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日本労働組合総連合会大阪府連合会 要望書(1)
(1) (2) ※2ページに分割して掲載しています。
要望受理日 | 令和5年9月20日(水曜日) |
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団体名 | 日本労働組合総連合会大阪府連合会 |
取りまとめ担当課 | 商工労働部 雇用推進室 労働環境課 |
表題 | 2024(令和6)年度 政策・制度予算に対する要請について |
要望書
2023年9月20日
大阪府知事
吉村 洋文 様
日本労働組合総連合会大阪府連合会
会長
2024(令和6)年度 政策・制度予算に対する要請について
貴職の日頃よりの府民生活向上にむけた行政運営・諸施策の推進に敬意を表します。
私たち連合大阪は、大阪府域で働く者を代表する組織として、暮らしの底上げや格差是正など、働く者が公正に報われる社会の実現に向け、様々な活動に取り組んでいます。
そうした活動の一環として、誰もが安心して働き、生活できる元気な大阪を創り上げていく観点から、生活者・勤労者の視点で議論を重ね、このたび「2024年(令和6)年度 政策・制度予算要請」をまとめました。
3年以上に及ぶ新型コロナウイルス感染症も、感染症法上の位置づけが変更され、社会経済活動の回復が顕著となっています。一方で、長期にわたるコロナ禍において、社会システムに内在する矛盾やひずみが浮き彫りになっており、社会経済の活性化を進めつつ、社会的セーフティネットを整備していかなければなりません。
大阪経済は全体的には回復基調と言われていますが、企業倒産は増加傾向にあり本格的な回復には至っていません。大阪府の雇用情勢も、有効求人倍率1.31倍(2023年6月)、完全失業率3.0%(2023年4月から6月)とやや改善が見られるものの、有期、短時間、契約、派遣やひとり親、外国人など、不安定な立場で働く者はいまだ厳しい状況が続いています。一昨年来の物価高騰が続く中、立場の弱い方ほど生活に大きな影響を及ぼしており、引き続き生活困窮者への支援を行う必要があります。
また、現在、開幕まで2年を切った「大阪・関西万博」については、大阪経済の活性化が期待される一方で、会場建設や運営経費への懸念も指摘されています。「大阪・関西万博」は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、持続可能性に配慮した調達コードを設定しており、こうした趣旨に沿って準備を図らねばなりません。
このたびの要請内容は、「雇用・労働・ジェンダー平等施策」「経済・産業・中小企業施策」「福祉・医療・子育て支援施策」「教育・人権・行財政改革施策」「環境・食料・消費者施策」「社会インフラ施策」の6点を柱とした62項目の要請としています。コロナ禍で傷んだ雇用・経済の回復、引き続きの感染対策、府民の安心・安全な生活に向けた医療・介護の基盤整備など、限りある財政状況の中ではありますが、2024年度の施策に、是非とも反映していただきたく要請いたします。
以 上
2024(令和6)年度大阪府政策・制度予算要請
【(※)重点項目】
1.雇用・労働・ジェンダー平等施策
(1)雇用対策の充実・強化について(※)
<継続>
(a)大阪雇用対策会議の開催に向けて
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用労働市場への影響により、人手不足が深刻化している。また従前からの生産年齢人口の減少の課題、労働者の雇用の安定と職業生活の充実、そして昨今のリスキリングやリカレント教育など、労働者がその能力を発揮するためのさまざまな雇用に関する総合的な施策を検討する必要がある。
今後の総合的な雇用対策をオール大阪で検討していくためにも、その議論の場である大阪雇用対策会議の実務者会議を開催すること。
<継続>
(b)人材の確保とマッチング機能の強化について
府内の人材確保を必要とする製造・運輸・建設業界での人材不足の解消を目的として設立された大阪府の「大阪人材確保推進会議」での取り組みを強化し、業種・業界全体のイメージアップにより人材の確保につなげること。
また、インバウンド対応が急がれる宿泊業、飲食業や情報サービス業、医療や福祉の現場なども含め、さまざまな業界で人材不足が深刻化しており「働き方改革」とは相反する危機的な状況となっている。各業界での人材確保につながるよう、企業と求職者のマッチング機能の強化と併せて定着支援の視点も加えた取り組みを早急に強化・推進すること。
(2)就労支援施策の強化について
<継続>
(a)地域就労支援事業の強化について
大阪府内の関係機関と連携する「地域労働ネットワーク」の活動を活性化させるためにも、まず対面での会議開催を基本とすること。そのうえで就職困難層の就労への支援ニーズに則した事業が展開されるよう、各市町村との連携を強化すること。
また、職を失った女性や、子育て・介護責任を担う女性をサポートする職業能力訓練などを含む施策を講じること。特に、ひとり親家庭への支援事業のさらなる拡充など、総合的な施策を強化させること。加えて、それらの施策が支援の必要な人に届くよう周知の取り組みも強化すること。
<継続>
(b)障がい者雇用の支援強化について
大阪府内民間企業等の障がい者雇用率は、全国と比較しても低位で推移する状況が続いている。法定雇用率等が段階的に引き上げられることを見据え、大阪府内企業の法定雇用率達成に向けた施策として、「雇用ゼロ企業」が障がい者雇用に踏み出せない個々の要因を把握したうえで、障がい者雇用にかかるノウハウの共有化を図り、準備段階から採用後の定着支援までの一貫した総合的な支援を強化すること。
また、障がい者採用を希望する事業所や自治体なども含め、マッチングの支援を行うこと。
さらに、障がい当事者の意思を尊重した合理的配慮や相談体制の充実、職場での理解促進、さらに、障がい者就労に関する社会の理解を広げるための啓発の取り組みも含めた施策を推進すること。
(3)ジェンダー平等社会の実現に向けて
<継続>
(a)「おおさか男女共同参画プラン」の周知・広報について
「おおさか男女共同参画プラン」(2021から2025)は、大阪府が「男女共同参画社会」の実現をめざすための基本的な方向性を示すものであり、その趣旨は大阪府域に広く理解・浸透されなければならない。
大阪府域各市町村での男女共同参画に関する施策が着実に推進されるよう、各市町村との連携を強化するとともに適切な支援を行うこと。
また、大阪府民にもSDGsの目標の一つである「ジェンダー平等」をめざす取り組みとして、本プランの趣旨が広く理解されるよう、リーフレットやインターネット上で活用できる動画などの宣材の作成、SNSなどを通した具体的な情報発信を行うこと。
<継続>
(b)女性活躍・両立支援関連法の推進について
女性活躍をさらに推進するため、女性活躍推進法の省令改正により、把握・公表が求められるようになった「男女の賃金の差異」なども含め、女性活躍推進法の周知を積極的に行うこと。あわせて、事業主行動計画の策定が義務化されていない100人以下の企業に対しても、策定を働きかけること。
また、大阪府の特定事業主行動計画に則った女性参画を進めることとともに、大阪府の各役職段階における職員の給与の差異とその要因分析を職員団体とも協議して積極的に公表すること。
改正育児・介護休業法についても、その趣旨・内容を広く周知すること。また、職場での男性の育児休業取得が促進されるよう、具体的な取り組み事例の情報発信などの啓発活動を行い、誰もが育児休業を取得できる職場環境の整備に取り組むこと。
<新規>
(c)女性の人権尊重と被害への適切な対応
メディア等での性の商品化や暴力的表現を見直し、女性の人権を尊重した表現が行われるよう、大阪府として各方面に働きかけること。また、改正「DV防止法」「大阪府配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する基本計画(2022から2026)」を周知し、具体的取り組みをすすめること。特に、デートDVの加害者を出さないための加害防止にむけた教育・教材の構築にとりくむこと。
さらに「性暴力救援センター・大阪SACHICO(松原市)」のような医療・法的支援等を包括的に提供できる、先進的なワンストップセンターを、大阪市内、北摂、泉州など地域に1カ所設置すること。
DVを含む人権侵害、ハラスメント被害、性的指向・性自認(SOGI)に関する差別など、様々なジェンダー課題で被害を受けた方々にきめ細かな対応ができるよう、相談窓口の周知や啓発活動を行うとともに、職員に対する研修を継続的に実施すること。
<継続>
(d)多様な価値観を認め合う社会の構築を
LGBT等のセクシュアル・マイノリティに対する偏見、差別が根強くあるのは、SOGI(性的指向と性自認)に対する社会の理解が進んでいないことが原因である。「性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例」に基づき、行政・府民一体となって意識変革のための啓発活動に取り組むこと。
また、「大阪府パートナーシップ宣誓証明制度」に対する企業や団体含む住民の理解と普及促進を図るとともに、大阪府内の未導入の基礎自治体に対して制度の創設を促すこと。
加えて、人権に配慮しLGBTQをはじめ誰もが使用しやすい府内施設(多目的トイレ等)の整備に取り組むこと。
直近の制度導入:池田市(2022年11月)、吹田市(2023年4月)、松原市(2023年5月)
<継続>
(4)労働法制の周知・徹底と労働相談体制の強化について
労働施策総合推進法が改正され、中小企業含むすべての事業所において職場でのパワーハラスメント対策が義務化された。就職活動中の学生や顧客・取引先などの第三者に対するハラスメントも含まれることも踏まえ、特に中小企業での防止対策について周知・支援するとともに、労働者からのハラスメントに関する相談対応やハラスメントを原因とした精神疾患なども含めた相談体制を充実・強化すること。
また、ハラスメント被害者が相談窓口にアクセスしやすくなるよう、行政機関や企業内だけでなく、業界団体や地域組織など多様な場に相談窓口が設置されるよう、働きかけを行うこと。
<継続>
(5)治療と仕事の両立に向けて
厚生労働省がガイドラインを示しているように「治療と仕事の両立支援」は働き方改革の実践においても重要な課題である。特に中小企業での「治療と仕事の両立支援」の取り組みがさらに浸透するよう、関係団体と連携し、周知・啓発を行うとともに、支援事例や情報、ノウハウの提供を行うこと。
また、労働者自身が健康や医療に関する知識や関連施策を学ぶことができるセミナーなどの機会を提供すること。
2.経済・産業・中小企業施策
(1)中小企業・地場産業の支援について
<継続>
(a)「中小企業振興基本条例」の制定促進について
中小企業振興基本条例が未制定の府内市町村に対して、府の指導力を強化し、条例制定に向けた審議会や振興会議などの設置など、条例制定に向けた環境整備を促すこと。条例策定においては、地域での労働組合・労働団体の参画と役割について言及すること。
また、大阪府の中小企業振興策において、中小企業などへのデジタルデバイスの導入支援など具体的な振興策の検討や、行政の各種支援策の周知と利用拡大により、取り組みの実効性を高めること。
条例制定済み市(制定順18市): (府HPでは14の記載)
八尾市、吹田市、枚方市、大東市、大阪市、岸和田市、貝塚市、泉南市、寝屋川市、東大阪市、交野市、泉佐野市、和泉市、四條畷市、藤井寺市(R5年1月)、羽曳野市(R2年4月)、富田林市、守口市
<継続>
(b)ものづくり産業の生産拠点の維持・強化について
ものづくり企業の従業員やOBなどをカイゼン活動のインストラクターとして、あるいはものづくり企業の従業員を現場のカイゼンリーダーとして養成し、中小企業に派遣する「カイゼンインストラクター養成スクール」の開設を経済産業局と連携して図ること。
また、2019年度をもってカイゼンインストラクター養成スクールに対する国の補助金が終了したことから、大阪府としての支援を創設・拡充すること。
<継続>
(c)中小企業で働く若者の技能五輪への挑戦支援について
工業高校や工業高等専門学校に設置されている専攻科なども活用し、中小企業で働く若者が技能五輪全国大会や技能五輪国際大会に挑戦できるよう、当事者に対する支援をさらに拡充するとともに、技能五輪大会や大阪府の支援策を広く周知広報すること。
加えて、技能五輪地方予選大会・全国大会・国際大会に選手を出場させる中小企業に対して、直接的な資金面での助成を行うこと。
<継続>
(d)事業継続計画(BCP)策定率の向上にむけて
帝国データバンク大阪支社の2023年5月調査によると、大阪府のBCP策定割合は、17.0%と全国水準(18.4%)よりも低く、企業規模別で見ると、近畿では大企業と中小企業の差が2倍以上となっている。各地で起こる自然災害や感染症の拡大により、大阪府内企業での早急なBCP策定が望まれる。
連携協定締結から3年が経過した近畿経済産業局との「BCP策定大阪府スタイル」の効果検証を行うとともに、特に中小企業に対し、策定のスキルやノウハウ、メリットを広く周知し、策定率を向上させるための連携策を強化すること。
<補強>
(2)取引の適正化の実現に向けて(※)
サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配の実現に向けて、「働き方」も含めた取引の適正化・価格転嫁の円滑化を実現するため、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推進・拡大すること。各種支援策や宣言効果の周知と利用拡大により、「宣言」の実効性を高めること。特に、大手企業の宣言拡大に向けた啓発や働きかけを行うこと。
また、中小企業の「働き方改革」を阻害するような取引慣行の是正を強化するため、関係機関と連携し、関係法令の周知徹底や「しわ寄せ」を防止、適正な価格転嫁を実現させるための総合対策、中小企業への各種支援策の周知と利用拡大を図ること。
<継続>
(3)公契約条例の制定について
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を踏まえて、公契約締結においては人権デュー・デリジェンスへの配慮を確保すること。
公共サービスの質の確保、地域経済の活性化、公契約のもとで働く労働者の適正な賃金水準・労働諸条件の確保により、住民福祉の増進に寄与する公契約条例の制定を推進すること。併せて、総合評価入札制度を未導入の市町村に対して導入に向けた継続的な働きかけを行うこと。
総合評価入札制度導入済 27市町:
大阪市、豊中市、池田市、箕面市、吹田市、高槻市、茨木市、交野市、枚方市、門真市、寝屋川市、大東市、東大阪市、八尾市、柏原市、富田林市、河内長野市、河南町、堺市、高石市、泉大津市、和泉市、岸和田市、貝塚市、泉佐野市、泉南市、阪南市
<継続>
(4)海外で事業展開を図る企業への支援
海外に事業拠点を持つ、また海外事業展開を図ろうとする地元企業に対し、成長産業振興室の主導で海外での中核的労働基準(結社の自由・団体交渉権・強制労働の禁止、児童労働の廃止、差別の排除)順守の重要性について周知徹底すること。
また、海外事業拠点や取引先なども含め、人権デュー・デリジェンスの必要性についても周知徹底すること。
<新規>
(5)産官学等の連携による人材の確保・育成
「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」の活動を活性化させ、産学との連携により産業の人材育成を持続的に進めること。また、地域を支えるさまざまな産業の人材の確保・育成のため、産官学等が連携して取り組む枠組みを積極的につくること。
3.福祉・医療・子育て支援施策
<継続>
(1)地域包括ケアの推進について(※)
住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう地域包括ケアの推進に向け、質・量ともに十分な介護サービスの提供体制を市町村と連携して整備すること。
また、地域包括ケアの整備推進に対し、利用者、医療保険者、被保険者の声が反映できる仕組みと、市町村が個別に抱える課題や支援ニーズに対して十分な支援を行うこと。加えて、「大阪府高齢者計画2024(仮称)」の策定には、前年度までの「同計画2021」で行った施策の進捗状況を検証し、その総括や「高齢者の生活実態と介護サービス等に関する意識調査結果等」を踏まえて、より実効性のある計画を策定すること。
<補強>
(2)生活困窮者自立支援制度のさらなる改善について
生活困窮者自立支援事業のさらなる質の改善に向け、好事例などの情報収集・分析・提供など、実施市町村における支援員の育成やスキルの維持・向上のための研修を行うこと。
国に対しては、人員確保に必要な予算の確保を働きかけるとともに、実施自治体(市町村)に対する財政支援を拡充すること。
また、NPO法人や社会福祉法人、社会福祉協議会、労働者福祉協議会などの社会資源を活用し、大阪府としても財政支援を行うこと。
さらに、生活基盤である住居を確保するため、賃貸住宅登録制度の周知や、登録住宅の改修・入居者への経済的支援、要配慮者に対する居住支援を推進すること。
<継続>
(3)予防医療及び健康づくりのさらなる推進について
大阪府における各種がん(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がん)の受診率は改善傾向にあるが、依然として全国レベルでは低い状況にある。そこで、早期発見のためにも、若年世代から毎年受診できるよう制度を改定し、大阪府民の特定健診や各種がん検診の受診率向上を図ること。
また、AYA世代にがん検診の積極的な受診を促すための取り組みを強化すること。加えて現在進められている「第3期大阪府がん対策推進計画」の進捗状況についての検証を行うこと。
さらに、市町村とも連携し、大阪府が実践的に取り組む「健活10」や「大阪版健康マイレージ事業“おおさか健活マイレージアスマイル”」等を大阪府民により広く周知するとともに、その内容の充実を図ること。
(4)医療提供体制の整備に向けて(※)
<継続>
(a)医療人材の勤務環境と処遇改善について
医療現場の実態を把握し、労働環境の改善とワーク・ライフ・バランスや勤務間インターバルの確保等、医療現場で働く労働者の健康に対する配慮を強化すること。また、2024年度の医師の労働時間上限規制への整備を図ること。
安全で質の高い医療・看護の提供に向けては、緊急事態を想定した医療人材確保のために、キャリアアップが可能な仕組みの確立、専門性の向上を図る研修機会の拡充を積極的に実施すること。さらには、潜在医療従事者が大規模災害など緊急時に復職できる仕組みや、新型コロナウイルス感染症の患者対応やワクチン接種への従事などをきっかけに一時的に復職した者が希望すれば本格的に復職できる仕組みを医療機関と連携し構築すること。
加えて、新型コロナウイルス感染症対応を総括したうえで、引き続き感染症拡大に備え、保健所の体制整備に努めること。
<継続>
(b)医師の偏在解消と地域医療体制の向上にむけて
地域や診療科ごとの医師の偏在を解消するため、出産や育児などで離職した女性医師の復職支援研修を行うなど、効果的な施策を実施すること。特に、救急科や産科、小児科等医師不足が懸念される診療科の医師の確保に取り組むこと。そして、医療分野での地域間格差解消に向けては、地域の医療ニーズや二次医療圏内で医療需要の増加が見込まれる病床機能の確保など地域の実態を検証し、効果的な医療提供体制を構築するとともに、高度な医療機器については共同利用に関する意向書の提出状況の検証を行い、医療機関間の共同利用をさらに促進すること。
加えて、今後ニーズが高まる「訪問医療」を拡充するために、実施している医療機関への助成を行うこと。
また、新たな感染症の感染拡大時における医療体制を考慮し、急性期・回復期・慢性期まで、切れ目なく必要な医療が提供されるよう、「医療機関の機能分化と連携」、「医療と介護の連携」、をそれぞれ推進すること。
(5)介護サービスの提供体制の充実に向けて(※)
<継続>
(a)介護労働者の処遇改善と職場定着に向けて
介護労働者の確保と定着、離職防止のために、処遇改善施策および潜在介護職員の復職支援研修や介護士をめざす人材への介護資格取得のための奨学金補助や住居費、介護実習費の支援を拡大すること。さらには、サービス提供責任者をはじめとする介護労働者に対する能力開発プログラムの拡充や定期的な受講を義務付けるとともに、事業所による受講促進にかかる取り組みを評価する等、キャリアアップの仕組みへの整備を支援すること。
加えて、前歴加算も含めた処遇改善加算が介護職員への賃金に確実に反映されるよう対策を講じること。
また、介護労働者の職場環境を改善すべく、利用者や事業主からのハラスメント防止に向けて、事業主に対する啓発・研修活動を強化すること。
<継続>
(b)地域包括支援センターの充実と周知徹底について
地域包括支援センターが、地域のニーズに則して実効性ある機能が発揮できるよう、市町村に応じた十分な支援を行うこと。
労働者の介護離職防止のためにも、地域包括支援センターの機能・役割の住民への周知・広報を強化すること。
また、市町村での活用事例を共有し、地域包括支援センターを拠点に高齢者と子どもが積極的に交流できる施策の検討を行うこと。
さらには、地域包括ケアシステムの中核機関として、各市町村に最低1カ所は、直営の地域包括支援センターを設置するよう働きかけること。
(6)子ども・子育て施策の着実な実施に向けて(※)
<継続>
(a)待機児童、潜在的(隠れ)待機児童の減少に向けて
市町村と連携して、計画的に保育園の増設などを整備すること。加えて、待機児童が増加した市町村に対して受け皿の拡大や保育士の確保、近隣自治体との調整へ向けた支援を行うこと。
また、保護者の意向や状況を把握するとともに、潜在的な待機児童の把握と事業所内保育、家庭的保育や小規模保育等の整備・充実を図ること。整備の際には保育が適正に行われるよう、認可保育施設との連携や広域的な受け入れ調整などを行うこと。
さらには、障がいのある児童の受け入れや兄弟姉妹の同一保育施設への入所など、保育の質を向上させること。
<継続>
(b)保育士等の確保と処遇改善に向けて
子どもが心身ともに健やかに成長するために必要な保育や幼児教育の質の確保のため、保育士、幼稚園教諭、放課後児童支援員等の人材確保、そして労働条件と職場環境の改善を行うこと。具体的には、職場での定着率を上げる(離職率を下げる)ために、正規・常勤での雇用、給与水準の確保、定期昇給制度の確立、適正な配置、研修機会の確保等を積極的に行うこと。
また、保育士の確保へ向けた大阪府独自の助成金の創設や、「保育士宿舎借り上げ支援事業」拡充に向けた国への働きかけ、離職した潜在保育士が復職するための働き方を含めた環境整備などの支援を強化すること。
加えて「放課後児童支援員キャリアップ処遇改善事業」未実施の市町村に対する実施へ向けた働きかけを強化すること。
<継続>
(c)地域子ども・子育て支援事業の充実に向けて
保護者の負担軽減となるよう、病児・病後児保育、延長保育、夜間保育、休日保育等、多様なサービスの拡充のための財政支援を行うこと。また、病児・病後児保育を利用しようとする保護者がネットによる空き状況の確認や予約が可能なシステムの拡充を推進していくこと。そして、市町村との連携で保護者の意向や状況を把握し、多様な保育サービスが実施できる施設の拡大に伴う保育士、看護師の確保の支援を行うこと。
さらに、小1の壁を越えて継続就労ができるよう、放課後児童クラブの時間延長や子ども預かり施設への支援を行うこと。
<補強>
(d)企業主導型保育施設の適切な運営支援について
企業主導型保育施設については、子どもの育ちと安全を保障するため、認定・指導・監査等市町村による関与を行うことが必要である。そこで、認可施設への移行を強力に進め、保育の質を確保するとともに、企業主導型保育事業における地域貢献の理念を徹底すること等について、現在策定されている計画に基づき、速やかに進めると同時に、市町村や事業者、保護者の声を聞く等、新たな課題等が抽出できる仕組みを構築すること。
とくに、指導・監査業務を民間に業務委託する場合、各市町村が行う場合と同様に厳しく監査が行われるよう、府としても指導を行うこと。
<継続>
(e)子どもの貧困対策と居場所支援について
「第2次大阪府子ども貧困対策計画」にもとづき、大阪府・大阪府教育委員会として実効ある対策と効果の検証を行うこと。あわせて、困窮家庭における相談窓口を一本化することで、必要な支援が確実に享受できる体制の構築を推進するとともに、就労しているひとり親家庭への支援が確実に届くよう、土日祝や夜間での相談体制を充実させること。また、行政手続きの簡素化を行うこと。
NPO、民間団体、個人が運営する「子ども食堂」は、食の提供だけに留まらず、学習をする場などを兼ねる「子どもの居場所」として地域との繋がりを深める重要な拠点であることから、物価高が高止まりする現状も踏まえ、市町村が実施している「子ども食堂」支援事業に応じた補助金を支給・拡充するなど、市町村への支援を強化すること。
さらに、府域での食堂数は年々増加しているものの、市町村ごとの設置状況・広報状況に差が大きいことから、「住む場所による差」がでないよう特に設置の少ない市町村に対しての実施支援・働きかけを強めること。また「子ども食堂」、教育機関、民間企業などが連携したネットワークの構築へ向けた市町村の取り組みを支援すること。
<継続>
(f)子どもの虐待防止対策について
子どもの権利条約およびこども基本法の内容・理念を周知し普及に努めること。
複雑かつ重大化の傾向にある児童虐待の相談業務に適切に対応するため、児童福祉司、児童心理司、相談員を増員し、児童虐待の予防的な取り組みや介入の徹底など児童相談所の機能を強化するとともに、相談業務を担う職員の専門性を高める研修等を実施すること。
また、「児童虐待防止法」や国民の通告義務の啓発・広報の徹底を図るとともに、児童虐待防止をよびかける「オレンジリボン運動」を推進し、新たな未然防止策を講じること。
あわせて、児童相談所の権限を強化するよう、国に強く求めること。
<継続>
(g)ヤングケアラーへの対策について
「府立高校におけるヤングケアラーに関する調査結果」「ヤングケアラー支援に向けた実態調査(介護支援専門員、相談支援専門員等)」を踏まえ、実態と課題の把握により、迅速な社会的・経済的支援を行い、子どもたちが教育の機会を奪われることのないよう、社会的孤立を防ぐ支援を早急に行うこと。
ヤングケアラーは、子ども自身や家族が「支援が必要な状況である」ことを認識していない場合が多いことからも、地域包括支援センターを拠点として福祉、介護、医療、教育等の様々な機関と連携し、早期発見が可能な仕組みを構築するとともに、相談体制を強化すること。
また学校や地域での早期発見につながるよう、各市町村とも連携し、具体的な事例や概念について広く周知を行い、理解促進に努めること。
<継続>
(7)誰も自死に追い込まれない、相談体制の強化について
コロナ禍で自死者が増加しており、相談者に対応する相談員の増員や研修制度の充実、さらにはSNSによる相談体制を充実するなど、相談体制を強化すること。あわせて、相談員がメンタル不調に陥らないよう、対策を十分に講じること。
また、相談者が抱える個々の事情により沿った支援を行うために、市町村や、NPOなどの民間団体と連携するとともに、取り組みに対する支援を行うこと。
4.教育・人権・行財政改革施策
<補強>
(1)指導体制を強化した教育の確保と資質向上について(※)
教育の質を高め、子どもの豊かな学びを保障するため、教職員定数の改善、教職員や支援員等の人材確保に努めること。教職員の長時間労働を是正するためには、客観的な勤務時間管理をおこない、「時間外在校等時間の上限(月45時間、年360時間)」を遵守するよう、有効な対策を講じること。
また、教職員の欠員対策として、代替者の速やかな確保に努めるとともに、精神疾患等による病気休職者をなくすための労働安全衛生体制を確立すること。さらに、義務制の学校においても府立学校同様のとりくみがすすむよう、市町村の教育委員会に対してはたらきかけること。
深刻化する子どもの貧困、虐待、不登校、自死等への対策として、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置拡充を行うこと。また、SC、SSWの十分な人材確保にむけた養成・育成に取り組むこと。
さらに、外国にルーツをもつ子どもが取り残されることのないよう、日本語指導が必要な子どもに対して、必要な家庭支援を行うこと。そして、進学等で不利益を被らないよう、子どもや保護者に対して、多言語対応の整備や「やさしい日本語」を活用し、適切な情報提供と理解促進を進めること。
<新規>
(2)府立高校の統廃合について
府立高校がもつセーフティネットとしての役割、多様な子どもの学びと願いに応える役割を果たすため、地域に根差した府立高校の必要性から、府立学校条例にもとづく府立高校の統廃合を廃止も含めて見直すこと。
<新規>
(3)更衣室や多目的トイレの設置・増設について
子どもたちのプライバシーを守る観点から、各学校において更衣室や多目的トイレなどの設置・増設を進めること。また、各市町村の教育委員会にも働きかけること。
<継続>
(4)奨学金制度の改善について(※)
給付型奨学金制度のさらなる対象者や支給金額の拡充を、積極的に国へ求めること。また、従来からの支援制度のみならず、中小零細や地場を含めた地元企業に就職した場合の奨学金返済支援制度の創設を検討するなど、新たに大阪府独自の返済支援制度を検討すること。
加えて、コロナ禍によって返済が困難な労働者に対する返済猶予措置を講ずること。
<継続>
(5)労働教育のカリキュラム化について(※)
ワークルールや労働安全衛生等、働くことに関する基礎的な知識を活用できるよう、労働教育のカリキュラム化を推進すること。また、労働組合役員や退職者などの経験豊富な外部講師を登用した出前講座や職場見学・職場体験などを含め、働くことの意義や知識を学ぶ時間を確保すること。
<補強>
(6)幅広い消費者教育の展開について
成年年齢が引き下げられたことにより、知識や経験不足に乗じた悪徳商法などによる若年層の消費者被害の拡大が強く懸念されている。
とりわけ、スマートフォン・タブレット等の普及に伴い、高額商品の売買やゲームでの高額課金、犯罪行為に抵触する事項などに関して、小・中学生も対象に含めた学生への消費者教育は急務となっている。そこで、教育現場への啓発活動や支援などの拡充に加え、家庭でも消費者教育を学ぶことができる教材を作成するなどの対策を講じること。
<継続>
(7)人権侵害等(差別的言動の解消)に関する取り組み強化について
大阪府ヘイトスピーチ解消推進条例が施行されているものの、ヘイトスピーチをはじめとする差別行為は無くなっていない。そこで、あらゆる差別の解消に向けSNSやインターネット上に氾濫する差別の実態を把握するとともに、差別解消に向けた具体的施策を講じること。さらには、無意識による無理解や偏見による言動も差別に繋がることから、人権意識の向上のための周知を行うこと。
また近年、インターネット上の人権侵害事案も多発していることから、2023年3月に公表された「大阪府インターネット上の人権侵害の解消に関する有識者会議取りまとめ」を踏まえ、インターネットリテラシー向上のための教育・啓発活動や、相談事業・被害者支援などを推進していくこと。
<継続>
(8)行政におけるデジタル化の推進について
行政によるデジタル化を推進し、オンライン申請などの利便性を高めることで、行政事務手続きの簡素化や行政情報へのアクセス向上などに取り組み、情報漏洩や誤作動が起こらないよう、デジタルセーフティーネットの構築をめざすこと。
また、デジタル化の推進に伴う情報格差の解消に向けても取り組むこと。
<継続>
(9)マイナンバー制度の定着に向けたマイナンバーカードの普及について
公正・公平な社会基盤としての「マイナンバー制度」の定着と一層の活用に向けて、運用状況や住民からの意見を丁寧に把握し、必要に応じて、利用範囲や個人情報保護に関し適切な取扱いを行っていくこと。あわせて、税務行政体制の効率化をはかるとともに、個人情報の保護体制を強化すること。
また、デジタル行政の推進や、行政の迅速な支援による市民生活の利便性向上を図るべく、「マイナンバーカード」の普及促進を前提として、プライバシー保護のための安全性の周知や個人情報管理体制の強化など制度の信頼性を高める取り組みを行うこと。
加えて、「マイナンバーカード」への保険証一体化等については、カードの取得が強制化されないよう従前の保険証についても継続して対応するよう、国に要請すること。
<新規>
(10)府民の政治参加への意識向上にむけて
有権者の利便性と投票機会のさらなる確保のため、共通投票所の設置の拡大、身近に利用できる投票所の増設、期日前投票の投票時間の弾力的な設定、および移動期日前投票所の設置・拡充に努めること。
さらに、投開票の簡素化・効率化、疑問票の削減、障がい者や要介護者などの投票参加拡大の観点から、投票方法を自書式から記号式投票に改めること。
また、若者の政治参加を促進するため、市町村の教育委員会や選挙管理委員会と連携し、模擬投票や選挙出前授業、議会見学や傍聴など主権者教育を実施すること。
5.環境・食料・消費者施策
<継続>
(1)食品ロス削減対策の効果的な推進に向けて(※)
これまで大阪府の「食品ロス削減ワーキングチーム」が精力的に取り組んできた食品ロス削減対策を継続的に実施するとともに、「大阪府食品ロス削減推進計画」の進捗状況、検証を行うこと。また、「おおさか食品ロス削減パートナーシップ制度」による「パートナーシップ事業者」を拡大していくため、外食産業をはじめとする食品関連事業者に積極的な働きかけを行うこと。
府民に対しては、「食べ残しゼロ」を目的にした「3010運動」について、アフターコロナでの外食増加を想定し、さらなる効果的な啓発活動を実施するとともに、「食べきり」「持ち帰り」を基本とする環境整備も進め、府の取り組み内容を示すこと。
また、枚方市・摂南大学での産学の取り組みのような、破棄される農作物・特産品(すもも)の有効活用策も検討すること。
<継続>
(2)フードバンク活動の課題解決と普及促進について
2019年5月に成立した「食品ロス削減推進法」に則り、フードバンクに対する具体的な支援を行っていくこと。また、フードバンク活動団体が抱える課題(運営費・人手・設備等)を解決するための相談窓口や活動関係者で構成する協議体の設置を検討すること。加えて、活動に対する社会的認知を高めるための啓発を強化すること。
また、「フードバンクガイドライン」の策定によって支援のあり方が効果的になっているか検証を行うとともに、市町村によって取り組みの濃淡のないよう、市町村と連携をはかること。
<継続>
(3)消費者教育としての悪質クレーム(カスタマーハラスメント)対策について
「サービス等を提供する側と受ける側がともに尊重される消費社会」の実現をめざし、一部の消費者による一般常識を超えた不当な要求や、異常な態様の要求行為等の悪質クレーム(カスタマーハラスメント)の抑止・撲滅を推進すること。具体的な取り組みとしては、府独自の判断基準(対応状況や対応時間の目安、対応体制の確立)の策定を行うとともに、消費者に倫理的な行動を促すための啓発活動や消費者教育を行うこと。