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更新日:2013年11月25日

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第11回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要

  • 日時:平成20年7月31日(木曜日)午後6時から午後8時
  • 場所:大阪府公館
  • 出席委員:
    (座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
    山下 淳 関西学院大学法学部教授
    中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
    玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授

1 開会

挨拶

(企画室長)

本日は、(1)道州制下における税財政制度のあり方、及び(2)道州の執行機関・議会について御議論をいただきたいと考えている。

先般、政府の道州制ビジョン懇談会が議論を再開し、新たに「税財政専門委員会」が設置された。同専門委員会は道州制における税財政制度について検討を進め、年度内には報告をまとめる予定。

道州制下において、地方が役割に見合った税収を自主的・自立的に確保できるかは大きな課題。税財政制度については、昨年度も御議論をいただいているが、その際ご指摘をいただいた論点等を基にさらに御議論を進めていただければと思う。

また、道州の執行機関・議会についても、道州の具体的な姿を明らかにするために重要な要素と考える。昨年度にご指摘いただいた内容を基に御議論をいただければと思う。

お手元に若干の資料を用意させていただいた。これに沿って忌憚のない御意見をいただきたい。それでは、座長の新川先生に議事を引継ぎたい。よろしくお願い申し上げる。

2 議事

  • 道州制下における税財政制度のあり方について
  • 道州の執行機関・議会について

(事務局)

⇒配布資料(資料1から資料6)について説明。

(座長)

それではご自由に議論いただきたい。

(中井委員)

研究会ではシミュレーションまで行う必要はないと言ってきたが、現状をどう認識しておくかは非常に重要な問題。道州は財政力等によって強力州・中間州・弱体州に分けられ、その中でも判断の基準となる中間州について共通の認識を持つ必要がある。

資料5-(1)、「各ブロックの決算状況」の中の財政力指数によって道州を3つのレベルに分けると、先ず0.38の北海道は弱体州、0.28である沖縄も弱体州となる。0.34である九州、0.33である四国も同じく弱体州、中国は弱体州に近い中間州、東海は中間州、北陸は弱体州に近い中間州、東京のある南関東は強力州となる。ただ、南関東が強力州となるのは東京の財政力指数が全体を引き上げているためで、東京が単独で州を形成した場合、南関東は中間州となる。北関東は中間州、東北は弱体州となる。近畿については、2府4県、2府7県いずれにしても中間州という位置付けになる。

財政調整の議論を行う上で、財政力指数が0.5前後の中間州を制度設計の中心に置くことが一般的である。中間州を基準に、強力州や弱体州の制度設計を行う。例えば、ドイツやカナダ、オーストラリア等の連邦国家では、中間州が「ノー」と言えば、その制度は大抵うまくいかない。中間州の判断がマジョリティー(多数派)ということになる。道州制の制度設計は中間州を基準に考え、その上で強力州と弱体州の利害得失を考えていくということになる。

このため、シミュレーションをした方がいいという声もあるが、シミュレーションを行っても、それで何かが明らかになるものではない。シミュレーションによって現実的なデータを得ることは難しい。

人口500万人の北海道で考えると、500万人もの人口がいる地域が弱体州であっていいのかという問題が出てくる。北海道は財政力指数を判断する上での分母が大きくなり、また人口密度が低いためこういう結果になっているだけで、この数字だけで全てを判断することは難しい。

認識してもらいたいのは、関西は道州の制度設計を行う上で判断基準となる中間州に位置していることである。関西がまとまらなければ、道州制の導入など有り得ない。

次に、資料5-(1)の中に、年齢3区分別人口の推移(0-14歳、15-65歳、65歳以上)があるが、この中に近畿の将来が非常に危ぶまれるデータが出ている。例えば、大阪府のデータを見ると、生産年齢人口が85年に600万人、90年に630万人、95年に640万人に増加しているが、10年後の2005年には生産年齢人口が590万人と約50万人減っている。大阪の景気が低迷しているのは、バブル崩壊後の生産年齢人口の減少に比例している。お隣の兵庫県は、大震災の影響を受けたにも拘らず、それほど生産年齢人口は落ち込んでいない。関西で考えると、大阪府と兵庫県の人口規模が圧倒的に多いことから、この両府県が安定しなければ関西の経済は立ち行かなくなる。

強力州である東京の人口推移をみると、生産年齢人口の減少の幅が非常に小さい。この差が、関西と関東の格差につながり、特にその影響を受けているのが大阪府ということになる。大阪府が良い悪いという議論ではなく、道州制導入にあたって関西が中間州として安定的にマジョリティーを形成できるかが重要である。

「1+1=3」を目指し道州制導入に向けて議論を進めてきたが、各道州が自助努力によって「1+1=3」が図れるようにしなければならない。近畿で言えば、中心となる大阪の役割が非常に重要となる。

次に、東京一極集中問題について考えたい。例えば、ロンドンの場合、人口は700万人が頭打ちで、それ以上は増加しない。これは、本来であれば増えるはずの65歳以上の高齢者が、ロンドンを離れ環境のいい地方に移り住む傾向にあるためである。これにより、人口推移に変動が少なくなっている。

大阪府の場合、人口880万人の人口を維持しているのは、65歳以上の高齢者の割合が大きいことにある。東京も同様に、65歳以上の高齢者の割合が高い。日本人は住み慣れた街を離れず、また65歳以上の高齢者が転居する割合が極端に少ないところが特徴といえる。これらの状況からすれば、道州制を導入したからといって、東京に住む人々が地方に移り住むとは考えられず、東京一極集中が解消されるとは限らない。東京に人が集中し、何年経っても人が減らないのは日本の特徴の表れだと言える。

大阪府の場合、人口は減少していないが、生産年齢人口が減っているため、府内の生産力が確実に落ちている。関西州として600万人の生産年齢人口が更に減少した時を想定し、これを元に戻す仕組みを考えておかねばならない。中間州が弱体州になってしまうと制度の根幹を揺るがすことになる。道州制導入の議論を進める上で、中間州が自立的な運用の出来る制度設計をし、その後は自助努力で財政力を維持していけるような財政調整制度が必要ではないだろうか。道州制を導入すれば東京一極集中を解消できるという過度な期待を持たず、中間州が中間州として安定した運用ができるような制度設計が求められる。

話は少し変わるが、小泉内閣時代、大企業の経営状態が良くなれば、それが中小企業に波及するという意見があった。また、東京の経済が良くなれば、大阪にもその波及効果があるという見方もあった。バブルの時代には確かにその効果があったが、現在は東京と大阪の格差は広がりを増すばかりである。

東京一極集中問題を議論するときに気をつけなければならないことは、東京の経済力・生産力・人口等を分散させることに重きを置きすぎることである。東京の生産力や経済力等を分散させるのではなく、東京の力を借りて周辺の府県の財政力指数を上げることを考えた方がベターであり、それにより中間州や弱体州が安定した財政力を構築できるのなら、東京一極集中を否定的にとらえる必要はない。

道州制を導入することにより、道州全体の活性化が実現できれば、まさにこれが「1+1=3」ということになる。もし、波及せずに生産年齢人口が減少し続けるなどの状況になれば、「1+1=1.5」になるという可能性もある。

(座長)

制度としては、中間州が一番受け入れやすい仕組みを作ることが基本。その上で強力州と弱体州の制度設計をどうするかを議論すればいい。

一極集中の話は、日本人が転居を嫌う原因を住宅事情という人もいれば、人間関係の問題が大きいという社会学的な説明をする人もいたりと判断が難しい。

例えば、地方採用の公務員(国家二種)が住宅を買い求めるのは、出身地がどこであっても結局はブロックの中心都市に近いところにするというのが典型的なパターン。九州で言うと福岡周辺、東北で言うと仙台周辺に家を構える。住み続ける所は‘都市’という選択をする人は多いが、この理由ははっきりしない。但し、日本の特徴として一極集中の傾向があることは確か。

東京一極集中型を解消するということよりも、各ブロックが生産年齢人口を如何に増やしていくかが重要。現実に、業種によっては人手不足に陥っているところもあるため、道州制を導入することによって労働移民を含めて生産年齢層の管理が出来れば、生産年齢人口の問題は少し解消されるかもしれない。

(玉岡委員)

道州制下における税財政制度については、経済という‘生き物’に合わせて制度設計を行わねばならない。

中井委員が言うように、シミュレーションは行う必要がないと考える。他の研究会でシミュレーションは行われているが、それらを見ると、約90兆円ある国と地方の現行の税収をどう割り振るかという静態的な議論に終始しており、仕事の中身、つまり役割分担についての議論が為されていない。

仕事の内容と、それに必要な財源を、どの段階で、誰が、どういう方法で確保できるかは経済動向によっても大きく左右されるため、非常に複雑な方程式を解かないとシミュレーションを行っても意味がない。道州制の制度設計については、これまでの議論のように国・道州・市町村の役割分担を決めた上で、税の配分について議論すべきだと思う。

道州への税配分の方法については色々な意見があると思うが、意見の割れる大きな要因は消費税の問題である。消費税の国・道州の配分方法についても議論をしていく必要がある。

(山下委員)

中間州が自立できる制度設計が必要だという説明をいただいたが、財政的調整については道州間の問題と、道州内の市町村間の問題を考える必要がある。市町村間の財政調整については道州内で解決すべき問題として位置づけるのか、それとも市町村間の調整は市町村の状況を踏まえた道州間のバランスを考える問題としてとらえる必要があるのか、どのように考えればいいのか。

道州単位で考えた場合、現況をブロックで区分したときに大体の財政力が示されることから、それに基づいて財政調整をすればいいということであったが、市町村の置かれている状況は道州とは違うことから、それを道州内の問題として割り切っていいのであろうか。

(中井委員)

市町村の中で財性力の高いところと低いところが当然分かれるが、私の考えでは市町村間の水平的調整は難しいと思う。水平的調整が可能なのは、道州で言えば強力州と弱体州の間に中間州があるためで、その中間州が仲介役として強力州に弱体州の水平的調整を促す形は取れる。しかし、市町村の場合、昨今の市町村合併により相当に数が少なくなったからといっても(約1800)、道州に比べれば市町村の数は莫大に多いことから、市町村間で調整を行うことは複雑で困難だと考える。一つの道州の中に入る市町村が数十団体になったとしても、市町村間の調整は難しい。それは、市町村のレベルで組織力や財政力を判断することが難しいためである。道州レベルでは財政力の違いを明確にできるため、中間州の役割により道州の場合は水平的調整がスムーズにできると考えるが、市町村の場合は‘強力市’と‘弱体市’の判別が難しく、いわゆるターゲット(弱体市)を絞りにくい。

強力州と弱体州しか存在しない場合、議論はどこまでいっても平行線をたどり、結果として国の関与により強力州から弱体州に財政調整を行う。しかし、中間州の存在があれば、こういった問題を解決する仲介役として機能するのではないか。特に、関西は以前ほど力がないにしても、日本の中で重要な役割を担う中間州としての責任を果たさねばならない。関西がその役割を担えないなら、
道州制の導入は有り得ない。特に大阪府は、中間州としての役割を果たすべく関西の府県をまとめる立場にあり、その責務を担うべきである。

市町村の財政調整の場合は、国が垂直的に財政調整を行うか、或いは道州が垂直的に調整を行うかのどちらかになる。但し、道州制導入にあたっては市町村の自立が重要なメルクマールになっており、国や道州の必要以上の関与は少なくせねばならない。

道州内の市町村の財政調整については、垂直的調整が望ましいのではないか。つまり、財政面で言えば現行の都道府県と市町村の関係を踏襲する方が、諸外国の例をとってみてもいい気がする。

(玉岡委員)

水平的な財政調整は道州間で考えるが、その担い手である中間州の中でも財政力の強い州や弱い州があり、中間州自体が水平的調整の対象となるケースもあり得る。場合によっては中間州に対して国からの垂直的調整も必要となる可能性もある。しかし、中間州の役割を考えた場合、中間州自体が財政調整を受けることは好ましくないため、そうならないように中間州の財政力を高める必要があるのではないか。それが実現できれば、財政調整は強力州と弱体州の間でのみ行えばよいということになる。こういうことも想定しておく必要があるのでは。

(座長)

そういう仕組み、制度設計は必要だと思う。例えば、道州一人当たりの税収を平均化させ、国税と地方税の取り分を国と道州に客観的に振り分ける。但し、国税と地方税を合わせても財政力の弱い州には財政調整を行う。そういうイメージではないだろうか。

課税対象を共通にし、地域間の経済力格差を埋めるような税収の確保も必要。例えば、消費税の国と地方の配分について、弱体州に対しては州の取り分を増やすということも必要ではないだろうか。

(玉岡委員)

消費税については、現行どおり国と地方で分け合うか、道州制導入後は全てを道州に配分するかの議論が必要。

税の徴収に関しては、必ずしも各自治体が行う必要はなく、税収が確保できれば徴税機関の設置についても検討すべき。

(中井委員)

資料5-(1)の中で「近畿2府7県における主要税目の収入額等の状況」というデータがあるが、注目してもらいたいのは‘一人当たりの指数’である。一人当たりの指数は全国平均を100とした数値で、2府7県の地方税の一人当たりの指数は90.6となっている。90.6という指数をみると、2府7県は中間州に近いエリアだと判断できる。どの税目の収入を増やせばいいかと言うと、先ず個人住民税。この指数は2府7県で約90であるため、数字的にはまずまず。しかし、法人二税が約83となっており、これは関西圏の経済が落ち込んでいることを表している。この数値は本来、90ぐらいはないといけない。地方消費税については指数92であるため、これは個人住民税・法人二税よりも道州の基幹税および安定財源として考えられる。この税収の指標と先ほど話しに出た各ブロックの財政力指数を同じように区分けすれば、強力州・中間州・弱体州の区分けも容易となる。財政力指数だけで道州の力関係を判断する場合と、税収も含めて判断した場合は少し違う結果が出る。

北海道を例に考えると、北海道は弱体州と判断しているが、税収は他府県に比べ極端に低いということはない。基準財政需要額が高すぎるため、財政力指数がどうしても税収の指数に比べれば落ちてしまう。つまり、基準財政需要額をベースに判断する方法と、税収をベースに判断する方法の二通りから、中間州の姿を明らかにしていく必要がある。

このような方法により選定されたそれぞれの中間州は、道州制下において特に協力・協調関係を構築する必要がある。中間州同士の意見が一致しなければ、道州制は立ち行かなくなる。

財政調整制度は答えがなかなか見つからない。しかし、制度設計を出来るかぎりシンプルにすることと、強力州と弱体州の財政調整を国ではなく中間州が担うという考え方でいいのではないだろうか。

(玉岡委員)

最終報告書の作成に向けて具体的な話しが必要だと思うが、税財政制度は経済という‘生き物’を相手にするため、どういう経済状況であっても制度設計がしっかり出来るよう、一般的な議論を数多く行う必要がある。また、他の研究会でシミュレーションが繰り返し行われているが、もし仮にシミュレーションをするのであれば現実性がなければ意味がないため、シミュレーションを行う上でどういう手順が必要かについても議論をすべきである。

(座長)

道州制の制度設計を行う上で、役割分担などの基本的な考えをしっかり持っていれば、特定の税目や金額、或いは財政調整など具体的な議論は今の段階で行う必要はない。

道州制を導入した後で、必要な財源を道州や市町村にどう手当するかが最終的な問題であるが、財政調整が必要になった時に、その方法・手続きが出来るかぎりシンプルなものであるよう、基本的な制度設計をしっかりすべきである。

(事務局)

財政調整制度について、基準財政需要額をベースに考えるのか、一人当たりの税収を平均化し考えるのかという議論があるが、先ずは中間州が成り立つようなベースまで税源移譲等を行い、それでも弱体州の域を超えられない州に対して強力州との間で財政調整を行う。つまり、方法・手段の違いがあるにせよ、結果として弱体州を中間州に引き上げ、中間州が多数を占めるように調整するという考え方でいいのか。

(座長)

道州の中で最低基準のようなコンセンサスが今後できることから、その基準を満たすような調整が必要ということになる。

(山下委員)

今日の議論のポイントは中間州を想定し、その中間州が道州の多数を占めるような存在にすることである。中間州が道州として担う仕事を財政的に処理できるような自立した存在として設定する。そのポイントをしっかり押さえておけばいい。細かな制度設計はもう少し先の話である。

(座長)

道州は基本的に自己財源で運営できる、そういう道州が多数派を占めるような制度設計が必要。道州を財政力でランク付けする場合、10%ぐらいの幅を持つ方がいい。

(山下委員)

正確な数値等で中間州(標準)を設定するのではなく、アバウトな基準でいい気がする。

(座長)

計算式を用いて、基準財政需要額から収入額を引くというような考え方は不要。強力州と弱体州の財政調整は必要だが、それ以外の州は自助努力で運営をするという仕組みが必要。これは市町村にも言えることで、財政力指数が0.3から0.6ぐらいの市町村は実質、差がないと判断できる。但し、財政力指数が0.1以下という市町村があれば財政調整が必要だということにはなるが・・・。

このように、自助努力で運営する基準・範囲を明確にし、その範囲に納まる自治体が多数派を占める仕組みにしないといけない。それでないと、自治にする意味がない。

(山下委員)

道州制を導入し10年程度経てば、各自治体の財政力に差が出るだろうが、その時は新たな制度を考えればいい。

(座長)

税収・税源・経済力は今のところGDPベースで考えるが、この水準は地域毎の生活実態にあまり関係ない。例えば、低賃金で雇用されていても、田畑を所有し食料をある程度確保できている場合は、消費生活の面において日常的に苦労はしていない。生産に係るコストの負担は必要ではあるが、マーケットに依存していない地域の方が却って豊かであったりする。所得水準に誤魔化されないようにしないといけない。

(事務局)

話は戻るが、中井委員より市町村の水平調整は難しいというご指摘があった。それは標準市町村というものを想定した場合、標準市町村がマジョリティーを構成することが想定できないとお考えなのか。

(中井委員)

市町村は道州に比べて数が多く、調整方法の方程式が複雑になる。それが、水平調整の難しい大きな理由である。例えば大阪府で考えた場合、人口10万から30万人の市を標準自治体とすれば、標準自治体が数多く存在することになる。この標準自治体が大阪市のような大都市と弱体市の財政調整を担うということは考えられるが、市町村レベルの調整方法を考えることは時期尚早ではないだろうか。道州制の基本的な方向性を議論している中で、調整制度の方程式が増えることを今の段階では避けたい。もう少し、具体的な話しに及べば市町村間の調整方法についても検討したい。故に、市町村間の財政調整は全く想定できない話ではない。

現実の話しとしては、ドイツの郡を考えれば分かりやすい。郡は基本的に人口の少ないところが多いが、その中でも人口の多い財政力のある郡が人口の少ない郡に対して水平調整を行っている。日本の市町村で考えた場合、これを例にとれば水平調整が出来ないわけではないが、今の段階で市町村間の調整について言及すると話しが複雑になるため、もう少し道州間の議論を詰めた後で、この問題については考えたい。

(座長)

少し悩ましいのは、道州政府の経営の話しだけでは済まない部分がある。北海道や沖縄で言うと、市町村の経営能力や財政力の低い所が多いことから、道州と市町村の両方が財政力指数の弱い地域となってしまう。こういう地域の財政調整方法をどうするのかについても議論しなければならない。

(玉岡委員)

道州が市町村に対して垂直的調整を行うとすれば、道州間の財政調整の規模が膨らんでしまう。

(座長)

そういった状況を避けるために、市町村間の調整を各市町村が独自で行うという議論も出てくる。そうすれば、政策的には道州と調整しなければならないが、財源的には市町村が自立できるというイメージになる。これは現実的な話ではないが・・・。

(中井委員)

シミュレーションの話しに戻るが、シミュレーションをすればマスコミの目を引くことはできるが、それよりも今あるデータの中から何が言えるかを考える方が重要である。

(玉岡委員)

シミュレーションは欲しい答えを出すために前提を変えてしまう場合がある。あまり頼り過ぎないほうがいい。

(座長)

次に、税源のあり方についてご議論いただければと思う。

(玉岡委員)

これまで議論してきたことだが、国・道州・市町村の役割分担を明確にすれば、それぞれの所要額が決まる。その上で、税源を確保する方法を考える。例えば、市町村にある単独の税源を配分しても税収が不足する場合などを想定するなど、あらゆるケースを考え議論を積み上げていくことが重要である。

(座長)

基本的に、市町村自治を前提に議論を進めているため、先ずは市町村の役割に応じて税源を配分し、更に道州・国の役割に応じて税源を確保していく。そういう考え方でいいのでは。

道州制を導入しても従来の税目とそう変わりはないため、住民に身近な基礎的自治体から税源を配分していくというのが原則になる。この原則に基づいて、課税対象や課税権、税目配分を考えていくことが望ましい。基本的には課税自主権を全面的に認めた上で、それぞれの地域で地域性等を鑑みながら自由に自治体運営を行えばいい。

(事務局)

課税自主権を各自治体が行使した場合、業種によっては悪影響を及ぼす可能性があるのではないか。例えば、物流関係など。

(玉岡委員)

課税権は原則、自治体が自由に行使できると考えていい。もし、物流業界に障害を与えるようなことがあれば、そういう状況を踏まえた上で課税方法の修正が必要なケースも想定できる。

(座長)

そうなれば、障害を低くする、つまり課税方法について市町村間の競争が始まる可能性がある。要するに、自分の地域により多くの税源を呼び込むためには、如何に経済活動がしやすい環境を作るかが鍵となる。他の自治体よりも課税を低く設定することも有りうる。

(玉岡委員)

過去には、税を優遇し企業誘致を行ったというケースもあることから、道州レベル、或いは市町村レベルで同じようなことが行われる可能性もある。

(中井委員)

法定外税において注意すべき点について話しておきたい。道州制が導入される場合、現行よりも自主的・自発的に地方が外交を行うことが想定されるが、その際に、諸外国から理解されないような州独自の法定外税が存在すると、外交がうまくいかなくなる可能性がある。

オーストラリアでは、かつて各州が好き勝手に個別間接税を設けていて、我々日本人からすれば理解しがたい税目が数多くあった。日本において課税自主権を認めることはいいが、諸外国との貿易や観光産業等を踏まえながら課税を行わなければ、道州の経済に大きく影響することを認識しておかねばならない。

(座長)

そういう意味で、課税自主権は市町村レベルで行使することが望ましいのではないだろうか。

次に、本日のもう一つのテーマである執行機関・議会について考えていきたい。昨年度の議論の中で道州レベルでは、比例代表制による政党選挙を通じ、議会委員会制や議院内閣制のような仕組みが望ましいという意見が出ていた。この点についてもご自由にご議論いただければと思う。

(山下委員)

道州が憲法上の自治体であるという前提で考えた場合、直接公選制をとりつつ、議院内閣制のような制度を採用することは難しいのではないか。それなら、憲法改正を含めた議論を詰めるべきだと思う。

いずれにしても、憲法論の整理を一方で行うとして、道州の執行機関・議会のあり方については道州ごとに違う形であってもいいと思う。各道州が執行機関・議会の形を決めていくことが出発点になる。その上で、どういう執行機関・議会の仕組みを作るのが政策的にベターなのか、考慮すべき事項をあげておく方がいい。現行自治法上の二元代表制はあまりいい制度ではないと考えるから、現行制度を踏襲しない方がいいのではないか。アメリカ型の二元代表制にも賛成は出来ないが・・・。

(座長)

二元代表制の仕組みを厳格にとっている国は非常に少なく、その中でも日本の二元代表制は異常な仕組みと言える。例えば、アメリカ大統領選の場合は、大統領と連邦議会との関係で言うと、権限の役割分担が出来ている。しかし、日本の二元代表性は、首長と議会との間で権限の重なっている部分が多い。要するに、本来議会が決定をし、或いは議会に権限のある事柄に対して、首長が議会のメンバーであるかのごとく、そして議会の権限を一人で代行できるかのごとく制度設計がされている。首長の権限をどう集中させるかをコンセプトに、昭和の地方制度が作られた。長の行政権の確立が目的であった(首長主義)。極めて歪んだ仕組みと言える。

確かに、首長は選挙で選ばれているが、その一人が独裁者として4年もの間、行政権を握り、しかも立法権までも握ってしまう。それが、日本の地方制度である。少し極端な言い方ではあるが・・・。道州制導入後、自治体の規模が相当以上に大きくなった場合、現行制度のままでは民主主義を確保していく中で非常にマイナスに働く可能性がある。

(山下委員)

日本の二元代表制はどうしても歪な形といわざるを得ない。現行制度でいいという選択肢もあるが、首長の権限が強すぎることについて改めて議論が必要だろう。かといって議員内閣制がいいとも直ちには言えない。

道州ごとに、執行体制の違いがあってもいいのでは。全ての道州が同じ執行体制を取る必要はないと思う。

(座長)

憲法93条の長と議員の直接公選制さえ守れば、その他は地方政府が自由に構成してもいい。現行制度を踏襲するのか、或いはアメリカ大統領選に近いような役割分担型の二元代表制を取り入れるのか。また、首長をシンボル的な扱いにし、実際の行政運営は議会が担うという議員内閣制もある。色々な選択肢があってもいい。大事なことは直接公選で選んだ人が政府を構成するという憲法規定は守ればいい。しかし、自治法をどういう風に構成するかは難しいが。

(山下委員)

自治法は道州ごとに作ればいいのでは。自治法の全てではないが、執行機関・議会に絡む部分は道州条例を自分たちで作ればいい。全国一律の地方自治法は要らなくなる。道州ごとに「道州憲法」的なレベルの規範で決めればよい。

基礎自治体についても、道州の規範は出来るかぎり基本的な部分に止め、各基礎自治体がそれぞれ地域の事情に応じて執行体制を作るという選択肢もある。

(座長)

道州法に市町村が縛られる部分を極力少なくする方がいい。市町村は市町村で基本法を作って、それに基づいた執行体制、選挙制度など自由な運用が出来るようにする。但し、長と議会の議員を直接公選制にすることは守る必要があるのではないだろうか。

<日程調整>

→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定。

第12回研究会
日時:8月28日(木曜日)午後6時から午後8時
場所:大阪府公館

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