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大阪府立支援学校PTA協議会 要望書
要望受理日 | 令和6年10月8日(火曜日) |
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団体名 | 大阪府立支援学校PTA協議会 |
取りまとめ担当課 | 府民文化部 府政情報室 広報広聴課 |
表題 | 要望書 |
要望書
令和6年10月8日
大阪府知事 吉村 洋文 様
大阪府教育委員会教育長 水野 達朗 様
大阪府立支援学校PTA協議会 会長
要望書
はじめに
本協議会は、昭和48年結成以来、府立支援学校に関する幾多の事項を要望してまいりました。府当局におかれましては、多大なるご尽力により、これまで多くの課題に真摯に取り組んでいただき、要望を実現していただきましたことに深く敬意を表します。また、この春には、待望の新しい支援学校が1校開校いたしました。支援学校の過密化軽減に向け、一歩進めていただきましたことに、心より感謝申しあげます。
しかしながら、全国的な都市部の支援学校の大規模化・過密化や老朽化に施設・設備の整備が追い付いていない課題は、府内におきましても同様で、今後も危機的状況は続くと思われます。また、今年度には府立支援学校におきまして、教員による子どもの人権を踏みにじる事案が生起しました。今後このようなことが二度と起こらないよう取組んでいただきますよう、切にお願い申しあげます。そして、障がいのある子どもたちが安全・安心に学校生活を送るためには、通学を保障する制度的な支えや教育・医療・福祉の人的環境整備が、より一層必要な状況にあります。卒業後の進学・就労・生活支援の課題をはじめ、私たちの周囲には、今なお多くの課題が山積しています。全国的には不登校児童生徒数が増加し、府立支援学校においても例外ではありません。
私たちPTAは、引き続き、より良い教育環境づくりに継続して取り組んでいただきますことを切望いたしております。「すべての人に健康と福祉を」、そして誰一人取り残さない世界を地球規模で創生しようとする中、それに先駆け「ともに学び、ともに育つ教育」を掲げ、地域共生社会をめざしていただいたここ大阪で、2025年には大阪万博が開催されようとしています。そのテーマも「いのち輝く未来社会のデザイン」、まさにウェルビーイングの考え方と重なるこのテーマに、希望を強く抱いております。
本協議会では、各学校単位のPTAの共通する切実な要望を取りまとめました。今後、障がい児(者)が豊かな教育を受け、地域社会で活躍しながら充実した生活を送ることができるよう、以下の要望をご検討のうえ速やかに解決されますようお願い申しあげます。
1 教育庁への要望
1.【学校建設関連】
(1)大阪北視覚支援学校の校舎は築60年以上が経過し老朽化が著しく、視覚障がいのある児童生徒にとって危険です。今後の視覚障がい教育の在り方を早急に検討するとともに、建替えを一刻も早く進めてください。
(2)安全で安心な教育環境を実現するため、速やかな新校建設及び既存の施設を活用した分校設立とともに、特別支援学校設置基準に基づく継続的な施策推進を要望します。
2.【施設・設備関連】
(1)大規模災害が発生し、児童生徒が学校に滞在している時は、外部との連絡方法の確保が必須である。防災無線や停電時にも対応できる校内放送設備の整備、安全に避難できる施設設備の改修をお願いします。
(2)多くの学校では校舎の老朽化が進み、部分的な改修では行き届かず、児童生徒の安全安心な教育活動に支障がでています。児童生徒の生命に関わる校舎の老朽化への対策、特にひび割れ、雨漏り、水回り、電気系統設備等への対策は喫緊の課題です。給食室やトイレ等においても、害虫の侵入や配管のつまり等、衛生管理上の問題が生じています。天井や庇が落下した学校もあり、専門的な点検の実施並びに校舎の総点検、建て替え、早急な補修工事、改修工事等とともに大規模改修の計画を示してください。また、各障がい種に応じて、プレハブ校舎・エアコン・トイレの整備を含めた設備の改修についても早急に取り組んでください。児童生徒に健康被害が生じないよう、早急に環境の改善を進めてください。
(3)トイレは児童生徒が学校生活を過ごす中で日常的に使用する施設であり、現在の基準に照らし、洋式トイレ増設や温水洗浄機能付き便座への改修など、清潔で使いやすく、また介助者も安心して介助できるスペースのある仕様に改修してください。また、様々な障がいの状況や特性や多様性(肢体不自由・知的障がい・性同一性障がいなど)にも対応でき、プライバシーが守られるバリアフリートイレの設置も必要に応じて積極的に進めてください。
(4)知的障がい教育支援学校においては、児童生徒数の増加により教室不足が深刻化しています。ホームルーム教室の不足から特別教室の転用をせざるを得ず、小学部・中学部・高等部が特別教室を共有せざるを得ない状況が常態化しています。適正人数での学習環境を早期に実現するための具体的方策とそれに伴う予算措置について、昨年度からの進捗を教えてください。
(5)交野支援学校四條畷校の本校化への取組みと同時に、現在の教育環境の整備の実現を要望します。自校の農園芸作業成果物を用いた地産地消と食育もできる安全安心な学校給食環境の早期実現をお願いします。
(6)もと小学校の校舎を改修して支援学校としているため、廊下に壁や手すりが設置されておらず、肢体不自由があり、体温調整が困難な児童生徒にとっては、適切な教育環境となっていません。廊下に壁面を増設し、手すりを設置するなど、バリアフリー化を進めてください。また、知的障がい教育部門のエレベーターが狭く、車いすを2台乗せることが困難です。緊急時の対応や児童生徒の多様化に対応するため、エレベーターの改修を進めてください。
(7)児童生徒が感情やストレスが高まった際に、パニックになる前に気持ちを落ち着かせることができるよう、校内にカームダウンエリアを整備してください。
3.【教育制度関連】
(1)高校進学後も入院が継続する生徒の学びの保障のために、病弱支援学校に高等部を設置してください。
(2)就職した後も長く働き続けるために、卒業後の定着支援やアフターフォローなどの相談体制構築のための人員配置や、行政(労働・福祉・教育)が一体となり、学校と連携した体制を拡充してください。
(3)軽度の知的障がいのある生徒や、発達障がいのある生徒にとって、高校受験時の選択肢は少ないと感じます。一人ひとりの生徒の特性に応じた学習環境を構築するため、府立高校に支援学級を設置することを検討してください。
4.【教員配置・専門性関連】
(1)近年、児童生徒の障がいの多様化・重度化など、教職員の高い専門性が求められています。学校は児童生徒が安全で安心して生活を送る場所でなくてはなりません。安全安心かつ適切な支援、個々のニーズに応じた指導・支援が十分に行き届くよう、府独自で予算措置を行い、教員定数を増やしてください。また、教員定数見直しに係る国家要望における進捗状況について教えてください。
(2)各校においては、在籍する幼児児童生徒の障がいの重度重複化・多様化が顕著であり、より一層の高い専門性が求められています。
例えば、聴覚支援学校では補聴器に係る業務が多岐にわたるものの、その専門性の育成は自校での努力に委ねられている現状があります。幼児児童生徒への専門的な支援を継続して実施し、必要な時に必要な専門的支援が受けられるよう看護師、臨床心理士、ST、PT等の外部専門人材の常勤配置や配置拡充をしてください。加えて、学習支援員やスクールサポートスタッフを配置してください。
(3)支援教育においては、児童生徒の障がいの多様化・重度化等に対応し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を行うための専門性が不可欠です。各校で専門性が維持され、全ての教職員が児童生徒の実情に応じた適切な指導支援ができるよう、府教育庁の責任において定期的で幅広い研修を実施し、教職員の育成に計画的に取り組んでください。
5.【機器・ICT活用関連】
(1)遠隔地(前籍校)と院内学級をつなぐICT環境を活用した体験(レンタルアバターロボットの活用や、校外でのオンラインによる体験)ができるよう安定した予算措置等をお願いします。
(2)児童生徒には一人一台端末としてタブレットが配備されていますが、教員用のタブレットの配備は進んでいません。また各教室のWifi環境も完全に整備されておらず、環境が整っているとは言えない状況が続いています。児童生徒の学びの充実をさらに推進するため、教員一人に一台のタブレット端末の配備及び各教室の通信環境の整備を要望します。
(3)機器設備の中には老朽化、耐用年数を超えているものが増えてきています。現在の職業学科を安定的に継続し、かつ、職業教育を充実させるため、時代に即した機器やさまざまな実習機械など、施設・設備・機材の整備と更新・整備のための予算を確保・増額してください。
6.【安全確保関連】
(1)高度な医療的ケアを必要とする児童生徒が安全に泊行事に参加するためには、看護師だけではなく医師の同行が必要と考えます。そのために新たな施策として、府内自治体の先行する取組みを参考に、府教育庁と病院等が連携した「医師・看護師派遣システム」を確立してください。
7.【医療的ケア関連】
(1)障がいの重度重複化、および高度な医療的ケアに対応するため、また、泊を伴う行事に同行する看護師を確保するために常勤看護師は必要ですが、定数内任用のため教員数を減らさざるを得ない現状です。児童生徒の教育保障のために、ぜひ定数外配置を実現してください。あわせて、専門職(医師・PT・OT・ST・臨床心理士等)の配置も充実してください。
(2)医療的ケア通学支援事業について、保護者が車両と看護師を探して確保する現システムは、保護者にとって非常に困難で負担も大きい。希望者全員がスムーズに利用できるように、府教育庁が主導して車両と看護師を確保するシステムを構築してください。また、きょうだい児の障がい状況によっては一緒に利用できないことや、当日の体調不良による車両キャンセルが保護者負担となる制度について、見直しを図ってください。
8.【通学区域割】
(1)新校設置に伴う通学区域割の変更によって、居住地とは異なる別の地域にある支援学校への通学を強いられ小中高一貫した教育が受けられない、通学時間の大幅な増加や環境の変化により児童生徒の心身の負担が増加する、地域の資源を活用した福祉サービスや進路選択に支障がでるなどの弊害がすでに生起しています。新校設置に伴う通学区域割においては、保護者の要望を受け入れる機会をつくるとともに、適正な通学区域割に係る再検討をお願いします。さらに、現在の進捗状況や今後の方向性について説明をお願いします。
2 知事部局(福祉部、商工労働部、都市整備部等)への要望
1.【卒業後の進路、社会参加等関連】
(1)府として、障がい者の生活の場をどのようにイメージし、その人たちの生活をどう構築しサポートするのか等についての情報不足を感じており、親亡き後の子どもたちの将来について不安を感じています。障がい児・者を受け入れる施設の地域別設置数の推移ならびに今後の設置予定数をお示しいただくとともに、施設不足に対する府の認識と今後の対応策について教えてください。
また、昨年度設置された医療的ケア児支援センターの利用状況の推移や相談内容、今後の展望についても教えてください。
(2)重度視覚障がいの理療科・保健理療科の卒業生の職域拡大の一つとして、ヘルスキーパー(企業内理療師)を大阪府立の施設で雇用する制度を整えてください。
(3)医療的ケアを必要とする児童生徒が全国的にも増えていますが、卒業後に利用できる施設がまだまだ少ない現状です。医療的ケアに対応できる、看護師の配置のある事業所や施設の拡充・増設をお願いします。あわせて、施設拡充のために、看護師や介護士の処遇を改善し、人材確保が図れるよう福祉施策を進めてください。
(4)福祉型障がい児入所施設においては、原則として満18歳をもって退所することが決められていますが、希望する地域に移行先がなかなか見つからない現状があります。移行期においても強度行動障がいなど重度障がいがある人を含め、希望する地域で社会生活が送れるよう、また親なき後も安心して生活できるよう、グループホームの増設をお願いします。
(5)卒業して就職した後も安心して働き続けるために、障害者就業・生活支援センターと在校時から連携を開始し、就職後の訪問支援や福祉と連携した定着支援の拡充をお願いします。
(6)卒業後の障がい福祉サービスの利用時間が9時30分から16時までの所が多く、親の就業の継続に困難をきたしています。持続可能な人生設計のために、在学時と同様の時間帯(9時から18時)にし、利用者側に配慮した事業を行ってください。
(7)卒業後の過ごし方について、日中一時支援ではフォローされない時間帯があり、本人にとっても保護者にとっても心身ともに負担が大きくなります。放課後等デイサービスも利用できないという現状を踏まえ、府の主導のもと卒業後も利用できる放課後等デイサービスに代わる恒久的な事業の拡充・拡大をしてください。
(8)視覚障がいのある生徒の卒業後の大学等での学びを支援するため、「同行援護」を通学にも利用できるようにするか、「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」を肢体不自由者だけでなく高度な視覚障がい者にも利用できるよう国や市町村等に働きかけてください。
(9)卒業後の過ごし方について、生活介護施設やスタッフの数が不足している、利用時間が短く不安を感じるといった課題があるため、改善をお願いしたい。また、ショートステイについても利用しやすいものとなるよう、充実させてください。
(10)学校卒業後は、自宅で生活する時間が在学時よりも長くなります。障がい種を問わず、生徒一人ひとりの状況に応じた進路先の確保ならびに幸せな生活を過ごせるよう余暇活動の充実を図ってください。
(11)支援学校高等部を卒業した後、すぐに就労することは難しく、豊かに学ぶことを通して自立に向けた準備を進めることは大切です。自立訓練と就労移行支援を実施する福祉事業型の施設を開設いただくとともに、利用年数についても就労に定着できるよう時間をかけていただきたい。
2.【健康・安全、地域福祉関連】
(1)普段からショートステイを利用することは、緊急時以外にも、保護者がきょうだい児と向き合う時間を取るため、また保護者自身のレスパイトのために大きな意味があります。しかしながら、事業所の数はまだまだ不足しており、保護者の急病などの緊急時ですら入所できる施設が見つからない状況があります。府として、市町村の体制整備を後押しするとともに、国に対してもショートステイの重要性を訴えて、加算額の引き上げや増設に向けた国の施策について要望するとともに、現在の進捗状況について教えてください。
3.【福祉医療制度関連】
(1)聴こえのレベルに関係なく、また補聴器か人工内耳かの区別なく助成を一律に広げてください。学齢期の子どもをもつ保護者にとって経費負担は極めて大きく、また、補助が地域によって異なるため、府下の市町村で統一した体制整備をしていただけるよう働きかけてください。
(2)令和4年5月25日に公布された『障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法』に基づき、公共交通機関利用時に緊急時の情報をリアルタイムに取得できるように整備してください。また、改札口や券売機に駅員が不在となる時間帯はインターホンだけでなく音声ガイド以外での情報保障であるモニターや文字表示ができるようにしてください。