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全国福祉保育労働組合大阪地方本部 要望書
要望書受理日 |
令和6年10月16日 |
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団体名 | 全国福祉保育労働組合大阪地方本部 |
取りまとめ担当課 | 福祉部福祉総務課 |
表題 | 2025年度大阪府予算等要望 |
要望書
2024年10月16日
大阪府知事 吉村 洋文 殿
全国福祉保育労働組合大阪地方本部
執行委員長
2025年度大阪府予算等要望
日頃より、府民の福祉と暮らしの拡充に、ご尽力されていることに敬意を表します。
私たち福祉労働者は、その仕事をとおして利用者・家族のいのちと暮らしを支えています。自然災害やコロナ禍であっても、福祉を必要としている利用者・家族の人権を守る福祉実践をおこない、憲法25条の生存権や憲法13条の幸福の追求権など基本的人権を保障するにない手として働き社会を支えています。しかし、福祉労働者自身が過酷な労働と低賃金のなかで、心身ともに疲弊し生活することが困難な状況では、働き続けることすらできず、利用者の人権を守ることはできません。また、福祉労働者の役割と重要性が社会生活を維持するためにも、不可欠であることが明らかになってにもかかわらず、国や大阪府などによる抜本的な手立てはうたれていません。
これまで国による処遇改善策が実施されましたが、対象となる事業や職員などが限定され、他産業ではベースアップなど一定の賃上げがされましたが、福祉職場では一部の職場で低額のベースアップがあったものの、ほとんどが昇給にとどまり、職場によっては一時金を削減する厳しい状況も生まれています。
こうした福祉職場における賃金・労働条件の改善や職員増を求める声は、労働組合だけにとどまらず、多数の福祉業界団体から以前より増して高まっています。引きつづく物価高騰への対応や最賃引き上げに対応する公定価格などの制度設計をはじめ、賃金引き上げのための財源確保を求める声が福祉職場全体にひろがっています。
いまこそ、国と大阪府をはじめとする地方自治体が連携して、福祉人材確保対策をすすめ、福祉労働者の他産業への流出に歯止めにかけ、人手不足を解消させることを求めます。
大阪府におかれましては、福祉職場の厳しい現場実態に直視し、無駄なカジノ・統合リゾート(IR)開発やガス爆発など危険な大阪・関西万博など大型公共開発に予算を使うのではなく、新型コロナ感染症や災害発生時の対策など府民のいのちや暮らし、福祉を守り拡充する予算の増額が優先されるべきです。
今こそ、地方自治法に明記されている「住民の福祉の増進」をもとづき、新型コロナ感染症対策、社会福祉制度の拡充や職員の大幅増員・処遇改善を求め、府民のいのちと暮らしが守られるよう、以下の通り要望します。
【全体項目】
1.国に対し以下の項目について要望を上げ、予算措置を求めること。
- (1)新型コロナウイルスの感染者対応を行う福祉職場や職員の負担は、これまでと変わらず続いており、すべての福祉職場に対する特例的な財政支援を再開すること。
- (2)介護・障害事業所の利用者については、新型コロナウイルス感染者は原則入院とするとともに、対応できる病院等での病床数を増やすなど、医療体制を強化・確保すること。
- (3)感染症のまん延や自然災害発生時にも業務継続をするための計画策定が義務づけられたが、いまの職員配置基準では実行するのは不可能です。業務継続を保障し利用者の安心・安全を確保し豊かなくらしができるよう、以下の福祉人材確保対策をおこなうこと。
- 1)職員配置基準以上に職員が配置されている実態に即し、公定価格や報酬単価を引き上げること。また、正規雇用を原則とし職員配置基準を引き上げ、常勤換算方式は撤廃すること。
- 2)処遇改善支援補助金事業は、支給対象は限定せず、すべての事業や職種を拡充し、恒常的に実施すること。また、全額交付金とし利用料負担はなくすこと。
- 3)処遇改善支援補助金事業は、全産業平均月額(8)万円の格差を是正すること。また、支給方法は全職員の基本給を一律にベースアップに充てることを義務化すること。
- 4)労働基準法や労働関連諸法令が遵守できるよう、抜本的に職員配置を引き上げる改善をおこなうこと。
- 5)感染症や災害発生時に利用者のいのちと安全が守れるよう、どの時間帯においても、福祉職場の「1人配置」を解消し、複数以上の人員配置をおこなうこと。
- (4)株式会社を含め、すべての福祉事業をおこなう事業所に対する実地監査をおこない、会計の不正や労働基準法などの法違反がないか、監査を強化すること。また、児童福祉施設の実地監査の規制緩和はしないこと。
- (5)社会福祉施設職員等退職手当共済制度を福祉・保育現場で働くすべての職員へ保障できるよう、公費負担をおこなうこと。
2.大阪府の福祉拡充をすすめ、府内自治体と連携し独自施策をおこなうこと。
- (1)福祉職場の人手不足を解消し、府内自治体と連携し、福祉職員の確保と定着が図れるよう、以下の対策をおこなうこと。
- 1)感染症拡大や災害発生時等のいかなる状況下でも、豊かな利用者の暮らしを保障するため、正規雇用で専門性のある職員の増員をはかること。
- 2)府として、すべての福祉労働者に対して社会的責務にふさわしい賃金水準を保障するため、公私間格差是正補助金制度を復活させるなど、他産業との月額約8万円の格差を解消すること。また、正規職員と非正規労働者の差別待遇・不合理な格差を是正するため財政措置等の支援策をおこなうこと。
- 3)利用者の安全が確保され、法令を遵守するためにも福祉職場の「1人勤務」を解消し複数以上の職員配置ができるよう職員加配をおこなうこと。
- 4)産休等代替職員費補助金の補助金基準額を増額し、その代替対象期間は産休については、育休も含み1年以上とすること。また、病休についても1年間以上とし、介護休業も補助金の対象とすること。
- 5)すべての福祉職場において宿舎借り上げ支援事業を、府独自でおこなうこと。また、年齢や職種に関係なく、福祉職場で働くすべての職員を対象とすること。
- (2)物価高騰等への対策
福祉職場や福祉事業所などに対して、水光熱費や食材、燃料費など含む物価高騰で影響をうけた支出増加分を、大阪府として各自治体と連携し恒常的な公費負担をおこなうこと。 - (3)新型コロナウイルスをはじめとする感染症拡大防止対策
- 1)新型コロナウイルス感染症などの対応を行う福祉職場や職員の負担は、これまでと変わらず続いており、すべての福祉職場に対する特例的な財政支援を府独自でおこなうこと。
- 2)新型コロナウイルスだけでなく、福祉職場や福祉事業所などの特殊性を考慮し、感染症予防・拡大防止に伴う費用は全額、府独自をおこなうこと。
- 3)コロナ禍により明らかとなった福祉事業の社会的役割を踏まえ、その労働にふさわしい恒常的な手当を支給すること。また、実際に感染者対応をする職員への手当として特別勤務手当(仮称)を創設し、府として財源確保をおこなうこと。
- 4)災害や感染症のまん延などに対応できるように、病床削減・転換は中止し、医療体制の充実と医療スタッフは確保をおこなうこと。
- 5)自宅や福祉施設での経過観察を診療・検査医療機関まかせにせず、保健所が責任をもつこと。また、保健所を増設し、保健師など保健所業務にたずさわる職員を増員すること。民間委託による増員はおこなわないこと。
- (4)以下の指導監査を強化すること。
- 1)株式会社を含む福祉関連事業をおこなう事業者で労働関連諸法令が遵守されるよう、労働部局と連携して指導を徹底強化すること。また、府職員を増員するなど体制強化をはかり、市町村とも連携し指導監査の水準を向上させること。
- 2)労働時間管理の使用者責任を徹底させるとともに、タイムカードの設置を指導すること。また、大阪府が把握している各法人・施設における労働時間管理の方法を明らかにすること。
- (5)介護・障害職場の職員への退職金を保障するため、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の都道府県公費負担分を大阪府として補助すること。また、大阪府全体にかかる費用のシミュレートをし、その状況を開示すること。
- (6)災害・感染症発生時にも利用者と職員の安全が守れ、事業を継続できるよう、以下の対策をおこなうこと。
- 1)感染症の発生や地震・台風等の災害が頻発していることを踏まえ、府内福祉事業所の安全点検を実施するとともに、安全対策の支援策をおこなうこと。また、業務継続計画(BCP)が具体的に実施でき、安心・安全の福祉職場を実現するための職員加配補助制度を創設すること。
- 2)感染症や災害等で利用者の安全を確保するために休園・休所した場合の減収について補填をおこなうこと。
- 3)自然災害時に福祉施設が福祉避難所として機能するよう、拠点施設の整備と担当職員の配置をおこなうこと。
- (7)感染症対策や人材確保対策など市町村まかせにするのではなく、「市町村を包括する広域の地方公共団体」としての府の公的責務を果たすとともに、連携を強化し市町村間格差の是正、それに伴う財政措置をおこなうこと。
- (8)利用料の軽減を行い、負担の心配をせず必要な福祉施策・福祉施設を利用できるようにすること。
- (9)福祉医療費助成制度を拡充し、利用者負担の軽減と対象の拡大を図ること。また、廃止した老人医療助成制度を復活させること。
- (10)カジノ・IRに伴う大型公共開発に予算を使うのではなく、府民への福祉・暮らしへ最優先に使うこと。また、カジノ(賭博場)誘致計画は撤回すること。
- (11)災害時など避難計画も策定されず、ガス爆発など危険な万博は中止すること。
【保育関連施設】
- 1)配置基準を0歳児1対2、1歳児1対3、2歳児1対5、3歳児1対10、4・5歳児1対15に府の責任で拡充すること。また、面積基準を府の責任で拡充すること。
- 2)児童福祉法24条を遵守できない「子ども誰でも通園制度」ではなく、現行の一時預かり事業を府の責任で拡充して子育て支援を行うこと。
- 3)障害児や増加傾向にある配慮の必要な児童に適切な支援が行えるように職員加配加算を府独自に行うこと。
- 4)府の保育予算で前年度から拡充したことは何か説明すること。
- 5)0歳児の定員割れが進む中、安定した運営をするために、府として補助すること。
- 6)様々な感染症が流行する現場で、感染対策に努めていけるように補助金を出すこと。また、全ての保育施設において、病気や怪我の処置や衛生用品の準備が行えるよう、そして、看護師を単独で1日加配出来るよう独自策を講じること。
- 7)複雑化するアレルギー児により安全な対応を行うために職員加配加算(保育士、調理員)を行い、物価高騰が続く中で豊かな給食を提供するために食材費に補助金を出すこと。
- 8)栄養士や調理員の急病に際して、給食調理現場に保育士がはいらなくても対応出来るよう、最低の配置基準を2名とし、乳幼児20名ごとに1名の加配をするなどの独自策を講じること。
【生活保護・救護施設関連施設】
- 府民の命と暮らしを守るのはもとより、日本における「健康で文化的な最低限度の生活」を大阪府が牽引するべく、生活保護水準の向上に向け、府独自の加算などを積極的に推進すること。
- 府民の命と暮らし、文化的水準を守るため、生活保護制度を様々な方法で周知し、制度を必要とされる方に積極的に制度活用を勧めるとともに、府民全体に対し生活保護制度の利用に対する抵抗感を取り除くような広報活動をおこなうこと。
- 何十年と改善が為されていない救護施設の職員配置基準の引き上げを、国に対して要請すること。
- 受診付添い件数の多い救護施設に対して、府独自に看護師加算を増額すること。
- 新型コロナウイルス対応・対策のために検査キットなど必要な物品を現物支給すること。また、そのために増加した経費を補填すべく、府独自に相応の加算をおこなうこと。
- 近年の急激な水光熱費の高騰、物価高騰による経費増加を府として補填するなど何らかの対応をおこなうこと。
- 地域の避難施設として、防災グッズを常備することに対する補助をおこなうこと。
【障害関連施策】
- 1)社会福祉現場では、人材不足が深刻化しています。平成29年策定の人材確保戦略(令和5年更新)においても「魅力ある職場作り」を進めるとなっていますが、7年経っても現場の人員不足は解消されていません。大阪府として人材確保戦略がどこまで実効性のあるものと認識されているのか明らかにしてください。
- 2)4月に報酬改定が行われましたが、送迎時間が利用時間にカウントされていません。特に重度の障がい者は、事業所を利用するためには送迎は欠かせないものです。送迎時間中も安全に通所するために車内での障害特性をふまえた専門的な支援も必要であり、利用時間に含まれるべきであると捉えていますが、大阪府の認識をお聞かせください。また、送迎車両のガソリン代も高騰しており、施設経営にも影響を及ぼしています。大阪府独自のガソリン代の補助制度を創設してください。
- 3)障がい者の施設入所待機者数は、大阪府で1000人を超えています。家族の高齢化が進み、老障介護と言われる中で、家族介護を前提とした地域生活だけでは限界があります。圧倒的に不足している暮らしの場を増やしていくことが急務で、一方で既存の入所施設やグループホームでは人材不足により、待機者を受け止めきれない現状があります。実効性のある人材確保施策を示してください。
【児童養護施設関連施策】
1 整備計画について
- (1)引き続き被虐待児童数が多い中、支援を要する児童の養育を保障するためにも、児童養護施設、乳児院の本体定員については、削減数を減らし、一定数の定員を維持すること。
- (2)里親委託の推進については、対象児童の状態を十分に把握し、里親宅への支援体制も確保したうえで慎重に調整にあたること。
- (3)支援を要する児童に迅速に対応できるよう、一時保護の場を拡充するとともに、職員の専門性を確保するために、体制の強化等支援策を行うこと。
- (4)制度の複雑化、入所児童の変化に即応するために、個別・専門業務のスペースの確保、面接室等の拡充など、施設整備のための支援策を行うこと。
2 職員の増員、支援の強化について
- (1)乳児院の夜勤体制を強化するため、独自に配置加算制度を創設すること。また、2歳を超える児童の増加や障害児が生活していることを踏まえ、職員の増員等体制強化のための支援を行うこと。
- (2)医療的ケアを強化するために、看護師、心理療法担当職員等専門職員の増員を図ること。また精神科医の支援を受けられるよう、財政支援を行うこと。
- (3)慢性的な人手不足にある本体施設職員の増員を図ること
3 入所児童等の生活支援の強化について
- (1)児童養護施設の入所児童の自立にむけて、施設退所後の新たな住居費用の支援を行うこと。
- (2)就職時の備品購入、生活費等のための支度金を支給すること。
- (3)大学等進学する入所児童に対し、保護者からの経済的支援が受けられない児童に対し、入学に必要な経費を支度金として支給すること。また、希望するすべての入所児童が高校等に進学できるよう、学校の種別に関わらず(通信制など含む)授業料だけでなく入学金等必要な費用を補助すること。
- (4)2歳を超える入所児童が増えている乳児院の現状を踏まえ、施設の整備や発達保障の充実等にかかる費用について、財政支援を行うこと。
- (5)依然児童虐待の相談件数が多い状況が続く、深刻な事態をふまえ、市町村と連携して虐待防止策のいっそうの強化を図ること。
【高齢・介護関連施設】
1.共通要望
- (1)介護職場の人手不足解消をめざし、低賃金の引き上げと介護職員が気を遣うことなく、休暇を取りやすくできるよう職員の増員をおこなうなど、健康で文化的な生活が送れるようにすること。
- (2)災害や感染症の拡大による利用自粛等の減収や、休業せざるを得ない場合の収入減については、財源の補填を大阪府として保障すること。
- (3)あらゆる感染症の蔓延や災害時においても、施設・事業所の業務が継続できるよう、加配の職員を配置するなど特別の対策を行うこと。
- (4)あらゆる感染症による消毒等の業務過重を軽減するための職員の増員等のための財政支援を講じること。
- (5)高い感染リスクを抱え、日々業務をこなしている職員に特別手当を支給すること。
- (6)市町村と連携してすべての高齢・介護事業所の利用者・職員に定期的にPCR検査を実施すること。また、新型コロナウイルス感染症が疑われた場合は、すべての高齢・介護事業所の利用者・職員は病院に通院し、無料でPCR検査ができるよう補助すること。
- (7)市町村と連携してすべての高齢・介護事業所の利用者・職員に新型コロナウイルスのワクチンを優先接種できるようにすること。
- (8)市町村と連携して災害や感染症の発生時に、高齢者が避難、隔離できる福祉避難所を市町村ごとに整備すること。
- (9)ICTの導入・活用については、業務の省力化や職員の負担軽減、利用者ケアの向上を目的に実施されるべきであり、ICTの活用を根拠にした職員配置基準の緩和はおこなわないよう国に求めること。
- (10)介護保険制度における利用料の1割自己負担を撤廃するよう国に求めること。また、国が撤廃しない場合は大阪府として臨時で補助制度をつくること。
2.個別要望
(1)特養関係
- 1)安心・安全な介護を保障するため、夜勤の介護職員体制をユニット毎で2人夜勤以上になるよう、加配職員を配置すること。
- 2)利用料等の負担を軽減するための支援策を講じること。
(2)通所・訪問介護事業関係
- 1)安心して通所介護が受けられるよう、介護職員の増員と施設の環境整備のための財政支援策を講じること。
- 2)訪問介護員の人材難の背景にある低い賃金を引き上げるため、財政支援を講じること。また、台風などの災害時でも、命をつなぐ支援をおこなう訪問介護員に特別手当を支給すること。
- 3)訪問介護における感染対策を徹底するために、消毒等の業務に対する財政支援をおこなうとともに、マスク、消毒液、使い捨て手袋等の必要な衛生資材を定期的に配布すること。
(3)高齢福祉制度関係他
- 1)養護老人ホームにおいて、複数夜勤となるように支援策を講じること。
- 2)盲老人ホームの利用者が同行援護を利用して医療機関への受診・通院が安定的に保障できるよう、府内自治体と連携して強化を図ること。
以上