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更新日:2023年5月26日

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部落解放大阪府民共闘会議、部落解放同盟大阪府連合会 要望書

要望受理日 令和5年1月6日(金曜日)
団体名 部落解放大阪府民共闘会議、部落解放同盟大阪府連合会
取りまとめ担当課 商工労働部 雇用推進室 労働環境課
表題 要望書

要望書

2023年1月6日

大阪府知事
吉村 洋文 様

部落解放大阪府民共闘会議
議長
部落解放同盟大阪府連合会
執行委員長

採用時における「SNS調査」に基づく身元調査に対する真相究明への要請について

平素より、同和・人権行政の推進、公正採用選考のとりくみに敬意を表します。
さて、メディアにおいて、民間企業が採用時に調査会社に依頼し、就職希望者のSNS投稿をチェックする「裏アカウント(裏アカ)」調査(以下「SNS調査」という。)が増えていると報じています。企業は採用リスクをできる限り回避するために調査会社に依頼。その料金は1人につき1万6500円(税込)で、請け負った調査会社は、アカウントの特定と、投稿内容を調べた後に「懸念なし」「懸念される情報あり」「重大な懸念あり」など4から5段階で判定をおこない、依頼した企業に報告しているというものです。
さらに調査会社は、SNS調査を入り口として、オプション契約で、現地調査(居住地調査や近隣聞き込み等)や資産調査・家族構成、趣味嗜好や思想調査をおこなっている実態(以下「『SNS調査』に基づく身元調査」という。)が明らかになりました。関西圏においても同様の調査会社が増えていると聞き及んでいます。
私たちは、裏アカウントを作成しネット上で誹謗中傷、差別書込みなどの差別・人権侵害行為に対しては、許さない立場であります。しかし、差別身元調査に繋がりかねない採用時の「SNS調査」に基づく身元調査に対して看過できません。
これまでに1998年の「アイビー・リック社による差別身元調査事件」、2008年の「土地差別調査事件」において、多くの企業が調査会社に依頼している実態が明らかになりました。この2つの差別調査事件は、依頼主である企業が調査会社に対して「差別調査は依頼していない」という姿勢でしたが、フリーハンドで調査依頼していた企業側の人権水準が問われたことが教訓となりました。こうした教訓は、国連の「ビジネスと人権」において、取引先や顧客に当たる企業などのサプライチェーンにおいて人権の視点でチェックする「人権デューデリジェンス」にも通じるものです。国や自治体と企業において人権・差別撤廃のとりくみがますます高まっていると言えます。
大阪府では過去の差別調査を教訓に、大阪府部落差別調査等規制等条例の制定・改定、大阪府個人情報保護条例の解釈、宅建業指導監督基準の設置など、他の自治体よりも先行して取り組んでこられました。
こうした差別身元調査につながりかねない「SNS調査」に基づく身元調査に対する真相究明に向けて、次の点について要請します。

  1. 「SNS調査」に基づく身元調査に対する大阪府の認識について明らかにされたい。
  2. 職業安定法第5条の5に定められる、求職者等の個人情報の取扱いに関する規制に抵触する可能性の有無について明らかにしてください。
    (理由)
    職業安定法第5条では、本人の同意がない限り、企業が求職者の個人情報を収集・保管・使用できるのは、業務の目的の達成に必要な範囲内に限られる旨が定められています。
    厚生労働省が定めた指針においては「(a)人種、民族、社会的身分、門地、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項(b)思想および信条(c)労働組合への加入状況」の個人情報については、本人から直接収集する場合を除いて、企業による収集を禁止しています。
    個人がID等を用いてSNS投稿を行う際、思想・信条などの情報を発信することもあります。現地調査(居住地調査や近隣聞き込み等)においては、被差別部落の出身かどうかを調査することにもつながりかねません。
  3. 企業の第3者提供の同意の在り方、履歴書等の横流しの認識について明らかにしてください。
    (理由)
    2019年に(株)リクルートキャリアが個人情報保護委員会から勧告・指導を受けた問題(以下「リクナビ問題」という。)では、第三者提供における本人同意の有無が問題となりました。リクナビ問題を契機に改正個人情報保護法で個人にひも付くデータ活用等においても本人同意を明確に取ることが必要になりました。
    しかしある企業の「求職者の個人情報の第三者への提供」に係る同意書では、求職者が個人情報を提供しなかった場合、「採用選考において不利益が発生する場合などがあります」との内容が見受けられます。こうした内容は公正な採用選考の基本である「応募者に広く門戸を開くこと」などへの違反とならないのでしょうか。企業に「経済活動の自由」「採用の自由」があると言っても、求職者に何を聞き、書かせても良いわけでなく、立場が弱い求職者の「職業選択の自由」や基本的人権を侵す採用の自由は認められません。
    そして、「SNS調査」に基づく身元調査を行っている調査会社は探偵業法に基づく企業です。アイビー・リック社による差別身元調査事件でも、調査会社は会員企業から横流しされた履歴書をもとに調査を行い、求職者が部落出身者であれば履歴書に調査不能として「※」を書き込みました。第三者提供において求職者の同意を得たからとはいえ、求人企業が探偵業者に履歴書やエントリーシートを横流しする取扱いは、大いに疑念が生じます。
  4. 採用・結婚等における「SNS調査」に基づく身元調査の実態把握を行ってください。
    (理由)
    大阪府は大阪府部落差別調査等規制等条例に基づいて、興信所・探偵社に対して、結婚、就職調査など個人に対する調査を行った場合については、調査記録簿の作成と保存(1年間)を促しています。あらためて、大阪府調査業協会に加入・登録する調査会社に対して採用・結婚等における「SNS調査」に基づく身元調査の実態把握してください。探偵業法をふまえ大阪府公安委員会と連携を図り、大阪府調査業協会に登録(加入)していない調査会社がある場合は、登録(加入)を促してください。
    大阪労働局と連携をとって、「SNS調査」に基づく身元調査を依頼する企業に対して実態把握に努めてください。
  5. 厚生労働省への働きかけを強められたい。
    (理由)
    「SNS調査」に基づく身元調査について報道したメディアでは「調査自体が明らかに違法だとか不正だとか、そこまでは言い切れない部分もあります。会社側としてはいろんな情報を知りたいというところで、我々としてダメと言っていいのかというと、そこは正直難しい面があると思っています」という厚生労働省関係者の発言が流されました。取材の時点では、厚生労働省は実態把握をせず、現行法に照らして発言したものと受け取れます。しかしながら、こうした発言が他のメディアでも紹介されており、企業及び調査会社に「SNS調査」に基づく身元調査は関係省庁も認めているとのお墨付きを与えかねません。就職希望者の人権を守る立場から、大阪府として、上記の実態把握を踏まえ、厚生労働省としての基本見解、今日的な公正採用選考の在り方の検討や抜本的な強化を求めてください。

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