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人権学習シリーズ 同じをこえて 「差別と平等」をどう学ぶのか/4.世界ではどうなっているでしょう?
4.世界ではどうなっているでしょう?
世界的に見ると、「機会の平等」を踏まえつつ、「結果の平等」とそれを推進するための特別措置やユニバーサルデザイン的な発想が重視されるようになっていると言えます。
例えば、国連で1965(昭和40)年に採択された人種差別撤廃条約があります。日本もすでにこの条約を守ることを約束しています。この条約の第1条は次のように規定しています。
人種差別撤廃条約 <あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約> (1965(昭和40)年国連採択、1995(平成7)年日本締結)
- 第1条-4
人権及び基本的自由の平等な享有又は行使を確保するため、保護を必要としている特定の人種若しくは種族の集団又は個人の適切な進歩を確保することのみを目的として、必要に応じてとられる特別措置は、人種差別とみなさない。ただし、この特別措置は、その結果として、異なる人種の集団に対して別個の権利を維持することとなってはならず、また、その目的が達成された後は継続してはならない。
ここでは、差別や不平等をなくすための特別措置は公正なものとして認められています。この条約でいう「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先」(第1条)をさしており、「皮膚の色」に止まりません。インドのカースト制など、かなり幅広い内容を含んでいます。
また、女子差別撤廃条約が1979(昭和54)年に国連総会で採択されました。この条約についても、日本はすでに守ることを約束しています。その第4条は次のように定めています。
女子差別撤廃条約 <女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約>(1979(昭和54)年国連採択、1985(昭和60)年日本締結)
- 第4条-1
締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなつてはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない。 - 第4条-2
締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとることは、差別と解してはならない。
この条約にあっても、特別措置の必要性ははっきりと定められています。
これらの条約だけではありません。その他の条約や各国の国内法においても、同様の考え方が表明されています。国連が採択した国際人権規約もその例です。欧米各国やインドなど、差別されてきた集団に対して特別措置をとる国はたくさんあります。