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2.A事件(令和2年(不)第30号事件)命令要旨
- 事件の概要
会社が従業員1名に対し、解雇を予告したところ、組合は会社に対し、当該従業員が組合員であることを通知し、団体交渉を申し入れるなどした。
本件は、このような状況下で、会社が一旦発表した勤務シフトを変更し、この組合員について、全て休日としたことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。 - 判断要旨
- (1)労働者の就労の意思は尊重されるべきものであって、賃金が全額支払われたとしても、本人の意に反して就労できないことは、苦痛を伴うものである。また、このことにより、同僚との接触や情報交換が困難になることを考えれば、正当な理由なく休職扱いにすることには、不利益があるというのが相当である。
- (2)会社は、当初は、当該組合員を雇用解除日まで勤務させる方針であったところ、雇用解除を予告してから相当程度経ってから、この方針を突如として変更し、翌日から雇用解除日まで勤務しないよう命じたというべきである。また、会社が当該組合員や組合に対し、本件休職の理由を文書で明らかにしたとする疎明はなく、会社は当該組合員に対し、理由を明示しないまま、出勤しないよう命じたというのが相当である。
本件休職を通知した時期についてみると、組合が会社に対し、当該組合員の組合加入を通知し、同組合員への解雇通知の撤回等を求めて団交を申し入れ、組合が日程調整を求めた結果、近日中の団交開催が決定した直後に、会社は同組合員に対し、出勤しないよう命じたということができる。
なお、会社は、本件休職までの間に当該組合員が行った組合活動は、この団交申入れのみであって、会社には当該組合員の組合活動を理由に不利益取扱いをする理由がない旨主張するが、仮に、この時点では当該組合員が団交申入れ以外の組合活動を行っていなかったとしても、団交終了後、当該組合員が同僚に対し、団交の内容について話す可能性があることは明らかであって、このことを考慮すると、本件休職が当該組合員の組合活動と無関係に行われたとみることはできない。
以上のことからすると、会社は、組合を通じて雇用問題を解決しようとする当該組合員の影響が他の従業員に及ぶことを危惧して、職場から同組合員を排除するために、雇用解除日まで勤務させる方針を突如として変更して、本件休職を行ったとみるのが相当である。 - (3)以上のとおりであるから、会社が、勤務シフトを変更して、当該組合員について全て休日としたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであると判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
- 命令内容
誓約文の手交
※なお、本件命令に対して、会社は、大阪地方裁判所に取消訴訟を提起した。