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更新日:2023年9月20日

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大阪府保険医協会 要望書

要望受理日 令和5年8月10日(木曜日)
団体名 大阪府保険医協会
取りまとめ担当課 府政情報室 広報広聴課
表題 2023年 大阪府への要望書

要望書

2023年 大阪府への要望書

2023年8月10日
大阪府保険医協会

1.新興感染症対策の強化も含めた緊急時への備えの強化(発熱・検査センター設置等)、大阪府の職員体制、医療と公衆衛生分野の強化

  • (1)緊急時に府民の命と暮らしの救済に応えられる公衆衛生分野の体制強化を
    新型コロナウイルス感染症が5月8日に感染症法上5類の扱いとなって以降、再び感染者は増加に転じており、これまで以上の感染拡大も懸念されている。また、麻しんや結核など新型コロナ以外の感染症も増加傾向にあり、医療現場では緊張が高まっている。新型コロナに手が取られ、その他の感染症への対策がおろそかになっていなかったか検証し、トータルの感染症対策の構築を求める。再び保健所の業務逼迫で感染者への対応が遅れるという事態を生まないためにも、また、精神保健、母子保健など保健所・保健師の多岐にわたる役割・事業が滞ることの無いよう、保健所職員など公衆衛生分野の正規職員を増やすことを強く求める。
    新型コロナウイルス感染拡大では、都市型の感染症対策における基盤整備の貧弱さが明らかになった。今後の感染症の拡大に府としてどう備えるのか、具体的な計画を示すこと。
    また、2017年に大阪健康安全基盤研究所として一元化した府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所をもとに戻し、政令指定都市大阪市として公衆衛生行政に責任を持てる体制に再編することを強く求める。
  • (2)検査体制の強化と検疫をはじめ海外からの旅行者等への医療提供体制の強化を
    感染症対策の基本は検査であり、いち早く流行状況をつかむことが重要である。定点観測の上、検査が公費でなく保険適用となったことで、検査を控える患者が増え、より把握が困難になっている。神奈川県や京都府、滋賀県などで行われている下水での検査(下水サーベイランス)を実施するなど、いち早く流行状況をつかむ手立てを講じること。
    感染急拡大時に再び医療逼迫を起こさないために、公的な検査・発熱外来センターの設置がスムーズに行えるよう、今から関係機関・団体などと検討に入ること。
    大阪ではインバウンド客が急増している。新型コロナウイルスの新たな変異株やその他の感染症が持ち込まれる可能性も高まっていることから、検疫を強化すること。海外からの旅行者や留学生などが発症した場合の医療提供体制や療養場所を確保すること。
  • (3)入院医療体制の整備と地域医療構想の見直しを(急性期病床の維持)
    大阪府の新型コロナ対策について、医療現場の実情にあった対策と各医療圏の保健医療協議会で出されている「地域医療構想の見直し」を求める意見を反映させた施策を求める。急性期病床の削減を基本とする「地域医療構想」について国に見直しを求めるよう働きかけるとともに、大阪府においても、今回の新型コロナの病床逼迫、一般救急医療の逼迫を教訓にし、地域の医療実態にあった病床確保計画を強く求める。
    藤井寺市民病院が来年3月末で廃止される方針が示された。藤井寺市民病院は南河内の市町村災害医療センターになっており、新型コロナ患者の受け入れも行っていた。地域でこうした役割を担っていた公立病院が廃止されることについて、大阪府第8次医療計画との関わりで見解を示すこと。
  • (4)医療機関への財政支援
    物価高騰への支援策として大阪府も医療機関等に対し補助金を出しているが、わずか3万円と全国最低水準である。他の自治体の多くは10万から30万円の給付をしている(愛媛県では27万円、京都府・滋賀県でも10万円)。大阪府の補助額では物価高騰による負担増の水準に見合っていないことから、更なる支援を強く求める。

2.すべての人が安心して受けられる医療制度の構築

  • (1)子ども医療費助成制度の拡充を
    大阪府の助成基準は就学前まで・所得制限あり・患者負担ありと非常に低い内容である。一方、群馬県と鳥取県は、費用を県と市町村が折半し、県内すべての市町村で18歳以下の医療費について完全無償化(所得制限ナシ、患者負担ナシ、現物給付)の方針を固めた。また、国においても国保でのペナルティを廃止する方針を打ち出しており、子ども医療費助成制度の更なる拡充を行う素地は出来てきている。大阪府もせめて所得制限なしや対象年齢を小学校卒業までとするなど制度を拡充すること。
  • (2)妊産婦医療費助成制度の創設を
    昨年の出生数が80万人を下回るなど、少子化が近年加速している。大阪府では合計特殊出生率が2015年から再度減少傾向に転じ、全国ワースト10位に入っている。出生率の低下に、子どもを持つことに対する金銭的なハードルが高くなっていることが影響している可能性も指摘されており、子育て世代への支援は差し迫った課題である。そこで、医療の面からの少子化対策として、子ども医療費助成制度の拡充とともに妊娠期から産後の全ての疾病を対象とした妊産婦医療費助成制度の創設を求める。また、大阪府の児童虐待件数は全国に比べて特に多く、その6割が実母によるものである。妊娠期に虐待の傾向をつかむケースも一定あることから、虐待防止の観点からも妊産婦医療費助成制度を評価するため、大阪府母子保健運営協議会等で調査・研究することを強く求める。
  • (3)75歳以上の患者負担軽減のために老人医療費助成の再構築を
    昨年10月より75歳以上の医療費が2割化された。全国保険医団体連合会が実施したアンケート調査では、「経済的理由による受診控え」が「あった」との回答が、75歳以上で医療費窓口負担2割の人で17.2%あった。昨年10月に強行された「2割化」の影響による「受診控え」がすでに起きていると考えられる。大阪府は2021年3月をもって老人医療費助成制度を廃止したが、大阪府の高齢者の命と健康を守る上で、高齢者を広く対象にした助成制度の再構築を強く求める。
  • (4)「重度障がい者医療制度」の拡充を
    重度障がい者医療費助成制度を見直し、難病患者・中軽度の障がい者にも対象を広げること。また、患者負担についても、2018年の制度改定以前の内容(1医療機関上限1000円、薬局での負担なし)に戻すこと。
  • (5)生活困窮者が速やかに医療機関に受診できる施策の強化を
    大阪府で独自に府民の暮らしに関する調査を実施するなどして実態をつかみ、生活困窮者への支援を強化することを強く求めるとともに、失業などで無保険状態となっている方が医療を受けられるような対策を求める。また無保険状態となっている方が医療を受けられるように、無料低額診療を実施している医療機関を積極的に広報するなどの対策を取るとともに、無料低額診療事業を保険調剤薬局へも適用するように国に強く求めること。大阪府においても府内の薬局で調剤処方された場合、調剤費の全部または一部を府が助成することを検討すること。
  • (6)国民健康保険料の軽減を
    コロナ禍・物価高騰の影響を受けている自営業者・フリーランス・非正規労働者はすべて国民健康保険(国保)に加入しており、暮らしが逼迫している方にとって、国保料引き下げは最も効果的なコロナ対策である。統一国保料を強行するのでなく、市町村の裁量に応じた軽減対策を認めること。また、多くの市町村が単年度黒字を出しながら次年度に繰り入れず基金に積み上げ、保険料の値上げを行なうという事態となっている。大阪府国保統一化により市町村の国保が重大な影響を受けていることから、2024年度の完全統一を見直すこと。
  • (7)政府に対し、健康保険証廃止方針の撤回要求を
    健康保険被保険者証等を廃止してマイナンバーカードに一本化する「マイナンバー法一部改正法」が6月2日成立した。政府は2024年秋に健康保険証を廃止する方針だが、5月中旬からマイナンバーカードへの別人との紐づけや誤登録の事案が次々と報告・報道され、国民のマイナンバーカードへの信頼は低下し、不安が増大している。当会では、保険資格情報の登録遅れや誤登録により正しい保険資格確認が医療機関で出来なかった場合、患者さんに10割負担を求める実質の「無保険扱い」となることから、健康保険証の廃止には一貫して反対してきた。大阪府としても、府民の医療を受ける権利を守る立場から、政府に対し、健康保険証廃止方針の撤回を強く要求すること。
    また、マイナンバーカードの申請・発行手続きや国民健康保険の加入情報の入力等を行う府内市町村に対し、府民の個人情報を守るために府として誤入力の防止や情報漏洩対策の強化などの支援を行うこと。

3.安心して住み続けられる大阪府の実現を目指して

  • (1)介護保険サービスの改善
    コロナ禍で介護人材の不足問題は顕著に現れている。介護人材の確保は喫緊の課題である。人材不足を解消し、介護施設・事業所の労働条件改善のために、府独自の処遇改善助成金を制度化し、国に対し、国庫負担方式による処遇改善制度を求めること。また、介護保険から外された要支援者の訪問介護・通所介護などの市町村総合事業への移管について、サービスを必要とする方が今まで通りサービスが受けられるように指導するとともに財政支援を行なうこと。また、介護サービスからの「卒業」を迫るなどサービス低下を招く強引な運営については強く指導すること。
  • (2)認知症対策への公的援助の拡充を
    大阪府の地域医療計画を作成するにあたって、今後単身の認知症世帯が増えることが見通されている。府内の各地域で認知症の方やその家族が気軽に相談や情報交換等を通じての孤立予防などのために認知症カフェ開設の取り組みが広がっている。この取り組みをさらに進めるために、府独自で認知症カフェへの補助金を創設することとあわせて、各市町村の活用状況について把握し、活用が遅れている自治体に対して活用を促す対応を強化すること。
  • (3)直ちにカジノ誘致を撤回すること
    大阪の「区域整備計画」は国に認定されたが、同時に改善を求める7つの条件が付された。その際に公表された審査委員会の評価点は、合格ラインすれすれである上に、評価項目【14】カジノ施設のデザイン、【17】観光への効果、【23】地域との良好な関係構築のための取組について、合格ラインである60ポイントを下回っている。国の評価結果を府はどのように受け止めているか、府としての評価を示すこと。
    また、【25】依存症対策等についても得点率60%と低評価で、府が目指している「ギャンブル等依存症対策のトップランナー」には程遠い結果である。そもそも既存のパチンコなどのギャンブルで解決できていないギャンブル依存症という疾患に対して、新たな原因を作り大阪府が依存症者を出すことを前提にしたカジノIRを誘致することに、府民のいのちと健康を守る医師の団体として、認めるわけにはいかない。カジノIR誘致を撤回すること。
    また、大阪・関西万博のパビリオン建設が遅れており、2025年の開催に間に合わないのではないかとの報道も出ている。開催を延期した場合も含め、大阪・関西万博に対する府の財政負担を明らかにすること。
  • (4)災害対策
    医療従事者の6割は女性であり、災害拠点病院や被災者の救護にあたる医療機関で働く医療従事者も被災している場合、保育や介護への対応は必須である。震災時に医療機関の人員を確保し、医療現場で働きつづける体制整備(保育や介護)を進めること。
    WTCの大阪府庁舎へなど災害時のリスクが高い場所にある、災害拠点となる施設の再考を進めること。
    震災時に水道管の破断などが起きないよう、水道管の耐震化を早急に進めること。また、災害等の非常時に公的責任において水が守られるよう、水道事業を民営化する動きに反対すること。
    災害時に適切なケア・支援などが行えるよう地域の高齢者や医療的ケアが必要な人の状況の把握を行うこと。
  • (5)公害対策
    2020年から2021年の大阪府の調査で、摂津市一津屋地域の地下水から2万から3万ng/1のPFOAが検出されており、全国最大のPFOA汚染が広がっている。周辺地域では土壌汚染も広がっており、地域住民の血液からは高濃度のPFOAが検出され健康被害が懸念されている。大阪府として地域住民の健康被害に関する調査を行うこと。

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