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桑原西古墳群から出土した陶棺
大阪府茨木市に所在する桑原西古墳群は、古墳時代終末期に築造された群集墳です。平成16年度から実施された発掘調査により、少なくとも21基の古墳が確認されています。
陶棺が出土したA3号墳は横穴式石室を持つ直径約12.9mの円墳で、7世紀中頃に築造されました。発掘されたとき、陶棺は横穴式石室の崩れ落ちた天井石の下敷きになっており、棺の蓋は石室の奥に、身は手前側に一部原形を留めた状態で出土しました。整理作業の後、ほぼ完全な状態に復元することができました。
この陶棺は須恵質家形四注式陶棺と呼称されているもので、箱形の棺身に寄棟屋根形の蓋がかぶせられるものです。屋根の両端の斜面には穴があいており栓でふさがれます。棺身には中空円筒状の脚がつきます。
出土した陶棺には、棺の幅に3本×6列、合計18本の脚が残っていましたが、棺の蓋の長さから考えると本来は3本×8列、合計24本の脚が設けられており、復元後の陶棺の法量は長さ約154cm、蓋と身を合わせた高さは約63cm、棺の最大幅は43cmになります。脚の直径と高さはともに10cm前後です。
A3号墳の石室からは長方形と円形の2種類の陶栓がみつかっており、出土した陶棺には蓋の左右で異なる形状の陶栓が用いられた可能性があり、これはこの陶棺の大きな特徴といえるでしょう。