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牛石5号墳(うしいしごごうふん)から出土した須恵器
牛石古墳群は、堺市の南部にある泉北丘陵に所在します。この古墳群は昭和30年代に泉北ニュータウンを造成する時に発見されました。ここではこの古墳群の中で「横穴式木室」という特殊な構造の埋葬施設をもつ牛石5号墳から出土した須恵器を紹介します。
横穴式木室は墓坑を掘り、その墓坑の周囲に丸太を壁柱にして墓室、すなわち棺を収める部屋を築いています。この横穴式木室は大阪府では泉北丘陵を中心に広がる陶邑窯跡群とその周辺に数多く発見されていることから、須恵器を製作する工人との関係が注目されています。
牛石5号墳の発掘調査は、昭和42年度に帝塚山大学堅田直教授の指導により大阪府教育委員会が実施しました。調査の結果、牛石5号墳の墓室は、壁柱を墓室の内側に斜めに立てかける構造であることがわかりました。墓室の平面形の大きさは幅1.7メートル、長さ4.8メートルを測ります。
墓室からは写真1の須恵器が出土しました。器種は蓋杯(ふたつき)、高杯(たかつき)、壺、椀などがあります。壺はとくに短頸壺(たんけいつぼ)が多く出土しています。焼成が軟質で、色調が灰白色のものが目立ちます。写真1中央に2つある杯身の口径は、約12センチメートルを測ります。これらの須恵器は6世紀末から7世紀初頭の時期のものです。
写真1 牛石5号墳の墓室から出土した須恵器
牛石5号墳からは、須恵器の他に金属製品も出土しました。種類は装飾品の耳環(じかん)、木棺に使われたと思われる鉄釘やかすがい、鉄鏃(てつぞく)・鉄鉾(てつほこ)などの武器、やりがんなや斧などの工具、そして馬具があります。写真2の馬具は轡(くつわ)、写真3の兵庫鎖(ひょうごぐさり)は鞍(くら)と鐙(あぶみ)をつないでいたものと思われます。
牛石5号墳の多種多様な遺物は、横穴式木室という特殊な埋葬施設から出土した貴重な資料といえましょう。
写真2 轡(くつわ)
写真3 兵庫鎖(ひょうごぐさり)