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社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 要望書(1)
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要望書受理日 |
令和6年6月28日 |
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団体名 | 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 |
取りまとめ担当課 | 福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課 |
表題 | 知的障がいのある人とその家族に対する支援策の充実について(要望) |
要望書
令和6年6月28日
大阪府 知事 吉村 洋文 様
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会
理事長
知的障がいのある人とその家族に対する支援策の充実について(要望)
平素は、知的障がいのある人とその家族に対して様々な支援策を講じていただきまして感謝申し上げます。
さて、令和6年度補正予算および令和7年度当初予算において実現していただきたく下記の項目を要望いたします。
ついては、令和6年8月末日までに書面にてご回答くださいますようよろしくお願いします。
【権利擁護】
[1]知的障がいのある人への虐待防止について
障がいのある人の虐待については、大阪府は虐待防止研修の実施等、熱心に取組んでいただいていることに感謝します。
令和4年度の対応状況を見ると、養護者による虐待が最も多く、大阪府の数字は全国最多を示しています。同じ立場の私たちとしては非常に心痛く、つらい思いを抱いています。
また、障がい福祉施設従事者等による虐待も、全国的に見て大阪府の虐待認定件数は多く、さらに報道された大阪府岸和田市の入所施設による虐待などを知ると、支援者を信頼する気持ちが萎えてしまいます。
今後、より一層の取組みを強く推進していただくことを希望します。
- 養護者が虐待をしてしまう背景には、子育てや介護に関する情報が不足している、日々の介護生活に疲弊している、適切なサービス等につながっていないなどの理由があります。虐待が起きてから対応するのではなく、虐待が起きる前から、家族支援という視点に立ち、養護者に正しい知識や必要な情報が届くように、また常に(サービス提供だけでなく)子育てや介護を伴走する支援が行き渡るように、新たな施策を展開してください。
- 国においては、障がい福祉サービス内での虐待防止の取組みを一層強化する方向となりました。私たちは、事業所に運用上定められる委員会の定期開催や職員への周知などが実効性のある内容となっているか、指導をしていただく必要があると思っています。
大阪府は指定指導権者と協働し、実地指導とは別の機会を設定し、委員会等の確認をするなどの独自の対策を行い、施設従事者による虐待を防ぐ大阪モデルとして展開してください。 - 以下について国へ強力に働きかけてください
・虐待認定のあった障がい福祉サービス事業所に対して、コンサル導入や外部委員を交えた改善委員会の設置などを義務化してください。
・教育機関を虐待防止法の適用対象に加えてください。少なくとも支援学校については何ら障壁がないと考えます。
[2]知的障がいのある人への差別解消について
大阪府では条例においてすでに義務づけられていた事業者の合理的配慮が、本年4月に障害者差別解消法の改正により法律内に定められました。今後、より一層、地域における合理的配慮が広まることを期待します。
しかし現実は、事業者の障がいへの理解不足があり、法律の存在さえ知らない事業者も多く、その機運が高まっているとはとても思えません。
また、私たち当事者ですら法律のことを十分理解しているとは言えない状況で、それが相談件数の少なさにつながっていると思われます。
さらに、合理的配慮は障がい者からの意思の表明で建設的対話を行うとなっていますが、コミュニケーションに困難性のある知的障がいのある人にとって、これらを行うには大きな障壁があり、さらなる工夫等が必要です。
このような課題を解決するべく、設置されるのが差別解消地域協議会だと思われますが、設置されていない市町村が多いです。
- 差別解消相談窓口への相談件数は一向に増えていません。特に知的障がいの相談はとても少ないです。これは私たち家族の生活実感とはかけ離れています。
背景として、知的障がいの本人や家族自身が法律のことを十分理解できていないことあります。当事者への法律の周知・PR方法について、さらなる工夫をお願いします。 - 知的障がいのある人が、法律にある自らの権利を理解し、それを行使できるようになるには、知的障がいに配慮した情報提供が必要です。法律を周知するツールは「わかりやすい文書」にするとともに、文書だけでは難しい当事者への理解を促す場やツールを提供してください。
特に、支援教育現場での法律理解の授業等はとても有効だと思われますので、ぜひとも取り組んでいただきたいです。 - 差別解消地域協議会未設置の市町村が多いことも、周知につながらない要因として考えられます。知的障がい者への差別事案はすべての市町村で日々発生していると私たち家族は感じています。協議会未設置をゼロにするための大阪府の見解とその対策をお聞かせください。
- 知的障がいのある人やその家族は、自らの平静を守るため、差別など受けてもその行為者へ申し出るということがしづらいです。その前提に立って、当団体は支援者からの相談が増えることを願っています。
毎年お願いをして「検討する」と返答をいただいている、障がい者差別の実際を抽出するにふさわしい対象である『ヘルパーへの調査』について是非取り組んでください。 - 事業者も含めて、地域社会全般に対し、知的障がいの合理的配慮の1つが「わかりやすい文書」や「イラストや写真などを用いた案内やツール」などであることや、それらは基礎的環境整備として必要であることを、広く理解されるような啓発をお願いします。
- 地域にある病院やクリニックについては、理解のある医師等に出会え、合理的配慮をしてもらうことができたと感謝している人・家族がいる一方、診てもらえなかった等の対応をされた人もいるのが現状です。特に、生活に必須である内科や歯科、耳鼻科、婦人科等へ知的障がいへの合理的配慮を促進する啓発をお願いします。
- 障がいを理由に今なお住宅入居を拒否されることが散見されます。入所施設からの地域移行、グループホームからの単身生活への移行などを進めると言われるのならば、障がいのある人や家族が住まいを得やすくするための支援を充実してください。
- 選挙での投票における知的障がいへの合理的配慮が少しずつ進んできましたが、市町村によって差があるようです。また、視覚障がいや手足が不自由な方への配慮や説明は丁寧にされているのに、知的障がいの配慮にかけるところもあると聞いています。投票における知的障がいへの合理的配慮が市町村の差なく広がるようにしてください。
[3]知的障がいの啓発について
障害の特性がわかりにくい知的障がいは、未だに誤解や偏見にさらされることが多く、差別解消法を浸透させるためにも地域への啓発は必須です。
啓発は、障がいだけに焦点を当てた説明におさまることなく、様々な機会をとらまえて、障がいのある人と同じ時や場を過ごす方法でも行われるべきと考えています。
- 障がいのある人を理解するためには、本人たちと出会って交流していただく必要があると私たちは思っています。八尾市では健常者や障がい者の別なく参加できるボッチャ大会が開催されたことや、堺市では障害者のスポーツ大会に多くのボランティアが参加することで啓発につながっていることを聞いています。
当団体としては、大阪府が先頭に立って、このような好事例を収集し公表すること、また市町村単位ではなくいくつかの市町村合同での取組を企画するなど、大阪府としての横展開の施策が行われることを期待します。 - 30年以上続く「ふれあいキャンぺーン」は、市町村における取組の差が年々大きくなっているとともに、内容についてはマンネリ感が否めません。
私たちが啓発してほしい対象は「身近な地域の方たち」ですので、市町村による啓発が最重要です。しかし、市町村の状態等で格差が出ていることに加え、私たち当事者から見ても、啓発の取組みが形骸化している市町村があります。
ふれあいキャンペーンを軸に、市町村独自ではなく、複数の市町村が協力しあって行う新たな活動方法を検討してください。
さらに、ふれあいキャンペーンの内容そのものも、広域で行う啓発活動として、効果的でかつ意味のある内容に改訂されることを望みます。
【家族支援】
[4]知的障がいのある人の家族支援について
私たち知的障がいのある人の家族にとって、老障介護が現在の最大の課題です。
さらに、昨今注目をされているヤングケアラーとは、私たちが以前より課題として取り組んでいる「きょうだい児」の数が最も多く、また長いケアラー状態でいる存在です。
当団体は、知的障がいの分野こそ家族支援が必須であると考え、特に地域や生活に密着した支援が必要であると思っています。
さらに、前述した大阪府の養護者虐待が多いことについても、虐待が起こる世帯は家庭内もしくは生活に困難を抱えた世帯が多く、また知的障がい者、特に行動障がいのある者への養護者虐待が多いのは、その介護の困難さやサービスの希薄さに加えて、養護者の知識不足が原因と考えられます。
改定された第5次大阪府障がい者計画の共通場面「地域を育む」には「障がい者と暮らす家庭を孤立させず、既に孤立してしまった家庭や親をフォロー」とあります。現在不足しているのは『孤立する前の支援』であり、それには家族支援の充実が必須であると考えます。
- 発達障がい児の家族支援の充実のための「ペアレントメンター養成研修」については、大阪府から特定の団体への委託で実施されています。これにより、私たち知的障がいの家族には届いていません。大阪府が実施する他事業のように、発達障がい以外にも対応するべく、実施主体を増やすなど柔軟な施策展開の検討をお願いします。
- 大阪府ヤングケアラー支援推進指針に基づいた、大阪府の具体的な取り組みとして市町村相談窓口をあげておられますが、その相談実績、特に知的障がいのきょうだい児についての実績を教えてください。
また、啓発関連の取組み以外に、指針に定めた「早期発見・把握、支援策の充実」として具体的に取り組んでおられること、特に、知的障がいのきょうだい児に関する内容を教えてください。 - 老障介護問題は1年ごとにその状況が悪化しています。親亡き後を心配して仲間とつながっておられた親御さんたちも、自身が認知症等になり、仲間とのつながりも希薄になって、危険な状況となっています。
大分県では『親亡き後相談室』を設置されていて、親同士のつながりを補填してくれる存在となっていると聞きました。大阪府でも同様の仕組みを施策として作ってください。 - 障がいのある人について、児童期の保護者、成人の家族、いずれに対しても、ピアサポートが有効です。同じ家族による支えあいやつながりは私たち育成会の今ある姿です。困り事のあるご家族に対しては、直接関わりが持てる、つながりを感じていただける支援や寄り添いが必要と思っています。私たちの活動をどうぞ活用してください。
【相談支援】
[5]基幹相談支援センターについて
基幹相談支援センターは地域における「相談支援の拠点」であり「地域の相談支援事業への専門的指導や助言を行うところ」として、私たちがとても頼りにしたい機関です。また、改正された社会福祉法にある地域における重層的支援体制整備においても、基幹相談支援センターは重要な役割を担う機関であると思います。
しかし実際は、未設置の市町村があることや、設置されている市町村でもその運営にばらつきがあり、地域における相談支援の中核的役割や専門的指導等が十分になされていないところもあります。
- 前年度に「大阪府における未設置は7市町村。令和8年度末までに、府内市町村全てで設置することを目標としている」とのご回答をいただきました。その後、未設置の解消はできたのでしょうか。現在の状況を教えてください。また、未設置がまだあるのなら、すべてに設置されるまでのアクションロードマップを教えてください。
- 大阪府の取組みとして前年度教えていただいた、市町村、基幹相談支援センター及び委託相談事業所を対象に実施している『地域自立支援協議会情報交換会』や『基幹相談支援センター職員を集めた情報連絡会』それぞれの、実施状況と浮彫になっている課題を教えてください。
[6]市町村の委託相談について
私たちには福祉サービス利用以外にも様々な悩みがあります。その相談先の1つが委託相談であることを、前年度の大阪府との懇談会で教えていただきました。改めて委託相談のことを調べると、「障がい者等に関する地域住民からの相談全般を扱う」いわゆる『よろず相談』であると知り、これこそ私たちが求めているものだとわかりました。またそれが市町村の必須事業であることを知りました。
その視点で私たちが日々生活している地域を見直すと、委託相談が私たちのそばにある感じがしません。また大阪府域を確認すると市町村により、その設置運営にかなりの違いがあることも知りました。
計画相談、基幹相談に加え、委託相談も、真の意味で私たちの生活を支える機関として、府下すべての地域で機能することを望みます。
- 委託相談は、その地域の状況に応じた形で展開されているため、違いがかなり出ていると聞きました。大阪府ではその実態を把握されていることと思います。各市町村の状況(設置の仕方や具体的な取組など)を、相談事業を利用する私たちにわかるよう説明してください。
- うまく機能していない市町村があるなら、単一の市町村だけで行うのではなく、複数の市町村がつながって対応するような、大阪府として横展開の施策を検討してください。
[7]障がい者自立支援協議会について
障がい者自立支援協議会を通して、地域生活支援拠点等をはじめ、障がいがある人の地域生活の基盤が作られることを思えば、その役割はさらに増すばかりであり、私たちはその機能に大きな期待を寄せています。
しかし同時に、期待通りにならない危惧も強く感じています。それは、市町村による運営内容の格差が顕著であること、他種の協議会と合体させている市町村もあること(その分議論が浅くなっている)、形骸化が著しい協議会が多いことなどからです。
自立支援協議会が全ての市町村において、私たちの身近なところで意味のあるものとなることを望みます。
- 当団体の会員はそれぞれの市町村の協議会に参画している人が多いですが、他の市町村の状況が把握できていません。お互いに協議会の質の向上をめざすため、情報共有がしたいです。
大阪府では、市町村協議会が実効性のあるものとなっているかについては実勢調査などから把握できていることと思います。その内容から、開催状況や部会名だけではなく、真に好事例となる協議会の紹介や、大阪府が市町村自立支援協議会の課題と思うことを教えてください。
また、前年度の回答にあった大阪府障がい者相談支援アドバイザーについての具体的な支援実績および今後の取組についてお聞かせください。 - 大阪府自立支援協議会では市町村の実情を把握した上で、府域の課題を掘り起こし、地域づくりの計画等につなげていただいていることと思います。
私たちが思う、現在の府域における最重要課題は「強度行動障がいを有する人の支援」「児童発達支援センターをはじめとする中核機能強化における児童期の支援」です。
これら2つには高い専門性や複雑な連携が必要であるため、市町村だけの検討や実施では困難と思われ、次なる市町村格差につながる危険があります。どうぞ、大阪府自立支援協議会内に上記2つの部会を立ち上げ、地域における支援体制構築の足がかりとしてください - 障がいのある人の人生をも左右しかねない障害福祉サービスは、支給決定等において市町村で格差があり、同じ大阪府に住んでいるのに、同じ支援を受けられないという状況について、大阪府はどのように考えておられますか。
これは当団体が非常に重要視している大阪府域の課題です。
また、地域移行を進める中で最も力点を置かなければならないのは「地域で支える仕組み」です。この点は地域生活支援拠点等に期待をしたいところですが、ここにも大きな市町村格差があります。格差をなくし事業を進展させるためには、市町村の主体性を待つ段階はすでに過ぎていると思います。
自立支援協議会などを活用して、実効性のある大阪府としての戦略を検討してください。
【生活支援】
[8]地域生活支援拠点等の整備について
地域生活支援拠点等は、障がい者の重度化・高齢化や「親なき後」に備え、重度障がい者にも対応できる専門性を有し、障がい者等やその家族の緊急事態に対応するものとして、その整備を進めていただいていることをうれしく思います。
親亡き後は私たちにとって永遠のテーマですので、地域生活支援拠点等には大きな期待を寄せています。しかし、地域の状況を見ると整備状況等の進捗は芳しくなく、不安が増すばかりです。さらに、大阪府の入所施設の待機者が1000人を超えていると聞き、これはやはり私たち家族の安心が地域には無いことを如実に表しているのではないでしょうか。
本事業が府下いかなる地域でも機能することを強く望みます。
- 大阪府下の整備状況について、前年度「38市町村で整備済み」という回答でした。その後、未整備は解消されたでしょうか?
また、私たちの「地域生活支援拠点等は私たちに何をしてくれる所なのかがよくわからない」とお伝えしたことに「市町村へ積極的な情報発信を働きかける」とありました。しかし、現在も実行されているとは言えません。市町村のホームページでも、連絡先等を公表しているのはごく一部です。大阪府が市町村へ働きかけている「積極的な情報発信」には程遠いと感じています。大阪府は、各市の整備状況だけではなく、私たちにその取組み内容がわかるよう集約し、府として公表してください。 - 面的整備においては、緊急対応など登録事業所が増えないようです。
緊急対応は短期入所だけでなく、居宅介護サービスの緊急対応加算(拠点等に位置付けられている場合)や、令和6年度報酬改定で導入された通所事業所の緊急時受入れ加算で対応できますが、これらを地域の事業所や市町村が認識できているかがわかりません。
また、全国的には、通所事業所職員が居宅を訪問し緊急時の支援をつなぐなど、様々な方法で緊急対応を実施するところが増えつつあります。
多様な対応の方法を市町村に速やかに広めて、その実態を把握し、さらに好ましい事業展開をしている市町村を評価するなどで、制度進展の後押しをしてください。
[9]強度行動障がい状態にある人への支援について
強度行動障がいの状態にある人について、大阪府では平成26年度の調査や平成30年度からのモデル事業などを進めていただき、感謝しています。また国においても令和4年度に「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」の報告がまとめられ、家族だけで抱え込み疲弊している現状の中、ようやく淡い希望の光となっています。
私たちの身近でも、日中や居住を問わず、サービス利用を断られることが多分にあります。頼りにしたい支援者・サービスに見放され、介護を抱え込むしかない家族の疲弊と孤独感は、深刻なものとなっています。
また報道された大阪府岸和田市の入所施設による虐待や、香川県高松市の一方的契約解除などを聞くと、地域におけるソフトとハードが圧倒的に不足していることは明らかです。国が示す方針を元に、大阪府が力強く施策実現していただくことを期待します。
- 国が示された「中核的支援人材」「広域的支援人材」の育成については、国の指定研修での育成が実施されるようですが、それを受けての大阪府としての役割、府域でどう展開していくのか、専門的人材の体制構築の展望をお聞かせください。
- 同じく国が示された「集中的支援」について、今後どの機関が何を担うのか、また予測する対応数も含め、大阪府の見解をお聞かせください。
- 強度行動障がいは、環境要因による二次障がいであり、こども期からの支援がその予防や軽減に大きく影響します。しかし現在の状況を見ると、国が示す方針やそれを元に対策する大阪府・市町村の動きは、成人に偏っていると感じています。
こども期から適切な環境整備をして二次障がいを防ぐことは、将来の強度行動障がいの支援環境につながります。こども期を後回しにせず、こども期からの支援を充実させる施策を検討してください。
それには、教育との連携が不可欠です。また、行動障害やそのリスクのあるこどもの保護者に対し、専門的知識につながる情報提供や学習の機会も必要です。強度行動障がいに特化した『教育と福祉と家庭の連携』を大阪府下で実現させてください。 - 以下について国へ強力に働きかけてください
・地域生活支援拠点等を核とした、確実な強度行動障がいの支援体制を構築してください。
・中核的支援人材の養成とそのフォローについてスピード感をもって取り組んでください。
[10]共同生活援助事業(グループホーム)について
障害者総合支援法の改正により、重度障がいのある人や、単身生活を望む人への支援が強化されることになりました。当事者のニーズが叶い、いろんな生活の形が望める仕組みは喜ばしいところですが、いかんせん地域の支援現場はそれらを受け止めるほど成熟はしていません。また、安易に障がいの重い人を受け入れたり、簡単に事業を廃止してしまったりという事業者が散見され、私たちはとても不安に思っています。
- グループホームは、制度や報酬の改定のたび、参画する法人が増えました。その現場で実際に障がい当事者と接するスタッフ(世話人)には、専門性を有していない、あるいはこれまで支援経験の無い人が多くいます。人材不足の今、世話人のスキルアップが必須です。
大阪府では、世話人研修会を年に1回、1法人1名という実施をしていただいていますが、この量・質・内容では全く不足です。受講できる人数を増やすことや、現場に即したテーマ、受講しやすい短時間の設定などで、今の現場の世話人、その雇用状態に合わせた企画をしていただきたいです。 - 大阪府の令和4年度福祉施設等による虐待で件数が最多だったグループホームは、そのスタッフへの教育や、客観的な目で運営チェックできる仕組みが必要と考えています。また、令和7年度から義務付けられる地域連携推進会議を具体的にイメージできずに混乱している事業所もあります。
これらの問題は、行政の指導だけではなく、民間同士の交流、互いにアドバイスしあえるようなネットワークがあればよいと思います。特に、新規参入したばかりで孤立しがちな事業者やスタッフが、利用者主体の生活という本来の目的に沿って交流することは、質の良い支援につながると考えていますが、いかがでしょうか。行政での実行だけでなく、民間への事業委託も含めてご検討ください。 - 公営住宅法に則り、公営住宅におけるグループホームが府下でも多く設置されています。ご存じのように公営住宅入居には所得制限があり、入居している住民が一定の収入を超えた場合、住宅を退居しなくてはなりません。この仕組みが実はグループホームの入居者にも適用されるのです。本人の不断の努力で長年積み重ねてきた昇給があだとなる状況があるのです。環境の変化に適応することが苦手な知的発達障がいのある人については、一定の配慮をいただけるよう強く望みます。
- 以下について国へ強力に働きかけてください
・全国一律の家賃補助ではなく、家賃や物価が高い都市型家賃補助の創設をしてください。
・家賃補助の支給対象者は課税非課税の別ではなく、せめて障害基礎年金の支給基準なみの所得設定としてください。
・日中支援加算の土日祝日算定を可能としてください。
[11]居宅介護事業および移動支援事業について
居宅介護事業は地域生活を支える重要なサービスであります。国や大阪府が推し進めている地域移行や、強度行動障がいの状態にある人に対する地域づくり、またグループホームから単身生活に移行する人たちにも、不可欠なサービスです。
しかし、実態は支給決定の市町村の違い、ヘルパーの質の問題、人材の不足など、課題が山積です。
どんな障がいがあろうとも、地域で生活を続けることが私たちの願いであり、そのためには居宅介護事業や移動支援事業が、必要な人に必要な量確保され、それぞれの自分らしい生活を支えるサービスになることを求めます。
- 居宅介護事業の運用について市町村によってさまざまな違いがあるのは、障がいのある人個々の事情に応じた「非定型支給」の判断の揺れがあるためだと思います。前年度「適切に支給決定されるよう、市町村に働きかけている」との回答でしたが、働きかけだけでは解消されていません。
「非定型支給」の判断基準をはじめ、支給決定の基準を市町村任せにするのではなく、府として各市町村の実態を集約し、一定の基準を提示してください。私たちはすべての市町村の支給決定が標準化にされることを願っています。
<運用の違い>
・65歳問題。介護保険の第1号被保険者になり、障がい福祉サービスよりも介護保険サービスが優先される。しかし、知的障がい者の場合、障害支援区分に比較して要介護認定の結果が低く出ることが多く、十分な支援を受けることができない場合が多い。また知的障がいの特性上、介護保険サービスでは、そのニーズの充足が図れないことが多々見受けられる。よって、6ニーズ解決のため、介護保険と併せ障がい福祉サービスを柔軟に受けられるような対応が必要。
その対応に、市町村の違いがある。
・通院等介助。知的障がいが比較的軽く身辺が自立していても、知的障がいのため医師の病気についての説明や指示がよく理解できない人が多くいる。知的障がいのある人の通院等介助において診察や処置の付き添いができるような身体介護付き等の支給決定が必要。
この決定に、市町村の違いがある。
・共同生活援助の利用者の居宅介護問題。障がいの重度化や高齢化もあり、共同生活援助利用者への身体介護等の支給決定に柔軟に対応していただく必要がある。また共同生活援助利用者の通院等介助の利用は、原則慢性疾患での通院に限られているが、一部の共同生活援助では、人手不足のため風邪等の一過性の疾患における通院介助はできない
としている。そのためか、共同生活援助利用者の通院等介助の利用に疾病の制限を設けていない市もある。このように、同じ共同生活援助を利用する人が受けられる内容や支給量等に、市町村の違いがある。 - 移動支援事業については、前年度「毎年度の調査項目を固定するのではなく、必要に応じて調査項目を追加するなど見直しを図った上で市町村の取組み状況を集約し、情報提供を行う」との回答でした。そこで、最新の調査の項目と情報提供された内容を教えてください。
さらに、前年度、移動支援について「財源の制約から、必ずしも全ての市町村が柔軟な事業展開を行えていない状況にあると認識」との回答でした。
これがまさしく、ガイドヘルパー不足につながり「必要なのに利用できない」「質の低い支援でも我慢するしかない」という状況につながり、知的障がいのある人・子どもの社会参加を鈍らせています。
賃金上昇する現在、今のままではガイドヘルパーをする人がいなくなり、知的障がいのある人・子の外出は、以前のような親や家族の介護に頼る状態に戻ってしまいます。市町村への調査は財源部分もあわせて実施し、対策を検討してください。 - 居宅介護も含め、ヘルパー不足は重大な問題です。そのためサービス利用ができない現状があります。生活に必要であるヘルパーが利用できず、当たり前の生活ができないで我慢をしている人や、介護から解放されない家族がいます。その傾向はとりわけ重度の障がいがある家庭ほど顕著であり、家族の負担は増す一方です。そんな中、ヘルパーの高齢化も課題で人材不足に拍車をかける形となっています。
全国手をつなぐ育成会連合会の資料では、2025年で介護人材は43万人不足なのが、2035年75万人の不足となり、10年で倍近くになるという予測です。その影響を最も受けるのがヘルパーだと思っています。
これらについて、大阪府の認識はいかがでしょうか?
また前年度の回答にあった「大阪府介護・福祉人材確保戦略2023」の重点事項など進捗を教えてください。 - 以下について国へ強力に働きかけてください
・移動支援、日中一時支援といった地域生活支援事業を障害福祉サービスに位置づけ個別給付にしてください。
・全ての知的障がいのある人へ通院等介助の支給をしてください。また、突発的な通院にも対応できるよう、運用のガイドラインを定めてください。