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6.M事件(令和元年(不)第27号事件)命令要旨
- 事件の概要
本件は、組合が組合員1名の解雇について団体交渉を申し入れたところ、会社は、同組合員は取締役であって労働者ではないとして、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。 - 判断要旨
- (1)A組合員は、労働組合法上の労働者に当たるかについて
- ア A組合員の業務内容は、従業員として入社してから取締役に選任された後まで、一貫して、他の従業員と同様、工場で現場作業に従事していたこと、少なくとも担当業務の範囲内等において、取締役としての意思決定や指揮監督する行為があったとはいえず、そのほかにA組合員が会社でどのように指揮監督していたかについても具体的な疎明はないこと、担当する業務の遂行を細かく指示する通知書が会社から交付されていること、からすると、A組合員はその業務遂行に当たり、会社の指揮監督の下に労務の提供を行っていたとみることもできる。
- イ A組合員は、会社から、タイムカードの打刻と打刻理由説明書の作成や有給休暇消化記録の提出を求められていたことからすると、服務態様からみる限り、会社による一定の時間的拘束を受けていたといえる。
- ウ A組合員の報酬には、労務提供への対価の要素も含まれていたとみることができること、会社の通知書からみると、A組合員は、会社から、労務を提供しなければ減給されることも想定されていたことを勘案すると、A組合員の報酬の一部には労務対価性があったとみることができる。
- エ A組合員は、取締役会や役員会議に出席し、労使会議に会社側として参加したことや設備等の導入に関与したこと等は認められるものの、役員として会社経営に参画していたとまでみることはできず、加えて、担当業務について細かい指示が記された会社通知書が交付された時期には、A組合員の会社における影響力は著しく弱まり、会社の経営に関与していたとみることはできない。
- オ 以上のとおりであるから、解任に至る当時、A組合員は、取締役であっても、実質的には使用人としての地位にあったとみるのが相当であり、労働組合法第3条の労働者に該当するというべきである。
- (2)団交申入れに対する会社の対応について
- ア 組合の団交申入れに対し、会社は、A組合員は会社の従業員ではなく、同人を従業員として解雇したこともないとして団交に応じていないが、A組合員は、労働組合法の労働者に該当するというべきところ、当該団交の議題は、労働者であるA組合員の解雇事案であったというべきであり、これは義務的団交事項に当たることは明らかであるから、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
- イ また、A組合員が組合員であることを否定し、団交申入れに応じなかった会社の対応は、組合の運営に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
- (1)A組合員は、労働組合法上の労働者に当たるかについて
- 命令内容
- (1)団交応諾
- (2)誓約文の手交
※なお、本件命令に対して、会社は、大阪地方裁判所に取消訴訟を提起した。