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更新日:2024年5月24日

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7.D事件(令和2年(不)第43号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、会社が、組合員1名の配置転換等を議題とする団体交渉の後、組合のウェブサイト内の記載が名誉毀損に当たるなどとして、組合に対する損害賠償等請求訴訟を提起したことが、不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)本件訴訟の提起の約3週間前には、本件訴訟の対象である1つ目のブログ記事が掲載され、続いて、4つのブログ記事の掲載という一連の経過を経て、本件訴訟が提起されていることから、団交の3日後に訴訟が提起されたことが、特に不自然な経緯とはいえない。また、団交で抗議をせず訴訟を提起したからといって、組合つぶしを企んだものであるとはいえない。
      また、組合の主張する不可解な組合員Aの言動については、事実の疎明がなく、仮に事実であったとしても、そのことをもって、会社が組合をつぶすために組合員Aを組合に送り込んだものであり、本件訴訟が計画的に仕組まれたものであったとみることはできない。加えて、組合員Aが組合に脱会届を送付したことについても、脱会届には、一定の理由も記載してあり、組合員Aの当該行動が不自然であるとまではいえない。
      その他、組合の主張を認めるに足る事実の疎明もないことから、本件訴訟は初めから組合をつぶすために、計画的に仕組まれたものである旨の組合の主張は採用できない。
    • (2)当該ブログ記事が名誉毀損等に該当するか否かは裁判所が判断することであるが、会社が本件訴訟を提起した原因となったブログ記事を組合が掲載したことは事実であり、その内容が、会社社長の名誉を毀損し、会社の信用を毀損するものであるとして本件訴訟を提起したことが、明らかに不自然、不合理で無理のある対応であるということもできない。なお、組合は、当該ブログは組合員数十人が見るだけである旨主張するが、インターネット上で、特に閲覧制限も、会社名を匿名化することもなく掲載しているブログ記事に対して、組合の当該主張は認められない。
      確かに、損害賠償等請求訴訟の被告とされることは、心理的又は経済的な負担になることは否定できず、この点は労働組合においても例外ではない。しかしながら、憲法第32条によれば、何人も民事事件において裁判所に訴えを提起する権利は否定されないものであるから、組合及び組合執行委員長の行為が、会社社長の名誉及び会社の信用を毀損したとして損害賠償等の訴えを提起することもまた、権利の行使として尊重されるべきであり、労働委員会が公的判断をもってこれを制限することは慎重であるべきである。
      これらのことからすると、本件訴訟の提起が裁判を受ける権利の濫用であり不当労働行為であるとの組合主張は採用できない。
    • (3)以上のことからすると、会社が、組合及び組合執行委員長を被告として本件訴訟を提起したことは、組合に対する支配介入には当たらず、本件申立ては棄却する。
  3. 命令内容
    本件申立ての棄却
    ※なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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