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選挙運動の権利を守る大阪共同センター 要望書
要望受理日 | 令和6年10月11日(金曜日) |
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団体名 | 選挙運動の権利を守る大阪共同センター |
取りまとめ担当課 | 選挙管理委員会事務局 |
表題 | 衆院選において公正で自由な選挙の実現を求める要請書 |
要望書
衆院選において公正で自由な選挙の実現を求める要請書
大阪府選挙管理会 御中
2024年10月11日
選挙運動の権利を守る大阪共同センター
構成団体 全大阪労働組合総連合
自由法曹団大阪支部
日本国民救援会大阪府本部
私たち「選挙活動の権利を守る大阪共同センター」は、来るべき衆院選に際し、公正で自由な選挙の実現をめざし、貴庁に要請するものです。
日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」(前文)と謳い、国民の権利として「公務員選定の権利」(15条1項)を定めています。選挙は主権者である国民が国政のあり方を決める重要な機会であり、憲法の定める公務員選定の権利は民主主義の過程において不可欠な重要な権利です。したがって、選挙に関する国民の権利は特に重く尊重されなければなりません。
そして、選挙においては、国民が十全な判断のもとに投票を行うことができるように政党や候補者の政策などの情報が国民に十分に提供され、同時に、国民同士が政治について大いに議論し合うことが必要です。こうした活動は、まさに、民主主義の過程における重大な権利として、言論・表現の自由(憲法21条1項)により保障されています。
ところが、現実には、選挙に関する言論・表現活動の自由は十分に保障されず、不当に厳しい制限が行われています。上記の重大な権利を侵害する行為は許されないことはもちろん、国際人権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約は、「参政権」「意見及び表現の自由」などの権利の享受を規定)にも反するものです。
実際に、自由権規約委員会は、日本政府に対し、「表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」(第5回日本政府審査での総括所見)と指摘し、さらに、法律を改正する前であっても「思想、良心及び宗教の自由あるいは表現の自由に対する権利へのいかなる制限を課すことを差し控えることを促す」と厳しい勧告を行っています(第6回日本政府審査での総括所見)。
公職選挙法では、中央選挙管理会、各地の選挙管理委員会に対し、「選挙が公明かつ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない」(6条1項)と定めています。
以上をふまえ、私たち「選挙活動の権利を守る大阪共同センター」は、公正で自由な選挙の実現をめざし、貴会に要請するものです。
一 言論・表現活動の最大限の保障と、投票率の向上にむけたとりくみを強めること
1 選挙においては言論・表現活動の最大限保障を
投票率の低下が指摘されています。前回2021年の衆院選での投票率は55.93%にとどまっています。主権者国民がみずからの投票で政治のあり方を決定するという憲法の理念からみたときに、投票率の低下は重大な問題です。
その大きな原因の1つは、選挙運動が厳しく制限されているため、国民が選挙において、政治を議論すること、そのための情報が十分に提供されないことにあります。そのため、主権者としての「政治常識の向上」(公職選挙法6条)がすすんでないのではないでしょうか。
選挙において、言論・表現活動が最大限保障されるために、貴会が、その意義を広く市民に周知・徹底することを求めます。また、警察に対しては、言論・表現活動に不当に干渉・妨害しないよう申入れを行うよう求めます。
2 マンションへのビラ配りの権利の保障を
マンションに住む人が増えていますが、選挙の際に、政党や候補者の政策を知らせるビラを国民に届けるという大切な活動に対して、マンションの管理人などがそれを拒否する事態が各地で起きています。自治体によっては、選挙公報を新聞折込していますが、新聞をとらない家庭も増えるなか、誰が候補者で、どのような政策を訴えているのか、十分知らないまま投票せざるをえない(そのため投票に行かない)のが実情です。
なお、民主主義の過程におけるビラ配布は、その政治的主張を広め、また、その議論を行うための伝統的な手法です。インターネットが普及した現代においても、廉価で取扱いが容易であることなどから、その手法の重要性はなお衰えていませんし、それが不当に制約されることがあってはなりません。この点、最高裁判所第2小法廷は、2021年1月22日、マンション敷地内の集合ポストにおいて、市議会報告のニュースを配布した件に関し、管理組合や住民による集合ポストへの投函を行わないよう求める掲示があったとしても、議員活動報告(政治活動のビラ)1枚を集合ポストに入れることで立ち入ることは建造物侵入罪にはあたらないとし、民事上の不法行為にも当たらないとする東京高等裁判所の判断を維持し、その判断を確定させました。いうまでもなく、仮にビラ配布のためのマンションへの立ち入りが刑事法に抵触する行為であれば、民事上も不法行為に該当し、結論が全く異なるものになるため、最高裁は判断を維持することはできません。最高裁が上記判断を維持したということは、最高裁が、ビラ配布のための敷地内立ち入りは合法であるという判断を是認したということができます(また、同趣旨の判決が同年11月11日に確定)。
貴会が、選挙に際し、選挙公報はもちろん、政党など政策を伝えるビラの重要性を広く知らせ、関係者に配布を制限しないように周知するよう求めます。また、上記判決もふまえ、マンションの管理組合等に対し、選挙公報および選挙・政治活動にかかわるビラ(文書)の配布を保障するよう周知することを求めます。
3 投票率を上げるためにキャンペーンなど対策を
投票率を上げるためには、選挙の意義を国民に知らせ、理解を広がることが大切です。同時に、投票する機会を保障する物理的な工夫も必要です。
貴会においては、投票がすすむ環境づくりをすすめるよう、財政的な援助を含めた国などへの働きかけをすすめることを求めます。とくに若者に対しては、教育の場での学習の推進やSNSなどを利用し、選挙の意義を理解してもらい、「選挙に行こう」とのキャンペーンをいっそうはかるよう求めます。
4 選挙運動への制限の撤廃を
憲法および前記の自由権規約委員会の勧告をふまえ、主権者国民がのびのびと選挙に参加できるように、選挙運動への制限を撤廃するなど公職選挙法の改正を、担当官庁として政府に対し意見を出すことを求めます。
二 買収を許さず、厳しい対応を
買収は、「公明且つ適正」な選挙を妨げる最たるものです。裏金事件で国民の政治不信を大きく広がるもとで、買収などは絶対に許してはなりません。買収行為を放置せず、告発するなど厳しく対応するよう求めます。
三 選挙期間中の要求活動の保障を
公職選挙法は、選挙期間中においても、「政党その他の政治活動を行う団体」以外による表現活動を規制していません。この規制は表現の自由を制限する規定であり、その範囲が拡張されてはなりません。
個人の政治活動が制限されないことはもちろんのこと、市民団体や労働組合は、選挙期間中であっても、各団体の取り組み・要求の実現に向けて街頭での宣伝や集会、演説等をすることは、公職選挙法には抵触せず、これらを規制・干渉することは表現の自由の侵害にあたり得る行為です。
憲法で保障された言論・表現活動への規制・干渉を行わないよう求めます。
四 「公明且つ適正」な選挙を妨げる「企業・団体ぐるみ」選挙を許さないこと
企業や団体などが、その構成員等に対し、利益誘導と強要を交えて特定候補者や政党への投票や選挙運動を強いる「企業・団体ぐるみ選挙」は、憲法が定めた「投票の自由」、個人の「思想・信条の自由」を侵害する行為であり、「利害誘導罪」(公選法第221条)にあたる可能性がある行為です。
貴会が、「公明かつ適正」な選挙を妨げるこのような行為を行わないよう、広く周知・徹底すること、とりわけ企業などの関係機関に対して周知することを求めます。
五 「公明且つ適正」な選挙を妨げる謀略ビラや暴力による選挙の妨害を許さないこと
過去の選挙で、特定の政党や候補者・団体を誹謗・中傷する出所不明の謀略ビラ(怪文書)が、投票日の前夜などに全戸配布されるような悪質な行為が発生しています。また、候補者に暴力をふるったり、法定ビラの配布や選挙カーの宣伝活動を妨害する行為も発生しています。
こうした行為は、「公明かつ適正」な選挙を妨げるものであり、公職選挙法の「虚偽事項の公表罪」(235条)、「選挙の自由妨害罪」(225条)にあたる犯罪行為です。
貴会が、このような行為が犯罪であり、行われないよう周知・徹底するとともに、悪質な選挙妨害などについては告発も含め、厳正に対処するよう求めます。
六 国連機関からの勧告をふまえて自由な選挙の実現を
国際人権規約および前記の自由権規約委員会からの勧告をふまえ、不当な制限が行われず、自由な選挙の実現にむけて、貴会が役割を果たされるよう要請します。