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更新日:2024年7月31日

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19.A事件(令和5年(不)第8号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、組合が、会社に対し、組合員1名が申立外会社で就労中に会社代表者から大声で罵られたなどとして、これに係る謝罪や慰謝料等を求めて団体交渉を申し入れたところ、会社が、自らは有料職業紹介事業者であり、当該組合員とは雇用関係にないとして、これを拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)使用者性について

ア まず、A組合員が申立外会社で就労した業務(本件業務)に係る会社と申立外会社との関係についてみる。

申立外会社は、会社の有料職業紹介事業の取引先の一つであり、会社からA組合員の紹介を受けたことがあるものの、本件業務に関しては会社に求職者の紹介を依頼しておらず、A組合員は直接申立外会社の求人に応募したものであり、会社は、本件業務について、申立外会社とA組合員の間の雇用関係の成立に関与していない。そのほか、会社が本件業務に関与していたことをうかがわせる事実もなく、本件業務に関して、会社と申立外会社との間に、支配関係等何らかの関係があったとはいえない。

イ 次に、本件業務に係る会社とA組合員との関係についてみる。

(ア)A組合員は、本件業務の時点で会社の有料職業紹介に登録している求職者であり、本件業務以前に会社から申立外会社の紹介を受けたことがあったものの、本件業務については、会社の紹介を受けることなく、申立外会社と直接、パート従業員としての雇用契約を締結していたことが認められ、本件業務の時点において、会社とA組合員は、有料職業紹介事業者と、そこに登録して紹介を待つ求職者の関係にあったものである。

(イ)会社は、本件業務について、A組合員の給与を支払っておらず、勤怠管理もしていなかったことが認められ、そのほか、会社は、本件業務におけるA組合員の労働条件に何らかの関与をしたと認めるに足る事実の疎明はない。

(ウ)これらのことからすると、会社は、本件業務におけるA組合員の労働条件について、何らかの関与をしていたとみることはできない。

ウ 以上を踏まえると、本件業務における会社代表者のA組合員に対する言動は、有料職業紹介事業者の代表者として、その取引先と登録求職者が自らの紹介を経ずに労働関係を成立させたことについて登録求職者であるA組合員に苦情を訴えたものとみるのが相当であって、本件業務の労働環境に関する事項である本件団交申入れの要求事項について、労働条件を現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある者としてなされた言動であるとはいえない。

エ 以上のとおりであるから、会社は、本件団交申入れの要求事項について、労働条件を現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえず、組合との団交に応ずべきA組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(2)団交拒否について

組合が、会社に対して、本件業務における会社代表者の言動に係るA組合員への謝罪及び慰謝料の支払を要求事項として本件団交申入れをしたのに対し、会社が、自らが使用者に当たらず団交に応じる義務がないことを理由に団交を拒否したことが認められるが、会社がA組合員の労働組合法上の使用者に当たらないことは前記(1)判断のとおりである。したがって、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるといえないから、組合の申立ては、棄却する。

3 命令内容

本件申立ての棄却

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