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更新日:2024年5月24日

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3.Y事件(令和2年(不)第39号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、医療法人が、当委員会が発出した命令に基づく施設長配置等を議題とする団体交渉に、責任ある立場の者を出席させないなど、誠実に対応しないことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)本件団交は、本件先行事件命令を受けて開催されたものといえる。
      そうすると、医療法人は、本件団交のうち、本件先行事件命令と関連しているものについては、同命令の趣旨を踏まえた対応をすべきであるといえる。
    • (2)各議題における医療法人の対応について
      • ア A部門への施設長の配置
        • (ア)本件先行事件命令は、A部門への施設長配置について、配置理由や職務内容等を明らかにするよう求めているのであり、そうすると、本件団交において、まずは、医療法人が、配置理由及び職務内容を明らかにし、その上で、組合の要求や主張に対し、その具体性や追及の程度に応じた回答や主張を行い、合意達成の可能性を模索すべきといえる。
        • (イ)以上を踏まえて、本件団交等における医療法人の対応についてみると、医療法人は、施設長の配置理由や業務内容について一定説明しているといえ、また、医療法人は、本件先行事件で施設長の設置理由として挙げていた会計処理問題や元職員問題について、組合からの質問に応じて、自らの主張の根拠について説明し、回答しているのであるから、かかる医療法人の対応が、不誠実であったとまではいえない。
      • イ 会議への出席について
        • (ア)総務会議へのA部門の科長の出席
          総務会議への出席について、本件先行事件命令の趣旨からすると、本件団交において、医療法人は、総務会議の目的等を明らかにして、総務会議への出席問題について誠意をもって協議すべきといえるところ、医療法人は、総務会議の目的及びその構成員を明らかにした上で、A部門の科長を出席させない理由について一定の説明をしているのであるから、総務会議への出席についての本件団交での医療法人の対応が、不誠実団交に当たるとはいえない。
        • (イ)事務長会議へのA部門の科長の出席
          事務長会議への出席について、本件先行事件命令の趣旨からすると、本件団交において、医療法人は、事務長会議の目的等を明らかにして、事務長会議への出席問題について誠意をもって協議すべきといえるところ、事務長会議についての医療法人の説明は不十分であったといわざるを得ず、医療法人は、A部門の科長を出席させない理由を十分説明しないまま、事務長会議への出席を拒んでいるのであるから、本件団交における医療法人の対応は、不誠実団交に当たるといわざるを得ない。
        • (ウ)事務長会議の議事録の交付
          事務長会議の議事録の交付について、組合の追及の程度に応じて、交付しない理由を説明すべきところ、医療法人は、事務長会議の議事録を交付しない理由を一定説明し、また、組合からの質問に対しても回答しているのであるから、事務長会議の議事録の交付についての本件団交での医療法人の対応が、不誠実団交に当たるとはいえない。
      • ウ 平成29年度冬の一時金について
        • (ア)本件先行事件命令書の記載からすると、医療法人は、平成29年度の冬の一時金に関して、団交において組合から要求があれば、少なくとも、査定結果ごとの増減額や前回からの変更の有無を明らかにするとともに、一時金の査定に関する十分な知識や情報を持ち、実質的な交渉権を有する者を出席させ、必要に応じて資料を提示する必要があるといえる。
        • (イ)以上を踏まえて、本件団交における医療法人の対応についてみる。
          本件団交において、医療法人が、平成29年度冬の一時金について、査定結果ごとの増減額や前回からの変更の有無についての説明を行ったとは認められない。
          しかしながら、組合の方が、平成29年度冬の一時金の査定結果ごとの増減額等の説明ではなく、当時の経緯についての説明を求めているのであるから、医療法人が本件先行事件命令の趣旨に沿った説明をすることを、組合の方が拒んでいるとみざるを得ない。
          加えて、医療法人は、平成29年度冬の一時金について本件先行事件命令の趣旨に沿った対応を取る姿勢を見せているといえる。
          そうすると、平成29年度冬の一時金については、組合から交渉を打ち切ったとみざるを得ず、医療法人が、本件団交において、査定結果ごとの増減額や前回からの変更の有無についての説明を行っていないことをもって、医療法人の対応が不誠実であったとはいえない。
      • エ 病院勤務の介護職の資格手当について
        • (ア)本件先行事件命令の主文において、病院勤務の介護職の資格手当について誠実に団交に応じるよう命じている。
          一方、本件団交時点では、医療法人は病院勤務の介護職の資格手当を改正していたところ、この改正により、組合が要求していた格差是正がなされたことは組合も認めているところである。
          本件先行事件命令は、組合の要求に対し、医療法人内部において、団交に当たって、どのような検討や協議が行われ回答に至ったのかその経緯まで説明するよう命じたものではないが、病院勤務の介護職の資格手当は、組合員の労働条件に関するものであり、義務的団交事項に当たること、本件先行事件命令において、病院勤務の介護職の資格手当についての医療法人の対応が不誠実団交に当たると判断されたことに鑑みると、医療法人は、組合が資格手当の是正を要求していた当時、組合からの要求に応じられないとした理由や、資格手当を改正した経緯については説明すべきであるといえる。
        • (イ)以上を踏まえて、本件団交における医療法人の対応についてみると、医療法人は、組合が資格手当の是正を要求していた当時、組合からの要求に応じられないとした理由や、資格手当を改正した経緯について一定説明したといえる。
        • (ウ)以上のとおりであるから、病院勤務の介護職の資格手当についての本件団交における医療法人の対応が、不誠実団交に当たるとはいえない。
    • (3)本件団交に理事が出席しないことについて
      使用者が負う誠実交渉義務によれば、交渉担当者が、労働組合の要求に対応して、使用者側の見解の根拠を具体的に示すなどする権限を有していれば足りるから、団交における使用者側の出席者は、必ずしも使用者の代表者である必要はなく、交渉担当者が実質的な交渉権限を有していれば、最終的な決定をし、労働協約を妥結する権限を有している必要まではないと解される。
      また、本件先行事件命令は、理事の出席を命じていないことは明らかである。
      そうすると、本件団交に理事が出席しないことのみをもって、不誠実団交に当たるとはいえない。
      また、前記(2)イ(イ)のとおり、事務長会議へのA部門の科長の出席を議題とする団交における医療法人の対応が不誠実団交に当たると判断されるところ、その要因が、医療法人が、医療法人側交渉員に協議に必要な情報等を十分に与えていないことにあるのであれば、団交出席者についての医療法人の対応が不誠実団交となり得るが、医療法人側交渉員は、事務長会議の目的や内容については説明しているといえ、医療法人が交渉員に対し、協議に必要な情報等を十分に与えていなかったとまではいえない。
      したがって、本件団交に理事が出席しなかったことをもって、不誠実団交に当たるとはいえない。
    • (4)以上のとおりであるから、本件団交の各議題のうち、事務長会議へのA部門の科長の出席についての医療法人の対応は、不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
  3. 命令内容
    • (1)誠実団交応諾
    • (2)誓約文の手交
      なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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