ここから本文です。
11.B事件(令和5年(不)第10号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、英会話学校の外国人講師である組合員4名について、組合が3名の組合加入を通知した直後に、会社が4名全員に対し正当な理由なく雇用契約を打ち切る旨通知したことが、不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)不利益性について
会社が組合員4名に対して雇止めを通知したことが不利益な取扱いに当たることは、明らかである。
(2)組合員であるが故になされたものであるかについて
ア 雇止め通知がなされた当時の労使関係について
組合と会社の労使関係は、本件雇止め通知の前後を通じて、団体交渉により問題解決を図る通常の労使関係を超えて緊張した関係にあったとみることはできない。
イ 雇止め通知の時期について
(ア)雇止め通知は、組合員1名の組合加入通知からは半年を経ているものの、その他の3名の組合員の組合加入通知から1か月足らずという近接した時期になされているということができる。
(イ)しかしながら、組合員4名の雇用契約書に、契約終了前に労使いずれかの側が契約を更新しない場合は、遅くとも3か月前に書面又は口頭で通知しなければならない旨の記載があったことが認められ、会社がこの時期に本件雇止め通知をしたのは、雇用契約書の定めに沿った対応であったということができる。
さらに、令和5年4月から始まる次年度の授業予定を同4年12月に決定して、その結果を従業員に通知することは、一般論として十分考えられる。
(ウ)そうすると、会社が、この時期に雇止めを通知したことには合理性が認められるのであって、3名の組合員の組合加盟通知から1か月足らずという近接した時期になされていることをもって、直ちに、組合員であるが故になされたということはできない。
ウ 組合員4名を雇止めとした理由について
(ア)会社の財政状態が悪化したという点について
会社の令和4年度の財政状況は、営業損益及び当期損益が既に赤字であった前年度から更に大きくに悪化し、固定資産を売却するなどの方策をとったにもかかわらず、毎月、収支の赤字が続き、そうした中で財政危機の解決策として会議で会社が行った提案も実施には至らず、雇止め通知の時点においても、改善の兆しがみられなかったものということができる。
したがって、会社が、財政状態の悪化を理由に、令和5年度に向けて講師の雇止めを検討したことには、合理性が認められる。
(イ)外国人講師が雇止めの対象になるのはやむを得ないという点について
組合員4名以外の講師はいずれも、社長、COO、マネージャー又は校長の役職にあり、また、外国人講師である組合員4名が担当していた英会話中心の授業は社長又はCOOが担当可能である一方、日本人講師が担当していた英文法や英文読解中心の授業は他の講師が担当できないのであるから、外国人講師である組合員4名を雇止めの対象としたことには、合理性が認められる。
(ウ)組合員4名の勤務態度が悪かったという点について
a 組合員らに交付した告知書等において会社が挙げる組合員らの勤務態度の問題点は、具体的事実を根拠とするものであったとみることができるのであって、これを雇止めの理由とすることが不合理とはいえない。
b 会社が、組合加入通知より前に、組合員4名に対して、勤務態度に問題があることを理由に雇止めの可能性があることを伝えていることが認められるのであって、会社は、組合員4名の組合加入通知後に、組合員4名の勤務態度を問題視するようになったのではない。
そうすると、会社が組合員4名の勤務態度の問題点を雇止めの理由としたことは、会社の不当労働意思を推認させるものとはいえない。
エ これらのことからすると、会社が組合員4名に対して本件雇止め通知をしたことは、組合員であるが故になされたものとはいえない。
(3)組合員であるが故になされた不利益な取扱いに当たるかについて
以上のとおりであるから、会社が組合員4名に対して雇止めを通知したことは、組合員であるが故になされた不利益な取扱いに当たるとはいえず、組合の申立ては棄却する。
3 命令内容
本件申立ての棄却