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5.K事件(令和4年(不)第8号事件)命令要旨
1 事件の概要
組合が、法人に対し、組合員1名に対する懲戒処分について団体交渉を申し入れたところ、法人が、3回の団交において、懲戒処分の手続等について、合理的・具体的に説明せず、それを説明することができる立場にある者の団交への出席を拒否したことが不当労働行為であるとして、申し立てられた事件である。
2 判断要旨
- (1)調査委員会を設置した理由について説明を変遷させ、説明の根拠も示さなかったことが不誠実団交に当たるとの組合主張について
法人は、3回の本件団交に先立って、調査委員会を設置した経緯について具体的に記載された調査報告書を組合に提供した上で、本件団交において、調査委員会を設置した理由について、組合の質問に対し、具体的な説明をして回答しており、自らの主張について組合の納得を得るべく努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない。 - (2)調査委員会がA組合員に対し実質的に事情聴取の機会を与えなかったことについて、説明拒否を繰り返したことが不誠実団交に当たるとの組合主張について
法人は、本件団交に先立って、調査委員会でA組合員の事情聴取をしなかった経緯や、審査委員会がそのことをどう判断したかについての説明を記載した、調査報告書及び本件審査結果報告書を組合に提供した上で、本件団交において、調査委員会でA組合員の事情聴取をしなかったことに係る自らの主張について、具体的に説明をし、組合の納得を得ようと努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない - (3)審査委員会がA組合員の陳述書による弁明について事実確認もせず考慮した形跡すらないことについて、説明拒否を繰り返したことが不誠実団交に当たるとの組合主張について
法人は、本件団交に先立って、審査委員会においてA組合員の弁明をどう考慮したのかについての説明を記載した本件審査結果報告書を組合に提供した上で、本件団交において、審査委員会においてA組合員の陳述書による弁明がどのように考慮されたのかに係る自らの主張について、具体的に説明をし、組合の納得を得ようと努めていたとみるべきであって、組合の主張は採用できない。 - (4)上記(1)から(3)の事項について説明できる人物である学長らの団交への出席を拒否したことが不誠実団交に当たるとの組合主張について
本件団交において、法人が上記各事項に係る自らの主張について組合の納得を得ようと努めており、その対応が不誠実団交に当たるとする組合の主張が採用できないことは前記(1)から(3)判断のとおりであるから、法人が学長らを団交に出席させてそれ以上の説明をさせる必要があったとはいえず、組合の主張は採用できない。 - (5)結論
以上のとおりであるから、A組合員に対する懲戒処分を議題とする本件団交における法人の対応は不誠実団交に当たるとはいえない。
3 命令内容
本件申立ての棄却
なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。