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きょういくニュース 第272号(2024年12月) 3ページ
特色ある学校づくり「大阪府立豊中高等学校能勢分校」
大阪府立豊中高等学校能勢分校
所在地:大阪府豊能郡能勢町上田尻580
電話番号:072-737-0666
学校ホームページ:https://nose-br.toyonaka-hs.ed.jp/
学校概要
平成30年4月に、地域の想いや期待のもと、66年の歴史を持つ旧能勢高等学校を再編整備し誕生したのが本校です。グローバルとローカルの両方のセンスを持ち合わせ、広い視野で考えながら地域の課題に向き合える人材、すなわち「グローカル人材」の育成に資する取組みが本校の特徴です。
令和2年度には、文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」事業特例校に認定。また令和5年度には、内閣府「高校生の地域留学推進のための高校魅力化支援事業(地域高2留学)」採択校に指定。さらに令和6年度には、文部科学省「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」採択校に指定されるなど、国の事業の後押しも受けながら、ユニークな教育活動に取り組んでいます。
全日制・総合学科の高校である本校は、「探究コース」「食農流通コース」「対人支援コース」「里山起業コース」の4つの専門コースを設置し、能勢・豊能の地域資源を最大限に活かした“能勢分校だからできる教育活動”をすすめています。
教育目標
スクール・ミッションは「能勢・豊能の地において、学校づくりとまちづくりを地域とともに実践し、社会の変化を追い風と捉えながら、新たな価値を生み出す人物を育成する」。本校の教育活動を通じて、以下の3つの強みを持った生徒を育成することを目標としています。
- 個人として自律して、失敗を恐れず、理想に挑戦できる生徒
- 多様性を尊重し、誰に対しても思いやりのある行動をし、他者とともに協働活動ができる生徒
- 主体性と大局観を持って、魅力ある地域や未来社会を創造できる生徒
(学校案内)
(スクールミッション、スクールポリシー)
能勢分校ならではの教育活動・教育環境1「能勢・豊能地域 課題探究」
本校の中でも最も特徴的な教育活動の一つが「能勢・豊能地域 課題探究」です。
能勢・豊能地区における地域課題に焦点を絞り、“地域とともに”“地域のために”できる探究活動が本校の課題探究活動です。各系列・学習群の学びの中から自ら課題を発見し、課題の本質を掘り下げ、チームで協力しながら高校生の視点で答えを導出します。
1年次の授業「産業社会と人間(通年・2単位)」では、地域課題の基礎・基本を外部講師の講演やワークショップを交えながら学んでいきます。
2年次の授業「課題探究GSⅠ(後期・1単位)」では、地域課題に対する問いを深め、4つのコースの専門性を踏まえた生徒の興味・関心領域に応じたテーマ設定を行います。
3年次の授業「課題探究GSⅡ(通年・2単位)」では、2年次に設定したテーマに基づきグループ活動を中心に課題探究を進めていきます。地域の協力者とともに探究活動を進めることを要件とし、より実現可能性のある教育活動になることを重視しています。
(活動の流れ)
文献学習のみならず、ヒアリングやアンケート調査の実施等を生徒自ら実施し、行政や地域の団体と協働しながら、地域課題の解決に挑戦します。この挑戦を通じて、社会に出てからも必要となる、課題発見力やプレゼンテーション能力、仲間と共に物事を進める力の修得をめざします。
また、各グループの探究活動の成果は、「課題探究GS最終発表会」で発表します。この発表会は、生徒や保護者のみならず、地域住民にもご参加いただく一般公開型にて開催します。地域の皆様からいただいた貴重な意見や質問は、発表した生徒たちにとって新たな気づきや学びにつながります。
(能勢町役場職員へのヒアリング)
(一般公開型 最終発表会)
能勢分校ならではの教育活動・教育環境2「多様な価値観を学ぶ機会の提供)」
<海外から来る>
本校は、地域のホストファミリーの皆さんにご協力をいただきながら、海外からの留学生を受入れています。これまでの受入れ国は、アメリカ・タイ・マレーシア・カンボジア・スペイン・モンゴル・オーストラリア・ドイツなど地域によらない世界のさまざまな国です。
令和6年度は、のべ3人の海外留学生が本校で学びました。全校生徒が77人の学校ですので、海外留学生比率は約4%。「クラスメイトに留学生がいる」と言えるくらい海外からの留学生が身近にいる環境で学ぶことができます。
海外からの留学生と学校生活をともにすることを通じて、グローバルな感性や多様な価値観を自然と身につけることができます。さまざまな国から留学生が集い、ともに学ぶユニークな学び舎が本校です。
<海外に行く>
令和6年度から、2年次の夏休みに行う(※)フィリピン海外スタディーツアーを始めました。このスタディーツアーの目的は語学の習得ではなく、持続可能なまちづくりなど、能勢・豊能の地域課題解決につながる海外事例を学習することです。
※・この取組みは、豊能町にある公益財団法人オイスカ 関西研修センターと連携した本校オリジナルのスタディーツアーです。
・地域電力会社である(株)能勢・豊能まちづくりからの寄付金を活用し、生徒が負担する費用の一部は、地域電力会社からの助成金を充当しています。
場所はルソン島北部のアブラ州。能勢町よりもさらに自然環境が豊かな場所で約一週間過ごします。学習内容は、国立アブラ大学の大学生や附属高校の生徒交流、州知事・市長の表敬訪問、マングローブの植林活動やはげ山の再生に向けた植林活動、世界遺産都市の観光など充実のプログラムです。
(留学生との交流)
(国立アブラ大学での交流)
(マングローブの植林活動)
スタディーツアーから帰国したのち、(株)能勢・豊能まちづくりが主催されている「能勢・豊能みらい会議」の場で、地域住民のみなさまに対して、本スタディーツアーで学んだことを報告・発表しました。自分たちが学んできたことを地域に還元する貴重な機会になりました。
(能勢・豊能みらい会議での報告・発表)
能勢分校ならではの教育活動・教育環境3「甲子園球場1.4個分の附属農場」
本校は、甲子園球場約1.4個分(約5.3ha)の附属農場を保有しており、2年次から食農流通コースを選択した生徒はもちろんのこと、1年次生も「農業と環境」という授業で全員が農場で学ぶ機会を設けています。
附属農場では、能勢の特産品である「銀寄(ぎんよせ)」グリをはじめ、ブドウ、モモなどの果樹、野菜、黒米などを栽培しており、養蜂・養鶏も行っています。果樹は複数の品種を扱っており、ブドウに関しては10品種以上(シャインマスカット・マスカットオブアレクサンドリア・甲斐路・ベーリーAなど)を栽培しています。また、動物を扱っている府立高校は農芸高校と本校のみ。動物の取組みに興味があって本校に進学する生徒も少なくありません。養蜂を授業で扱っている高校は全国でも珍しく、府外からも視察にお越しになる方が多くいらっしゃいます。
これらの農場生産物を用いた加工品の販売や、生産と加工品の販売実習も授業で取り組んでおり、栽培・飼育から加工、商品開発、販売までといった農業の6次産業化について実践的・体系的に学ぶ場となっています。地域の農家さんや企業との連携も積極的に行っております。
(黒米の稲刈りの様子)
(大丸梅田店での販売実習)
(養蜂の実習)
最近は、ドローンを活用した教育活動にも力を入れています。本校がある能勢・豊能地域はドローンの規制が比較的厳しくないため、地域在住のドローン指導者と連携・協働しながら、本校だからできる地域特性を生かした教育活動として展開しています。ドローンなどのスマート農業を通じて、地域社会に貢献できる人材や地域課題の解決につながる人材を育成することを目標に取り組んでいます。
(地域のドローン指導者によるレクチャー)
さいごに
本校のキャッチコピーは「世界が教科書。教室は、町ぜんぶ」。全校生徒77人の超小規模校ですが、能勢・豊能の地域資源や少人数のメリットを生かした“能勢分校だからできる教育活動”に日々取り組んでいます。
(少人数授業の様子)
(教育振興室 高等学校課)