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更新日:2024年5月24日

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4.S事件(令和元年(不)第15号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、(1)組合からの団体交渉申入れに対し、学校法人が、自らが提示する団交開始条件に固執し、団交に応じないこと、(2)二つの別組合とは就業時間中に学校施設内で団交を行っているにもかかわらず、組合に対しては就業時間外、かつ学校施設外での団交開始条件を提示して、これに組合が同意しないことをもって団交を拒否したこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)団交申入れに対する学校法人の対応が労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるかについて
      • ア 団交申入れに係る団交が開催されていないことに当事者間で争いはない。
        開催されていないことについて、組合は、学校法人が、(ア)団交開始時刻を就業時間外とすること、(イ)団交開催場所を学外とすること、(ウ)団交出席者を事前通知することに固執し、それらを組合が受け入れないことを理由に拒否した旨主張する。
      • イ まず、団交開始時刻についてみる。
        学校法人は、就業時間内に団交を行うことで差しさわりがある点を示している一方、組合は、学校法人が提案する時刻からの団交開始により、いかなる不利益や不都合があるかを具体的に示すことなく、就業時間内での団交開始を求め続けたといえ、かかる組合の対応は、就業時間内での団交開始に固執していたといえる。そうすると、団交開始時刻が合意に達しなかったことについて、学校法人のみに責任があるとはいえない。
      • ウ 次に、団交開催場所についてみる。
        • (ア)団交開催場所は、本来労使双方の合意によって決められるべきものであるが、協議が労使間で整わない場合は、組合員の就業場所等、当該組合と使用者の労使関係が現に展開している場所を基本としつつ、当該場所での団交が組合又は組合員に格別の不利益をもたらさず、かつ、使用者が組合提案場所以外の場所を指定する理由を説明しているときは、組合提案場所以外の団交も認められるとするのが相当である。
          • a まず、学校法人が、学外の会議室を団交開催場所として提案したことについてみる。
            学校法人の教職員で、学校法人が認識し得た組合の組合員は3名であるところ、このうち2名の就労場所は二か所(本校と別キャンパス)であったといえる。
            学校法人が提案した学外の会議室は、これら組合員の就労場所の一つとは近接した場所にあり、また、もう一つの就労場所から移動する場合は、組合が提案した学内会議室よりも利便性が高い場所にあるといえるのだから、学校法人が当該会議室を団交場所として提案したことは合理的であったといえる。
          • b また、学校法人が団交開催場所として提案した学外の会議室で団交を開催した場合に、組合又は組合員に対し格別の不利益をもたらすとはいえない。
          • c さらに、学校法人から組合への電子メールの記載をみると、学校法人は、組合が提案する場所以外を指定する理由を組合に一定説明していたといえる。
          • d 以上のことからすると、学校法人が提案した学外の会議室も団交場所として認め得るところである。したがって、学校法人が、当該会議室での団交開催を主張し、組合の校内会議室での団交開催の求めに応じなかったからといって、かかる学校法人の対応を不合理であったということはできない。
        • (イ)加えて、学校法人からの団交開催場所の提案に係る組合の対応についてみると、組合は、校内会議室以外の場所で団交を開催することで、組合又は組合員が、いかなる不利益を被るかについて具体的に提示することなく、校内会議室での団交開催を求め続けたといえ、かかる組合の対応は、団交開催場所について労使で協議して決定するという姿勢に欠けていたといわざるを得ない。
        • (ウ)以上のことからすると、団交開催場所について合意に達しなかったことについて、学校法人のみに責任があるとはいえない。
      • エ さらに、団交出席者の事前通知についてみる。
        学校法人は、当初は団交出席者の事前通知を求めていたものの、組合から最終回答を求められて、その回答では団交の開始時刻及び場所にしか言及しておらず、事前通知については触れておらず、少なくとも最終的には、団交出席者を事前に通知しなければ団交に応じないとの姿勢をとっていたとはいえない。
      • オ 加えて、学校法人は組合に対し、文書及び電子メールにより、団交候補日を具体的に提示しており、団交開催に向けて調整する姿勢を示していたといえる。
      • カ 以上を総合的に判断すると、学校法人の対応には、団交開催に向けて調整する姿勢が認められ、また、組合からの団交申入れに係る団交が開催に至らなかったことについても、正当な理由がないとはいえないのであるから、団交申入れに対する学校法人の対応は労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとまではいえない。
    • (2)団交申入れに対する学校法人の対応が労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為に当たるかについて
      • ア 組合は、学校法人は二つの別組合とは就業時間中に校内で団交を行いながら、組合には学外かつ就業時間外での団交開始条件を提示して、これに組合が合意しない限り、団交を拒否している旨、このような学校法人の対応が組合差別である旨主張する。
        • (ア)別組合Aへの対応との比較
          過去に学校法人と別組合Aとの間で、校内で団交があったことが認められるが、どのような団交議題であったのか、また、いかなる経緯を経て校内での団交に至ったのかについて組合から疎明も主張もない。また、別組合Aと学校法人との間で団交が行われた当時と、組合から団交申入れがあった時点とでは、学校法人の組織体制及び学校の運営状況について大きな変更があったといえる。
          そうすると、学校法人は、過去に校内で別組合Aと団交を行ったことがあるものの、これをもって、組合の団交申入れに対する学校法人の対応が、別組合Aに対するものと比べ、差別的な取扱いであったとまでいうことはできない。
        • (イ)別組合Bへの対応との比較
          過去、校内(理事長室)において、別組合B執行委員長と当時の理事長や高校教頭との間で、組合員の労働条件に関する項目について何らかのやり取りがあったとはいえる。
          しかし、別組合Bが学校法人に対し団交申入れをしたとの疎明はなく、また、学年主任であった別組合B執行委員長が理事長室を訪れた経緯は判然とせず、さらに何らかのやり取りがあったことは認められるものの、その詳細な内容までは判然としない。
          そうすると、別組合Bが学校法人に対し団交申入れをし、学校法人がそれに対して就業時間内の校内での団交に応じたものとは認めることはできず、過去に理事長室で別組合B執行委員長と当時の理事長や高校教頭との間でやり取りがあったことをもって、組合の団交申入れに対する学校法人の対応が、別組合Bに対するものと比べ差別的な取扱いであったということはできない。
      • イ 以上のとおり、組合の団交申入れに対する学校法人の対応が、二つの別組合への対応と比べ、差別的な取り扱いであったとはいえないのであるから、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為には当たるとはいえない。
  3. 命令内容
    本件申立ての棄却

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