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更新日:2024年5月24日

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5.O事件(令和3年(不)第33号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、会社が、(1)組合が組合員1名の加入を通知し、団体交渉を申し入れた翌日、同組合員との契約を解除したこと、(2)団交申入れに応じなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)A組合員は、労働組合法上の労働者に当たるかについて
      A組合員の労働者性については、「基本的判断要素」として、(a)事業組織への組み入れ、(b)契約内容の一方的・定型的決定、(c)報酬の労務対価性、「補充的判断要素」として、(d)業務の依頼に応ずべき関係、(e)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、「消極的判断要素」として、(f)顕著な事業者性、の6要素の有無・程度等を総合考慮し判断する必要がある。
      • ア 会社とA組合員との業務委託契約(以下「本件契約」という。)は、A組合員を労働力として確保する目的で締結されているものとみることができ、また、A組合員は、会社が行っているマンション管理業務の中で不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として会社組織内に位置づけられているものといえる。さらに、会社は、マンション住民など第三者に対してマンション管理員を自己の組織の一部として扱っているものといえる。そうだとすれば、A組合員を含むマンション管理員は、会社の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として会社の組織に組み入れられていたとみるのが相当である。
      • イ 本件契約の契約書の内容については、契約締結前に会社が一方的に決定したものであり、A組合員には、本件契約条項を個別に交渉して変更を加える余地はなかったといえる。このことからすると、会社はA組合員との契約内容を一方的・定型的に決定していたというべきである。
      • ウ A組合員の報酬額は時間当たりの額を前提として計算されており、仕事の完成に対する報酬というよりも、業務量や時間に基づいて算出されたものであるということができ、よって、A組合員の報酬は、労務の提供に対する対価として支払われていたとみるのが相当である。
      • エ A組合員の業務は、(1)行うべき業務が契約で定められていたこと、(2)業務内容は、週6日、午後3時から午後8時までの5時間、マンション管理業務を行うことであったことが認められることからすれば、A組合員に関しては、個別の業務依頼といったものは存在しないのであるから、「業務の依頼に応ずべき関係」という判断要素については、A組合員の労働者性を判断する上で、肯定的にも否定的にも影響しないといえる。
      • オ A組合員は、会社から交付された冊子によってマンション住民への対応や作業手順等についての詳細な指示を会社から受けており、また、業務終了時の報告も行っていたのであるから、会社の指定する業務遂行方法に従い、広い意味でその指揮監督下において業務を行っていたといえる。
        また、A組合員はその業務について、一定の時間的場所的拘束を受けていたといえる。
      • カ A組合員が顕著な事業者性を有しているということはできない。
      • キ これらのことを総合的に判断すると、A組合員は、会社との関係において労働組合法第3条の労働者に該当するとみるのが相当である。
    • (2)会社が、本件契約を解除した事は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるかについて
      • ア A組合員と会社側担当者間で何らかのトラブル(以下「本件トラブル」という。)が生じた6日後に、組合がA組合員の組合加入を会社に通知し、その翌日に会社側担当者が本件契約の解除をA組合員に伝えている。
      • イ 事実の経緯等を総合的にみると、確かに会社の主張に疑わしい点があることは否定できないが、だからといって、そのことをもって、本件契約の解除が、A組合員が組合員であることを理由として行われたものであるとまで判断することは困難である。そして、本件トラブルにおけるA組合員の態様は、A組合員にとっても、本件契約解除が十分予想されるようなものであったと推認されることからも、本件契約解除は、本件トラブルを理由として本件契約解除に係る手続に入り、一定の時間をかけて会社の関連会社グループ内で協議の上、決定されたとみるのが相当である。
        したがって、会社が、A組合員との契約を解除したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるということはできず、組合に対する支配介入に当たるともいえない。
    • (3)団交申入れに対する会社の対応について
      組合の会社に対する団交申入れの議題は、義務的団交事項に当たることは明らかである。会社は、A組合員が労働組合法上の「労働者」ではないとして、会社の対応は、労働組合法上の「正当な理由のない団交拒否」には当たらない旨主張する。しかし、A組合員が、会社との関係において、労働組合法上の労働者に当たることは上記判断のとおりであり、会社の主張は団交申入れに応じない正当な理由とは認められない。
      以上のとおり、会社は、正当な理由なく、組合の団交申入れに応じていないのであるから、かかる会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
  3. 命令内容
    • (1)団交応諾
    • (2)誓約文の手交
    • (3)その他の申立ての棄却

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