ここから本文です。
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(1)
(1) (2) ※2ページに分割して掲載しています。
要望受理日 | 令和6年6月20日(木曜日) |
---|---|
団体名 | 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 |
取りまとめ担当課 | 府民文化部 府政情報室 広報広聴課 |
表題 | 要求書 |
要望書
2024年6月20日
大阪府知事 吉村洋文 殿
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議(障大連)
議長
事務局長
要求書
貴職におかれましては、障害者の自立と社会参加の推進に日々尽力しておられることと存じます。
私達、「障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議」(障大連)は、1980年に府内の障害者団体、親の会、労働組合、民主団体が集まり結成され、障害者自身の立ち上がりを基礎に、すべての障害者の自立と完全参加をめざし活動を進めてまいりました。
2020年から始まった新型コロナ禍は、一定沈静化したということで、昨年5月に感染症法での位置づけが2類相当から5類に移ったものの、結果的には昨年夏から冬にかけては感染の波が続き、今年度になりようやく治まってきた印象です。
この約4年の間、障害福祉の現場は多くの障害者・従事者が感染し、それでも地域生活を続けるため、各団体がそれこそ「命を掛けて」、障害者への支援体制を継続してきました。その中でも残念ながらお亡くなりになった方もおられます。今年3月(年度末)で大阪府の感染対策や仕組みほとんど廃止されましたが、再度のコロナ拡大や新たな感染症の蔓延に備え、この4年の教訓を活かしていかなければいけません。感染拡大時においても、基礎疾患等がある障害者が優先的に入院できる仕組みや、介護が必要な障害者が健常者と同じレベルの適切な医療環境が得られるよう、今から想定して準備する必要があります。
また昨年度は報酬改定に向けた最終調整の年でした。今回の改定は財務省から「過去10年間で障害福祉サービス予算額が2倍に増え、持続可能性を確保するためにはサービスの質を確保しながら総費用額を抑制する取組が不可欠」とされ、特に生活介護やグループホームに対して「報酬体系の見直し」まで強く求められました。
生活介護では財務省から「短いサービス提供時間で高い報酬を得ている」と問題視され、従来の短時間利用減算(5時間未満の利用者が半数以上の場合3割減算)から、更に「1時間刻みの報酬体系」へと大きく変更されました。盲ろう、精神、重度障害など長時間の利用が難しい障害では事業の存続に関わる大問題となることを、障大連からも厚労省に訴え続け、最終的には障害特性上やむを得ず短時間利用になる障害者は、「最大でプラス2時間を加えられる」ことになりました。
またグループホームについても財務省から「サービス提供時間の実態に応じた報酬や、ヘルパー利用時間に応じた報酬体系に見直すべき」と示されました。これも厚労省へ訴え続けましたが、最終的に世話人配置基準は6対1をベースにされ、各区分の報酬も下げられるなど大きく変更、ヘルパー利用は継続されたものの8時間以上利用した日は(土日・祝日も含め)5%減算されることになりました。一方で3年前から問題になっていた「通過型グループホーム」については、各団体からの「グループホームを訓練施設にするな」との問題提起を受け「新類型」にすることが回避されました。改正法の附帯決議に「過度な誘導につながないよう」とあるよう、制度に枠をはめられるのではなく、障害当事者が希望する暮らしを実現することが重要です。
財務省は支援現場の実態を知らないまま、収支差率などを根拠に安易に予算を削っていこうとしますが、それに対して厚労省が反論することができなくなっています。今回のように「儲け本位の事業者」の影響で、その事業種別の報酬が切り下げられることが続くと、事業の趣旨がゆがみ、障害者の自立を支えてきた事業所が、まず大きな打撃を受けることになります。
大阪府として、今回の改定経過を踏まえ、各事業への影響・問題点を把握し、国に対して、どんな障害があろうと地域で自立を進められるような、報酬体系とその為の基準づくりの要望を出すなど、積極的な取り組みが必要です。
今年元日に起きた能登半島地震では地域性や、地盤への影響が大きく長期間断水が復旧されないなど、地域の住民や障害者にとって非常に厳しい状況が続いています。大阪においても豪雨・台風による被害や、また災害に備えるための住民の避難等は、このところ数年間隔で起きています。南海トラフ地震への警戒も引き続き言われている中、より一層、防災と福祉の連携の強化、福祉連携による個別避難計画の作成を進めていかなければなりません。
2022年の障害者権利条約の対日審査では「脱施設化」が強く勧告されていますが、厚労省は脱施設化の方向にカジを切ろうとはせず、大阪府でも今なお「何十年もの長期入所、一生施設の状態」が続いています。私達は入所施設での長期入所状態を解消し、地域の緊急ケースの一時的な受入れを進めることも想定し、最終的に脱施設を実現するため、今後施設を「通過型・循環型」にしていくことを提起し、大阪府は昨年3月に施設のあり方の提言「地域における障がい者等への支援体制について」を作成しました。提言の中では、今後入所施設に3つの機能(集中支援機能、生活支援機能、緊急時生活支援機能)を設けて、施設入所を有期限化し、地域の緊急ケースの一時受入れを進める方向性が示されました。しかし府の第7期障害福祉計画の地域移行・施設入所者削減の数値目標は、国が示した目標よりも低く設定されており、今後の地域移行の具体的方策について、大阪府の姿勢をより強く問いただしていく必要があります。
重度化・高齢化の課題については、各地域で8050問題や生活困難事例がますます増えており、地域生活支援拠点機能の強化や重度障害者等の受け皿、相談支援事業の基盤強化などが喫緊の課題となっています。特に相談支援については指定事業所がなかなか増えず、相談員1人事業所も多い中、大阪はセルフプラン率が全国で最多の状況にあり、今後の地域移行の推進、拠点機能の強化に向けて一層の基盤強化策が求められています。
障害者への差別・虐待事例については、国の障害者差別解消法が今年4月から改正施行され、「事業所における合理的配慮」が義務化されました。大阪府においても改正施行を受け、各事業種において「どんな場面で差別が起きやすいか、どんな合理的配慮を実施すべきか」ということを更に具体的に啓発し、差別を未然に防いでいかなければなりません。また平穏に暮らしてきたグループホームがマンション住民から退居を求められた裁判は現在も継続中ですが、グループホームや障害者の地域生活について、一層の社会的な啓発活動が必要と言えます。
この4月から、精神科病院での「虐待通報義務化」が実施されましたが、入院・通院する当事者への周知を早急に進めなければなりません。また「入院者訪問支援事業」をこれまでの大阪の実践を活かし、拡充していくことも必要です。更には入所施設において日常的な虐待も疑われる傷害事件が発生するなど、大阪府として病院・入所施設等での障害者虐待を防ぐ取り組みを進める必要があります。
旧優生保護法による強制不妊手術の問題では、一時金支給法施行から5年が経過し、請求期限は更に5年延長されました。しかし一時金認定者は大阪府では被害者全体のたった2%に過ぎず、国に抜本的な法改正を働きかけることと併せて、一人でも多く被害者を掘り起こし救済につなげるよう、大々的な周知啓発活動や医療機関・福祉施設への再調査を実施するなど、あらゆる手立てを講じていかなければなりません。また障害者権利条約では、インクルーシブ教育を更に推進し分離教育を終わらせるよう強く勧告されていますが、府では新たに支援学校が増設されようとしており、交通課題でもコロナ禍も影響して無人駅が更に広がるなど、バリアフリー化に逆行した状況となっています。「権利に関わる問題」としてこうした動きにしっかりと歯止めをかけていかなければなりません。
大阪府では昨年度、第7期障がい福祉計画の策定ならびに第5次大阪府障がい者計画の中間見直しが行われました。第5次計画では、「障がい者がその存在を脅かされることなく、また、障がいを理由として差別を受けたり、嫌な経験をすることなく、誇りと尊厳を持って、社会を構成する一員として、当たり前に生きていける地域を育んでいくことが重要」と記載されています。
この記述をスローガンに終わらせず、実現していくために、大阪府が具体的な施策や仕組みづくりを積極的に行うことが何よりも必要です。以上の認識に立ち、以下各課題について要求いたします。
【障害者施策全般に関する要求項目】
1.3年後の障害福祉サービスの省令・報酬改定に向けて
今年度の省令・報酬の改定は、生活介護の時間単価導入や、グループホームの単価の切り下げなど、障害者の地域自立に大きな影響を与えている。
数字で分かりやすく表れる収支差率を、重要な判断材料とした報酬改定は、地域で生活する障害者の生活実態と大きくかけ離れたものとなった。最終的に例外規定で調整せざるを得なくなったことは、制度改定として不適切である。
改めて今回の報酬改定について、府の認識を明らかにするとともに、3年後の報酬改定に向け、各事業所での利用者の障害程度や支援の必要性、生活の質と必要となる支援体制等と合わせて、きめ細かく分析して検討するよう、国に求めること。
2.団体応接の持ち方について
大阪府との団体応接は過去30年以上に渡って、障がい福祉室からは各課長が出席してきたが、2021年度から説明もなく一方的に課長が全員欠席するようになった。私達の団体応接は、多くの障害当事者が参加する形で行っている。その理由は「不充分な制度状況の中で、地域で生活する障害者の切実な声を、真摯に直接聞いてもらうこと」が施策を創る基礎になると考えているからである。直接聞くことの意義を捉え直し、広範な施策の検討を進めるためも、再度課長職の応接出席を強く求める。
3.大阪府の感染予防計画について新型コロナの教訓を活かして
新型コロナにおける障害者への対応、特に一人暮らしをはじめとする、地域での自立生活を行う障害者は、少数者として想定外に置かれたせいか、極めて不十分なものであったと言える。
今年3月に、大阪府の感染予防計画が改定された。「入院」「宿泊施設の確保」などの項目があるが、介護が必要な障害者の優先的な入院、宿泊施設の利用などができるようにするべきである。
今回のコロナ禍の教訓を活かし、地域生活を行う障害者が、「有事」の際も健常者と同じように医療が利用できるよう、障がい福祉をはじめ全大阪的な課題として認識し、具体的な対応を検討すること。
4.大阪府立福祉情報コミュニケーションセンターについて
福祉3センター等の統合移転により設置された府立福祉情報コミュニケーションセンターでは、駐車場(4台分)が決定的に不足することは最初からわかっていたことであり、設計段階から問題を訴えてきたところであるが、未だに何ら改善がなされていない。現状では最大10台程度も詰め込む時があり、出庫の際に車を移動してもらう必要があり、特に管理者のいない18時以降は不都合が生じている。
優先利用の呼びかけなどの運用では限界があり、台数を増やす抜本的な改善が必要である。駐車場の区画変更・使用地拡大、近隣の駐車場利用等、具体的な改善策を示すこと。
【介護に関する要求項目】
入院時についてはいまだに新型コロナ感染をおそれて面会や支援が入ることを拒んでいる医療機関が多数ありますが、一般的な病院の面会規制などが緩和されても、まだ入院中の障害者への必要な支援がなかなか認められない状況が続いています。
夜間支援の問題では、2021年に厚労省から「手待時間も労働時間であり支給決定すべき」と通知されましたが、府内市町村では手待時間は対象とされず、直接的な身体介護を行った時間だけ支給決定している所や厳しい条件付けを行っている市町村がまだまだ多くあります。
この間の重度化・高齢化の進展や、医療的ケアなどの重度障害、行動障害の人たちの地域移行等の取り組みが進む中、重度訪問介護の利用ニーズが高まっています。しかし多くの市町村で、障害種別による格差(知的障害者)や「見守り」の不当な制限(中抜き)などが多く残されています。地域移行を進めるためにも必要な支給決定時間数を確保するよう、市町村に対して強く働きかけていくべきです。
またこの間、国が制度化した「雇用と福祉の連携による重度障害者の就業支援」や「大学修学支援」については、大阪府内での利用が進みつつありますが、実施市はまだ少なく、実施されている市町村でも不当な制限や過重な利用料を課していたりします。どこに住んでいても就業や大学修学ができるよう市町村に対して積極的な促しを行うべきです。
そして新型コロナによる制約が解消される中で活性化してきている移動支援については、非合理な「中抜き」や「利用禁止」など運用に関する市町村格差がまだまだ大きく残されています。とりわけ、地域移行が課題となっている入所施設の障害者の移動支援の利用の活性化を図ることは重要です。
介護保険との併給については「一律に介護保険を優先するのでなく個々の状況により適切に判断。介護保険で不足する場合は障害福祉サービスを支給する」という国からの通知を踏まえ、併給を不当に制限する市町村ルールの変更を促すべきです。特に盲ろう者など介護保険での対応が困難な場合は決してサービス利用を失うことのないよう、積極的に障害福祉サービスを継続すべきです。
以上の認識に立ち、以下要求します。
1.障害者の入院時の問題
1)この間のコロナ禍での経験(骨折・窒息、コミュニケーション問題など)を踏まえて、全病院に対して院内での重度訪問介護や入院時コミュニケーションサポートの利用の勧奨や不適切な対応を行わないよう障害の理解を進める取り組みが一定進められてきているが、大阪府内の医療機関及び障害福祉相談支援事業者等に対して医療と福祉の連携を推し進めるよう更なる周知と啓発を図ること。
2)また、重度訪問介護利用者以外でも、入院時の支援が必要な人がたくさんいることを踏まえて、府内全市町村に対して入院時サポート制度を実施するよう強く働きかけること。
2.通勤・勤務・通学の保障について
1)「雇用と福祉の連携による障害者就業支援」について、利用を希望する障害者が速やかに利用できるよう、早急に制度実施するよう全市町村に働きかけること。また実施市によっては高額な利用料や「勤務先と介護事業所が同一法人である場合は利用できない」等の制限問題が生じていることから、当該市に早急に是正するよう強く働きかけるとともにこれらの不適切な制度設計が広まらないよう注意を払うこと。
2)大学修学支援について、入学時からスムーズに利用するために、全市町村に対して早急な制度実施を働きかけること。とりわけ、府市の障害福祉と教育部局が連携して、高校在学中の早い段階から利用予定者を把握し、万一、本人が居住する市町村が当該制度を未整備であった場合、入学までに制度の整備を促し、本人並びに障害福祉相談事業者等、当該大学での事前準備を円滑に行うための周知啓発を進めること。
3)小中高の障害児の通学支援について市町村格差が大きいため、障害と教育部局が連携して教育の通学支援事業や福祉の移動支援の活用等により、全市町村で通学を支える制度を設けること。
とりわけ高校通学について、親による負担をなくし、福祉サービス事業者が参加できる仕組みを作るよう十分配慮するよう市町村及び関係教育部局に働きかけること。
3.長時間介護の支給決定時間数の問題
1)国が労基法令に基づいて示した「労働時間として取り扱わなければならない手待時間も報酬の対象とすべき」という通知、そして重度訪問介護には「見守り」がサービスとして位置づけられていること、及び今回の報酬改定において国庫負担基準改定(重度障害者への基準の大幅引き上げ)の趣旨について府内市町村に対して注意喚起し、見守りなどの手待時間の時間数も、必ず支給決定するよう強く働きかけること。
2)重度障害、強度行動障害、医療的ケア、重度心身障害のケースに対して、どの市町村でも適切に支給決定されるよう、市町村に具体例を示して強く働きかけること。とりわけ強度行動障害のある人等については、一人暮らしを希望する場合に可能となるように、個別対応や見守り等で必要な時間数を保障するよう働きかけること。
4.介護保険との併給問題
1)介護保険の併給に際して、国通知に基づき「介護保険併給によってサービスの引き下がりや、通所先の変更を強制される等の不都合を生じてはならないこと」を全ての市町村に徹底し、正しいルール作りを確実に促進していくこと。また、併給トラブルの未然防止に向け、介護保険関係者と障害福祉関係者が適切なケアプラン作成まで確実に理解できるよう研修を更に強化すること。加えて、市町村における適切な対応へと改善するまでの間(「不適切な市町村ルール」がある場合)については非定型協議を積極的に活用することの提示や必要に応じた大阪府からの助言などを行うこと。
2)盲ろうや強度行動障害、医療的ケア等の障害状況・障害特性によって、ケアマネ・介護保険事業所での対応が困難である場合は、サービスが利用できなくなることを回避するために、引き続き障害福祉サービスで対応可能であることを、市町村に対して周知徹底すること。
5.移動支援の利用制限の見直し
制度改定により日中活動前後の通院等介助利用は認められることとなりましたが、まだ「送迎と区別がつかない」などの理由から日中活動前後の移動支援利用を制限する市町村が残っています。
市町村格差のある下記課題について、府として文書で「利用の必要性」を示し、市町村に早急な是正を働きかけること。
「施設入所者の移動支援利用の拡充」「宿泊旅行でのホテル内介護の取扱い(ホテルに入ってからの介護)」「日中活動前後の通院等以外の利用(三角形ルール)」「移動支援での中抜き問題」「移動支援での通院の利用(グループホーム月3回以上対応含む)」「通学の取扱い(通年長期の柔軟な解釈)」「自転車での併走」など。
6.盲ろう者の通訳・介助、高齢化課題への対応について
1)国に対して通訳・介助制度の個別給付化を求め、日中活動も含め場面を問わず利用できる長時間の通介制度や高齢化対応での二人派遣の実施を求めること。
2)府では通介制度での二人派遣の利用範囲の拡大を行うこと。また、少なくとも通介と同行援護や重度訪問介護等の併用による二人介助を積極的に進め、事故を防止することを徹底すること。
3)全利用者への状況調査の完全実施とそれに基づく施策の在り方検討をしっかり行うこと。
ひやりはっとの活用や苦情窓口機能の強化、盲ろう者通訳・介助者養成研修への反映、介護保険併給についてのガイドラインなどに留意すること。
4)盲ろう者に関する介護保険適用については、その障害特性から特に十分に配慮することが必要であることを全市町村に連絡すること。
5)盲ろう者の介助に入る事業所を確保するために簡単なコミュニケーション方法や適切なケアプランの作成について、友の会とも連携して事業所への啓発研修を実施すること。
【グループホーム等に関する要求項目】
国連の総括所見においては、施設収容を廃止するため、予算配分を入所施設から地域での自立した生活支援に振り向けることが勧告されました。しかし2024年度報酬改定においては、「通過型」の類型創設は見送られましたが、「グループホームは増えすぎ」として、実態とかけ離れた世話人の6対1配置への変更が行われ、基本報酬が削減されました。とくに精神障害者のグループホームでは重度対象の加算も実質利用できず、たび重なる報酬削減が大きな打撃となっています。ヘルパー併用では、長時間利用者の本体報酬の減算も導入されました。地域への予算の振り向けとは真逆の実態があります。
また、日中支援型グループホーム「恵」におけるそまつな食事と食費の過徴収という、会社ぐるみの虐待が大きな問題となっています。指定取り消しにより、全国100のグループホーム、2000人の入居者に影響が及ぶとされ、一刻も早い具体的な救済策が求められます。国でもグループホームの質の確保は大きな課題としてとりあげられ、事業所ごとに「地域連携推進会議」を設置することが盛り込まれ、2025年度から義務化されることになりました。しかし推進会議は、プライバシー侵害や新たな地域とのまさつなどの懸念もあり、また質の確保のための他の方策は今後の課題とされ、現状打開には程遠いと言わざるを得ません。良い支援を可能とするだけの財源や人材の確保、大規模化をすすめた日中支援型の新規認可の停止、法律による定員へのしばりなど、大胆に進める必要があります。
大阪では「大阪府重度障がい者グループホーム等整備事業費補助金」が今年度も継続されていますが、大阪の10人ルールの厳守、生活支援の指針の明確化や事業者研修、様々なニーズにこたえる質の高いグループホーム拡充のための府のさらなるバックアップが必要です。報酬改定議論では、グループホームの総量規制も課題にあがりました。入所施設を減らし質の良いグループホームをふやすため、さらにニーズの把握をすすめ、必要充分なグループホーム確保のための大阪府の計画が求められます。
なお3年以上に及ぶ新型コロナの大流行下、大阪は死亡者数が全国一となりました。クラスターになりやすいグループホームでは、特に厳しく対策をとることと引き換えに閉塞したくらしが続いたため、少しずつ外出や会食など、あたりまえのくらしの取り戻しに取り組んでいるところです。今後の様々な感染の大流行を想定して、弱者を念頭においたしっかりとした準備を、切に要望します。
以上の認識に立ち、以下要求します。
1.新型コロナ等の感染症対策について
1)グループホームやヘルパー派遣事業所など、福祉事業所に義務づけられた平常時における感染症対策に関する研修・訓練へのバックアップや指導を充実すること。
2)大流行が危惧される状況になった場合は、福祉事業所における定期スクリーニング検査への支援を、すみやかに再開すること。
3)大流行を想定して、重症化リスクの高い障害者がすみやかに安心して入院できるよう、入院調整をスムーズに行う大阪府全体のしくみを確立しておくこと。
4)罹患障害者の早期の正しい隔離をすすめ、また安心して療養できるよう、宿泊療養施設開設時を想定して、ヘルパーやグループホーム職員などの支援つきで利用できるための方策を、あらかじめ検討しておくこと。
2.第5次大阪府障がい者計画の推進と大阪府の具体策および国への要望について
1)1ホームの定員を短期入所を含めて10人以下、日中事業所・高齢グループホームとの併設禁止を原則とする「指定方針」について、府内全市町村と改めて共有・徹底すること。また複数法人や複数法人の偽装による申請等の「悪質なすり抜け」実態を共有、具体的に注意喚起すること。
2)新規指定時に、指定権者と開所地元自治体で情報共有する仕組みを、大阪全体でつくること。
3)大阪府下全域の日中支援型の実施状況(指定自治体や箇所数)を示すとともに、協議会による検証内容を集約し、支援の質等運営実態を明らかにすること。
4)グループホームにおいて、地域のあたりまえのくらしとして支援すべきこと(食事・入浴・外出など)と禁止事項(募集時点での重度者排除・門限など)を明示し、事業者研修を行うこと。
5)区分が低く認定される傾向の精神障害者グループホームについて、報酬改定の影響を含め、実態調査やヒヤリングを実施すること。また、安定運営や拡充のための府独自の方策を検討すること。
6)個人単位のヘルパー併用について
・政令・中核市を含む府下自治体と連携し、府下全域の個別のヘルパー併用の実態(人数・利用時間等)、支給決定状況やガイドラインを示すこと。
・長時間利用減算について、次期改定を待たず減算対象から休日を除外するよう国に要望すること。
7)大阪府として、年限付きでない「サテライト型」あるいは「グループホーム圏」(ひとり住戸)など、多様な物件確保や支援形態をすすめること。また国に対し、サテライト型の年限撤廃、地域移行特別加算の在宅からの入居支援への拡充、自立生活支援加算の更なる拡充を要望すること。
8)各自治体のグループホームにおける重度対応の実態を把握しなおし、大阪府第5次計画の見込み量を上方修正すること。また今後の必要量について、幅広いニーズを考慮し検討をすすめること。
9)入院時支援加算の初日からの算定、日中支援加算の休日の算定を、国に要望すること。
10)大規模化が質の低下の大きな要因となっていることをふまえ、また国連の勧告にもとづき、入所施設の解体にむけた目標設定とグループホームのあり方の検討を行なうよう国に強く求めること。また、現行でも8人以上は大規模減算の対象となっていることをふまえ、定員を7人以下、最終的には4から5人までとするなど、段階的にでも引き下げるよう、法令整備の検討を国に求めること。
3.グループホームの物件確保策、コンフリクトへの対策について
1)グループホームにおける重度障害者の支援の拡充のため、「大阪府重度障がい者グループホーム等整備事業費補助金」を、継続・恒久化すること。
2)空き家活用による営利目的のグループホームや大規模化が進む実態もふまえ、公営住宅利用の拡充とともに、借り上げ型公営住宅によるグループホーム活用や、「隣接住戸2戸1化改修」などのグループホーム仕様など府独自のモデル事業を進め、国にも提言すること。
3)入居者の障害支援区分の変更や入居者の変更による消防法上の6項ハからロへの変更にあたっては、必要充分な移行期間を検討すること。また即時の違反公表の対象としないこと。
4)グループホーム追い出し裁判に見られる消防法令・住宅法令の影響やコンフリクト問題を含む物件確保に関する実態を調査し、入居拒否につながらない対策について具体的な検討を行なうこと。また府障がい者計画の策定と連動し、物件確保に関する実態調査を定期的に実施すること。
5)あいつぐコンフリクト問題をふまえ、大阪府の啓発チラシなどを活用し、UR、家主・宅建業者・管理会社・保証業者、地域や公営住宅自治会等への啓発をすすめること。
6)大阪府営住宅、および政令市を含む大阪府下市営・町営住宅の建て替え計画、ならびに該当住宅におけるグループホームの利用状況、および対応状況を明らかにすること。
7)公営住宅利用グループホームが建替えに際し新築への入居から排除されることのないよう、「目的外使用」の見直しを国に要望するとともに、個別事例において適切な対応を図ること。
【地域移行・地域生活に関する要求項目】
私たちはこれまでも「何十年もの長期入所、一生施設の状態を解消するために、入所施設を循環型・通過型にすること」を求め続け、府は昨年3月に「地域における障がい者等への支援体制について」(提言)をまとめ、入所施設に3つの機能(1.集中支援機能、2.生活支援機能、3.緊急時生活支援機能)を設けていく方向を示しました。しかし、昨年度の府障がい者福祉計画の数値目標では、地域移行は国と同じ「6%以上」、施設入所者削減は国目標5%よりも大幅に低い「1.7%以上」とするとされ、本気で地域移行を進めていく気があるのかと疑わざる得ない状況でした。
今回の報酬改定では、入所施設に対し「すべての入所者に対して、地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向を確認し、希望に応じたサービス利用にしなければならないことを運営基準に規定する」とされ、担当者をおいて意向確認マニュアルを策定するという非常に大きな内容が示されました。しかし、意向確認については入所者が予め選択するための情報を知っておくことが前提であり、意思決定の支援を踏まえ、外部の相談支援機関等と連携していく必要があります。
また、府においては昨年度から施設待機者解消に向けた「地域生活促進アセスメント事業」が始まりますが、実際に動き出す来年度に向け、地域移行に実績のある地域団体と連携する必要があります。
精神科病院の虐待防止のための法律が4月から施行されたことを受け、府では一層、虐待防止、早期発見、再発防止に向けた取り組みを進め、患者自身も通報できることの周知や、虐待が強く疑われる場合は事前の予告なしに実地指導するなど指導監督の強化が必要です。また今年度から府でも実施される入院者訪問支援事業を有効に活用し、人権擁護、地域移行を積極的に進めなければなりません。
また、地域移行や意思決定支援を進めていくには、施設・病院と地域の「つなぎ役」である相談支援基盤の拡充が必須となりますが、未だ府内の相談支援事業所は圧倒的に足りず、相談員1人事業所も多くセルフプランも全国最多です。今回の報酬改定で相談支援報酬は一定改善されてきましたが、1人事業所には殆ど恩恵なく、複数体制になるため方策が必要となっています。拠点コーディネーターの配置を評価する加算もできましたが、この仕組みを推進し、地域の8050問題や虐待・緊急ケースへの対応、地域移行の推進等、府としても拠点機能を一層強化していかなければなりません。
生活介護においては、時間単位で大きく減算されることになりました。特に盲ろうや精神、重度障害等、障害特性上やむを得ず短時間利用になる場合等での配慮規定が設けられましたが、府として各市町村での取扱いが異ならないよう柔軟対応を徹底することが必要です。また近年激しさを増す豪雨災害に備えて、垂直避難場所の確保を更に推し進めるとともに、市町村に対して福祉との連携による個別避難計画の作成等、個々の命を守るために具体的な避難対策を強化していく必要があります。
以上の認識に立ち、以下要求します。
1.地域移行支援の報酬等に関して
1)重度化・高齢化に対応した地域移行支援の充実に向け、国に対して以下要望すること。
・重度障害者の地域移行の基盤整備がさらに必要となることから、重度者の地域移行支援報酬を設定することや、体験中の重度訪問介護・行動援護の併用を強く求めること。
・地域移行支援契約前の「前段階支援」として体験外出等の地域移行のきっかけとなる仕組みの制度化、体験加算15日制限の撤廃と増額、施設・病院への交通費保障も引き続き要求すること。
・重度者の移行の受け皿を増やすために、グループホームの地域移行特別加算の対象者や適用年数を拡大するとともに、長期入所・入院の結果65才に達していても、移行後に必要な障害福祉サービスを柔軟に利用できるよう明確にすること。
2)障害児施設の地域移行では相談支援の関わりもなく不適切な対応が行われたり、措置停止されず地域移行支援・体験利用ができないケースも出ていることから、相談支援が早くから関わり、体験時には毎回措置停止することなど、児童部局・児施設と認識を共有し問題の発生を防ぐこと。
2.大阪府での地域移行取り組み・虐待防止の推進に向けて
1)府「提言」の推進に向けて、各市町村の相談支援体制の充実強化のための研修のみならず、各市町村の基幹センター等の相談支援事業が連携した施設訪問活動の実施、入所者の地域移行の意向確認の際に、施設外部の相談支援事業所が連携して意思決定支援をするなどの仕組みの導入、ならびにセルフプランの解消、地域生活体験・地域移行支援の展開について具体化すること。
2)「府地域生活促進アセスメント事業」について、重度者の地域移行・地域支援実績のある団体の取組みを参考にしてツールやマニュアル作りを進め、重度者への対応を着実に進めていくこと。
3)地域移行の受け皿の育成・バックアップに向けて、重度・行動障害のグループホーム等での支援状況を把握し、広範な事業所に対する受入れ研修やスーパーバイザー派遣の仕組を作ること。
4)岸和田光生療護園での利用者死亡事件を受け、当該施設における事実解明を進めるとともに、府内民間入所施設において、虐待や日常的な不適切処遇が起こらないよう、これまでの指導等に加え、実効的な手立てを行うこと。また府立砂川厚生福祉センターの事故について今年4月に検証報告書が出されたが、改めて今回の事故についての見解を示すとともに、府内の全障害者関係施設で、同様の事象が起きないよう、事故内容・再発防止等の周知を徹底すること。
3.精神障害者の地域移行・権利擁護について
1)府内精神科病院では1年以上の寛解・院内寛解の方500余名が未だ入院中であり、地域移行対象者として早急に退院に向けた取組を、行政・病院・地域で一丸となって進めること。
2)今年度から始まる入院者訪問支援事業の府の取組みが、より効果的に取り組んでいけるよう予算の確保、精神科病院への周知、実施団体との話合いを進めること。
3)府内精神科病院への改正法の周知について、虐待防止のために病院側、医療者だけでなく、虐待を受けた患者や家族、関係者からも通報できることを積極的に周知していくこと。
4.相談支援について
1)相談員1人事業所が非常に多く廃業が相次いでいることを受けて、相談員を複数配置してゆけるよう、1人事業所への支援策として、拠点機能を担う複数事業者の協働による機能強化型報酬の算定等の方策をわかりやすくまとめ、各市町村、事業所等に周知・サポートすること。
2)府の初任者研修、現任研修、主任相談支援専門員の受講枠を拡大するとともに、身近な地域で初任者研修が受講できるよう指定研修事業者の拡大に向けた仕組み作りを検討すること。
5.地域生活支援拠点等について
1)地域での緊急ケースへの迅速な対応や地域移行の一層の促進に向けて、地域生活支援拠点機能を強化していくために、報酬改定で新設された地域生活支援拠点等機能強化加算を活用し、市町村と連携して全市町村で拠点コーディネーターの配置を推進・バックアップしていくこと。
また、拠点コーディネーターを配置した事例を集約し、好事例を積極的に周知すること。
2)地域生活支援拠点機能の強化に向け、とりわけ地域の緊急事例・困難事例等に迅速に対応できるようにするために、入所施設での受入れだけではなく、グループホームや通い慣れた日中事業所での緊急受入れも可能としている市町村事例を周知するとともに、「府基盤整備促進ワーキング」を再開し、府として各市町村の地域支援拠点機能の充実強化策の検討を進めること。
6.防災対策について、近年の猛烈な風水害や地震に備え、要支援者が直ちに上階に垂直避難できるよう、学校校舎の他ホテル、公的施設、物販店等の避難所を幅広く確保し、時間的余裕をもって事前開放することや、要支援者が実際に利用できるか現地検証し必要な設備・備品を整えておくこと。また個別避難計画の作成にあたっては、全市町村に福祉専門職と連携した計画作成を強く勧奨するとともに、福祉避難所への直接避難や要支援者名簿の中軽度者への拡大も働きかけること。
7.生活介護で今年度から1時間刻みの報酬が導入され、障害特性による短時間利用等での配慮規定も設けられたが、そもそも精神障害等では長時間利用が困難な実情があることを十分ふまえ、柔軟に対応するよう市町村に徹底しておくこと。