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自由同和会大阪府本部 要望書
要望受理日 | 令和6年11月29日(金曜日) |
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団体名 | 自由同和会大阪府本部 |
取りまとめ担当課 | 府民文化部 人権局 人権擁護課 |
表題 | 2025(令和7)年度同和問題の早期完全解決に向けた要望書 |
要望書
2024(令和6)年11月29日
大阪府
知事 吉村 洋文 様
大阪府教育庁
教育長 水野 達朗 様
自由同和会大阪府本部
会長
2025(令和7)年度同和問題の早期完全解決に向けた要望書
貴台におかれましては、平素より同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の早期完全解決を図るために、各種施策を講じていただき厚く感謝を申し上げます。
さて、33年に渡り続けられてきました同和対策の特別措置法が平成14年3月に失効しましたが、再び、同和問題に特化した「部落差別の解消の推進に関する法律」が平成28年12月に成立しました。
この法律の第6条に規定する部落差別にかかる実態調査の調査結果が、令和2年6月に公表されましたが、私どもが主張する「今や同和問題は完全に解決の過程にある」ことが証明されました。
さらに、福岡県が令和4年8月から令和5年3月の間に県内の72箇所の隣保館と隣保館以外の47箇所の公共施設を利用した人を対象にした「福岡県隣保館人権課題把握調査」の結果が令和5年12月に公表されましたが、この結果でも私どもが主張する「今や同和問題は完全に解決の過程にある」ことが証明されました。
私どもは、この法律を拡大解釈することなく有効活用することで完全解決に繋げていきたいと思いますが、この「部落差別の解消の推進に関する法律」、「へイトスピーチ解消法」、昨年6月に成立しました「LGBT理解増進法」いずれの法律にも人権が侵害された場合の被害者の実効性のある救済措置は明記されておらず、平成28年4月に施行された「障害者差別解消法」では既存の機関を活用するとされており、また、「男女共同参画基本法」の条文には、「人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない」との記載がありますが、「人権擁護法案」が成立する前提であったことで実現には至っていません。
一方、国連の規約人権委員会、女子差別撤廃委員会、人種差別撤廃委員会などからも、国内人権機構の設置が幾度も勧告されていますし、平成29年7月に人種差別撤廃委員会へ提出された政府の第10回・11回の報告に対しても、平成30年8月に審査があり、その結果の総括所見が同月に採択されましたが、同じ内容の勧告がされました。
この総括所見の勧告に対して政府は令和元年9月に、「人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況をも踏まえ、引き続き適切に検討している。なお、従前から、人権擁護に携わる行政機関として法務省に人権擁護局が設けられており、その下部機関として、法務局人権擁護部(全国8箇所)、地方法務局人権擁護課(全国42箇所)及びこれらの支局(全国261箇所)が設けられている。さらに、法務省では、全国で約14,000人の法務大臣が委嘱した民間ボランティアである人権擁護委員と協力して、人権啓発活動、人権相談及び人権侵犯事件の調査救済といった人権擁護活動を行っている」とコメントを提出しているが、法律でもない訓令の「人権侵犯事件調査処理規程」を持ち出しての苦しい言い訳をしています。
また、平成26年1月に批准書を寄託したことで同年2月19日から「障害者権利条約」の効力が発生していて、この条約にも「条約の実施を促進し、保護し、及び監視するための国内機構を設置する」との条項があり、他の条約と同じように実施状況を国連へ報告する義務があり、第1回の報告を平成28年6月に提出されましたが、新型コロナウイルスのまん延から遅れていた審査が令和4年8月22日・23日にスイス・ジュネーブの国際連合にて行われ、総括所見が9月2日の第611回会合において採択され、やはり「パリ原則に基づく国内人権機関の設置」が勧告されました。
本年は、令和3年9月に提出された「女子差別撤廃条約実施状況」では、第9回報告の審査が10月17日に行われました。この報告は事前質問票への回答になっていて、問5に「パリ原則に基づく国内人権機関の設置に向けた取組を明らかにされたい」となっていて、その問への政府の答えは「人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、適切に検討しているところである。全国50か所の法務局、地方法務局及びその支局(合計311か所)における職員及び全国1万4千人の人権擁護委員が人権相談に応じており、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合、所要の調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じている」と、令和元年9月に「人種差別撤廃委員会」へ回答した同じ内容になっています。
これらのことを勘案すれば、パリ原則に準じた簡易・迅速・柔軟に人権救済を図る目的の国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を中心とする、平成14年の第154回国会に閣法として提出された「人権擁護法案」を大胆に見直し、一日も早い成立を図り、国内人権機構としての「人権委員会」が設置されますようご尽力を賜りたくお願い申し上げます。
また、格差社会は旧同和地区も例外ではなく、同和対策事業に依存した建築・土木業に従事する人が多く、「同和対策事業特別措置法」の終結や公共事業の減少などで、不安定な就労形態になり「格差社会」として重要な問題となっているのが現状であります。そのためにも、これら残存する格差はもとよりその要因を解消するべく新たな施策の拡充を要望いたします。
自由同和会大阪府本部といたしましても、このような状況を重く受け止め、その是正のため、府民の人権意識の向上及び同和行政の「総点検」に引き続き努めるとともに、同和行政のあるべき姿を考慮し、府民の皆様に理解の得られる人権行政の確立に向けた政策提言に全力を尽くす所存であります。
大阪府におかれましても、「2025年大阪・関西万博」を見据え、国際都市にふさわしい環境を整備するため、令和元年に「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」など各種条例を制定されました。また、令和3年12月「大阪府人権施策推進基本方針」の改正、本年4月には、昨年10月に改正された「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」が施行されましたが、引き続き、実効性のある取り組みを迅速に進めてください。
とりわけ、同和問題の早期完全解決に関しては、より効率的かつ効果的施策の構築を積極的に推進していただくとともに、下記の要望について、格別なるご高配を賜りますようお願い申し上げます。
記
1 吉村 洋文知事の同和問題をはじめ様々な人権問題の早期解決に向けた決意を明らかにされたい。
2 基本要求
(1)令和5年度に発生し、大阪府・大阪府教育庁が把握する同和問題に関する差別事象の詳細を明らかにされたい。
(2)昨年10月に改正された「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」が本年4月に施行されたが、インターネット上の人権侵害の対処についてはどのような対策を講じられるのか詳細を明らかにされたい。
(3)人権教育・啓発の推進体制、特に府民に対する令和5年度の人権相談の窓口の状況を明らかにされたい。また、その充実に努められたい。
(4)職員及び教職員に対する同和問題・人権研修の実施状況を明らかにされたい。また、その充実に努められたい。
(5)「大阪府人権教育推進計画」の取り組み状況を明らかにされたい。
(6)「部落差別の解消の推進に関する法律」第5条1.で国は、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うものとする。」と明記されているが、今後は、同和問題解決のためマイナス面である差別を強調するのではなく、解決の過程にあることを示すプラス面を強調する内容の、大阪府及び大阪府教育庁が行っている同和問題教育・啓発事業や人権教育を学校教育に於いて、低学年から高校まで推進されたい
(7)同和問題解決を阻害するエセ同和行為排除のための取り組みを明らかにされたい。
(8)最近では、SNS・インターネット・掲示板等の差別書き込みや悪質な投稿が増加傾向にあり、より精神的に追い詰められる人が増えているので、早急な対応が必要である。匿名の投稿であっても名誉棄損罪や侮辱罪といった犯罪に問われる場合もあるという事を府民や教育の場でも周知し、府民のインターネットリテラシーの向上を図る啓発活動を強化されたい。また削除依頼の場合は、言論の自由に配慮して慎重に行われたい。
(9)コロナ禍から脱却したものの、中小零細企業の業績は以前の水準まで回復できず、借り換えや資金調達に柔軟な対応が必要だと思われますが、現状はどの様になっているか、また対策があれば明らかにされたい。
3 課題別要求
(1)福祉
1)介護保険の現状と今後の取り組みを明らかにされたい。
2)低所得世帯やひとり親家庭の子どもの貧困が問題になっている中、生活困窮となった家庭への支援状況等はどのようになっているのか進捗状況を報告されたい。
また、「ヤングケアラー」の問題について、早期発見・支援が重要だと思われるが、子どもたちにヤングケアラーであるという自覚がない場合や他人に知られることに拒否感がある場合など日常生徒の変化や状況は、学校に於いて教師が察知できると思われるが相談体制は構築されているのか、支援の状況はどのように対応されているのか、この一年で大阪府が把握された件数、教育と福祉の連携がされているのか並びに取り巻く現状と課題を明らかにされたい。
3)悲惨な事件が続いていることから、「児童虐待防止法」と「児童福祉法」が令和元年6月に改正され、令和2年4月から親の体罰の禁止と「子ども家庭センター」の機能が強化されたが、出頭や立ち入り調査を拒否する場合には、積極的に裁判所より臨検・捜索の許可状をとり、一時保護で児童の尊い命を守るよう取り組まれたい。児童虐待相談対応件数が年々増加しているが、この1年の件数と状況を明らかにされたい。
4)高齢者が確実に増加する中、一人暮らしや高齢者夫婦の孤立防止のためにも世代間交流のできるコミュニティづくりが必要であると思われる。 独居高齢者が地域のつながりに拒否感を持って孤立しないように、地域に限定されない広域ネットワークにより、多様で選択可能な見守りシステムを構築し対処されたい。
また、介護ヘルパーの不足により、訪問介護事業所の閉鎖という話も聞かれるが、大阪府はどのような対策を考えているか明らかにされたい。
5)平成30年4月に「障害者総合支援法」が改正され、障がい者が自らの望む地域生活を営むことができるよう、「生活」と「就労」に対する支援の一層の充実等が図られてきたが、府内の市町村では、受給サービス日数や時間の上限の有無などで対応に格差が生じている。大阪府では、各市町村で各人の障がい状況等を踏まえ適切に支給決定されるよう助言等しているとのことだが、直近1年で各市町村にどのような助言等を行ったのか明らかにされたい。また、市町村の対応に格差が生じている件について、大阪府としての考えを明らかにされたい。
6)大阪府下の各市町村における「子ども・子育て支援新制度」の取り組み状況の中で、「幼稚園・保育所・認定こども園の職員の処遇改善」ということに関して大阪府としての考えを明らかにされたい。
(2)雇用・産業
1)同和問題をはじめ様々な課題を有する人々の自立のための能力開発等雇用対策について明らかにされたい。
2)障がい者の雇用に関して、令和5年6月1日時点において大阪府は実雇用率3.24%で、法定雇用率(2.6%)を達成しているが、大阪府教育委員会は実雇用率2.09%で、法定雇用率(2.5%)を満たしていない状況です。実態及び今後の対策について明らかにされたい。
3)物価高騰により、年金だけでは生活が苦しい高齢者の就労支援対策について明らかにされたい。
4)大阪府では、奨学金を変換しながら働く若者の負担を軽減するとともに、府内中小企業等における人材確保・定着につなげるため、奨学金返還支援制度の導入を支援する事業を実施されているが、今年度は申請数に達したため受付を終了している。奨学金返還支援制度は企業と従業員の両方にメリットがある制度であるため、本年度の導入を支援する本事業については、来年度以降も是非とも継続されたい。
(3)住環境
1)旧同和地区の公営・改良住宅の耐震・老朽化による建て替えについて明らかにされたい。また、低所得者だけの地域というイメージを払拭するためにもこのような機会を契機に、積極的に払い下げを促進され、民間事業者等の力を活用するなど工夫を行い、公営住宅だけでなく混住化を図るためにも中堅所得者向けの特定公共賃貸住宅やUR賃貸住宅などが混在した、誰もが住みたくなるまちづくりの活性化に取り組んでいただきたい。
2)団塊の世代の高齢化等により高齢者と若者が共存できる「定住魅力あるまちづくり」「人権のまちづくり」「ノーマライゼーション」の理念を取り入れられたい。
(4)女性
1)「おおさか男女共同参画プラン」の昨年の進捗状況を明らかにされたい。
2)「男女雇用機会均等法」により、セクシャルハラスメントは防止の措置を講じることになっているがマタニティハラスメントも平成29年1月から防止の措置を講じなければならなくなり相談窓口の設置が義務化された。
大阪府労働相談センターにおけるマタニティハラスメントに関する令和5年度の相談件数について明らかにされたい。
3)令和3年6月15日より改正ストーカー規制法が一部施行されたが、大阪府が把握されている昨年度の「女性相談センター」の相談件数・相談に対しての対応を明らかにされたい。
(5)人権・文化・啓発
1)大阪府は、令和2年1月22日より「大阪府パートナーシップ宣誓証明制度」を 施行されましたが、各市町村との連携を明らかにされたい。
2)「ヘイトスピーチ解消法」が成立したが、「大阪府人権相談窓口」ならびに、「ネ ットハーモニー」の相談状況・救済方法を明らかにされたい。
(6)教育
1)「道徳教育」において「差別をしない・いじめは悪いこと」などの教育が必要であると考える。学校教育の中で「特別の教科」としての「道徳」が位置付けられたことは、人権尊重ということを理解する機会づくりであると考える。
小学校での「道徳」授業が行われているが、低学年からの「同和問題」についての授業はなされているのか各市町村の実情を報告されたい。子どもたちの道徳心が培われいじめが悪いことと自覚するよう努力されたい。
2)府立学校等での同和問題教育・人権学習の実施状況を明らかにされたい。
3)各種大学及び専門課程専門学校における人権教育・同和教育の実施状況につい て明らかにされたい。
4)昨年度の文部科学省の調査によると、コロナ禍の影響などにより、大阪府下の小学校・中学校・高校の不登校児童・生徒の人数が増加しているとのことですが、その要因(いじめ・家庭の事情など)及び、大阪府教育庁として学校や各市町村教委に対しどの様な指導を行っているのか明らかにされたい。
また、不登校生徒の居場所づくりなどは、どのように対応されているのか、明らかにされたい。
5)日本学生支援機構の奨学金制度は、貧困の連鎖を断ち切るための制度であるが滞納者が増加していることから、第二種奨学金の「所得連動返還型」の導入をはじめ、奨学金制度の成績条項を撤廃し無利子枠を増やすとともに「給付型奨学金」の拡充を要望する。
令和6年度秋から実施される卒業後の収入に応じて返済する「出世払い型奨学金制度」が導入される。現在奨学金制度を利用している全学生を対象にされたい。
大阪府におかれても、若者が経済的事情により将来を諦めることなく自己実現のためにも、奨学金制度の一層の充実について、国に働きかけられたい。
6)学校における性的マイノリティについて、平成28年4月に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について」(教職員向け)の通知がされているが、その趣旨を踏まえ、支援体制や相談体制が確立されるよう学校や市町村教育委員会へ働きかけられたい。
また、改訂された学校教員用の手引書「生徒指導提要」に記載するLGBTなど性的少数者の児童生徒への対応についても注意を払われたい。
以上