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部落解放大阪府民共闘会議、同教育部会 要望書(2)
(1) (2) (3) (4) ※4ページに分割して掲載しています。
要望書
1.在日朝鮮人教育
1.【外国人教育研究会への支援】24年2月策定の大阪府「在日外国人に関わる教育における指導の指針」をふまえるとともに、これまでの在日朝鮮人教育を後退させることなくすすめること。また、大阪府人権教育研究連合協議会への人的配置の拡充および「外国人教育研究会」未設置の市町村に対し、組織整備を求めること。
2.【指導専任】「教諭(指導専任)」の在日外国人教員を「教諭」として任用すること。また、採用および採用後の実態を明らかにすること。管理職任用資格等その権利を完全に保障すること。さらに、海外日本人学校への派遣教員選考資格から国籍条項を撤廃するよう国にはたらきかけること。
3.【管理職研修】在日外国人教職員の採用が続くなか、人権研修等をとおして、とりわけ管理職、指導的立場にある教職員の知識や人権意識の高揚に努めること。また、民族教育のとりくみをすすめる観点から管理職研修、教職員研修をよりいっそう充実させること。
4.【初任者研修の充実】新規採用による教職員の入れ替わりがすすんでいる現状に鑑み、これまでの大阪府内の在日朝鮮人教育をまとめた資料集を作成し、引き続き配布するとともに、在日朝鮮人教育の研修の充実を初任者研修等でさらにはかること。また、政令市、中核市、豊能3市2町に対しても、情報提供をおこなうこと。
5.【韓国修学旅行】府立高校の韓国への修学旅行などに対して教育課程の編成権は学校にあることを尊重し、大阪府教育庁として十分な支援をおこなうこと。
6.【民族講師】在日朝鮮人教育の発展や継承の観点から、担い手の確保と人材育成を充実させるために、以下のことにとりくむこと。
(1)教科によらない教員採用選考テストを実施し、1948年「覚え書き」にもとづく、府費負担の民族講師を教員として採用すること。
(2)給与負担等が移譲された政令市においても民族講師を配置するよう働きかけること。
(3)大阪府全体として民族教育をすすめていけるよう人材育成にむけた具体的な策を講じること。
7.【民族学級】在日朝鮮人の子どもたちやルーツをもつ子どもたちが多い大阪では、民族教育は保障されるべき重要な教育であり、それを担っているのが民族学級である。この場をとおして、民族的アイデンティティと自尊感情を育むとともに、学校全体への多民族・多文化共生教育を発信する存在となっている。異なる文化・習慣・価値観をもった子どもたちが、互いのちがいを認め合い、互いのアイデンティティを尊重する関係を培うため、市町村への民族学級等の支援をおこなうなど、多民族・多文化共生教育をすすめること。
8.【政治教育】「特別の教科道徳」において、主権者教育や参政権がとりあげられている。政治的教養を育む教育については、外国籍の子どもを排除しない指導となるように、大阪府教育庁作成のガイドライン等の周知および有効な活用を促すこと。また、外国籍の子どもたちの参政権の国籍国でのとりあつかいについても教職員に周知し、適切に指導できるように研修すること。
9.【加配】在日外国人多数在籍校および民族学級設置校への教員加配を国籍にかかわらず子どもたちの実態に即しておこなうこと。配置後は、加配教員が働きやすい環境の整備につとめるよう市町村教育委員会への指導・助言をおこなうこと。また、高校にも同様の配置を拡充すること。
10.【高校予算、指導員制度】高校における在日朝鮮人教育のとりくみや交流会等に対する予算措置および民族講師の派遣など指導員制度を整備・拡充すること。学校支援人材バンクのさらなる充実と整備をはかるとともに、登録者の研修を充実すること。
11.【朝鮮語教員・NKT】高校における朝鮮語の教員を現場要求にもとづき採用すること。また、大阪府教育庁として韓国・朝鮮語指導員(NKT)の継続・増員配置をすること。
12.【差別事象の実態把握】人種や民族、国籍に関する配慮を欠く不快・不適切な言動(レイシャルハラスメント)が生起している。教育現場や就職・進学における差別事象の実態把握を徹底するとともに、解決にむけたとりくみや防止するための施策、研修を充実すること。また、DVD「在日外国人教育のための資料集違いを認め合い共に生きるために」を周知すること。
13.【民族学校】民族学校に通う子どもたちの学習保障をおこなうために、以下のことにとりくむこと。
(1)民族教育の権利、子どもの人権が保障されることは、各種国際人権条約でも認められている当然の権利であることから、補助金交付再開等、授業料の支援をおこなうこと。また、朝鮮学校幼稚園に対して、幼児教育無償化を適用すること。
(2)朝鮮学校に対し、外国人学校振興補助金を交付すること。
(3)一条校並みの助成をおこなうこと。
(4)民族学校卒業生に対して、すべての大学で受験資格が認められるよう働きかけること。
14.【本名指導】大阪府教育委員会が作成した「本名指導について」の使用の徹底をはかるよう、市町村教育委員会へ指導・助言するとともに、その活用状況を把握すること。特に、大阪府教育庁内や管理職の研修を徹底すること。さらに、本名指導に役立つ資料等を作成すること。
15.【ヘイトスピーチ】「ヘイトスピーチ解消法」、「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」をふまえ、ヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)やインターネットにおける人権侵害事象について、大阪府・大阪府教育庁として「差別を許さない姿勢」を明らかにすること。また、意図的でなくとも無理解や偏見による言動は差別であることを含め、子どもたちや保護者、地域、府民に対して周知するとともに、学校現場のとりくみを支援する方策を確立すること。「ヘイトスピーチの問題を考えるために―研修用参考資料―」の内容についても精査し、府立学校や市町村教育委員会・学校現場に周知徹底をすること。
16.【Jアラート】全国瞬時警報システム(Jアラート)については、子どもたちが必要以上に不安にならないための配慮をおこなうこと。また、これに関わって在日外国人、とりわけ韓国・朝鮮人に対するいやがらせ等がないように十分に配慮するよう、府立学校や市町村教育委員会へ周知徹底すること。
17.【啓発】保護者や府民に対して、在日外国人問題についての啓発をよりいっそうおこなうこと。
18.【映画・アニメ「めぐみ」】内閣官房拉致問題対策本部からの通知により、映画「めぐみ」及びアニメ「めぐみ」を積極的に活用するよう求めているが、教育課程の編成権は学校にあることから強制しないこと。また、活用する際は事前・事後の学習をおこなうことを周知徹底すること。
2.インクルーシブ教育
1.【合理的配慮】「バリアフリー法」、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」をふまえ、支援を必要とする子どもへの合理的配慮の提供が教育現場ですすむよう施策を講じ、市町村教育委員会に指導・助言するとともに、以下のことにとりくむこと。
(1)合理的配慮の基礎となる教育環境の整備・充実を早急かつ適切におこなうよう、市町村教育委員会に指導・助言すること。
(2)財政負担を理由に必要な支援・配慮がなされないことのないよう、施設整備について市町村教育委員会に指導・助言すること。
(3)合理的配慮についての研修や環境整備の現状を明らかにすること。
(4)当事者や関係者の意見を反映させるためのしくみをつくること。
2.【インクルーシブ教育基本方針】「障害者基本法」、「第5次大阪府障がい者計画(後期計画)」、「障害者差別解消法」をふまえ、大阪府の「支援教育」を、すべての子どもたちが「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」ことを基本とした、「インクルーシブ教育」へとすすめていくために、以下のことにとりくむこと。
(1)大阪府として「インクルーシブ教育基本方針」を策定すること。
(2)「インクルーシブ教育」推進のための人的配置を基本とした支援事業をさらに拡充すること。
(3)すべての子どもたちが地域の学校に通うことを前提に、施策を充実すること。
3.【自立支援コース・共生推進教室】すべての子どもが高校への進学をめざせるよう、自立支援コース・共生推進教室の充実等について、施策を講ずるとともに、以下のことにとりくむこと。
(1)入学希望の多い「自立支援コース」の募集人数の増や、大阪府内各地域に新たに設置するなど拡充にむけた具体的な年次計画を早急に示すこと。
(2)「共生推進教室」でおこなう職業に関する専門教育については、子ども、保護者の希望を優先し、本校での学習を強制しないとともに、選考の条件としないこと。また、「共生推進教室」設置校の本校を近隣の支援学校とすること。
(3)就労支援については、地域の自立支援施設との交流や社会体験学習を保障する地域支援組織の創設、就労支援組織との連携をはかること。
4.【高校教育のあり方】「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」インクルーシブ教育の理念のもとで、公立高校が子どもや保護者の多様なニーズに対応するための学びを保障するにあたり、以下のことにとりくむこと。
(1)しょうがいのある子どもたちの実態に対し、必要な人的保障や物的保障を最大限おこなうこと。
(2)01年9月「府立高等学校における障害のある子どもたちに対する学習指導及び評価について(通知)」の周知徹底をはかり、しょうがいや特性に応じた学習指導・評価がおこなわれるよう努めること。
(3)高校の通級指導教室について、成果や課題を分析して、今後の運用に生かすこと。指導体制がとれないために通級指導をおこなえないことがないよう、今後の設置計画を策定すること。
5.【高校進学】高校進学を希望するすべての子どもたちに入学を保障するよう求める観点から、以下のことにとりくむこと。
(1)すべての高校を受験することが可能であることを保護者等に周知すること。
(2)高校受験に際して、引き続き受験上の配慮をすすめること。私学に対しても同様の指導をおこなうこと。なお、入試制度の変更によって、しょうがいのある子どもたちに不利益がないよう、ていねいな対応をおこなうこと。
(3)高校で学ぶすべてのしょうがいのある子どもたちのニーズに応じた条件整備をおこなうこと。
(4)「高校生活支援カード」については、子どもたちをとりまく状況に応じた支援をおこなうために活用するような施策を講ずること。また、市町村教育委員会にも「高校生活支援カード」の有効的な活用の好事例を周知すること。
(5)定員内不合格を出さないように高校への指導を強めること。
6.【手話言語条例】「大阪府言語としての手話の認識の普及及び習得の機会の確保に関する条例」が、教育現場で活用できるよう施策を講ずること。
7.【障害者雇用を促進する条例(ハートフル条例)】大阪府における高等支援学校等卒業生を含め、しょうがい者雇用の現状と課題を明らかにし、雇用率改善にむけたとりくみをすすめること。とくに、大阪府教育庁は法定雇用率の達成にむけて、知的しょうがいのある府立学校卒業生を雇用する「教育庁ハートフルオフィス推進事業」等の現状と課題を明らかにすること。
8.【就学】
(1)就学時健康診断については、93年の確認(ア.受診義務はない。イ.就学時健康診断をもとに振り分けをおこなわない。ウ.保護者の意向を尊重する。エ.精密検査の受診についても強制はしない。オ.前記事項を市町村教育委員会に指導する。)を周知徹底すること。
(2)「障害者基本法」や「学校教育法施行令」をふまえ、まずは地域の学校への就学をすすめるべきであることについて大阪府の認識を示し、以下の点について市町村教育委員会を指導すること。
(ア)「就学指導委員会」や就学時の相談での「振り分け」がおこなわれないよう、委員会の名称も含め、市町村教育委員会を指導すること。
(イ)就学通知は、地域の学校名を就学先としたものを「就学指導委員会」よりも先に送付するよう指導すること。
(ウ)就学相談については、必要に応じて適切におこない、就学先については保護者、本人の意向を最大限尊重するよう市町村教育委員会を指導すること。
9.【支援学級・通級】
(1)支援学級の学級編制基準を引きさげるよう、国へ要望すること。
(2)支援学級については、しょうがい種別による学級設置とすること。
(3)通級指導教室の設置が困難な場合に、府単独での人的措置など、対策を講じること。また、教員の配置について、定数を引き下げるよう、国へ要望すること。
(4)支援教育に必要な加配などの人的措置をおこなうこと。
(5)通常学級に在籍するさまざまな支援を必要とする子どもの指導について人的配置をおこなうこと。
10.【ダブルカウント】小中学校等に在籍するしょうがいのある子どもの学籍については、通常学級・支援学級の両方に置くという、ダブルカウントを復活すること。その際、「原」(げん)学級とは、通常学級であることを確認すること。また、支援学校等に在籍する子どもたちについても「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」理念から居住地の小中学校等に同時に在籍する二重学籍制度(副学籍制度など)とし、交流促進に努めること。
11.【医療的ケア】「医ケア法」の施行に伴い、医療的ケアの必要な子どもの就学がすすみ、ニーズも高まっている。子どもが安心して学校に通うための措置を講ずるとともに、以下のことにとりくむこと。
(1)看護師が安定的に配置されるよう、勤務労働条件の改善などの措置を講じること。
(2)重度重複のしょうがいのある子どもたちが小中学校等に多数在籍する実態等をふまえ、理学療法士(PT)・言語療法士(ST)等を小中学校等に新たに配置・派遣できるようにすること。
(3)学校看護職の普及、啓発をおこなうこと。また、学校看護師の勤務実態を把握し、配慮あるとりくみをおこなうよう市町村教育委員会を指導すること。
(4)医療的ケアの必要な子どもや保護者が転入学時に安心して就学できるよう施設設備等条件整備や、通学支援をおこなうこと。
(5)子どもや保護者のニーズを捉え、事業の拡充をおこなうこと。
12.【院内学級】院内学級の整備をはかるとともに、学級設置を弾力的におこなうこと。また、私立学校へ通う子どもたちの在籍問題、転出入する子どもの学籍簿の取り扱い、退院した後のケアも含め、学校と院内学級との連携の必要性を認識し、配慮あるとりくみをするよう求めること。
13.【研修計画・研修内容】教職員の研修にあたっては、大阪府におけるしょうがい児教育の経過を十分に認識し、地域で「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」ことをめざした「インクルーシブ教育」を推進し、しょうがいのある子どもたちの人権を尊重した教育活動をすすめる研修計画や研修内容を策定すること。
14.【教育相談】支援学校で実施する教育相談は、しょうがいのある子ども本人の意思、保護者の意見を尊重すること。教育相談については、本人が通学している学校と連携をとり、すすめること。また、支援学校には大阪府立支援学校における就学にかかる教育相談等のガイドライン(21年4月1日改正)を周知すること。支援学校の通学校区変更については、子ども、保護者、当該地域・学校への充分な周知期間を設けること。
15.【就学前】幼年期から「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」機会を充実するとともに、小学校等につなぐとりくみをすすめること。
16.【精神疾患】精神疾患についての理解がすすみ、早期に対応できるとりくみをすすめること。
17.【地域の社会教育施設】子どもの在学中はもちろん、卒業後も地域の社会教育施設(図書館・公民館など)で学ぶことができるよう、環境整備や支援体制などを整えること。
18.【人権啓発】保護者・大阪府民に対して、地域で「ともに生き、ともに学び、ともに育つ」ことをめざした「インクルーシブ教育」の啓発をおこなうこと。