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4.K/I事件(令和5年(不)第24号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、会社らが、組合員5名に対し、加入している組織からの脱退を勧告する旨記載した「勧告書」を示し、組合からの脱退を勧奨したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
- (1)K社常務取締役(当時)兼I社代表取締役であるA社長が、組合員5名に対し、それぞれ、組合員らが加入している組織からの脱退を勧告する旨記載された会社ら連名の「勧告書」を提示し、会社は所属する協同組合から仕事をもらっている、これからのことを自分なりに考えるように、などと述べたことが認められる。
そして、「勧告書」に記載された「貴殿が加入している組織」が組合を指し、またA社長の上記行為が組合からの脱退を勧奨するものであったことについて、当事者間に争いはない。 - (2)一般に、使用者による脱退勧奨が組合に対する支配介入に当たることはいうまでもないところ、会社らは、A社長が行った脱退勧奨について、(a)脱退勧奨の対応が消極的かつ軽微であること、(b)支配介入意思が存在しないこと、から、支配介入の不当労働行為に該当しない旨主張する。
しかしながら、会社らが自らの名の下に作成し、組合員らに提示した「勧告書」には、組合員らが加入する組合について、労働運動の名の下に違法な活動を行う反社会的存在であることを殊更印象付ける記載に加えて、組合からの脱退を勧告する旨明記されていたことが認められる。
そうすると、組合員らにとって、K社の役員とI社の代表者を兼任するA社長からこのような「勧告書」を提示されること自体が組合脱退を促す相当強い圧力となったことは、容易に推認できるのであって、このようなA社長による明白な脱退勧奨行為について、行為の態様が消極的かつ軽微であるとはいえず、支配介入意思が存在しないともいえない。したがって不当労働行為に該当しないとする会社らの主張は、採用できない。 - (3)以上のとおりであるから、会社らが組合員5名に組合からの脱退を勧奨したことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 命令内容
誓約文の交付
なお、本件命令に対して、会社らは中央労働委員会に再審査を申し立てた。