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更新日:2024年5月24日

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11.K事件(令和2年(不)第26号及び同年(不)第36号併合事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、被申立人が、組合員に対し、(1)夏期寸志を3,000円と設定し、令和元年の夏期寸志を支払わなかったこと、(2)組合員の担当業務の割当てをなくし、組合員を自宅待機とした日又は時間帯があったこと、(3)休業手当を支払わなかったこと、(4)被申立人事務所に置かれていた組合員の私物の本を持ち帰りたい旨の組合員の求めに被申立人の室長、次長及び従業員が応じなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)被申立人が、組合員に対し、雇用契約書において、夏期寸志を3,000円とし、令和元年に夏期寸志を支払わなかったことについて
      当該申立てについては、行為の日から1年を経過した後の申立てであるから、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第33条第1項第3号の規定により、その余を判断するまでもなく却下する。
    • (2)被申立人が、組合員の担当業務の割当てをなくしたこと、組合員の退職日までの間に、組合員を自宅待機とした日又は時間帯があったことについて
      • ア 被申立人が組合員の担当業務の割当てをなくしたことについての申立ては、行為の日から1年を経過した後の申立てであり、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第33条第1項第3号の規定により、その余を判断するまでもなく却下する。
      • イ 被申立人が、組合員の退職日までの間に、組合員を自宅待機とした日又は時間帯があったことについて
        • (ア)本件申立ての1年以上前に組合員を自宅待機とした日又は時間帯があったことについては、行為の日から1年を経過した後の申立てであり、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第33条第1項第3号の規定により、その余を判断するまでもなく却下する。
        • (イ)行為の日から申立てまでが1年を経過していない期間についてみると、組合員は、1日有給休暇を取得し、その翌日の午前中は欠勤し、同日午後から退職日までは、被申立人の命令により自宅待機を行っていたといえる。
        • (ウ)被申立人が組合員を自宅待機としたことが、組合員であるが故の不利益取扱い及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いといえるかについてみる。
          確かに、組合員が加入する組合が、当該組合員に係る別件事件の申立てを行っているものの、同事件の係属期間中、被申立人と組合は殊更に対立関係にあったとみることはできない。さらに、同時期において、組合における被申立人に対する組合活動が活発であったと認めるに足る事実の疎明もない。
          また、同事件の退職日までの自宅待機を命じている頃は、当委員会における和解に向けての調整期間であったといえ、組合員と被申立人の関係性を鑑みると、和解の成立に向け、無用な争いを避けるために被申立人が組合員に自宅待機を命じたことは無理からぬことであり、被申立人の行為が不合理であったとはいえない。
          そうすると、被申立人が組合員を自宅待機としたことについては、組合員であるが故の不利益取扱い及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に係る組合員の主張は採用できない。
        • (エ)以上のとおりであるから、被申立人が組合員に対し、自宅待機とした日又は時間帯があったことに係る申立ては棄却する。
    • (3)被申立人が、組合員に対し、休業手当を支払わなかったことについて
      • ア 被申立人が組合員に対し自宅待機を命じたといえることは、前記(2)イ(イ)判断のとおりである。
        労働基準法第26条には、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業手当を支払わなければならない旨定められているところ、被申立人が組合員に対し休業手当を支払っていないことについては、争いがなく、当該期間において、被申立人に労働基準法第26条による休業手当の支払義務が生じる可能性がないとはいえない。
        当該期間において、被申立人と組合は殊更に対立関係にあったとみることはできず、組合活動が活発であったと認めるに足る事実の疎明もない。また、当該期間は和解に向けての調整期間であったといえ、被申立人は組合との和解協議に前向きであったといえる。
        そうすると、当該自宅待機期間に被申立人が組合員に対し休業手当等を支払わなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い又は不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるとみることはできず、この点に係る組合員の主張は採用できない。
      • イ 以上のとおりであるから、被申立人が、当該自宅待機期間の休業手当等を支払わなかったことの是非はともかく、そのことが組合員であるが故の不利益取扱い又は不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえないことから、この点に係る申立ては棄却する。
    • (4)被申立人の次長、室長及び従業員が、被申立人事務所に置かれていた組合員の私物を持ち帰りたい旨の組合員の求めに応じなかったことについて
      被申立人の従業員らが被申立人に連絡をとり、指示を仰いだと認めるに足る事実の疎明はなく、また、被申立人は個人事業主であるところ、次長及び室長が、被申立人と同等の労務管理についての方針決定に関与する権限を有していたと認めるに足る事実の疎明もない。
      したがって、被申立人の従業員らが、被申立人事務所に置かれていた私物を持ち帰りたい旨の組合員の求めに応じなかったことは、被申立人による、組合員であるが故の不利益取扱い及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に係る申立ては棄却する。
  3. 命令内容
    • (1)令和元年に夏期寸志を支払わなかったこと等についての申立ての却下
    • (2)その他の申立ての棄却
      ※なお、本件命令に対して、組合員は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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