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12.N事件(令和3年(不)第23号事件)命令要旨
- 事件の概要
本件は、組合が組合員2名の昇格について団体交渉を申し入れたところ、会社が団交に応じなかったことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。 - 判断要旨
- (1)3回の団交申入れについて、本件申立て時点において、団交は開催されておらず、またそのことについて、当事者間に争いはない。本件協議事項は、A組合員及びB組合員の昇格がなされなかったことについてであり、組合が、団交申入書において、昇格は労働条件に関わる給与面を大きく左右するものである旨説明していることをも踏まえると、本件協議事項は、組合員の労働条件に関する事項であり、義務的団交事項に当たるといえる。
- (2)会社は、3回の団交申入れに対し、本件申立てまでに団交に応じなかったことの正当な理由について、組合の団交申入書の協議事項が団交事項に該当するか否かを判断するための準備をしている段階であったとし、組合の団交申入れの議題内容が明らかでなく、組合に協議事項の具体的内容及び根拠について明らかにするよう繰り返し求めてきたが、組合がこれに応じなかった旨主張するので、以下検討する。
- (3)組合と会社のやり取りについてみると、組合は、当初の団交申入書で提示した本件協議事項について、会社の回答書による求めに応じて、新たな団交申入書により具体的な説明を行い、その後も、会社の回答書による強い求めにも応じ、改めて送付した団交申入書において、十分に回答を行っており、会社も本件協議事項の内容を認識していたといえる。それにもかかわらず、さらに回答書により繰り返し説明を求めた会社の対応は、本件協議事項の内容が不明瞭なため明らかにするという程度を超え、合理的必要性を欠くものであり、本件協議事項が団交事項に該当するか否かを判断するための準備をしている段階であったとはいえず、むしろ実質的には団交拒否の姿勢の現れであったといえる。
したがって、会社の主張は失当であり、この主張のほかに本件団交申入れに応じない理由の疎明もないため、会社に団交に応じない正当な理由があったとみることはできない。 - (4)以上のとおりであるから、3回の団交申入れについて、会社が団交に応じないことは、正当な理由のない団交拒否といわざるを得ず、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
- 命令内容
- (1)団交応諾
- (2)誓約文の手交
※なお、本件命令に対して、会社は中央労働委員会に再審査を申し立てた。