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更新日:2013年11月25日

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第10回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要

  • 日時:平成20年7月1日(火曜日)午後6時から午後8時
  • 場所:大阪府公館
  • 出席委員:
    (座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
    山下 淳 関西学院大学法学部教授
    中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
    玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授

1 開会

挨拶

(企画室課長)

地方分権改革推進委員会の第1次勧告に対する政府の対応等をみると、あらためて地方分権に対する中央省庁の抵抗の激しさを実感。道州制についても、当事者である地方がしっかり理論武装をしておかないと、とんでもない道州制になり兼ねないとの思いを新たにしている。

さて本日は、(1)道州制下における大都市制度、及び(2)国の具体的な姿について御議論をいただきたいと考えている。

比較的狭い地域のなかに4つの政令市を抱える関西にとって、道州制下における大都市制度をどうするかは、避けて通ることのできない課題。大都市制度については、昨年度も御議論をいただいているが、その際ご指摘をいただいた論点等を基にさらに御議論を進めていただければと思う。

また、国の具体的な姿については、道州制について様々な提言や報告があるなかであまり詳細な記述が見られない論点。国会のあり方を含め、国はどのような姿になると考えられるのか、基本的な考え方などをお示しいただければと思う。

お手元に若干の資料を用意させていただいた。これに沿って忌憚のない御意見をいただきたい。それでは、座長の新川先生に議事を引き継ぎたい。よろしくお願い申し上げる。

2 議事

  • 道州制下における大都市制度について
  • 国の具体的な姿について

(事務局)

⇒配布資料(資料1から資料8)について説明。

(座長)

事務局から説明をいただいた第9回会合論点整理、また本日の議題を踏まえ、ご自由に議論いただきたい。

前回会合の中で、市町村・道州・国の間での事務配分の仕方、或いは事務分担の決定方法について、河川管理・森林保全を例に挙げてもらっていたが、前回の議論を踏まえ若干の修正が加えられている。これについてもご議論をいただければと思う。

(中井委員)

現行制度で‘やれていない’ことは、道州制を導入しても‘やれない’。

国直轄事業について地方の負担金が発生することに、疑問を感じる。国直轄事業というからには、計画と企画立案、実施を一つのセットとして、国の責任でしてもらわねばならない。地方には関係のないことだと思う。ところが、国直轄事業負担金というものは、国がやると決めれば、都道府県が持っている税財源の内から最低でも3割以上を負担しなければならない。おかしな話である。

道州であろうが府であろうが、予算の決定権は議会にある。しかし、府民の税金と交付税を合わせた一般財源が、国の思うように使われる国直轄事業。どういう発想でこういう制度が生まれたのか理解できない。

地方財政学は次のステップに入ろうとしており、プリンシパル-エージェンシー理論が今後、本格的に検討され始める。30代の財政学者の間で多く叫ばれており、契約論等の分析ツールが確立している。これを地方財政で応用しようという動きがある。つまり、府民がプリンシパル、議会がエージェントだということだが、国直轄事業になった途端に、誰がプリンシパルか分からなくなる。府民がプリンシパルであったにも拘らず、エージェントである大阪府、或いは議会と全く違うところからの関与・意思決定により負担を強いられる。その仕組み、制度は納得できない。

道州制導入後に地方が事務を何でも担える状況になったとしても、何を担うかは注意が必要。今、起こっている都道府県と国との関係が、道州制導入後に解消できるか、非常に大きなポイントである。

次に、大阪府に直結する話しであるが、道州制を導入し省庁間の壁を取り払うことが出来れば「1+1=3」になるという議論を重ねてきた。事例として、生活保護と雇用施策を一体化させるなど総合的な社会福祉施策の構築を描いていた。これに水を差す訳ではないが、大阪府の教育委員会が平成10年に教育改革の基本方向を示し、今年7月には次の10年に向かって大阪府学校教育審議会が「これからの大阪の教育がめざす方向について」の答申を取りまとめた。学校教育審議会はかなり踏み込んだ議論をしてきたが、どうしても釈然としない。大阪の公立学校の信頼を取り戻すという姿勢が十分伝わる内容となっているため答申そのものには賛同できる部分が多いが、私学に通う子どもたちについての議論が為されていない。審議会の委員から、高校生の4割が私学に通う大阪で、私学に通う子どもたちの教育についても議論が必要だという声があがったが、教育委員会は公立学校の担当、私学については生活文化部の私学課が担当しているとの理由から、私学に通う子どもたちの教育について議論が全くなかった。つまり、同じ府の組織の中でも、教育委員会(公立担当)と生活文化部(私立担当)の間で壁がある。道州制を導入する際、巨大な組織である省庁間の壁を取り払うことが本当にできるのであろうか。

河川管理の議論の中では、現行制度でうまくいっていないものを、道州制を導入したからといって、たちまちうまくいくというのは想像し難い。道州制の導入で飛躍的に社会がよくなると思い過ぎない方がいい。最終報告書の作成に向けて、具体的な議論を行っていく必要がある。

(事務局)

道州制を導入すれば、現行の都道府県制度では出来ないことができる、つまり「1+1=3」をいかに実現していくかが大きな課題である。

中井委員ご指摘の国直轄事業負担金は非常に問題があるということで、全国知事会でも廃止を求めているが、道州制になればこれが自動的になくなるという性格のものではない。国直轄事業は現行制度でもなくすべきであるし、道州制に移行する場合においても、これが残らないような制度設計が必要ではないだろうか。

(座長)

国直轄事業の地方負担については受益者負担という考え方である。元々の計画段階で地方が参加しているため、その中で地方が同意の上で負担分を算定する。後になって負担をしないというのは筋が通らない、というのが国の理屈。

(事務局)

問題なのは個別事業の決定に対して、地方が全く関与していない点。

(座長)

事業計画の段階では地方に発言権があるが、着工、或いは竣工の時期になって初めて負担金が明かされる。しかも、当初予定より金額が大きくなるケースが多いため、地方からすれば不信感を抱くことになる。

元々は公共事業をどんどん実施して欲しいという地方からの要望があり、また国直轄事業でやってもらった方が地方の負担が軽いため、急激に数が増えていったという背景がある。しかし、我々の議論で言うと、基本的には国土交通省を解体し、また農業・土木系も含めて道州か市町村が事務を担うということになるため、国直轄事業のような問題は起こらないという認識。社会変化等もあり、仕組み自体なくなる気がする。

(山下委員)

しかし、道州と市町村間で、国直轄事業のような制度が再生産される危険性がある。道州・市町村の両方の利益となれば、負担が必要だというロジックは残る気がする。

(事務局)

役割分担と費用負担との関係に整合がない。また、費用を国と地方がお互いに持ち合いしており、責任の所在が不明確になっている。このため、国直轄事業については以前から問題視されている。

(座長)

国と地方の持ち合い型のものは、例外的に考えることがあっても通常はないという前提で議論をしなければ、おかしな方向に行ってしまう。企画・実施を一体化して運営し、責任の所在を明らかにするということが必要。密接に利害関係のあるような事業が残る可能性は否定できないが、その時には透明性の高い仕組みを考えないといけない。

国と地方のどちらかが実施するのに、お互いに費用負担をするというような制度設計や枠組みはやめるべきである。

(事務局)

資料の中で、道州全域で森林保護税を徴収し、集中的に山間部の水源地域に交付するというイメージを示している。個々の事業について負担割合を決めるというイメージではなく、具体的な事務や事業については市町村の裁量に大きく委ね、その結果により道州は交付金を支払うことを想定している。例えば、保全・間伐をした森林の面積など、事業の結果評価で交付金を決定するというイメージで資料を作成した。事業ごとの負担金や補助金はないということになる。

河川管理については、市町村単位で考えると上流域と下流域では受益と負担にバラつきが生じかねない。それをどういう形でバランスを取るか、その方法のひとつを考えてみたもの。

(山下委員)

森林保護税は道州も使うものなのか、市町村配分のみに使うのか。徴税は道州が行うこととし、基本的には市町村が使うものとイメージしているのか。もう一つは、ここでは森林面積・造林面積で交付額を決定すると示しているが、交付額を誰がどうやって決めるのか、どう納得のいくような配分システムを作るか、そこがポイントである気がする。道州と市町村が一緒になって決定することが重要。

(座長)

道州と市町村が一緒になって決定することと、個人的には出来れば外形的・客観的に算定や測定できるシステムが必要と考える。

(山下委員)

基準設定を協議により決定することが望ましい。

(座長)

このケースにおいて、徴税はどこがするのか更に議論が必要だが、徴税機関は道州と市町村が共同設置してもいいのではないか。

(玉岡委員)

これまでの議論の中では、事務配分について7割の時間を費やし、残りの3割近くはお金の流れについて考えてきた。事務とお金の話しはしてきたが、人の話しが出来ていない。資料6にもあるが、中央省庁は数が減り、人員も減ることを想定している。道州単位で考えれば都道府県がなくなるということになる。その時に公務員の数が減るということに関してその方法などの議論が為されていない。道州制により人の流れがどうなるのかイメージできていないため、これに関する議論を深める必要がある。

もう一点は、10回の研究会を通して、道州制の一般的な議論を行ってきたが、関西における道州の姿について具体的な話しができていない。研究会も終わりが近づいていることから、関西州のイメージについて議論が出来ればと思う。

(座長)

道州制導入後の国の姿について議論があまり出来ておらず、また道州・市町村における公務員制度についても詰めた議論ができていないため、この部分についても考えていかねばならない。

また、出来れば関西における道州のあり方についてもきちんとした議論をすべきであろう。

(事務局)

関西の特徴は第4回会合で議論をいただいたように、政令市(大都市)が4つあり、また周辺に過疎的な地域、また拠点都市が散らばっている。そういった特徴をベースに道州のあり方として、関西の特徴をアピールできるのであろうか。

例えば、東北地方は均質なイメージがあり、京阪神のように複数の都市圏が重なり合うというイメージではない。道州制は特徴によって整理をすべきものなのであろうか。

(座長)

そういう特徴を認識するだけでも随分違う。大阪で言えば、京阪神と密接な関係を構築できていることをある種の特徴にした新しいタイプの道州制をイメージしている。ただ、福井から徳島まで入るのかどうかという問題は残るが・・・。

(山下委員)

離島についてはどう考えるのか。

(事務局)

離島は兵庫と和歌山に多少あるが、他の府県、例えば東京や長崎などに比べれば圧倒的に少ない。また、紀伊半島や丹後半島は半島振興法の対象になっているが、地形的に大きな半島であるため、特徴として他の過疎地と変わりはない。

(座長)

道州制における人の話については、本日と次回会合できちんと議論すべき。

(山下委員)

少し話を戻すが、府県が道州になった場合の組織の作り方としては、今のような首長と委員会制が踏襲されるかは別にして、分担管理型の組織構造というのは恐らくついて回る。

道州の内部組織ができれば、その組織間の壁をどうするかという話になる。それは、どういう道州をイメージするかによるが、多少の縦割りは残るだろう。

(座長)

ただ、中井委員ご指摘の私学・公立問題が残るかどうかはわからないが。

(山下委員)

特に、教育委員会などの行政委員会の場合は、その壁が高いイメージがある。同じ学校の問題だから一つにするというだけで究極的に片付く話ではない。この問題は結構悩ましい。

(座長)

教育委員会の権限について言えば、地方教育行政の組織及び運営に関する法律により教育委員会の設置が決まっており、それに従って都道府県教育委員会、市町村教育委員会が役割分担をしている。翻って、教育委員会の範囲内に入ってこないその他の教育行政は執行機関が担当するという図式になっている。

国のレベルでいうと、文部科学省の権限の範囲内に学校教育法があって全て統合しているという図式であるため、学校教育法レベルでの統一を道州で行うとするならば、一本化される可能性は高い。但し、市町村レベルでも同じ問題が残るため、道州で今の学校教育法のようなものを作るのか、或いは市町村が作るのかという議論もあるような気がする。基本にあるのは、学校教育法と地方教育行政の組織および運営に関する法律の二本立てで学校管理を考えていくということが、私学・公立のような問題をもたらしている、と言える。そこは、我々の道州制のイメージと市町村が具体的な教育問題を決めるという議論の範囲内で言うと、むしろ市町村の意思決定に委ねられる部分が大きいと思う。

(事務局)

現行では、国の省庁の枠にはめられた補助金なり制度があり、その補助金をそれぞれの大阪府の組織が所管している。このため、整合性が取りづらい部分がある。また、大阪府の場合は極端ではないが、人事政策上の問題で部局間の異動をあまりしないと、どうしても部局に対する帰属意識が強くなる。そういう部分で壁が出来てしまう。

(山下委員)

組織の話ではなくて、政策の範囲でどう判断するかだと思う。政策なり計画の単位でどこまでを想定して調整するのか、そこの仕組みが必要。

先ほどの話で言えば、教育委員会としては私学のことは全然頭になくて、公立だけを何とかしなければという、そういう視野での政策作りをやっている。そういうあり方ではなく、教育委員会が主体となって問題に取り組むのか、教育委員会ではない別組織が主体となるのかは別として、もう少し上位レベルでのプランニングができるはずである。政策の枠をどうはめるかがポイントである。

(座長)

その時にここでやっている議論が有利なのは、道州であれ市町村であれ、いわば比較的目に見えるところ、つまり身近なところで議論ができる。要するに、学校教育法の議論にまで遡らなくとも、道州条例や市町村条例の範囲で議論が出来る。そこで政策について議論ができる、そういうところがポイントであろう。1億3000万人に対する話ではなくて、地域に密着した話ができるかどうか。そうなれば、見えやすさ、扱いやすさというのが全然違ってくるのではないか。まさに、政策を担当するレベルをきちんと考えると、縦割りの問題もある程度は解消できるのではないだろうか。なくなることはないだろうが。

企画から実施までの責任ある政策立案と実施ということをパッケージにして考えると、割と問題は解消される気はするが。

(山下委員)

道州に対する我々のイメージは、出来る限り軽い組織のはず。国はもっと軽くなる。そんなイメージとすれば、一つの組織が担うテリトリーは結構大きくなる。人の流れはイメージできていないが、小さな組織が大きな仕事を担うときは大きな視野を持たざるを得ないから、細かな政策の話にはならない気がする。

企画、実施、ルールメイク、財源をワンパッケージで考えた時に、事業体みたいなものをどうそこに位置づけるか。道州が実施を担うというイメージは持たない方がいいと思うが、実施を担うのは独立行政法人のような別の企業体、組織体みたいのものを考えたい。この組織体をどう考えるか。これは道州だけでなく、国もそうであるし、市町村もそうである。

(座長)

例えば、負担金付きのダムの話は、その企業体とか独立行政法人のようなイメージで、解消した方がいい気がする。

(山下委員)

道路でも河川でも言えることだが、人材をプールしていくつかの職場を異動させながら育てていくためにはある程度のスケールが必要であることから、別の組織体を作っておいた方がいい。それを道州で行ってもいいし、もう少し広い範囲でしてもいいと思う。特に、農業、土木、建築の専門家は大きい自治体でないと抱えられないという問題があることから、それと同じ問題は出てくる。

(座長)

最近では都道府県レベルでも技術系の専門職員を抱えきれなくなってきている。道州ぐらいになると少し違うかもしれないが・・・。

(山下委員)

話を変えて資料4についてだが、道州と大都市との政策の整合性を図っていくための仕組みが必要ということで、かなりきちんと詰めた整理をしてもらっているが、こういう議論がいいか疑問である。憲法レベルの話ならともかく、現行自治法レベルの仕組みにこだわる必要はあるのだろうか。もう少しアバウトなまとめ方でもいいと思う。

(事務局)

現行の自治法にこだわるつもりはなく、こういうものも活用できるというぐらいのイメージで作ったのだが・・・。

(山下委員)

資料4の中で、‘道州と政令市が広域にわたる総合的な計画を共同して作成’とあるが、これは中々難しい気がする。むしろ双方の計画なり戦略の総合調整、手続き的にどう絡むかがポイントである。

また、不服を申し立てる時に、どういうものをバックグランドに不服を申し立てるのか。例えば、ある市がある計画なり戦略を持っている中で、全く違う方法で計画を進めるよう働きかけがあった時に、それに同調できない、協議が物別れになる、そんな状態の時に不服を申し立てるとイメージしている。そこで、擦り合わせの議論が出てきた時に、両当事者だけで擦り合わせができるだろうか。第三者機関のようなものの存在が必要なのか。戦略的な擦り合わせに第三者がどう絡めるのかも気にはなるが。

大阪府と大阪市の長期戦略がうまくいかない時に、水面下で協議するよりは出来る限りフォーマルでした方がいいが、どんな協議・交渉ができるであろうか。ダイナミックに考えた方がいい気がする。

(中井委員)

以前、山下委員は市町村側の戦略が重要であるという話しをされていた。その延長線上に大都市制度の問題があるのではないか。

(山下委員)

大都市だからこそ一般市レベルの戦略よりも大きなことを考えるであろうし、道州の戦略との調整、整合性というものが持つ意味が大きくなる。一般的な市町村であれば戦略の空間的な広さ、道州の中で持つ重要性は大きくないが、大都市の場合はどういうコンセプトで長期的に動くか道州にとって物凄く大きな意味を持つ。したがって、総合調整というのが重要になるというイメージである。道州と大都市の調整がうまく機能しなかった時の対応は課題として残るが。

(座長)

協議が物別れとなれば、裁判で決着をつければいいのではないか。

(山下委員)

裁判での決着には馴染まない印象をもっている。

(座長)

現行の国地方係争処理委員会のようなものではなくて、きちんと団体間の紛争処理は仕組みを作らねばならない。

(山下委員)

出来るだけ当事者間のすりあわせで解決することが望ましい。

(座長)

当然、当事者間で相互に代案を出し合うことが大切である。

(山下委員)

法的な拘束力とか義務付けというレベルの話なのか。もう少し、マクロ的な話であろうし、お互いが調整しあって了解した計画通りに具体的に施策が展開しているかという部分は、必ずしも法律と法律に基づく処分ということではない。計画の具体化であるため一時的な話ではなく、いくつかのレベルで調整の仕組みが必要な気がする。

(座長)

逆に、計画だけで議論をしようとするから無理があるのかもしれないので、事業レベルや許認可レベル、戦略計画の議論があってもいい。むしろ、もう少し丁寧に仕事のプロセスの中で交渉過程みたいのものがある方がいい。交渉することを義務付けるぐらいの制度の方がいいのかもしれない。要するに、プロセスだけは義務付けられているというイメージとなる。

(山下委員)

道州と大都市の関係を議論するときに、イコールパートナー的に考えるのか、それとも道州の中の大きな市というイメージなのか。この部分について、中々整理できていない。

(座長)

我々の議論では、基本的に道州の区域の中に市町村が入り、大都市についても道州に入るということで考えてきたが、区域の中に入っても入らなくとも、道州と市町村の関係はイコールパートナーが原則である。したがって、市町村の間には差がない。但し、社会経済的な存在や力が絶対的に違うため、政令市レベルの大都市については特別な仕組みをいくつか用意する。それが計画段階において、一般の市町村より密度の濃い調整の仕組みであり、或いは会社方式か独立行政法人か定かではないが、広域的共通事務処理みたいな話になる。それが大きな特徴になる。

(山下委員)

大都市の場合、昔でいう特別州のようなイメージで考えるのか、それとも現行の政令市のようなイメージで考えるのだろうか。割り切る必要はないと思うが、これに関する議論は必要。大都市の取り扱いは難しいため、人口30万前後の都市になるよう分解したほうがいいのでは。その方が、道州と市町村の関係を考えるとき、また市町村相互の関係を考えたときは扱いやすいと思う。

(座長)

今後の大阪を考えるとき、市町村への権限移譲はもちろんのことだが、市町村自治がうまく機能する範囲をどう考えるかの議論のときは、中核市ぐらいの規模が妥当という考えもある。要するに、市民参加ができて、都市としての一定の規模があって、尚且つある種の一体感、コンパクト感があるというのは平均して人口30万の都市ぐらいが妥当ではないかと考えるもの。しかし、今回の議論では、こうした政令市のあり方を一方的に決めるようなことは馴染まないと思う。

(玉岡委員)

第4 回会合の際に、大都市自らの意思と責任で担うと判断した事務については、大都市に委ねる。但し、道州は関与も支援もしないという議論をしたが、その考え方は今も変わらないということでいいのか。

(座長)

それは大都市だけでなく、一般市町村全体にも同じことが言える。それを基本にしないといけない。

(玉岡委員)

道州は軽い、国はより軽くするというイメージで議論を進めてきたが、そうすると市町村は重いということになる。しかし、市町村の扱う事務・お金が大きくなりすぎて身動きが取れなくても困る。どこまで市町村の権限・財源を大きくするかというのが問題である。

(山下委員)

そんなに重くならないのでは。市町村も身の丈に合わせて事務を取捨選択するようになるのではないか。市町村に事務を押し付けて交付税を支給するという従来型の方法ではなくて、市町村の身の丈に合わせて、市町村自身のお金で自然的・社会的・文化的状況に合わせた仕事をやっていく、そんなイメージである。このため、市町村の事務が重くなるということはないと思うが。

(座長)

市町村が何をするかは市町村自身が選べばいいという議論をこれまでしてきており、市町村自身が市町村の意思で事務を選択する、これが前提である。

問題は市町村が選択をしなかった事務である。その際に、検討した結果、市町村の事務だというものが出てきたときにどうするか。それを道州内で議論し、道州でも判断ができなければ国で議論をするというのが基本的な考え方である。そういった方法で議論を続けていく中で、もう一度市町村にその事務が戻ってくるかもしれないし、道州の事務となるかもしれない。逆に、市町村がやらないと選択した事務を道州がやる必要があるのかという議論が起こってくるかもしれない。そういうプロセスが大事ではないだろうか。

(山下委員)

場合によっては、市町村間の連合組織が対応するということも想定できるし、道州の連合組織が事務を担う場合もある。そのように議論を重ねていけば、最終的にはうまく納まるのではないだろうか。

一つの事務に対して、一部分しか市町村が対応しないため、その残りの部分は当然道州が対応するとか、そういうイメージにこだわらない方がいい。河川管理で考えれば、事務をお互いにどうやって分けるのかというよりは、市町村によって仕事量自体が増えたり減ったりする、そういう柔軟性を持たせた方がいいのではないか。

(座長)

標準的な仕事量自体をどれぐらいにするかということを決めることも重要であろう。但し、他の市が対応しても自分の市はその事務をしないということは当然ある。それに対して住民から不満の声があがれば、その時点で再度議論するというのでいいのでは。

(山下委員)

河川管理で極端に言えば、溢れても構わないという結論を出した自治体があるとすれば、その際に住民から不満の声があがる。それにより住民自治が機能することとなる。

(事務局)

行政サービスでカバーするエリアが一つの市町村で納まっておればいいのだが、いくつかの市に跨る場合は意思統一する必要があるのではないか。

森林保全を例に出して考えると、その事務を市町村の事務として義務付ける必要はないため、森林がない市町村はこの事務をしないということを想定している。逆に、河川管理の場合は上流と下流域の話しになるため、これに関しては一律の仕組みが必要だというイメージを持っている。これが従来の発想を脱し切れていないというご指摘になっていると感じるが。

(山下委員)

そういった時に、市町村と道州とが河川整備をどう分担していくかではなくて、一緒になって考える仕組みを作るべきである。要するに、一種の共通政策を作るというイメージである。

(座長)

河川管理の資料2-(3)はそういうイメージで作ってあると思うのだが。

(事務局)

山下委員がご指摘になっているのは、事務配分を枠にはめ込もうとしているのが馴染まないということか。

(山下委員)

そこまでは言ってないのだが・・・。

(座長)

我々の考えからすれば、どこからか疑問が出れば議論をする。但し、現行法で事務を執行しているものは、先ずはそれを役割として引き受け、そこから調整しましょうというのがコンセンサスである。ただ、こういった議論の出来る場を用意できるかが問題。

河川で言えば、河川の持っている上下流の問題とか、本川・支川の問題などをどう調整するか、河川の整備計画なり整備方針を考えるときのフレームが大事である。そこでの河川に関する戦略計画に、利害関係のある市町村、道州が関わって作っていく。そのルールが確立されていれば、大した問題はない気がする。

(山下委員)

河川の場合は上下流の利害の共通性があることから、共通政策的なイメージで整備計画を策定する。しかし、そのフレームのもとでどこまでそのフレームに拘束されるのか、どこまで市町村ごとにフリーハンドがあるのかというのは、個別具体的に考えていけばいい。

(座長)

河川管理の資料を見て思うのは、別に道州が絡まなくても大丈夫だと思うが、治水・洪水制御の話しだけではなく環境問題など色々関わってくるため、道州がこの事務に関わらざるを得ないという気もする。

(山下委員)

この問題に関しては、道州のコーディネーター力に期待する部分が多い。道州が市町村の意見を聞いて、最後は道州が権限を持って決めるのではなく、市町村の協議の中で決める。その代わり、市町村が議論して決められるような場の設定と調整は道州の仕事となる。そういうイメージを持っておくことが大事。

現行制度では、市町村・都道府県・国の関係において、最終決定権はどこにあるのか、その決定権限を行使するまでの間にどういう風な手続き参加があるのか、そんなイメージを持っている。しかし、それを道州と市町村の関係に持ち込むのは疑問を感じる。そのイメージで道州制を考えると、最後は道州が市町村を仕切ることになる。もう少し、従来と違うイメージで作れないだろうか。

(事務局)

役割分担を決めた後、ある役割を担うところが決定権も持つ。但し、それぞれの役割に関わる部分があれば相互に調整をする、そういうイメージを持っている。しかし、道州制導入後のイメージを明確に描けておらず、道州や市町村間で時に相反・矛盾する利害をどう調整し、誰が最終的に決定するのか不明確になってしまっている。これをできるだけクリアにした上で、決定権者と執行者を同一の主体にして、関連するところについて調整を図るといイメージを持っているのだが・・・。

(山下委員)

今の話で言えば、河川管理は市町村の仕事であり、市町村間相互で共通政策を作る。共通政策を作るところで、道州がフォローをする。道州が一方的に押し付けるような形ではない、道州と市町村の共同決定のようなイメージが出来ないかなと思う。

(座長)

当初はそういう形で考えてきたが、市町村相互の共通政策でも十分対応できるとも思える。

(山下委員)

流域市町村なり道州で、どういう風に整備していくかという議論は共通政策的に出来るとして、ではそれを受けてダムを作るということになると、どこで詳細決定をするのか。また、どこがお金をだすのかということになる。

(事務局)

下流区域からダムを作って治水対策をして欲しいという要望があり、その一方で上流区域から環境破壊をされると困るのでダムは作らないで欲しいと正反対の要望が為された場合、こういった調整を市町村間でできるのか。

(座長)

それは市町村間でも十分可能だと思う。但し、協議がうまくまとまらない時には、道州が仲裁をする。こういう図式となる。最終的には市町村間で歩み寄り、どこが費用負担するのか、費用負担の配分はどうするのか等を決定するというイメージになるのではないか。

(山下委員)

今の話では、仮に道州に決定権があるとしても、そんなに変わらない。道州が決めるにしても道州が勝手に決められる訳ではなく、それなりに市町村の意見を聞いて、対立している場合は仲裁をする。そういう意味では、市町村間に決定権があろうと、道州に決定権があろうとそんなに変わらない。

(座長)

むしろ道州としては、そちらの方が楽だと思う。道州の責任はコーディネートの責任だけであるし。

(事務局)

但し、コーディネートのツールとして、最終決定権を持ちながら調整をするのと、決定権等を全く持たずに調整するのでは違う気がするが・・・。

(座長)

時間が残り少なくなってきた。道州制導入後の国の姿について御意見をいただきたい。

(山下委員)

国の姿を考えるとき、組織とか人について肉を付けていかねばならないが、どのような仕事をするかイメージを豊かにしておかねばならないと思う。言葉であげていくと資料6のような形になると思うが。

(中井委員)

国の支分部局の問題があって、現状では霞ヶ関単体ではなくて、霞ヶ関が意思決定をして各支分部局が実施している。こういう組織の実体を把握することは非常に難しい。個人的な見解になるかもしれないが、財政学から見ると、国の一般会計、特別会計については各省庁が予算配分を行うまでは何となく理解できるが、財務省と近畿財務局がどういう関係になっているのか非常に不透明である。例えば、大阪府の場合、府の決算があって、それぞれの組織があって、そして部局や教育委員会、府警があってと形として分かりやすい。ところが、国の場合は、各省庁と出先機関との関係、実体など全く見えてこない。

道州制後の国の姿については、こういった問題を抱えている状況であることから、ただ単に国をスリムにするということのために、支分部局の職員を道州に配置するというのは疑問を感じる。

現行において、中央省庁で企画立案している部分は何となく分かるが、実施を行う各支分部局の行動が非常に見えにくい。支分部局の実体が見えない状況の中で、道州制導入後の支分部局、ひいては国のあり方を決めるのは少し危険である。

(山下委員)

どこまで国の出先機関に決定権があるのか。どこまで国の決定に則って事務を実施しているのか。全く見えてこない。

(座長)

基本的には全て霞ヶ関で決まってくるが、出先機関から霞ヶ関にある事務について実施したいとお伺いを立てると、大体は許可が下りる。農水とか整備局は規模が大きく、現場での事業執行も大規模なものとなることから、それぞれの支分部局ごとに社会資本整備計画や推進計画を立てる。それを本省に承認してもらい、予算をつけてもらうという仕組みである。これは国と自治体の関係と同じような構図になっている。

(山下委員)

地方の出先機関を全部道州に移せばいいというような単純な話しにはならない。そんなことすれば、国の仕事の仕方自体が大きく変わる。逆に変えてもいいのかもしれないが、国の仕事が成り立つのかという疑問が残る。

国の仕事が何なのか理解できない部分はあるが、例えば国交省で予算を取ったというけど、それは自分たちで全て使っているだけでなくて、どういう形で自分たちの出先に流れていくのか、どういう形で独立行政法人や外郭団体、特殊法人に流れていくのか、それを更にどう管理していくのか、整理しておかねばならない。

(中井委員)

そういう仕事の流れ、お金の流れについて、説明できる人は存在するのか。

(事務局)

実体を把握するのは難しい。

先日、全国知事会で出先機関の見直しについて議論がなされ、プロジェクトチームができた。国がどのような仕事をし、それを地方で対応できるものなのかどうかという検討を始め整理をしている段階である。しかし、出先機関の事務事業の執行に係る決定のプロセス、お金の流れ等は国から説明を受けても実体を把握するまでには至らない。

大阪府では地方環境事務所を対象に調査したが、都道府県と日頃の仕事での付き合いは全くないことから実態把握が難しい。地方環境事務所の仕事は国立公園の管理と環境教育等の啓発、環境規制に係る立入検査などで、立入検査は都道府県が実施しない場合に、代わりに行えるようになっている。

(山下委員)

単純に仕事だけ見れば、国立公園と国定公園に何の違いがあるのかという印象だが、本当にそういう風に言い切れるかどうか分からない。

(事務局)

ただ、どの仕事も国でなければ出来ない仕事ではない。

(中井委員)

道州制になった時に、道州の各部局長のポストが国の役人で占められていれば、現実問題として道州制を導入する意味がなく、現行の形と何も変わらない。

(座長)

それはおっしゃるとおり。そういう霞ヶ関を解体させないといけない。

(山下委員)

国・道州・市町村の人事交流というのは積極的に行えばいい。人事交流が図れているか否かは何か交渉ごとのある時はすごく大事で、相手の行動原理、組織文化が分かってないと、妥協できるものも妥協できない。人事交流は必要だと思う。但し、国家公務員は大分減るだろう。

(事務局)

国家公務員の数は全体で約30万人、その内の20万人が出先機関にいる。見直しの対象となっているのは20万人のうち10万人、更にその内で7万人は仕事と共に地方に流れる。残りの約3万人は行革効果により削減できるであろうと予想している。

(山下委員)

霞ヶ関の本省に国家公務員が5万人。それが一つの基準になる。

単純に出先機関にいる20万人の国家公務員が道州に移るのか。また、国の事務の手足となるべき出先機関が必要となれば、国の地方組織を完全になくすことは出来ないかもしれない。

<日程調整>

→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定。

第11回研究会
日時:7月31日(木曜日)午後6時から午後8時
場所:大阪府公館

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