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更新日:2010年4月30日

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人権学習シリーズ 同じをこえて 「差別と平等」をどう学ぶのか/はじめに

論文「差別と平等」をどう学ぶのか? 大阪教育大学 森 実

はじめに

「差別してはいけないことはわかっている」とよく言われます。「不平等はいけない」ともよく言われます。けれども、何が「差別」になるのか、どんな状態をもって「認めがたい不平等」というべきなのか、このような点は、あまり議論されていません。その結果、ある人にとっては「許しがたい差別」と映る事実が、別の人にとっては「それは当然」と思われる場合もあって、そのままにされていたりします。

問題は、意見が異なることではありません。意見が異なる場合にどんな原則を頼りに深めていけばよいのかが、必ずしも整理されていないことです。国際連合の採択した人権条約や、日本国内の法律にあっては、土台とされるべき原理が見られます。しかし、私たちの日常生活では、そのような原理は浸透したり、定着したりしていません。

たとえば、「差別はいけないというけど、もともと男と女は違うんだから、それを同じに扱うこと自体が問題だ」「障がいのある人は、能力が劣っているんだから、いろいろ違いがあっても仕方がない」といった意見があります。私たちは何をもって差別というのでしょうか。

差別に関して疑問が集中している一つが特別措置です。例えば、「同和対策事業は逆差別ではないのか?」「女性専用車両なんかがあるから、たまたま乗って嫌な思いをしたんだ」といった意見が聞かれます。このような疑問や批判の気持ちがあるときに、どうすればよいのでしょうか。

私たちの生活の中に、必ずしもこのような問題を考えるわかりやすい手がかりがあるとは限りません。そのため、こうした疑問を考えるときには、わかりやすい手がかりを提供する学習活動が必要です。例えば、被差別状況を擬似体験するシミュレーション型の学習活動です。あるいは、普段は直面しないような揺さぶり状態を経験して自分の考えを明確化する機会を得ることです。そうした学習活動を経験することにより差別や平等をめぐる問題意識をはっきりさせ、その上で疑問に答える理論的学習をわかりやすく行うことが有効です。

この冊子では、そのような学習活動を紹介していきます。差別や平等について考えを深めるための手がかりにしていただければ幸いです。

この冒頭の文章では、そのような学習を支える理論的土台に当たる部分を述べることにします。差別や平等についての複数のモノサシを紹介するとともに、それについて学ぶときに何がポイントになるのかを論じます。ここでの説明ですべてが整理できるわけではないでしょうが、少なくとも、基本的な疑問を整理する手がかりを提供できるものと思います。

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