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更新日:2024年5月24日

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2.O事件(令和元年(不)第40号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、学校法人が、組合との協議を行わないまま就業規則を改定したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)就業規則の改定に関する学校法人から組合への通知について
      学校法人は改定就業規則施行の2週間ほど前に、組合に対し、就業規則を改定するという予定及び改定就業規則の全文のみを通知しており、組合の求めに応じた新旧対照書面の送付は、就業規則施行の約3か月後であったといえる。
      この点、確かに、学校法人から組合への就業規則の改定に関する通知の手順は、丁寧さに欠けることは否めないが、少なくとも、この通知によって組合は就業規則の改定の予定及びその内容を事前に知ることができ、後述の就業規則の改定通知後の団体交渉における就業規則のやり取りの端緒となったといえる。
      また、学校法人は、従業員に対する説明会の実施に先んじて、組合に対して改定就業規則の全文を提示したといえる。
    • (2)就業規則の改定通知後の団交について
      就業規則の改定通知後の団交では、就業規則の改定は、当初の議題とはなっていなかったものの、事前に送付されていた改定就業規則をもとに、組合は、非常勤職員について定年が設けられたことへの問題認識や、変更内容についての説明や資料が必要な旨指摘した上で、学校法人から組合に団交を申し入れることを求めており、学校法人が「また申入れします」と答えていることから、その限りにおいては、一定やり取りが行われ、学校法人が団交申入れを行うことを約したといえる。
    • (3)就業規則施行前に学校法人から団交を申し入れ、団交を開催すべき事情があったかどうかについて
      組合と学校法人との間で、団交申入れを学校法人から行わなければならないというルールや慣行は存在しないものの、本件申立てに係る就業規則の改定については、学校法人が就業規則の改定通知後に開催された団交において「また申入れします」と約したことから、学校法人から申し入れることが予定されていたといえ、学校法人は、早急に申入れについての手続を進める必要があったといえる。
      しかしながら、本件に係る要請書には、3月中に学校法人が団交を申し入れなければならないといった具体的な期限に関する記載はなく、その後4月1日の改定就業規則の施行までの間や、施行後初めて開催された団交前において、学校法人が団交を申し入れないことについて、組合から抗議が行われたという事実の疎明はない。このように組合の姿勢も、早急に改定就業規則に係る団交を開催するように学校法人に対して積極的に求めるものでなかったといわざるを得ない。
    • (4)改定就業規則の施行以降の対応について
      組合と学校法人の間で就業規則の改定について団交が重ねられ、その具体的な内容について協議が継続して行われていたといえる。
    • (5)本来、就業規則の改定に係る団交等組合との協議は、改定就業規則の施行前に行われるべきであるのはいうまでもない。
      しかしながら、上記(1)から(4)までの判断を総合して勘案すると、学校法人が3月中に団交を申し入れなかったことが、組合の運営や活動に打撃を与え弱体化させるものであったとまではいえず、また、そもそも組合の弱体化について具体的な事実の疎明もないため、学校法人が改定就業規則を4月1日から施行したことは、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとまではいえず、本件申立ては棄却する。
  3. 命令内容
    本件申立ての棄却

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