにつき、いかなる支障があるのかについて、会社からは主張も疎明もない。さらに、会社が主張するように期限が迫っていたことから予約の空きのある会場を見つけることができなかったのであれば、組合に対し、日程の延期を申し出るとの対応を取ることも可能であったが、そのような対応を取ったとする疎明もない。これらのことからすると、会社が、ZOOMでの団交開催を提案したことは、やむを得ないものであったとはいえず、合理的な理由があったとはいえない。

そして、本件団交申入れの前日、組合は会社に対し、対面方式での団交を希望する意向であることを伝えている。かかる状況において、会社は、ZOOMでの団交開催を求め続けているといえる。

以上のことからすると、会社は、合理的な理由もなく、ZOOMでの団交開催を求め続けており、かかる会社の対応は、事実上、団交を拒否するものとみざるを得ない。

b 次に、事業所付近の公園で団交を行うことを提案したことについてみると、団交を行う場所として、不特定多数の人が行き来する公園が適当な場所でないことは明らかであり、公園での団交開催に組合が応じないのは当然のことである。したがって、かかる会社の提案は、事実上、団交を拒否するものといえる。

イ 以上のとおりであるから、会社は、正当な理由なく本件団交申入れに応じておらず、かかる会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

誓約文の交付

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