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更新日:2023年7月27日

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障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(2)

(1) (2) ※2ページに分割して掲載しています。

要望書

地域移行・地域生活に関する要求項目

私たちはこれまで府に対して「何十年もの長期入所、一生施設の状態を解消するために、入所施設を循環型・通過型にすること」を求め続け、府は今年3月に「地域における障がい者等への支援体制について」(提言)をまとめ、入所施設に3つの機能((1)集中支援機能、(2)生活支援機能、(3)緊急時生活支援機能)を設けていく方向を示しました。これは「今後の施設への受入れは有期限化し、地域の緊急ケースの一時的な受入れを進める」という内容であり、ようやく一歩前進しましたが、これを決して「絵に描いた餅」で終わらせないよう、どう具体化していくかが重要であると言えます。
折しも昨年の障害者権利条約の総括所見でも「施設入所を終わらせるために迅速な措置をとること」と「脱施設化の実現」が強く勧告されており、府として「脱施設化」の推進に向けて具体的な仕組みや方策を打ち出し、実行していかなければなりません。また府障がい者福祉計画の地域移行の数値目標案では、地域移行は国と同じ「6%以上」、施設入所者の削減は緊急時受入れ枠の確保を理由に、国目標5%よりもかなり低い「1.7%以上」とすると示されました。府は提言に沿って本気で地域移行を進めるのか、むしろ提言を盾にして施設を現状のまま温存するつもりではないのか?と疑わざるを得ません。市町村に対して府の「本気度」を示し、連携して地域移行を推し進めていくためにも、国よりも高い数値を設定すべきです。
精神科病院での虐待問題については、2020年の神出病院、阪本病院に続いて今年も東京・滝山病院で発生するなど毎年連続しており、滝山病院では多数の職員によって見るに堪えない暴行が繰り返され、その背景には病院の閉鎖性、職員の人権意識の低さ、行政との癒着、社会の無関心等、複合的な問題が明らかとなっています。コロナ禍で中断していた地域移行支援では当事者と対面で向かいあい本人の意思決定を大切にしながら退院を進めていくことが必要です。また権利条約の勧告で強調されている「期限の定めのない入院を終わらせ同意を確保する事」をふまえ、精神保健福祉法改正での医療保護入院期間の法定化、虐待の通報義務化に伴う対応の迅速化等、入院者訪問支援事業の推進と併せ、この間停滞している院内の人権擁護、退院促進の取組を再開し一層強化していくことが必要です。
今後、地域移行や意思決定支援を進めていくには、施設・病院と地域の「つなぎ役」である相談支援基盤の拡充が必須となりますが、未だ府内の相談支援事業所は圧倒的に足りず、相談員1人事業所が非常に多く、セルフプランも全国最多で残されている状況です。重度化・高齢化の進展に伴い、セルフプラン対象者に計画的にアプローチし解消していくことも必要です。また8050問題や虐待・緊急ケースへの対応も増えていることから、待ったなしの課題として相談支援の増設、地域生活支援拠点機能の強化を進めていかなければなりません。また精神障害者の「日中の居場所」となっている就労支援B型については、短時間・少日数の利用者が忌避されないよう、次の報酬改定に向けて、国に減算問題の抜本的な解決を強く訴えていく必要があります。更には、近年激しさを増す豪雨災害に備えて、垂直避難場所の確保を更に推し進めるとともに、市町村に対して福祉との連携による個別避難計画の作成など、個々の命を守るために具体的な避難対策を強化していかなければなりません。
以上の認識に立ち、以下要求します。

  1. 地域移行の取り組みに関する国への要望
    • (1)重度化・高齢化に対応した地域移行支援の充実に向け、国に対して以下要望すること。
      • 今後、重度障害者の地域移行がますます必要となることから、重度者の地域移行支援報酬を設定することや、体験中の重度訪問介護・行動援護の併用を強く求めること。
      • 地域移行支援契約前の「前段階支援」として体験外出の制度化、コーディネート機能への報酬設定、体験加算15日制限の撤廃と増額、施設・病院への交通費保障も併せて要求すること。
      • 重度者の移行の受け皿を増やすために、グループホームの地域移行特別加算の対象者や適用年数を拡大するとともに、長期入所・入院の結果65才に達していても、移行後に必要な障害福祉サービスを柔軟に利用できるよう明確にすること。
    • (2)障害児施設の地域移行では、措置解除されず地域移行支援が利用できなかったケースが出ていることから、地域生活体験時にはその都度措置解除することを児童部局と明確化しておくとともに、その都度措置解除しなくても地域移行支援が利用できるよう国に改善を求めること。
  2. 大阪府での地域移行取り組みの推進に向けて
    • (1)府「提言」に基づき地域移行を推進していくために、次期障害福祉計画の数値目標では、施設からの地域移行10%以上、施設入所者削減5%以上とし、国基準を上回る数値を設定すること。
    • (2)府「提言」の推進に向けた具体方策を示すこと。特に市町村と基幹センター等の相談支援事業が連携した施設訪問活動の実施や、施設外部の相談支援事業所による計画相談・意思決定支援の導入ならびにセルフプランの解消、地域生活体験・地域移行支援の展開について具体化すること。
    • (3)大阪市の体験外出事業「施設入所者地域生活移行促進事業」等、各市が実施している地域移行支援策を集約し、府として積極的に後押しするなど各市町村で制度化されるよう働きかけること。
    • (4)地域移行の受け皿の育成・バックアップに向けて、重度・行動障害のグループホーム等での支援状況を把握し、広範な事業所に対する受入れ研修、スーパーバイザー派遣の仕組みを作ること。
  3. 精神障害者の地域移行、地域包括ケアシステムについて
    • (1)府の「長期入院精神障がい者退院支援強化事業」についてコロナ禍で停滞していたが、取組を再開し、中断していた方への対応や当事者交流、新規対象者の掘り起こしを進めていくこと。
    • (2)精神科病院の虐待事件が続いていることから、虐待の未然防止、早期発見、再発防止に向けて、法改正に基づく病院職員への研修啓発を強化するとともに、通報の仕組を整備し、入院者・職員・外部から通報があった際は立入検査、当事者の聴取り、予告期間なしの実地指導を実行すること。
      来年度から始まる入院者訪問支援事業については、当事者の意向に基づいて訪問支援員を派遣し、生活の相談や情報提供を行い権利擁護に取り組むとともに、専門職が配置できるようにするなど必要経費を確保し、来年度から新規事業として立ち上げること。
    • (3)「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について、まだまだ各市町村でばらつきがあることから、その底上げ、格差是正の方策を示すとともに、府・圏域・市町村の3層構造の役割が有効に機能するように推進すること。また居住支援協議会はまだ3市でしか実施されていないが、全市町村での実施に向けた方策を示し推進すること。
  4. 地域移行や重度化・高齢化に対応しうる「相談支援基盤の拡充」が急務であることから、相談員1人事業所への支援策として、国に相談員が複数配置されるまでの間の加算や重度・困難ケースでの報酬増額を強く求めるとともに、府独自制度の実施を検討すること。また現行制度でも複数事業所の協働による機能強化型報酬の算定や毎月モニタリングも可能であること等、市町村に周知するとともに、相談員を複数配置してゆけるよう初任者研修の受講枠や指定研修事業者を拡大すること。
  5. 地域生活支援拠点等について、各市町村の拠点機能と実際の利用状況を集約し明らかにするとともに、今後の5機能の強化に向けてとりわけ地域の緊急事例・困難事例等に迅速に対応できるよう、緊急時支援者派遣や入所施設等での緊急受入れ事業を整備するよう全市町村に働きかけること。
  6. 防災対策について近年の猛烈な風水害や地震に備え、要支援者が直ちに上階に垂直避難できるよう、学校校舎の他ホテル、公的施設、物販店等の避難所を幅広く確保し、時間的余裕をもって事前開放することや、要支援者が実際に利用できるか現地検証し必要な設備・備品を整えておくこと。
    また個別避難計画の作成が努力義務化されたことを受け、全市町村に福祉と連携した計画作成を強く勧奨するとともに、要支援者名簿の中軽度者への拡大も働きかけること。
  7. 就労支援B型の平均工賃月額体系による減算問題について、国は新たに一律評価報酬体系を導入したものの殆ど利用されず何ら問題解決していないことから、障害特性による少日数・短時間利用者を平均工賃月額体系の算定カウントから除外することや、利用日数・利用時間数に基づく算定に変更するよう国に強く求めるとともに、一律報酬体系の抜本的な見直しも積極的に働きかけること。

権利の実現に関する要求項目

大阪府差別解消条例では2021年4月から「事業者の合理的配慮」が義務化され、来年の4月からは改正差別解消法が施行され、いよいよ法律でも事業者の合理的配慮が義務化されます。大阪府では先行して条例を改正したものの、事業者に対して障害者差別を未然に防ぎ合理的配慮を広げるような積極的な取り組みはまだできていません。改正法施行を機に、この間の相談事例の集積を基に同様の案件が複数発生している業種に対しては、より具体的な啓発等を積極的に行うことが必要です。また府内の差別解消協議会の未設置市町村は20程度もあり、ここ数年間全く止まってしまっています。今回の法改正では、相談人材の育成・確保や事例収集などが法に位置付きました。それを根拠に市町村に対して、協議会の設置と事例検証を通じたスキルアップを一層強く求めていかなければなりません。
障害者に対する住宅入居差別は未だ根強く残っており、単身やグループホームの入居で拒否される事例が相次いでいます。明確な差別意識だけでなく、家主が障害者の入居に対して「漠然とした不安」を抱いて拒否する事例も多くあり、また家主の意向を受けて宅建業者や保証業者が入居を拒否する例も続いています。大阪市内のマンションで20年間平穏に暮らしてこられたグループホームが、地域住民から退居を求められた裁判は、現在も大阪高裁で控訴審が続いていますが、これも一部の住民と管理会社による差別意識によるものと言えます。差別の未然防止に向けては、障害と住宅部局が連携して、家主や住宅関連業者に対して、差別事例と合理的配慮の方法を具体的に示しつつ、障害者の実際の暮らしぶりや入居を支える仕組みも伝えていくなど、より積極的な啓発活動の展開が必要です。
またこの間、府内市町村の公営住宅では、自治会役員が障害者に対して自治会活動を強要し、それができないなら入居を拒否する、退居を求める、住民に自身の障害状況を説明させる等の人権侵害が立て続けに発生しています。その背景には住民の高齢化による自治会活動の継続の困難があり、構造的な差別の問題と捉え、障害の理解のための住民への啓発活動の実施と併せ、自治会活動の外注補助の実施など抜本的な解決策が必要となっています。
旧優生保護法の下で行われた強制不妊手術の問題では、全国的に裁判が行われる中、知的障害1名・聴覚障害2名の方による大阪の裁判では、昨年の高裁判決で損害賠償を認める画期的な判決が下され、その後の各地の裁判でも被害者の訴えを認める判決が続いていましたが、6月の仙台高裁ではまたしても不当判決が下されるなど、司法判断が揺れ動いており、国による早期解決が求められています。優生議連では一時金支給法の見直し検討が開始され、来年4月までとされている請求期限の延長や、一時金320万円の増額などが課題となっています。
一方、大阪府では全国で5番目に多い619人、「同意」も含めれば1,238人に対して優生手術が行われたにも関わらず、一時金認定件数はたったの27件(2%)と非常に低調なままです。昨年、大阪市・大阪府で医療機関や高齢者施設も含めた福祉施設に対して、「周知の一環としての調査」が実施され、新たに何人かが発見されましたが、今年も更に市町村と連携して再調査を必ず実施するとともに、あらゆる手段を使って大々的な広報活動を展開するなど、一人でも多くの被害者を掘り起こし救済につなげなければなりません。そのことは、被害を与えてしまった大阪府行政として果たすべき最低限の責務であり、府として可能な方策を全て実施するよう強く求めます。
生活保護については、昨年度の見直しで基準額や級地区分までもが引き下げられる恐れがありましたが、一旦回避されたところです。この間のコロナ禍による経済活動への打撃による大幅な収入減や、失業ケースが相次いでいることや、また高熱費や食費、日用品等の物価が軒並み高騰している中、保護を締めつけるなどもっての他です。まさに「健康的で文化的な最低限度の生活」を保障するために、今後の見直し検討においては基準額や級地区分ならびに各種加算等を決して引き下げないよう、他の自治体とも連携して国に対して強く求めていかなければなりません。
以上の認識に立ち、以下要求します。

  1. 府の差別解消条例、差別解消取り組みについて
    • (1)来年度からの改正法施行による事業者の合理的配慮の義務化を受け、差別の未然防止と適切な合理的配慮の提供に向け、特に差別事例が複数発生している業種に対して、「どんな場面でどんな差別が発生しやすく、どう未然に防ぐべきか」をわかりやすく示した研修・啓発を行うこと。
    • (2)府内市町村の差別解消支援協議会は、未だ19市町村が「設置検討中」であるなど全く進んでいないことから、先進市の取組を紹介しながら、差別解消法改正を機に直ちに協議会を全市町村で設置し、事例への対応とその検証を通じて人材育成、体制整備を行うよう強く働きかけること。また市町村の相談対応において不適切な対応や不十分な対応で済ませていないか、事例を集約・検証し、課題がある場合は直接出向いて適切な助言・指導・研修を行いスキルアップを図ること。
  2. 住宅の入居差別について
    • (1)民間賃貸住宅での障害者の入居拒否や、グループホームに対する入居拒否・追出し等の差別が相次いでいることから、住宅部局と差別解消担当が連携し、家主・宅建業者・家賃債務保証業者・管理会社等に対して、「この間発生している問題事例、適切な合理的配慮の事例」を具体的に示す媒体を作成し、更なる啓発・研修を進め差別を未然に防止するとともに、差別発生時には府として調査・指導に積極的に出向いて毅然とした対応を行うこと。
    • (2)入居差別の背景にはまだまだ障害者の暮らしぶりが知られておらず、「漠然とした不安」から拒否されている例も多いことから、不安の払拭に向けて障害者やグループホームの暮らしの様子、入居支援制度を紹介する媒体を作成し、全市町村に居住支援協議会の設置を促し、それを活用した研修啓発を実施するとともに、住宅確保要配慮者(障がい者)専用住宅を多く確保すること。
    • (3)公営住宅においても、2019年に平野区の市営住宅で自治会活動を巡って障害者が自死に追い込まれる痛ましい事件が発生し、住民の高齢化により自治会活動が困難となり各住宅で障害者とのトラブルが続出していることから、大阪市のように住宅管理センターや自治会、住民に対して障害の理解を進める啓発を行うとともに、自治会活動を業者に外注できるよう府で補助すること。
  3. 強制不妊手術の問題について
    一時金支給法の施行から4年余りが経過し、来年4月23日の請求期限まで残り10カ月しかないにも関わらず、府内の被害者は少なくとも1,238人おられるが、認定件数はまだたったの27件(2%)に過ぎない。府として障害者に不妊手術を強いた事実を重く受け止め、何としても一人でも多くの被害者を掘り起こし救済につなげるために、あらゆる手立てを講じなければならない。
    広報活動は昨年度よりも一層拡大し、新聞・ラジオ広告、テレビCM、全交通機関でのポスター掲示、障害者への個別通知時のチラシ挟み込み等、あらゆる手段を講じて大々的に展開すること。
    また昨年度、大阪市では全ての障害児者施設、児童施設、医療機関への周知・アンケート調査を実施し、大阪府でも初めて全ての高齢者施設等に対する周知の一環としての調査を実施し、それらにより新たに一時金の問合せ・申請に至った被害者が何人かおられた。府ではまだ障害児者施設や医療機関には「事業を統廃合する場合の資料保全通知」というわかりにくい形でしか実施できていないことから、今年度は大阪市・全市町村と連携して、「周知と併せた再調査」を実施すること。
    国に対しても施設や医療機関への再調査の実施を強く求めるとともに、一時金法の請求期限の撤廃や補償金額の大幅増額、自治体への調査権限の付与等、抜本的な見直し改定を強く求めること。
  4. 生活保護の基準見直しについて
    昨年度の国の「生活保護基準の見直し検討」では、級地区分6ランクを3ランクに大括りすることや基準額の引き下げが考えられていたが、全国的な反発も受けて最終的には「2024年度までは現行基準を維持し、その後の経済情勢をふまえて2025年度以降の受給額を判断する」と回避された。
    これはコロナ禍前の2019年の消費実態を基に審議され、昨今の物価高騰を顧みない乱暴な見直しであり、一旦見送られたものの来年には問題が再燃する恐れがあるため、引き続き他の自治体とも連携して、決して級地区分や基準額を引き下げないよう国に強く働きかけること。また保護の停廃止や障害者加算、介護加算、住宅扶助の見直し等、更なる締め付けがされないよう働きかけること。

交通・まちづくりに関する要求項目

2025年大阪・関西万博のユニバーサルデザインガイドラインは、当事者抜きで作成したことの深い反省のもとに、多様な障害者の意見を反映しアクセシブルでインクルーシブな万博を目指す改訂版ができました。万博を機に、大阪の交通機関のアクセシビリティの向上、大阪街全体のバリアフリーの底上げを図り、大阪丸ごとバリアフリーの実現に向けて取り組む必要があります。
アクセスは人権です。福祉や障害者の問題にするのではなく、都市計画、観光、交通政策、情報政策などあらゆる政策において、障害者を含む誰も取り残さない施策の推進を図るべきです。
一方で、障害者のアクセシビリティがないがしろにされている実態が多くあります。
鉄道駅の無人化や窓口無人は、障害の意見聴取もなく一方的に拡大されてきました。駅のホームと電車の段差解消やホーム柵の設置はまだ不十分で駅員の介助が必要です。しかしながら、インターホンが障害者の実態に合っていないため利用できず、介助すら呼べない障害者も多く存在しています。しかも、無人の時間帯の情報も前もって提供されておらず、駅に行って困難に直面することが多々あります。これでは通常の社会生活ができません。府は、差別解消法、府差別解消条例を踏まえ、環境の整備、合理的配慮、建設的対話を行うように行政指導を行うべきです。
また、2階建てコンビニが増加し、バリアフリートイレに階段を上がらないと使えないという差別実態が拡大しています。さらには、入口のバリアで入店すらできない飲食店は日常的にあります。また、バリアフリートイレの介護ベッドの普及が不充分なために外出を諦めざるを得ない人も多くいます。大阪府は福祉のまちづくり条例のガイドラインの改定に留まらず、このような障害者の生活に直結する課題について、府福祉のまちづくり条例の改正も含めた検討を行う必要があります。
万博を機に内外から多くの障害者が大阪を訪れます。万博へのアクセスを確保するためにターミナルなど交通機関のバリアフリーを一層進めるとともに、ホテルのユニバーサルルームの情報すら把握できない、車いすで飲食できる店や観光地のバリアフリー情報がわからないなどの観光におけるバリアの解消を図り、官民共同して、障害者が共に楽しめる大阪の街を共創するよう取り組み、大阪万博のレガシーとしていくべきです。以上の認識に立ち、以下要求します。

  1. 駅ホームの安全な利用、無人駅への対策検討について
    • (1)ホーム柵の設置については、利用実態、地域の実情等を勘案し、優先度が高い番線での整備を推進できるよう配慮すること。なお、優先度の検討に際して、府立福祉情報コミュニケーションセンター新設について考慮すること。特に、視覚障害・盲ろう等障害者のニーズを把握すること。
      また、鉄道駅バリアフリー料金制度によって行う各鉄道事業者のホーム柵設置事業に対し、大阪府としてホーム柵設置の必要十分な予算措置を講じること
    • (2)無人駅、時間無人、窓口無人(以下「無人駅等」)の拡大は、障害者の負担の増大を招き、障害者の移動の権利の侵害につながるという認識の上に立ち、無人駅等の拡大を回避するよう鉄道事業者への理解を図ること。
      その上で拡大する無人時間帯等において障害者が負担なく利用できるように以下の点について環境の整備の事業者努力を求めること。なお、国無人駅ガイドラインに基づき、障害当事者の意見を十分に踏まえるよう求めるとともに、差別解消法に基づく建設的対話を行うよう指導すること。
      • インターホン、切符券売機等を障害者が容易に利用できるように改善すること。
      • ホームと電車の段差の解消、ホーム柵の設置などの整備を進めること。
      • 無人時間帯は障害者等の利用が少ない時間帯に設定し、無人時間帯情報をだれもが前もって容易に把握できるようWEBなどで公表すること。
      • 介助等の申出窓口は営業時間内には必ず外部からも容易に連絡可能な体制とすること。
  2. 大阪府福祉のまちづくり条例(以下「府条例」)関係
    • (1)今年改正された府条例ガイドランについて、関係者への周知を進めること。
    • (2)府条例ガイドラインの検討において明らかになった課題(店舗敷地境界・出入口段差、飲食店の固定椅子割合、大人用介護ベッド設置義務、2階建てコンビニ、共同住宅駐車場など)及び国の法改正に伴い検討すべきスタジアム等の車いす席の設置義務基準等の課題について、2024年度に府条例を改正すべく検討を進めること。検討にあたっては、できるだけ幅広い障害者が参画できる学習会等を開催すること。
    • (3)関西万博のユニバーサルデザインガイドラインは多様な障害当事者、有識者の意見の結実によって作られた。万博の取組や水準が今後のまちづくりのレガシーとなるように、府条例にどう反映すべきか十分に検討すること。それが可能となるよう府条例検討の審議会等へ万博の検討に関わった障害当事者、有識者が参画できるようにすること。
  3. 2025関西万博を機に大阪まるごとバリアフリーの実現について
    • (1)改定後のユニバーサルデザインガイドラインが具体化されるように、各パビリオン、催事施設、展示施設、その他敷地内施設の設計・整備にあたっては、当事者意見の反映を図ること。移動モビリティ、サイン表示、情報のユニバーサル化、サービス提供のあり方、共に体験できるコンテンツ作り、スタッフ研修等、今後の課題についても、当事者参画を基本として、アクセシブルでインクル―シブな万博の実現を図ること。
    • (2)夢洲万博会場へ円滑にアクセスできるよう大阪市及び各事業者と連携し整備を図ること。
      • 鉄道による円滑なアクセスを確保するためにターミナル駅(弁天町駅、大阪駅、新大阪駅、天王寺駅、難波駅、本町駅等)の車両の隙間と段差の解消、エレベーターのかごの拡大、バリアフリールートの複数化、他社線、バスを含む乗換え案内表示の充実などバリアフリー化の一層の推進を図ること。
      • 万博のシャトルバスへの参入事業者に車両のバリアフリー化について一定の義務基準を課す等、車いすが乗車可能な高速道路走行のシャトルバスを確保すること。その上で、バリアフリーシャトルバス車両の確保が充分でない場合、福祉車両等をシャトルバスと同等の料金で利用できるようにするなど代替交通機関の確保を検討すること。
      • JR桜島駅及びシャトルバス乗降場並びにその周辺のバリアフリー化を進めること。
    • (3)万博を機に、ホテル、観光施設、商店街、飲食店などのバリアフリー化など、大阪のバリフリーの底上げを図り、障害者が取り残されることなく大阪の街を楽しめることをめざすこと。
      • 障害者も含めた観光客の受入環境の整備を進めるために、各建築物のバリアフリー化、障害理解や合理的配慮の啓発を行うとともに、ユニバーサルツーリズムについて関係業界団体の機運の醸成などを進めること。
      • 大阪府の観光情報の提供に際しては、ホテルや飲食店、商店街、各観光施設のバリアフリー情報も併せて掲載し、障害者だけが情報格差を被ることがないように整備をすすめること。
  4. 府営公園のバリアフリーについて
    • (1)車いす利用者等が時間制限なく円滑に利用できるハートフルゲート以外の経路を確保すること。そのために、現在実施が計画されている社会実験の評価を当事者参画の下に行うこと。
    • (2)府営公園の一層のバリアフリー化を進めること。その際には、改正後の都市公園ガイドラインの基準を踏まえ、障害当事者の意見を十分に聴く機会を持つこと。
      また、官民連携によるPFI方式の施設改修・建設、管理運営委託に伴い、バリアフリーが後退しないように、連携協議及び契約締結において官民各自の役割分担を明確にし、障害者が利用しやすい公園の整備を進めること。

教育・保育に関する要求項目

新型コロナウイルスが学校教育に影響を与えてから3年が過ぎました。この3年間、教室での授業もそうですが、修学旅行や運動会などの取り組みが縮小・中止されたり、昼ご飯の黙食など、すべての児童生徒の成長と学びに大きな影響が出ました。この状況で障害のある児童生徒が、以前と同じように「ともに学ぶ教育」を享受できていたか、大きな懸念があります。
学校現場が落ち着かない中、昨年4月末に文部科学省から「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」が出されました。支援学級籍の児童生徒は、半分以上を原学級ではなく、支援学級で授業を行うようという内容は、大阪の「ともに学ぶ教育」を大きく後退させるものです。
一方昨年8月に障害者権利条約の初の日本国審査が行われ、9月には総括所見が出されました。教育の勧告案は「分離教育を終わらせるために行動計画を策定すること」「文科省通知を撤回すること」など、インクルーシブ教育を進める上で、大きな後押しとなるものです。しかしその数日後文部科学大臣は「分離教育は継続する」「通知はむしろインクルーシブを推進するもの」など発言し、ここ数年文部科学省が強く推し進めてきた「障害の程度(授業の理解能力等)によって、しっかり分ける」ことを改めて国民に伝え、勧告案に従わないことを明らかにしました。
このような状況の中、大阪府教育庁の方向性が問われるところです。文科省通知については、昨年「支援学級に籍があるからということで、半分以上の時間数を支援学級で学ぶと決めるものではない」と明言しましたが、市町村によっては通知の影響が徐々に広がりつつあるところもあります。
特別支援学校の知的障害児童生徒数が増えることを理由に新築・増築が進められています。しかし「現状に応じて増設する」のではなく、分けられる弊害を基本に置き「ともに学び育つ大阪の教育」の推進に向け、地域の学校で充実した学びができるよう、環境を整えるのが、府教育庁の責務です。
府教育庁は2年前、市町村の小中学校へ通うための補助制度(市町村教委が通学支援制度を作った場合2分の1以内で費用を補助する)を策定しました。ともに学ぶ教育を進めるために、「障害のある児童生徒が地域の小中学校で学びにくいため、支援学校を選択せざるを得ない」現状を正面から見据え、教員配置について何らかの方策を探るなど、具体的な施策を進めていかなければなりません。
大阪府学校教育審議会答申等を踏まえ、今年3月に「府立高等学校再編整備方針」が出されました。西成・岬の2校が「多様な教育実践校」と改変され来年入試から生徒募集が始まります。中学校卒業後の進路が支援学校に集中するのは、高校入学が閉ざされているからですが、今回の改変は入試の壁を緩和するきっかけとするべきです。小中学校でともに学び一般高校への進学を希望しても、支援学校の選択を余儀なくされるのは、構造としての差別であり、「ともに学び・育つ」教育を掲げ続けてきた大阪府で解決すべき第一の課題と言えます。希望するすべての生徒が高校へ進むことができるよう、施策を抜本的に改めなければなりません。以上の認識に立ち、以下要求します。

  1. 就学における本人・保護者の意向尊重、および就学指導について
    障害児の就学にあたっては、地域で「ともに学び・ともに育つ」という原則に立ち、本人ならびに保護者の意向を最大限尊重した就学相談を実施するよう、また支援学級に在籍する場合「支援学級で学ぶ時間数を決める」等の条件付けを行わないよう府内各市町村教育委員会に徹底すること。これらについて府政だよりへの掲載など、府民全体に示すようすること。また引き続き就学通知を対象年齢児全員に対し年内に発出するよう、市町村教委に働きかけること。
  2. 務教育段階の支援等について(小中学校)
    • (1)大阪府独自の市町村教委に対する通学支援補助について、全自治体で活用するよう働きかけるとともに予算増に努めること。また通学支援についてはタクシー等だけでなく、ヘルパー等人的支援による制度が実現するよう、障害福祉とも連携して検討するよう働きかけること。
    • (2)学校教育法施行令22条の3に該当する、障害のある児童生徒が地域の学校で学ぶ場合、時間数に関係なく原学級(通常の学級)で学べるよう、大阪府教育庁として、教員の配置を行う市町村に対する新たな補助制度を策定すること。
  3. 医療的ケアが必要な児童・生徒について(小中学校)
    • (1)府内における医療的ケアが必要な児童生徒が、親の付添いなしで学校教育全ての活動(授業・校外活動・放課後活動等)に参加できているか、また多くの児童生徒が支援学級籍と思われるが、原学級での学びに、文科省通知が影響していないかどうかを調査すること。
    • (2)医療的ケアが必要な児童生徒が在籍する学校で、全職員対象の医療的ケア研修を行うよう市町村教委を指導すること。また緊急時・災害時への備えも含め、看護師以外の医療的ケア実施者を増やすために、教員・支援員等、学校関係者が「府教育庁が実施する第三号研修」に参加できるようにするなど、実施主体の拡充を行うこと。
  4. インクルーシブ教育を実体化するための、合理的配慮・環境整備について
    2年前医療的ケアが必要な生徒の合理的配慮について全府立高校へ文書で通知された。肢体不自由の生徒等、他の障害種別についても府内の全府立高校で、校外学習・宿泊を伴う修学旅行等含めたすべての教育活動において「共に学ぶ教育」が受けられるよう、合理的配慮の好事例を集約し府民に示すこと。
  5. 肥大化が続く特別支援学校に関する課題について
    • (1)学校の狭隘化等を理由に、知的障がい支援学校の新設や教室等の増築に一切歯止めがかからず進む一方であることは、「ともに学ぶ教育」と逆行している。これは「特別支援教育への理解が深まった」からではなく、地域の学校で学ぶ環境が整っていないことが理由であることを認識し、「知的障がい支援学校の新設・増設」について、撤回を含めた中長期的な見直しを行うこと。
    • (2)地域の小中学校在籍者を増やすために、「特別支援学校のセンター的機能」を充実させること。
    • (3)高校入学について、定員内不合格を出さない等を守りつつ、多くの障害をもつ生徒が、高校で学ぶことができる制度やシステムを検討し、高校で学ぶ障害生徒の拡大の方策を示すこと。
  6. 障害のある生徒の高校問題(入試・入学後)について
    • (1)合理的配慮の不提供は障害者差別であるという認識の下、障害のある生徒の受検に不利益が生じないよう最大限の配慮を行うこと。特に機器利用は積極的に認めるようにすること。
    • (2)府立高校入学後、看護師、学校生活支援員等が必要に応じて配置されるよう予算を拡充すること。特に支援員については、単価や登録について見直しをはかるよう検討すること。また在学生徒に対し、福祉制度の活用による支援、卒業後の進路選択の可能性を拡げる大学修学制度の情報提供などを行うこと。そのために障害福祉事業所等との連携を高校に働きかけること。
    • (3)校外学習や修学旅行などにおいて、障害があるが故に必要となる、リフト付きバスやヘルパー等については、本人・家族負担とせず、府教育庁として負担すること。
    • (4)医療的ケアだけでなく、府立高校通学に支援が必要な生徒への制度創設を検討すること。
  7. バリアフリー法改正による、小中高の整備について
    府立高校のエレベーター設置について、全校1基目の設置完了年度を明らかにすること。学校バリアフリー法改正の趣旨を踏まえ、毎年の新規設置数を増やすこと。またバリアフリートイレについても全校設置完了年度を示すこと。更に府内市町村小中学校のバリアフリー整備計画が、インクルーシブ教育を進めるという視点を踏まえ、全市町村で策定されるよう働きかけを行うこと。
  8. 大阪府教育庁の障害者の法定雇用率は未達成で、このままでは数年後さらに法定雇用率との差が広がる一方と思われる。雇用率2.5%の達成と今後の雇用率上昇に対する方策を具体的に示すこと。

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