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更新日:2024年9月3日

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部落解放同盟大阪府連合会 要望書

要望受理日 令和6年7月5日(金曜日)
団体名 部落解放同盟大阪府連合会
取りまとめ担当課 府民文化部 人権局 人権擁護課
表題 大阪府2025年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書

要望書

2024年7月5日

大阪府
知事 吉村 洋文 様
大阪府教育庁
教育長 水野 達朗 様

部落解放同盟大阪府連合会
執行委員長

大阪府2025年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書

 部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権尊重社会の実現にむけて、人権施策等の推進にご尽力されておられますことに、あらためまして敬意を表します。

 さて、ご承知のように、昨年の大阪府府議会9月定例会において「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」が改正(以下「改正条例」という。)され、同年11月には相談窓口「ネットハーモニー」が開設。今年4月からは「インターネット上の不当な差別的言動に係る侵害情報に対する削除の要請等及び説示又は助言の実施に関する指針(以下「指針」という。)が施行されました。
 あわせて「情報流通プラットフォーム対処法(以下「情プラ法」という。)」が今年5月、参議院本会議で成立・公布され、1年以内に施行されます。
 「情プラ法」ならびに「改正条例」を具体化した取り組みがつみ重なり、大阪府全域へ広がりをもって推進されることにより、インターネット上における部落差別の根絶へ、より効果を発揮することを大いに期待するものであります。
 「情プラ法」は大規模プラットフォーム(以下「PF」という。)事業者が対象であり、各々のPF事業者が作成・公表する「削除基準(仮称)」をもとに削除要請が推進されるものです。しかし「削除基準」に温度差が生じたり、中小PF事業者は「情プラ法」の対象外であったりすることから、削除されないケース等々も大いに予想されます。
 その際「改正条例」に基づいた施策等が、はたして大阪府民のセーフティネットとしての役割を果たしていけるのかどうか。削除されなかったケースや偏見等を助長する言動等を「立法事実」としていくため集積と分析に取り組むのか等々、懸案される課題等を共有化し、ともに歩みを進めたいと考えているところです。

 さかのぼりますが、法期限切れ後の同和行政のあり方に関して、大阪府「同和対策審議会」は2001年9月、「大阪府における今後の同和行政のあり方について(答申)」を示しました。
 同和行政から人権行政へと転換する論議等において、例えば、解放会館運営補助金(当時)を総合生活相談や人権ケースワーク事業へ、「同和対策奨学金」を大阪府育英会の奨学金制度の改革・充実に活用するなど、一般施策等を工夫・活用した部落問題解決のための施策が実施・推進されてきたところです。
 この間、地方分権化が推進され、補助金として実施してきた施策も交付金制度へ移行し、大阪府と府内基礎自治体との連携等のあり方も変わってきています。
 他方、インターネット上における部落差別が野放し状態にある今日、人権教育としての同和教育はもとより人権教育・啓発の成果がないがしろにされてきているといっても過言ではありません。
 いよいよ25年が経過しようとしているからこそ、この間の施策等の効果測定が必要ではないでしょうか。あらためてその認識について問うものです。

 つきましては、2025年度予算編成にあたって、貴庁として部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権行政のさらなる推進と充実を求めるため、下記のとおり、要望いたします。

要求項目

【1】「部落差別解消推進法」具体化と部落差別解消・人権行政の推進に関して

(1)「情報流通プラットフォーム対処法(以下、「情プラ法」という。)」、及び改正「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例(以下「改正条例」という。)」をふまえた施策等の推進に関して、下記の諸点について回答されたい。
 1)「情プラ法」が成立・公布され、1年以内に施行される予定である。「情プラ法」及び「改正条例」の趣旨等をふまえ、インターネット(以下「ネット」という。)上の部落差別の撤廃に向けてどのように取り組もうとされるのか。大阪府としての基本的な考え方を示されたい。
 2)今後、政省令に基づいて「情プラ法」を具体化する取り組みが進められることになるが、大手プラットフォーム事業者(以下「大手PF事業者」という。)が作成・公表する「削除指針(仮称)」に、「同和地区の識別情報の摘示」が削除の対象となるよう大阪府知事名で要望するなど、積極的に働きかけられたい。
 3)「情プラ法」第24条で、大手PF事業者に「侵害情報調査専門員(以下「調査専門員」という。)」の選任が義務づけられたことを受けて、大阪府として「調査専門員」に部落問題をはじめハンセン病問題など「日本固有の人権課題に正しい理解と認識を有する者」を選任するよう積極的に働きかけられたい。
 4)ネット上の部落差別をなくすために、「改正条例」により整備された「指針」及び相談窓口(ネットハーモニー)の取り組みに大いに期待するところである。実際に被害を受けた者等からの相談(あるいは連絡・通報)があり、「指針」に基づき対処するまでの流れを示されたい。あわせて被害者からの相談から削除申請までの支援、あるいは「指針」に基づいた施策等に関して、府内各自治体はもとより府民、事業者等に対してわかりやすく周知し、普及させていくことが重要と考えるが、大阪府としてどのような取り組みを進められるのか示されたい。
 5)ネット上ではまた外国人のみならず、障がいのある者や生活保護受給者、野宿生活者などに対する「ヘイト行為・言動」が頻発している。特定した個人ではなく、社会的・経済的マイノリティ等に対する誹謗中傷や「不当な一般化」による誤解や曲解を流布・拡散させ、差別・偏見をあおる言動等は、改正条例に基づく「指針」で対処する問題とされるのか、大阪府の考え方を示されたい。
 6)「情プラ法」及び「改正条例」の趣旨・目的をふまえて、削除等の取り組みを府内全自治体にも協力を呼びかけて、積極的に推進していくための方針等を示されたい。具体的にはモニタリングの実施・推進、子どもから高齢者まで「インターネットリテラシー」など支援を要する被害者への対応と支援策及び教育・啓発の推進方策について示されたい。
 7)「情プラ法」「いじめ防止対策推進法」及び「改正条例」をふまえ、SNS上のトラブルから人権侵害、いじめ等を受けるおそれがある児童生徒への相談・支援方策、及び子どもたちがインターネットを通じたいじめ等にまきこまれていないかどうかを監視する取り組みを検討されたい。

(2)あいつぐ戸籍等不正取得事件への対策強化へ
 1)府内全市町村での「被害告知実施要領」の導入・実施に向けて、大阪府として積極的に働きかけられたい。
 2)戸籍謄抄本の第三者による取得をさらに厳格化するよう政府・関係省庁に働きかけを強化されたい。

(3)部落差別解消にむけた実態把握と部落問題研修の充実・強化に関して
 1)この間、発生・発覚した部落差別事件(ネット上の差別も含む)に関して、府内各自治体にも協力を呼びかけて、差別事象への対応(初期対応や事実確認の取り組み状況、課題等の抽出、今後の部落問題学習・研修への反映など)等について集約・分析を行うなど、差別事象調査を実施されたい。
 2)府内各自治体の行政職員、及び学校関係者の部落問題研修・人権研修の実態を把握され、今後の部落問題研修・人権研修のあり方に関する基礎資料とされたい。
 3)2025年に予定される「人権問題等に関する府民意識調査(以下「府民意識調査」という。)」の実施にあたり、大阪府の関係職員からも抽出して実施され、府全体との比較検証を図られたい。
 4)「部落差別解消推進法」を具体化した教育・啓発の充実へ、「部落問題学習・部落問題啓発」に係る方針及び計画の検討へ、同和問題解決推進審議会へ諮問されたい。
 5)隣保館活動を通じた実態把握の検討状況について示されたい。府民意識調査の実施にあわせて実態把握が実施できるよう、当該自治体への協力等を働きかけられたい。

(4)改正住宅セーフティネット法をふまえて、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化にむけた取り組みが進められようとしている。被差別部落には公営住宅団地が多数あり、高齢者を中心に独居世帯も激増している。公営住宅の「政策空家」等の積極活用や目的外使用の弾力的な運用など、部落問題解決の視点から防災(減災)、安全・安心の居住支援のあり方に関して、大阪府としての基本的な考え方を示されたい。府内すべての自治体での居住支援協議会の整備とともに、居住支援協議会を中心に進められる居住支援活動を部落問題の解決に役立てていくため、被差別部落で居住支援活動、生活支援等の地域福祉活動に取り組む団体の意見等を反映することができるよう働きかけを強化されたい。

(5)求職者を対象とした「SNS(裏アカ)調査」問題など就職差別の実態把握に関して、関係団体等と連携をとった取り組みの進捗状況等について示されたい。また厚生労働省が、就職活動を行っている大学生等を対象に「公正な採用選考に係るアンケート調査」を実施しているが、関係団体等に働きかけて、同調査に協力するよう周知等を図られたい。

【2】「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(以下「困難女性支援法」という。)」及び「大阪府困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する基本的な計画(以下「大阪府困難女性支援基本計画」という。)」の具体化に関して

(1)「困難女性支援法」の具体化へ、「大阪府困難女性支援基本計画」に盛り込まれた趣旨・内容の普及・啓発、困難女性の支援窓口の周知、各自治体での取り組みに温度差を生じさせないようどのような働きかけ等を行うのか、今後の方針等について示されたい。

(2)困難な問題を抱える女性の自立支援を支える「女性相談支援員」の配置状況を示されたい。また専門的な資質を有した相談員の育成・支援、及び相談支援活動を持続可能なものとする身分保障に関して、大阪府としての基本的な考え方を示されたい。

【3】大阪公立大学における「大阪人権博物館の収蔵資料の保存・活用・展示」にあたって

(1)リバティおおさかの収蔵資料を、大阪公立大学を中心とする教育・研究のみならず、学校教育や社会教育(生涯学習)、成人教育としても活用していくことの必要性・重要性について見解等を示されたい。

(2)大阪公立大学におけるリバティおおさかの収蔵資料の活用・展示にあたって、物心両面での支援策を講じられたい。

【4】2001年9月19日「大阪府における今後の同和行政のあり方について(答申)」で示された基本目標「部落差別を解消し、全ての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし、周辺地域と一体となったコミュニティの形成を図ること」の今日的な現状を把握することを目的に、当該自治体に協力を呼びかけて、隣保館で実施されている相談や事業活動を通じた実態把握を検討されたい。調査結果を「重層的支援体制整備事業」における今後の隣保館(隣保事業)の役割と機能のあり方検討に反映されたい。

【5】人権尊重の社会づくりにむけた施策等の推進に関して

(1)昨年4月1日から施行された「こども基本法」に謳われた基本理念等に関して、大阪府として府内全自治体にどのように普及させようと考えているのか見解等を示されたい。

(2)生活困窮者自立支援法等の一部改正に関わって、下記の諸点について示されたい。
 1)生活保護世帯の子どもが高等学校等を卒業後、就職して自立する場合に一時金(新生活の立ち上げ費用として進学・就職準備給付金)が支給されることになった。本格施行は来年4月からだが、2024年1月1日までさかのぼって適用される(2024年3月卒業の高校生等も対象)。対象となる子どもたちに一時金が支給されるよう、大阪府としてどのような対策等を講じられるのか示されたい。
 2)今年10月からは、生活保護世帯の子どもの将来的な自立に向けて、早期から支援につながる仕組みの整備が進められることとなる。府内各自治体での取り組みに温度差を生じさせないために、大阪府ならびに大阪府教育庁としての役割と責任を明らかにされたい。

(3)「子ども・若者育成支援推進法」の改正により、ヤングケアラーが法的に定義づけられるとともに、18歳以上の若者にも切れ目のない支援を行うこと等が盛り込まれた。あらためてヤングケアラーへの支援策等に係る大阪府としての方針を示されたい。居住地により温度差を生じさせないよう、府内全自治体にヤングケアラーを担当する窓口の整備をはじめ「子どもの貧困」対策、不登校・ひきこもり等への支援策もあわせた市町村計画の策定を積極的に働きかけられたい。

(4)介護保険サービスの報酬改定が行われ、訪問介護の基本報酬が引き下げられた。政府は要介護1・2の高齢者が利用する訪問介護、通所介護を地域支援事業へと段階的に移行する旨の検討も示しており、住み慣れた地域及び住まいで「最期まで自立した生活」を送ることに何らかの影響が生じることを懸念する。小規模の訪問介護事業所への支援策はもとより、地域における見守り・生活支援活動や居場所づくり、地域での福祉人材の育成・支援等がますます重要と考える。大阪府として市町村を支援するためどのように取り組まれるのか見解等を示されたい。

(5)人間としての尊厳を保持した福祉サービス等の提供、相談及び自立支援のためのアセスメントに関わって、福祉に係る専門職が生活背景にある人権課題等を察知し、差別やトラウマが生きづらさの遠因になっていること等の理解を深めることが重要と考えるが、大阪府としての基本的な考え方を明らかにされたい。今後、求められる福祉人材の養成・育成・支援へ、前述の視点をふまえた人権研修プログラムなどを検討し、積極的に推進されたい。

(6)福祉サービス等を利用する者の「その人らしい生活」を支えるため、介護支援専門員(ケアマネジャー)が幅広い支援等を行っている。医療・介護の連携や保険外サービスへの対応、利用者の家族の相談支援など年々高い専門性が求められているにもかかわらず、今回の介護報酬改定では処遇改善加算の対象外で、人材確保は困難になってきている。ケアマネジャーを配置する府内事業所の現状等を把握し、ケアマネジャーの待遇を支援する方策等を早急に検討されたい。

(7)「性暴力救援センター・大阪SACHICO(以下「SACHICO」という。)」に関して、下記の諸点について見解等を示されたい
 1)大阪では、性暴力被害者支援の中核となるワンストップセンターとしてSACHICOが、その重要な役割を果たしてきていると考えるが、大阪府としての評価を示されたい。
 2)大阪府内で発生・発覚した性暴力等犯罪の認知件数は、全国でもワースト上位にある。緊急対応も含めた性暴力等への対策を府政の重要な施策の一つとして位置づけて、大阪府としての拠点施設を整備すべきと考えるが、見解等を示されたい。また性暴力等の救済・支援へ、その他の民間医療機関との連携をどのように図ろうとしているのか示されたい。

(8)いのちと暮らしを守り支えている各種相談員はもとより対人支援を担う公的従業者(福祉等の関係者や会計年度任用職員等)の待遇面の問題。予算削減等により公共事業の民間委託先でも被雇用者の生活保障賃金の問題など、官製ワーキングプアの現状が深刻化してきていると考えているが、大阪府としての基本見解を示されたい。

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