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3.N1/N2事件(令和5年(不)第54号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、組合がN1社とN2社(以下「会社ら」という。)に対して、(1)当委員会が組合員2名の解雇撤回等を命じ、再審査係属中である命令(以下「先行事件命令」という。)の速やかな履行、(2)春闘要求、を要求事項として団体交渉を申し入れたのに対し、会社らが、現時点において組合と団交をする義務はないとして、これに応じなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)まず、会社らは、組合は労働組合法第2条の定める「経理上の援助」を受けているから、救済を求める資格がない旨主張するので、この点について検討する。
環境整備費や組合員2名に対する賃金が会社らの指摘する「経理上の援助」に該当するとしても、本件申立て時点において、これらの支払が行われていなかった以上、組合は「使用者の経理上の援助を受けるもの」には該当しない。したがって、この点に関する会社らの主張は採用できない。
(2)次に、本件団交申入書に対する会社らの対応が、正当な理由のない団交拒否に当たるかについて検討する。
ア 労働組合法第7条第2号は、労働組合からの義務的団交事項に係る団交申入れに対して、使用者が正当な理由なく拒むことを禁じている。
イ 本件団交申入書には要求事項として、(a)先行事件命令を速やかに履行すること、(b)春闘要求(賃上げ、年間一時金、福利厚生資金など)、が挙げられている。そこで、各要求事項が義務的団交事項に当たるかについてみる。
(ア)まず、要求事項(a)(先行事件命令の履行)についてみる。
本件団交申入れは、組合員2名の懲戒解雇等に関する紛争を終結させ、労使関係を正常化するために交渉することを目的として申し入れられたものと解することができる。そうであれば、本件団交事項は、「団体的労使関係の運営に関する事項」に関する交渉を求めるものであり、義務的団交事項に当たる。
(イ)次に、要求事項(b)(春闘要求)についてみる。
要求事項(b)(春闘要求)については、組合員2名の賃上げ、年間一時金、福利厚生資金などの要求を含むものであるから、義務的団交事項に当たることは明らかである。
(ウ)以上のとおりであるから、本件団交申入書の要求事項は、いずれも義務的団交事項に当たる。
ウ 会社らが本件団交申入れに応じなかったことにつき、正当な理由は認められない。
(3)したがって、本件団交申入書に対する会社らの対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるのであるから、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
3 命令内容
(1)団交応諾
(2)誓約文の交付
※ なお、本件命令に対して、会社らは中央労働委員会に再審査を申し立てた。