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更新日:2024年7月31日

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14.R事件(令和4年(不)第40号及び同年(不)第48号併合事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、法人が、(1)組合員1名が有罪判決を受けたことを理由に、同人に弁明の機会を与えず、懲戒解雇としたこと、(2)組合らが団体交渉を申し入れたところ、これを拒否したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)法人がA組合員を懲戒解雇したことについて

ア 組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて

(ア)懲戒解雇が組合員であるが故になされたかどうかについては、(a)当時の労使関係、(b)当該不利益取扱いに至った理由、(c)当該不利益取扱いに至る手続の相当性等の事情から総合的に判断するものと解すべきである。

a まず、組合らと法人との間の労使関係についてみると、懲戒解雇当時、組合らと法人との間は、A組合員に対する処遇を巡って緊張関係にあったとはいえるものの、このことのみをもって、直ちに反組合的意思が推認されるとはいえない。

b 次に、懲戒解雇に至った理由についてみると、A組合員の行為は、市からは身体虐待行為に該当すると認定され、暴行罪で有罪判決を受けているのであり、懲戒解雇に至った理由は、合理的なものであったとみるのが相当である。

c そして、懲戒解雇に至る手続の相当性についてみると、法人は、就業規則に概ね則った手続により、A組合員の懲戒解雇処分を決定したといえるのであり、懲戒解雇に至る法人の手続には、特段、反組合的意思が推認されるような点はなかったとみるのが相当である。

d 以上を総合すると、法人がA組合員を懲戒解雇したことは、同人が組合員であることを故になされたものとはいえない。

(イ)以上のとおりであるから、法人が、A組合員を懲戒解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらないので、この点に関する組合らの申立ては棄却する。

イ 組合らに対する支配介入に当たるかについて

本件において、分会長であるA組合員が解雇されたとの事情は認められるものの、法人が、分会に打撃を与える目的でA組合員を解雇したといった特段の事情があったと認めることはできない。

したがって、法人が、A組合員を解雇したことは、組合らに対する支配介入に当たらないので、この点に関する組合らの申立ては棄却する。

(2)団交拒否について

ア 組合らが団交申入書で申し入れた事項は、組合員の懲戒処分に関することであり、これは組合員の労働条件に関する事項であるから、義務的団交事項であるといえる。

イ 法人は、団交申入れに対し、法人が団交拒否したのは、これ以上議論を尽くしても妥結や解決の可能性がなかったからであり、上記団交申入れの拒否は正当な理由が認められる旨主張する。

確かに、団交において、労使双方が当該議題についてそれぞれ自己の主張、提案、説明を出し尽くし、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至った場合には、使用者は交渉を打ち切ることもやむを得ないものというべきであり、その後の団交申入れを拒否しても正当な理由のない団交拒否には当たらない。

そこで、申入事項について、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至っていたといえるか、検討する。

ウ 組合らと法人との間では、上記団交申入れ以前に2回団交が開催されており、これらの団交の経過をみると、申入事項について、組合らと法人の話合いは、互いに自らの主張を繰り返して譲らず、平行線のまま膠着しているのであって、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至っているとみるのが相当である。

したがって、法人が、申入事項に関する団交申入れを拒否しても、正当な理由のない団交拒否には当たらない。

エ 以上のとおりであるから、組合らの団交申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たらないので、この点に関する組合らの申立ては棄却する。

3 命令内容

本件申立ての棄却

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