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堺環濠都市遺跡(さかいかんごうとしいせき)から出土した青磁
堺環濠都市遺跡は大阪府堺市に所在する中近世の都市遺跡です。中世都市堺は、遣明船の発着港として貿易により発展しました。堺の町は、周囲を堀(環濠)により守られており、富裕な商人たちによる自治組織が存在し、自由都市として栄えていました。しかしこの中世都市堺は、慶長20年(1615年)大坂夏の陣の前哨戦で豊臣方の焼討ちにあい焼き尽くされてしまいます。
今回紹介する青磁は、平成30年度に大阪府教育委員会が発掘調査を実施したときに出土した資料です。この時の調査地点は、現在の大道と大小路が交差する地点で堺環濠都市遺跡の中心部に該当します。調査面積はわずかでしたが、中世都市堺の様相を探る遺構・遺物が発見できました。
紹介する青磁は、大坂夏の陣の焼土層から出土したものです。口縁部の一部や高台は欠けており、二次焼成を受け全体が変色、煤も付着しています。しかしこの青磁はオリーブグリーンの釉薬(うわぐすり)、そして器全体に立体的な彫りによる装飾が施されていることなどから、中国耀州窯(ようしゅうよう)産の青磁と考えられています。復元した口径は23センチメートルで、口縁部は輪花状に作られています。精巧で美しい中国産青磁が出土することは、貿易で繁栄していた中世都市堺のありさまを示す証拠といえましょう。
写真1 青磁(横から)
写真2 青磁(内面)