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更新日:2024年10月10日

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大阪府中小企業家同友会 要望書

要望書受理日

令和6年10月3日(木曜日)

団体名 大阪府中小企業家同友会
取りまとめ担当課 府民文化部 府政情報室 広報広聴課
表題 2025年度(令和7年度)大阪府中小企業政策に関する要望と提言

要望書

2024年9月5日

大阪府知事 吉村洋文 殿

2025年度(令和7年度)大阪府中小企業政策に関する要望と提言

大阪府中小企業家同友会

<大阪の中小企業を取り巻く環境と本要望提言について>
 近年日本各地で地震や水害などの自然災害が頻発し、2024年1月には能登半島地震が勃発しました。家屋が倒壊し、道路や水道などインフラが破壊され、多くの人々は不自由な避難所生活を余儀なくされました。また8月には、南海トラフ地震臨時情報も発令されたところです。大阪府でも、厳しい自然災害にいつか直面することを覚悟し、災害への備えを着実に進めていくことが求められます。
 経済に目を転じると、日本は1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、デフレが長く続きました。経済は低迷し、勤労者の賃金は伸び悩みました。2020年から続くコロナ禍によって受けたダメージから企業経営を回復させることも喫緊の課題となっています。
 2024年の春闘では、大手企業は5%の賃上げが実現したと言われていますが、中小企業は、仕入れ価格の高騰に、価格転嫁も追いついておらず、多くの経営者が賃上げに努力しているとはいえ、大幅賃上げとはほど遠い状況です。コロナ禍で、大企業と中小企業の格差がさらに拡大したのではと危惧しています。
 一方、新たな動きもでています。2010年6月、日本政府は、中小企業憲章を閣議決定しました。前文で、「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と位置づけられました。2017年4月、国連では6月27日が「小企業の日」と決議されました。2019年6月、日本では7月20日が「中小企業の日」、7月を「中小企業魅力発信月間」とされました。なお大阪では、2010年6月に大阪府中小企業振興基本条例が府議会で全会一致議決されています。
 大阪同友会では、このような流れを受けて、2019年から、「中小企業の日」企画(大阪わかそう)の取組みを進めてきました。大阪府・大阪市をはじめ、府下自治体、教育関係者、地域の諸団体と連携して、中小企業の魅力を発信するとともに、その社会的存在意義を、大阪府民・市民に広げることに尽力しています。
 引き続き、中小企業者の現場の声を届けるとともに、「中小企業を軸に地域経済を発展させていく」との強い決意と思いをもとに、大阪府への要望と提言をまとめました。
 関係各位のご協力をよろしくお願い申し上げます。

2025年度(令和7年度)の重点要望提言

(重点1)「中小企業の日」の取組みについて
 大阪府に共催いただいている大阪府中小企業家同友会の「中小企業の日」行事について、2025年度も引き続き共催いただき、「中小企業の日」や「中小企業魅力発信月間」の意義を、広く大阪府民に広報・告知していく取り組みを継続してください。
(要望提言項目1参照)

(重点2)大阪府職員による中小企業訪問について
 中小企業の実態を把握し、的確な施策の立案、実行に役立てるため、中小企業施策に携わる大阪府職員の中小企業訪問を制度化してください。
(要望提言項目3参照)

(重点3)経営者保証の見直しについて
 金融機関が中小企業経営者と向き合って真の伴走支援を行い、「経営者保証ガイドライン」に基づいて経営者保証無しの融資を積極的に推進するようよう、各金融機関に助言してください。
(要望提言項目4参照)

(重点4)エネルギー料金の値上げについて
 電力・ガス料金などエネルギー価格の高騰によって中小企業の経営がこれ以上厳しくならないよう、電力・ガス等の事業者に申し入れるほか、政府に対しても効果的な施策の推進を働きかけてください。
(要望提言項目12参照)

(重点5)大阪府立高校再編整備計画について
 府立高校の廃校は、周辺企業や地域の衰退の遠因となっています。大阪府立学校条例の運用の見直し、あるいは条例の改正まで視野に入れた全大阪的な議論の場を設けてください。
(要望提言項目18参照)

(重点6)高卒就職者の企業定着向上について
 高卒就職者の離職率が高いことに鑑み、まずミスマッチを防止し、その後万一離職した場合でもよりよい再就職ができるよう、大阪府関連部局、高等学校、中小企業経営者等関係者が一堂に会して若者の就業支援について議論する場を設けてください。
(要望提言項目19参照)

A.大阪府中小企業振興基本条例に関する要望と提言

要望提言項目1 「中小企業の日」の取り組みについて
 2019年6月に日本政府により決定された「中小企業の日」(7月20日)、「中小企業魅力発信月間」(7月)の趣旨を踏まえ、大阪府として、さまざまな周知・啓発活動を進められていることに対し、敬意を表するとともに感謝いたします。
 引き続き、「中小企業の日」や「中小企業魅力発信月間」の意義を、中小企業の関係者を含め広く大阪府民に広報・告知していく取り組みを期待します。
 上記を踏まえて、以下の取り組みについてご検討をお願いします。
(1)次世代を担う若者(大学生、高校生、専門学校生など)に対して、中小企業の現状や魅力を伝え、実感してもらう具体的な取組み(出前授業の企画・実施、中小企業への訪問活動など)について、大阪府教育庁等関係する部局、高校や大学の関係者を対象にご検討ください。
(2)大阪府中小企業家同友会が毎年取り組んでいる「中小企業の日」企画について、大阪府として引き続き共催いただくとともに、企業展やフォーラムへの助言・アドバイスを含め企画・運営に参画していただくことについてご検討ください。

要望提言項目2 「中小企業担当副知事」の位置づけについて
 2010年、大阪府議会において全会一致で議決された「大阪府中小企業振興基本条例」の趣旨を踏まえて、「中小企業担当副知事」の役割と位置づけ、部局横断的な検討組織についてご検討ください。
 2023年10月、大阪府議会各会派と大阪同友会との懇談の場において、「中小企業担当副知事」の位置づけについては、新たな部を創設することと比較して特に大きな課題はないとの発言がありました。この点も踏まえ、商工労働部だけでなく各部局すべてに中小企業支援の横串を挿して、中小企業振興の視点で一貫して施策を推進することができるよう、商工労働部担当の副知事を中小企業担当副知事として位置づけてください。また、具体的な推進方策として、部局を超えて課題に即した柔軟な運用のできる横断的な検討組織(例えば中小企業振興施策検討会議(仮称)又は中小企業振興施策推進委員会(仮称))の設置についてご検討をお願いします。

要望提言項目3 大阪府職員による中小企業訪問について
 大阪産業経済リサーチセンターを通じて、中小企業への訪問調査等を行い、さまざまな施策に反映されていることについては理解するところです。その上で、商工労働部の職員の方々が直接中小企業の事務所や工場等に出向いて、中小企業経営者や社員などと懇談し、中小企業が直面している現実等について認識を深めていただくことが有意義と考えています。
 2023年7月、大阪府商工労働部職員の有志が「中小企業の日」の企業展に出展した企業にインタビュー調査を実施し、後日、出展企業を訪問されました。また、2024年度にも同友会企業に同部職員有志が自己研鑽として訪問されました。このことは、訪問を受けた企業にとっても好意的に受け止められ歓迎されました。
 上記を踏まえ、大阪府の職員(とくに中小企業施策を担当する商工労働部の方々)が地域経済を牽引する中小企業を継続的に訪問し、自己研鑽するとともに、日々の中小企業施策の企画・推進に役立てるための制度・仕組みの創設について検討ください。

B.中小企業が働きやすい環境をつくるための要望と提言

要望提言項目4 経営者保証の見直しについて
 今般、政府により「経営者保証改革プログラム」が策定され、私たちが長年要望してきました経営者保証に依存しない融資慣行の確立が加速されたことは、中小企業にとって大いに励みになるところです。これにより、事業承継にあたっても後継者に過度の負担なく引き継いでもらえるものと期待しております。
 その一方で保証料率の上乗せを条件に経営者保証を免除する制度が開始されました。経営者保証ガイドラインの要件のすべてを充足できない企業には有意な制度である一方、安易にこの制度を適用することは経営者保証ガイドラインの方向性を見失い、単に保証料の負担増となってしまう恐れがあります。
 中小企業を支援する金融機関は、ビジネスの将来性や経営者の姿勢を本質的に理解して、不十分な点は共に改善しながら責任をもって融資を行うことが本筋です。そのような真の伴走支援が金融機関による差異なく行われるよう、信用保証協会などを通じて各金融機関に助言してください。また信用保証協会を利用しないプロパー融資についても、同様の扱いをするよう金融機関に助言してください。

要望提言項目5 新型コロナウィルスに伴うゼロゼロ融資の返済について
 信用保証協会の100%保証の借入返済に対し、返済計画の見直しにも罰則のつかない方策を提案するなど臨機応変な対応を図るよう国に要望してください。
 新型コロナに伴うゼロゼロ融資の返済の時期が迫っていますが、景況が回復してこない中で原材料費やエネルギーコストが高騰しているために利益の確保が依然容易ではありません。さらに現在の賃上げムードの中で、中小企業も賃金を上げて社員の生活の基盤を向上させるとともに高い士気を維持しなければなりません。当同友会大阪産業構造研究会による2024年4月から6月期定点景況調査によると、従業員を雇用している企業の75%が2024年度に賃上げを実施した、またはする予定と回答しています。
 苦しい環境下においてもこのように従業員の生活を第一に考える企業を支援するためにも、一定の賃上げを実施した企業には返済の猶予や利率の引き下げ等を実施するような施策を国に要望してください。

要望提言項目6 法人事業税における外形標準課税の中小企業への適用拡大について
 法人事業税に係る外形標準課税を中小企業まで適用拡大することについては、税の大原則である「公平性」(応能負担の原則)の観点から、絶対にしないよう、知事会等を通じて引き続き国に働きかけてください。
 最近、一部の大企業で資本金を1億円以下にして税負担を軽減しようとする動きがみられますが、大企業に対しては、企業活動や経営の実態を踏まえて、応能負担の考え方で税負担を適正・厳格に求めることが重要と考えます。

要望提言項目7 外国人労働者への国民年金等脱退一時金制度について
 外国人労働者にも国民年金または厚生年金保険への加入義務がありますが、退職して帰国した場合には納めた保険料の一部が脱退一時金として支給(返還)されることになっています。この支給上限年数が5年であるため、外国人従業員は5年で帰国してしまうケースが多発し、人員確保に支障をきたしています。一方、年金受給のための最低加入期間は10年であるため、脱退一時金の年限とギャップがあることも、5年での帰国を助長しています。
 このような脱退一時金制度の問題について、大阪府でも実態を把握し、国に改善を要望してください。

要望提言項目8 中小M&Aガイドラインの周知について
 中小企業のM&Aに関してトラブル防止のため、中小企業庁から「中小M&Aガイドライン」が策定されていますが、仲介業者の利益相反問題や契約のわかりにくさ等が依然課題となっており、仲介業者が紹介した譲渡先企業が悪質でトラブルとなる事例も報道されています。大阪府としても同ガイドラインを周知徹底するようにしてください。
 また、大阪府事業承継・引継ぎ支援センターは、知識や経験のない中小企業経営者が信頼を置く相談先ですので、問題ある仲介業者や譲り受け企業を紹介することの無いよう大阪府から助言してください。

C.持続可能な大阪をつくるための要望と提言

要望提言項目9 2025大阪・関西万博について
 大阪・関西万博が一過性のイベントではなく、将来にわたってより良い地域づくりを推進するきっかけとなることが望まれています。そこで中小企業が万博にかかわることにより、経営者や従業員にとって万博が自分事となり、万博が生み出す波及効果が大阪府全域に届くことが期待されます。
 しかしながら、現在は建設費の高騰やパビリオン建設の遅れ、大阪府の負担増、災害への懸念などのマイナス情報が先行し、万博の本来の意義や効果が十分に伝わっていません。当同友会大阪産業構造研究会が2024年6月に実施した調査によると、63%の経営者が万博により関西経済に大いにあるいは一定の経済効果があると回答している一方、自社経営に対する影響はない、あるいはわからないと答えた経営者も多く、79%を占めています。
 そこでまず防災や安全に対する情報発信を強化し、南海トラフ地震等災害への懸念を払拭すると同時に、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するための具体的なビジョンや、約2兆円の経済効果に至るロードマップを示し、ドキドキワクワクするような最先端の魅力を発信することが重要と考えます。
 そのためにも、業種や経営規模、地域、万博事業への参画の有無など、さまざまな立場・状況にある中小企業経営者の声を万博に取り入れ、万博への参画を拡大し、共創して運営する体制が必要であり、具体的な取り組みとして以下の施策を提案します。
(1)ロゴやキャラクター使用要件の緩和:万博への関心を高めるため、より多くの人が万博を広報できるようにする。
(2)教育機関と連携して万博への来場を推進:大阪府内の児童生徒を招待する事業の問題点を整理し、全国からも修学旅行先として万博を選んで貰えるような仕組みづくり。
(3)拡張万博*の情報発信:万博会場外への展開や活用についての情報発信を積極的に行う。
(4)正しい情報の集約と発信:すでに実施している災害対策、業界単位で分散している情報などをまとめて発信し、総合的な情報提供を行う。
*拡張万博とは、2025年大阪関西万博の経済効果を最大化するために、開催年や会場に限らず、関西全体で積極的に活用する概念(近畿経済産業局)。具体的には、(1)万博関連の活動を関西一円や全国に広げる「空間的拡張」、(2)会期中だけでなく会期前後も続ける「時間的拡張」、そして(3)「いのち輝く未来社会」や「SDGs・Society5.0」といったテーマを多様な活動で表現する「テーマの拡張」の3つの軸で万博を活用しつくす戦略。

要望提言項目10 統合型リゾート構想(IR整備計画)について
 統合型リゾート構想(IR整備計画)については、大阪府・大阪市の両議会において議決され、国において整備計画が認定されたことは承知しておりますが、多くの府民からその具体化に関して不安と危惧の声が上がっていることも事実です。改めて、以下の諸点についてご説明をお願いします。
(1)統合型リゾート(IR)について、「民間事業者の活力と創意工夫を最大限に活かす『民設民営』の事業であり、経済波及効果や雇用創出効果など大阪経済の成長に大きく貢献する」との説明がありました。一方で、道路・鉄道・上下水道などインフラの整備には、相当額の公的資金が投入されることになり、関連整備と投資効果については、厳密な精査と予測が必要と考えます。
(2)関連公共事業の投資額、整備効果について、できる限りリアリティのある数値の開示をお願いします。併せて、先行する海外諸都市(マカオ、済州島等)では、犯罪の増加、地域経済の疲弊、社会問題の深刻化等が報道されています。これらの事例についても具体的な調査と説明をお願いします。
(3)統合型リゾート(IR)による地域経済への波及、特に、地元中小企業に与える効果、メリットを具体的に明示してください。
(4)統合型リゾート(IR)が地域に及ぼすマイナスの影響(埋立地に整備することによる災害の危険性と防災対策、ギャンブル依存症対策など)について、ご説明ください。

要望提言項目11 「脱炭素化施策」について
 再生可能エネルギーのより積極的な導入を進めるとともに、ゼロウエイスト運動の推進、環境教育プログラムの展開、環境表彰制度の創設などを検討してください。
(1)ごみの分別回収システムを整備し、リサイクル率のさらなる向上を目指してください。
(2)市民が容易にアクセスでき、リサイクルに積極的に参加できるリサイクルセンターを各地域に設けてください。
(3)ゼロウエイストに関する教育プログラムを学校や地域社会に導入してください。
(4)ビジネスと環境保護を両立させるため、企業が環境配慮型の製品開発やサービスを推進するようなインセンティブを提供してください。
(5)SDGsの達成や環境保全、地域環境美化等に貢献した個人や団体、市区町村等を表彰する制度を創設してください。

要望提言項目12 エネルギー料金の値上げについて
 今、電力・ガス料金などエネルギー価格の高騰は、多くの中小企業の経営だけでなく、府民生活にとつて厳しい困難をもたらしています。
 ウクライナや中東での紛争激化など政治的軍事的な影響によって石油や天然ガスなどが値上がりし、円安による輸入物価の高騰がもたらされています。電力・ガスのエネルギー価格の高騰で、企業活動にとどまらず、国民や府民の生活にも多大な影響が生まれています。一方、政府による電気・ガス料金支援は期間限定の措置となっています。
 経営の外部環境によって中小企業の経営がこれ以上厳しくならないよう、また、府民生活を守るとの視点からエネルギー価格の高騰を食い止めるため、関西電力・大阪ガス等の事業者に値上げをしないよう申し入れるなど、大阪府としてできうる最大限の取組みをお願いします。また、政府に対しても効果的な施策の推進を働きかけてください。

要望提言項目13 少子化対策(1)「小学一年生の壁」問題について
 保育園は早ければ7時から園児を受け入れていますが、小学校の多くは8時以降の開門になるので、子供が小学校へ進学すると親はそれまでよりも出社を遅くする、あるいは子供を家において出社せざるを得ません。このことを「小学一年生の壁」問題と称しています。そこで7時から小学校の校門を開放することが望まれますが、教員の負担を増やすことは避けなければなりません。そのため、例えば地元の青少年福祉委員(55歳以上)と連携して、体育館、図書室等で授業開始まで過ごせる空間の確保を行うなど、地域によるサポートの制度を導入してください。

要望提言項目14 少子化対策(2)「異次元の少子化対策」について
 日本と同様少子化に悩むハンガリーでは「4人目を生んだ母親は所得税一生ゼロ」に代表される異次元の少子化対策を実施することによって、出生率が1.23(2011年)から1.59(2021年)と劇的に改善されています。将来高齢者を支える層を厚くするためには、現在子育てをする家庭にこのようなメッセージ性のある優遇措置を与えることが必要です。一方この施策による所得税の減収は、子供が増えて子育て支出が増加することによる消費税の増収により補うことができるので、財政負担は大きくありません。このような柔軟な発想でインパクトのある制度の採用を国へ促すことを望みます。

要望提言項目15 防災対策(1)命を守る住宅耐震化について
 令和6年能登半島地震では、耐震性の不足する住宅の倒壊が多発し多くの人命が失われました。
 大阪府におかれましては「住宅建築物耐震10ヵ年戦略・大阪」に基づき住宅の耐震化に取り組まれた結果、令和2年の耐震化率は約89%まで上昇しましたが、耐震性が不足する住宅が依然45万戸存在しています。
 耐震化の推進には所有者の費用負担を軽減することが必要です。10ヵ年戦略にも「6.目標達成のための具体的な取り組み」、6-1住宅、1.木造住宅(3)負担軽減の支援、として記載されています。その中でも、(1)耐震シェルターなどの「生命重視型」改修の推進、(2)経済的な耐震改修工法・手法の普及、等が耐震化の推進に有効と考えられますので、中小企業の力を活用しながらこれらを重点的に推進してください。それと同時に、耐震化補助金の上限を引き上げてください。

要望提言項目16 防災対策(2)水道設備の耐震化について
 令和6年能登半島地震では、水道設備に甚大な被害を受け、避難所や公共施設においても長期間の断水が発生して避難者の生活に大きく支障をきたしました。
 「大阪府内の水道施設の耐震化・更新状況に関する情報提供」(令和4年度版)によると、府内浄水場の耐震化率は23%、府内水道管の耐震化割合は25.5%と依然低い状況にあります。各水道事業者に対し耐震化を推進するよう指導していただくとともに、耐震化予算の拡充を行ってください。

要望提言項目17 防災対策(3)避難所の改善・充実について
 日本では災害が多発するにも関わらず、避難所の環境改善が遅れており、他の先進諸国に比べて劣悪な環境にあります。災害関連死の防止のためにも、府下市町村と協議してたとえば、断水時でも衛生的な環境が保てるトイレ、プライバシー確保のための間仕切り、体を休めることのできる段ボールベッド等の資材をあらかじめ確保して避難所の環境改善に努めてください。

D.大阪の未来を担う若い世代が活躍できる社会づくりの要望と提言

要望提言項目18 大阪府立高校再編整備計画について
 平成24年大阪府立学校条例の定めにより、入学志願者が3年連続して定員に満たない高校は再編整備の対象とされ、すでに多くの高校において廃校や統合がなされてきました。大阪府下各地域にくまなく配置されていた府立高校は地元の中学生にとっては安心できる進学先であり、輩出される人材は地域の中小企業の宝となっていたことから、地域と中小企業の共存共栄の核ともいえる存在でした。
 定員割れが生じる学校の多くは、進学競争からは距離を置く、あるいは、そこからはじかれた生徒の受け皿である一方、経済的な理由から遠距離の通学ができない生徒にとっても安心して進学できる存在です。地域の高校が廃校になるとそのような生徒達は進学先を失い、切り捨てられてしまいます。また、廃校の結果数百人の生徒や職員が来なくなることで、周辺は活力を失い、地域の衰退の一因となる等、単に教育界の問題に留まらず、地域の将来像へも波及します。
 そもそも高等学校の定員は大阪府により定められるもので、定員が過大であれば廃校対象となり、定員が少なければ対象にならないという矛盾をはらんだ条例になっています。
(1)同条例制定よりすでに20年以上が経過し、経済状況や家庭をとりまく環境も大きく変化していることから「3年連続定員割れ=廃校」ではなく、大阪の未来を担う若者を育てる観点から、運用の見直し、あるいは条例の改正まで視野に入れた全大阪的な議論の場を設けてください。
(2)すでに廃校となった高等学校で、その跡地が有効活用されていない箇所については、地域の再活性化のために、地域のニーズを踏まえた有効活用をしてください。たとえば、高齢化にともない需要が増加している、地域の公民館的な社会活動施設として活用すれば、利用料の収入も見込め、耐震性のある校舎は災害時には避難所としても利用できると考えます。

要望提言項目19 高卒就職者の企業定着向上について
 令和5年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(厚生労働省)によると、令和6年3月の全国高校新卒者の求人倍率は過去最高となり、中でも大阪府は7.7倍の高倍率となりました。そのため就職希望者にとっては選択の幅が広がり、生徒や保護者は大企業や有名企業を選択する傾向にあります。その結果、中小企業が新卒者を募集しても思うように人材が集まらない状況です。一方、高卒就職後3年以内の離職率は4割近くに達しており、令和2年卒業生においては37.0%でした。ところが離職者はその後よりよい就職先を探す方法がわからず、アルバイトや非正規を続ける結果となり、社会の不安定化や少子化の遠因ともなっています。このような状況を改善するためには、高等学校と中小企業の意思疎通を進めてミスマッチを防止し、万一離職した場合でもさらによい企業と出会えるよう就業支援機関と連携する仕組みを整える必要があると考え、下記の事項を要望します。
(1)当同友会の呼びかけにより、経営者と学校関係者有志との意見交換会を定期的に行っていますが、近年は関係行政職員の任意の参加も得て非常に有意義な場となっています。大阪府として、高校生のよりよい進路指導のために、教育庁、各高等学校、商工労働部等の幅広い関係者と中小企業経営者が一堂に会して議論する場を設けてください。
(2)高卒就職後間もなく離職した若者が人材不足の中小企業に再就職できるよう、相談・紹介窓口を、たとえば「OSAKAしごとフィールド」に一本化したうえで、スマホからのコンタクトをしやすくするなど、社会に不慣れな若者でも相談しやすいように改善してください。

要望提言項目20 奨学金返済支援制度について
 長年提言して参りました奨学金の代理返還を行う企業への補助金制度の創設に関しまして、「大阪府奨学金返還支援制度導入促進支援金」として実現していただき誠にありがとうございました。また当初令和5年度の単年の制度と伺っておりましたが、令和6年度も継続していただくこととなり重ねてお礼申し上げます。企業側としましても制度創設等の初期費用を賄うものとして非常に有意義な支援金と捉えております。
 しかし、企業側とすれば代理返還費用が実質人件費増につながってしまう為、運用費用(いわゆるランニングコスト)の負担が大きいことも事実です。そこで代理返還を実際に行った金額に対してその一部を補助する支援を加えていただけないでしょうか。支援金支給事業者一覧(令和6年3月29日時点)を確認したところ「月額上限1,000円、最大6カ月間」から「在職期間中、本人返還額全額」まで支援内容に大きな幅があります。支援金は府育英会30万円、学生支援機構20万円の一律です。令和5年度の代理返還制度を活用した企業に対して、どのような効果が生まれたのか、またどのような課題があるのか、制度運用の実態に対する検証を含めて、ご検討をお願いします。
 また、我々中小企業としては、これからの大阪さらには日本社会の未来を担う若手をしっかりと雇用し、地域に良い人材を残していきたいと考えています。そういった人材を積極的に受け入れて、地域社会と共に発展、貢献していこうという企業を支援するため、奨学金返還支援制度が中小企業及びそこで働く従業員にとって持続的に活用されるような制度・仕組みとなるよう検討をお願いします。先行する自治体(京都府、兵庫県等)の事例も参考にしていただけると幸いです。

要望提言項目21 小中学生の職業体験について
 学校教育の中で中小企業の最新かつ正確な姿を早期段階から教えるために、小・中学校から職場体験やインターンシップを実施することが重要ですが、市町村によって実施有無や内容にばらつきがあるため、地域によって差異が生じないように調整してください。
 当同友会が一部の市区町村と共同で、しごと博物館等の名称で実施している小学生向けの中小企業見学・体験会のような事業を大阪府からも支援してください。

E.個別業界からの要望と提言

要望提言項目22 保育士登録に関連する旧姓使用について
 雇用における男女雇用の機会均等が世界的に進む中、各種国家資格について、旧姓使用についても拡大を求める声が高まっています。その結果税理士、弁護士や教員などでは制度上旧姓使用が認められていますが、保育士や介護福祉士については認められておらず資格による不公平が生じています。令和2年より旧姓併記が認められたとはいえ、依然改姓にともなう手続きは必須であり、旧姓併記は現場での混乱も生むため実質的に旧姓使用は難しいのが実態です。少子高齢化が進む社会においては保育や介護業界の人材確保が重要であり、そのためにも働きやすい環境づくりが急務であることから、保育士登録を受託している立場でもある大阪府として、旧姓使用の制度化について国に働きかけてください。
 また、それが実現するまでの間は、旧姓併記の制度を周知させ、旧姓使用で不利な扱いを受けたりすることのないよう関係機関の啓発を行ってください。

要望提言項目23 子育て支援員研修制度について
 「子ども・子育て支援新制度」に基づいて生まれた「子育て支援員」になるための「子育て支援員研修」について、大阪府下で実施されていない市町村があります。市町村が実施する研修の対象者は各自治体内在勤・在住が条件となっており、実施されていない市町村の人は研修参加の機会がありません。
 保育士の多様な働き方を推進していく中で、保育士不足を補い、あるいは保育士を援助する子育て支援員は保育園等では必要不可欠であり、養成体制の充実が急務です。大阪府全域で受講の機会が得られるよう、大阪府として子育て支援員研修を実施してください。

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