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第13回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要
- 日時:平成20年10月21日(火曜日)午後4時から午後6時
- 場所:大阪府公館
- 出席委員:
(座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
山下 淳 関西学院大学法学部教授
中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授
1 開会
挨拶
企画室長
政局に関する動きに隠れているかのようだが、政府の道州制ビジョン懇談会は「税財政専門委員会」と「区割り基本方針検討専門委員会」の2つの専門委員会を設置して議論を継続。総選挙を経て政局が落ち着けば、道州制を含む広域自治体のあり方について、政府や与党での動きが急になることも考えられる。
いずれにしても、大阪府として自らの将来像をどのように考えるのか、具体的な回答を迫られる場面が出てくるものと予想。その際には是非、当研究会の成果を拠り所にしたいと考えている。
さて本日は、前回に引き続き「最終報告」の取りまとめに向けた議論をいただく予定。前回の会合でいただいた御意見や御指摘を踏まえ、先日お示しをした素案に加筆修正したものを「案」として今回、用意させていただいた。なお至らぬところもあると存じ上げるので、忌憚のない御意見をいただきながら、さらにブラッシュアップをしたい。
なお、今回の御議論を反映したものをホームページほかで公表し、府民の皆様から御意見を求めたいと考えている。その結果も踏まえながら、12月初旬には最終報告のとりまとめを頂きたいと考えているので、御協力をお願いしたい。
それでは、座長の新川先生に議事を引継ぎたい。よろしくお願い申し上げる。
2 議事
最終報告(案)について
事務局
⇒最終報告(案)および同付属資料について説明。
座長
それではご自由に議論いただきたい。
中井委員
付属資料4-(2)を見ていただきたい。ここでは、各ブロック(*ブロックは28次地方制度調査会答申の区割案のうち11ブロックによるもの)の財政需要と地方税源の充足度が示されており、北関東58.9、南関東94.9、東海71.2、関西56.9となっている。この4つの州が中間州以上(富裕州を含む)の位置付けとなり、道州制導入時の初期設定として、この4つは自主財源での運営を前提に考える必要がある。
問題は、充足度が40前後のブロックが中間州に成長することが出来るかどうか。それらが弱体州になるようであれば、制度の崩壊を招く可能性がある。そして、マジョリティーを形成することになる中間州が自立的な運営を確実に出来なければ道州制のスタートすら切れない。
また、最終報告に対する感想としては、国・道州・市町村の事務配分・再配分プロセスのイメージが本文の14ページに示されており、ここに我々が議論してきた内容が現れていると思う。
玉岡委員
これまでの議論の中で、道州制下の事務事業の配分や執行基準・手続きなどを定める際には国・道州・市町村間の協議によって決定することを前提にしてきたが、どういう協議の場があるかについて再度確認しておきたい。考えられる協議の場は道州内の市町村間の協議、道州と市町村間の協議、道州・大都市・大都市周辺の都市の間の協議、道州政府間の協議、国と道州間との協議、この5つの場をイメージしているのだが、この認識で間違いないか。
座長
あとは、全国の市町村間の協議の場が想定できる。協議の場が多くて少し面倒な印象もあるが・・・。
山下委員
協議の場を固定的に考えるのではなく、事務配分等において調整の必要が出てきた時に協議の場を設ければいい。当事者同士で話し合いを行えば、納得のできる解決が図れる可能性が高い。そういう発想から協議の場が必要だと私は理解している。例えば、市町村間の問題を道州が決定すると、客観的に見てそれが望ましい解決策だったとしても、第三者に決められた、或いはそれを押し付けられたという認識となり、市町村の自主性が発揮できない結果となる。市町村間の問題に対する道州や国の関与を完全に排除する訳ではないが、問題は出来るかぎり当事者間で決めるというイメージの方がいい。それで、当事者同士が満足できる、或いは納得することが重要だと思う。
このような協議による決定事項についても、例えば5年後に再度協議を行い、事業の継続性等について考える。それぐらいのダイナミックな動きのある方が望ましい。本文の14ページは、そのようなイメージである。
座長
そのような動きをイメージさせるなら、14ページのイメージ図を丸い‘円’の形にしてみてはどうか。例えば、市町村がある事務や権限について問題提起した時、それを道州との協議の場に持ち出す。そこで協議が不調に終わった場合には次の段階に進むというような手順がもっとイメージ化されるといい。今のイメージ図はそのまま残し、違った形でこのダイナミクスを表現できればいいのだが・・・。
市町村からある提案があった場合、先ずは市町村間で水平的な協議を行う。協議が不調に終われば次は道州内で協議する。そういう過程の中で、道州条例や市町村条例を変更して決着することも想定できる。そのような手順が見えてくると更にイメージがしやすいのだが。
玉岡委員
文言修正について。
本文16ページ下から15行目と17ページ上から2行目に「国土として維持する」という表現がある。「国土」という言葉に若干の違和感があるような気がする。
座長
国土の維持という表現は、国土形成計画のようなイメージになるため、「国土」という表現を「地域社会」という表現に変えてみてはどうか。
山下委員
文言修正について。
本文21ページの下から3行目、「法人区の行政区への転換」とあるが、「行政区の法人区への転換」の誤りではないか。
玉岡委員
文言修正について。
21ページの下から2行目、「指摘があった」という表現があるが、「指摘」という表現は我々以外の第三者が発言したように受け取られる。委員からの「意見」という表現に変えてはどうか。
座長
少し気になったのは、3ページに「広域連携」と記されているが、広域連携とは連携協議会や「すばるプラン」が立てられた時に形成された協議会をイメージしているのか。
事務局
任意組織をイメージしている。
過去の政策を振り返ってみると、連携協議会を設置し、広域的な行政課題に取り組んだことで一定の成果はあったと思うが、最善の成果をもたらしたとは言いがたい。但し、協議会として与えられた条件の中でどこまで目標を達成できたかという考え方と、広域行政のあるべき姿を基準に到達度を考えるのでは判断基準が少し異なる。このため、ここで記している「必ずしも最善の成果をもたらしていない」という表現は、どちらの視点から見たものか不明確な表現になっているかもしれない。協議会の取組みとしては、一定の成果があったと認識しているが・・・。
「広域的な視点で見たときに広域連携は必ずしも最善の成果をもたらしていない」と表現しているが、「広域行政のあるべき姿から考えると必ずしも最善の成果をもたらしていない」と表現を改める。
中井委員
あるべき広域行政の姿を達成するための手法として、広域連携・広域連合・都道府県合併が考えられる。個人的な見解だが、「すばるプラン」を事例とした広域連携では、当初目標としたものに到達しない可能性が高い。連携という方法は目標を達成するための一体性、つまり各構成団体に対する拘束力が弱いために成果をもたらさない。しかし、一つの目標に向かって府県が集うこと、お互
いの府県を理解しようとすることに意義がある。
広域連合というのは広域連携より、結束力や拘束力が強いため、大きな成果をもたらす可能性が高い。しかし、企業人が考えるのは広域行政のあるべき姿であるため、そういう視点に立つと達成度は低いという印象を抱くかもしれない。
道州制を導入した場合、企業人は一夜にして何もかもが飛躍的に向上すると勘違いしている。ある目標に向けての手段とすれば、拘束力を強くした方が到達度は高いが、それを望む団体は少ない。
道州制を導入する際、初期値を設定し、その上で軌道修正をしながら制度運用していくことを前提に我々は議論を行ってきたが、この理論は一般的にはなかなか伝わらない。地道に情報を提供していく必要がある。
玉岡委員
ダイナミックに競争と協調を繰り返すというのは一般論的な言葉だが、関西州を具体的に考えた時に、‘ダイナミックな競争と協調’というだけでは、余りにもインパクトが小さい。
これまでの議論の中に出ていたように、道州制導入時は初期値を設定し、その上で試行錯誤を繰り返しながら制度運用を行う。しかし、一般的にそのような認識が乏しく、先ほども話しが出たが、道州制を導入すれば飛躍的に生活が向上するという認識の人が多い気がする。制度導入後「1+1=3」になるように、地域の中で起こった問題を解決しようとするプロセスが生まれること、これが道州制を導入する最大のメリットであると思う。それを発信していかねばならない。
玉岡委員
文言修正について
26ページの3「おわりに」で、大阪府にお願いしたい点として3つ挙がっているが、「(1)大阪府には過疎地域がない」を「(1)大阪府には過疎地域がないことを考慮すること」へ、「(2)海外の事例」を「(2)海外の事例を学ぶこと」に変更してはどうか。
座長
本文26ページの下から13行目、「大阪府に対して、お願いしたい」という表現に多少の違和感がある。対象がはっきりしない気もするが、大阪府は地方公共団体であることから、この大阪府という言葉の中に執行機関や住民が全部含まれると考えれば特に問題はない気もするが。
本文21ページの上から5行目に「しかるに、その整備や運営について民主的な統制を行っているのは、大都市の行政区域に住む市民のみであり、望ましいあり方であるかどうか疑問が残る」とあるが、地下鉄の整備費用には国の費用負担もあることから、現状を考えると単純にこう言い切れない部分がある。整備費用については大都市の住民以外にも負担が及んでおり、こういう人々の意向
が反映されるシステムが構築されていないということを表現できればいいと思う。
中井委員
道州制の議論をする際、住民は何を参考にすればいいか分からない。そういった意味で、付属資料の34ページ以降に書かれている参考文献は、非常に役立つはずである。タイトルと一緒に何年に出版されたものか表示している方が探しやすくより親切であるため、その出版された年を示している方がベターだと思う。
話は変わるが関西は今、松下電器産業のPDP尼崎工場、シャープの堺工場が稼動・建設されるなど経済の活性化が期待されている。これが府県単位ではなく道州単位になると、もっと企業誘致が容易となり、更に経済の活性化が期待できると思う。企業誘致と新しい企業の創設が道州制における経済発展の鍵となるが、それが達成されれば「1+1=3」の結果をもたらすだろう。
座長
府県単位の仕切られたマーケットには限界があり、その仕切りが解かれた時の競争がもたらす効果は大きいと思う。同時に、そこに産学官連携のような協調が生まれると、単なる競争だけで生まれる効果以上のものがもたらされる。そういうイメージはある。それが具体なものになれば、資料2-(2)の東北で行われている産業振興施策以上のものが関西でも実現できる。それが「1+1=3」のいい例になる。
山下委員
道州制については市町村自治を前提に議論してきたが、現行制度のまま市町村に事務を移譲しようとしても、財源の問題や人員の問題等々で市町村はなかなか納得しない。道州制下においては、市町村が事務を担うことによって「1+1=3」になることを示した上で事務の移譲をしていかねばならない。つまり、財政支援や人的支援を理由に市町村に事務を移譲しようとしても「1+1=2」にしかならず、それでは何の意味もない。事務を移譲する際に「1+1=3」になるような方法や、現行と違ったサービスの提供が可能となることを説き、それによって住民満足度が上がる、つまりは「1+1=3」になることを示さなければ、市町村のやる気は起こらない。
座長
そういう点で資料2-(3)のような、市町村で福祉行政をパッケージ化した住民サービスを提供するというイメージは、今の山下委員の発想に近い。要するに、福祉サービスが必要な利用者に対して、総合的・統合的にサービスや生活指導を含めた行政サービスを提供するために権限を移譲させることが望ましいと示すことができる。
山下委員
そういった取組みができるように道州が支援することを前提にすれば、単に移譲するのと全く違った印象になる。都道府県で担っていたものを単に市町村に移すという発想は、国の出先で行っていた事務を道州に移すという発想と同じで意味がない。
座長
最後に
最終報告(案)について大きな修正はない。しかし、若干の指摘をさせていただいたので、再度事務局の方で修正いただき、次回の研究会に提示してもらいたい。次回で研究会は最終回であるため、そこで最終の取りまとめを行いたい。
事務局
本日いただいたご指摘、ご意見を反映させた上で、府民の方から最終報告(案)について意見募集を行いたいと思う。10月24日(金曜日)から約1ヶ月、意見を募った上で、その意見を踏まえ、また本日いただいたご指摘による修正を加えた上で最終報告を作成する。
このため、もう一度会合を開き、委員の方々からご意見をいただいた上で最終的な取りまとめを行いたい。
日程調整
→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定。
第14回研究会
日時:12月1日(月曜日)午後6時から午後7時
場所:大阪府公館