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更新日:2013年11月25日

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第3回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要

  • 日時:平成19年11月13日(火曜日)午後6時から8時
  • 場所:大阪府市町村会館会議室(大阪府庁別館6階)
  • 出席委員:
    (座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
    山下 淳 同志社大学政策学部教授
    中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
    玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授

1 開会

挨拶

(企画室長)

第2回会合では、大変色んな議論を出して頂いた。(1)国・道州・市町村間の役割分担のあるべき姿、(2)道州と市町村の関係のあり方、(3)現行制度を前提とした改革の限界、などの論点についてご議論いただいた。

道州制下における国と地方の役割分担、道州と市町村の関係のあり方については道州制の具体的な制度設計の基になるものであり、今後さらにご議論を重ねていただくことになると思うが、本日は道州制下における地方の税財政制度のあり方について議論していただきたい。

全国知事会では税源交換という目前の課題について議論が盛んな状況にあるが、税財政制度のあり方については論点が多岐に渡り、その前提となる道州制下における国と地方、道州と市町村の役割分担についてまだ具体的にはなっておらず、本日の議論だ
けで結論に至るのは困難だと思う。それを承知の上で、道州制をにらみ、税財政制度について基本とすべき考え方などを見出すことは出来ないかと考えている。

事務局でたたき台としての資料を用意しているので、これらを参考にしていただき、忌憚のない議論を頂きたい。座長が少し遅れておられるので、こられるまでの間、副座長に議事を引き継ぎたい。よろしくお願い申し上げる。

2 議事

道州制下における税財政制度のあり方について

(山下委員『副座長』)

早速資料の説明をお願いしたい。

(事務局)

⇒配布資料(資料1から資料7)について説明
※説明中に座長到着

(座長)

本日は資料2で説明いただいた「道州制における税財政制度に係る論点」を中心に御議論いただきたい。共通の道州制イメージを前提にする必要は無いと思うので、それぞれの道州制イメージで御議論いただきたい。思いっきり小さい道州なら財政調整は必要ないという議論もあると思う。

(中井委員)

資料3の「道州のイメージマトリクス」について、事務局はイメージを持っているか?

(事務局)

オーソライズしたものではない。但し、事務局の中では「役割としてはある程度限定されたコンパクトなものになるが、市町村との関係においても全く口出ししないことにはならない。圏域としての発展を考えると市町村との調整をある程度担っていかないといけないのだろう。」と話している。資料3のマトリクスでは、左下のマスに近いところに来るイメージである。もっと中間的なバリエーションもあるだろうし、座長からは「状況に応じて役割が動いていくこともある」と指摘もあったところである。

(中井委員)

税財政制度について、この種の議論には何かのリアリティを最後に求めることになる。色々検討をしても「本当に出来るのか」となれば、どこかの国をモデルにすることになる。今後、各研究会やPTなどで連邦制を敷く各国をモデルにした案が発表されるだろうが、この研究会ではせめてドイツ、カナダ、オーストラリアの税財政制度を分かった前提で議論を進め、少しは勉強した上で何かメッセージを発信出来ればと思う。但し、いきなり何処かの国をモデルにして「大阪府はドイツ型」ということは止めておきたい。

資料4の全国知事会の税財政制度案はドイツ型を参考にしているようで、悪くはないが、ドイツのシステムを日本に入れるのは相当大変なことである。また一方で、カナダのように税源だけ調整することも少し違う気がする。カナダは連邦政府が州に財政調整としてお金を渡しているので、ドイツとは全く違う垂直調整システムである。オーストラリアでは、必ずしも各州が「税源移譲してほしい」とは言わない。

(玉岡委員)

今の話は各国にモデルを答えとして安易に求めてはいけないという趣旨で理解した。

戦後60数年、問題があるにせよ動いてきた税財政システムを敢えて変えるという、一種の冒険を犯そうとしている訳である。このときに、モデルを他国に求めるのではなく、日本型の地方自治とそれを支える税財政制度は何かを考えていくべきである。その一つが道州制だと思う。

問題提起として、資料3の「道州制のイメージ・マトリクス」について、事務局のイメージは「コンパクトだが市町村への関与はやや強い」とのことであった。道州の役割や市町村への関与の度合いは道州の重みがどの位なのかに拠るのではないか。現在の制度では“ナショナルミニマム”という基準があるが、“道州ミニマム”という基準を設定すると仮定した場合、つまり、「ある道州内であれば何処に行っても最低限のサービスを受けられる」ことを想定するのか。そうなると、当然道州間でミニマムの水準は違ってくるし、道州内への市町村への関与も強くなる。道州ミニマムを設けないのであれば、市町村への関与も弱くなり、財政調整制度の仕組みも変わってくるであろう。

(山下委員)

道州を考えるとき、課税等に関する自由度はどのぐらいの幅になるのだろうか。その差が広がると、逆に道州間の財政調整は訳が分からなくなる気もする。理論的な自由度はどの位で、実際はどうなるのかが気になるところ。

(座長)

税源配分の問題で、実際に課税するには限界があるので、国・道州・市町村を考えたときにどんな配分になるのか、あるいは重なっても良いならどれだけなら徴収してよいのかは気になる。結局、最後は担税力か担税する主体の問題なので、重税に耐えられなくなったら他所に出て行ってしまうかもしれない。しかし、自由放任市場を最初から想定するのも無責任と言われるかもしれない。

(山下委員)

それほど出て行ってしまうかなと思う。事業者であれば、取られるもの、貰うもの、免除してもらうもの、そこらをセットで算盤を弾くだろうからなかなか計算はしにくい。

(座長)

(税を)取る側も自由だからといって、当然、金の卵を産む鶏をむざむざ逃がしてしまわない、という合理的な選択も有り得る。ある種の擬似マーケット的に調整が着くのか、着かないのか。良く分からない。

(山下委員)

先の玉岡委員の話では、道州制においてよく言えば競争、悪い言えばお互い隣を見ながら話し合いを、という形になるが。

(玉岡委員)

課税自主権というか、道州内でどれぐらい自由に課税できるかについては、学問上は競争が起こるのであまりしない方が良いとされている。実際には、隣を見て税率はそれほど違わないようになる。消費税ならば県境を超えて商品取引をするので。やはり、隣を見ながら、ということになる。

(山下委員)

道州の数によって変わってくるが、資料4の全国知事会の案(TypeHの行政制度)のように、「全州会議」なるものを設置するのであれば、ある程度政治的に合意形成が図れる数ではある。あるいは、弱い所が連合して強い所に対抗出来る数でもある。

(座長)

それは言える。

(山下委員)

そういう意味では、言わば、話し合いをフォーマルにすれば道州間の協定ということも有り得る。どこまで道州間で事務の違いや税財源の自由度を持たすのか、しかし現実には事実上の横並びか、協定的に横並びをさせるのかは有り得る。

道州において、いわゆるデフォルト(注:初期値)を決めるべきなのかどうかという議論もある。国で決めるのか横で水平的に決めるのかは別として。

(座長)

デフォルトを決めて、ナショナルミニマムのような形にするのであれば、垂直的に調整した方が合理的という話もある。むしろリージョナルなミニマムを考えるのであればリージョン内での市町村間も垂直的に調整した方が良いとなるかもしれない。

(事務局)

知事会の議論がなぜ水平的な調整を前提で検討しているかと言うと、先ほど中井委員から「ドイツモデルはしんどい」という指摘もあったが、事情は良く分かった上で行っている。今、交付税の議論の中で、「特別枠を入れる」とか「頑張ったところに多く交付する」というように、交付金が調整というよりも補助金化するような話になっている。そのため、「国にお願いして税をもらうという構図は採りたくない。それならば横で調整するような形を考えよう」というのがこれまでの知事会での議論である。

山下委員からは、「国のお金を入れるかどうかと、意思決定の仕組みをどうするのかは別の話なので、分けて議論した方がいい」という指摘を頂戴しているところだが。

(山下委員)

調整の仕組みを動かすのが総務省だと都合の良いようにされてしまう。要するに、国に調整の仕組みを動かせないように考えるのも大事な発想だと思う。

(座長)

調整をする組織を国・地方の共同設置機関にすればという意見があるが、有り得る話だ。それが具体的にどのような機関になるのかは分からないが。

(山下委員)

全州会議に「国・地方協議会」としてぶら下げるのもいいかもしれない。

(玉岡委員)

全州会議で思い出すのは、昔の「地方財政委員会」である。これをどこまで真似ようとしているのか。この委員会は終戦間もない頃に国と喧嘩して負けた。なぜ負けたのかは色々理由があるが、同じ轍を踏まないようにすることが大事である。

国から税源をどうやって分捕るのか、分捕れないときはどうするのか。誰が何処でという視点が欠けているので、また国に最後はうっちゃられてしまう可能性がある。

(座長)

最後は大蔵省に逃げ切られてしまう。このようなことが無いような仕組みにしないといけない。

(山下委員)

役割分担の話と重複するが、国・道州・市町村間において、税財源の配分や税目についてグランドデザインは誰が決めるのか。国の法律で決めるとなった場合、その法律を所管するのは財務省だろうから、何年か経つと肝心な所は握られていることになってしまう。

(座長)

それは、課税権の範囲とか、州の立法権限、あるいは国会の立法制限の話とどう絡めるか、セットで考えないといけない。

(玉岡委員)

この手の議論の大前提として、国が権限を地方に譲り渡し、外交とか防衛等に限定した役割を担い、残りの内政は地方が担うという大前提がある。

(座長)

幸か不幸か、そのことは一応、地方自治法に部分的に書かれてしまっている。幾ら形だけにしてもよく入れたなと思っている。

(玉岡委員)

そうなると、国は外交や防衛だけ担当するのだから、外務省や防衛省は別として、他の省庁は不要ではないかと素朴に思ってしまうのだが、実際はそうではない。しかし、どのような形で残るのかイメージが分からない。

(座長)

地方自治法に規定される国の役割は、国家存立のための事務とか、全国統一ルールや全国的な視点で行う巨大事業だとか書いてあるが、実際は法律でちゃんと書いてあってもそうはなっていない。矛盾しているのは確かである。

(山下委員)

国全体を見たときに、どこまで国が企画立案機能を維持するのかは大きいと思う。やらなければならない仕事が増えることもあるし、一方で企画立案をするためにはそれなりの調査・検討から始まり、人員が必要ということもある。霞ヶ関の仕事は大体このような感じである。

(座長)

大した人数は必要ないのだが。

(山下委員)

国の人数を減らすにしても、一番肝心な所を国に握られるようになるのか、それとも役割分担として、グランドデザインだけで骨太部分だけになるのか。国の役割分担が限定されて骨太部分だけを担うことになり、法律レベルでは基本的なことしか書かないようになれば、残りの部分は道州に来る。そうすると、道州の間での違いは当然出てくることになる。それこそ、道州ミニマムは道州間で違うのが当たり前になる。このときに、いわば「隣を見て・・」という相互配慮調整機能が働くことはあるだろう。

(座長)

実際にそれがどう働くかは各道州が考えればよい。相互配慮の骨太というのは国家システムとしては有り得ない。要するに、協議の場を作るまで、とか。

(山下委員)

本当に道州の間で協議して「この程度の幅で調整しよう」となるのかどうか。私にはなかなかイメージできない。

(玉岡委員)

道州間で違いを認めないとなると、「じゃあ今とどう違うの?」ということになる。道州制を前提にするのであれば、違いを認めないと何の議論をしているのかとなる。

(座長他)

そう、そう。

(山下委員)

我が国、日本の国民は、どの程度の違いなら許すのだろうか。

(中井委員)

市町村の固定資産税は、昔は地租として国の税金であった。それがシャウプ勧告のときになぜ市町村に移ったのかと言えば、固定資産は動かないので、最初の優先権は市町村にあげましょうとなった。逃げやすいものは相対的により広域の政府レベルが分担するという形になった。

消費税は移動しやすいので、恐らくカナダやオーストラリアでは消費税よりも法人税と所得税のセットで税率を変えている。問題は、所得税を今回の税源移譲で地方が10%フラット化で貰うようになったが、税率を動かしても人はそれほど簡単には動かないと思うので、それほど劇的な税率格差は起こらない。一方、税源配分では道州は都道府県よりも広域なので、その分だけ税源における課税ベースの選択範囲が広がる。ただし、我が国の大きな問題として、全国どの団体も税率をよう動かさないことである。私も必死で「動かそうよ」と働きかけているのだが、上手くいかない。

(座長)

数えるほどの市町村しかやっていない。

(中井委員)

固定資産税も然り、住民税も個人に対してはなかなか動かさない。

一般国民に対して地方税のことを聞くと決まって「うちの市の税金は高い」という。全国殆ど一緒の状況なのに。本来の行き着くところに、道州制にはスタンダードの税源部分が確保されていても、よりサービスを向上させる州があれば税率を自分達で頑張って上げないといけない。それを今までは企業を相手にやってきた。しっかり者の関西人を相手に「サービス水準を上げるなら税率も考えるべき」という話にならないと。散々、「日本では有り得ない」と周りからずっと言われてきたが。そのような状況の中で、財政調整を考えていかないといけない。因みに、ドイツは所得税と住民税の税率は一律である。

ドイツの例を知事会が持ってきたのは何となく分かる。というのは、日本は戦争に負けたときに都道府県がいじめられたと思う。住民税が無かったのだから。ドイツは連邦政府がいじめられて、いきなり所得税と法人税を州政府が持つようになった。それがやっと1対1になった。日本では府県がいじめられたので、60年経ってやっと(国に対して)1対1の関係を目指すことになった。ただし、ドイツには固有の伝統があり、連邦政府と州政府が一緒になって税率を上げてきた国である。

税率を変えられるかという問題と、変えた方が良いと問題がある。私は変えられるかというよりも、少しでも変えた方が良いと思う。

(座長)

つまり、各州がそれぞれ選択して行政需要に見合う税財源構造を確保する。ただし、その前提として出来るだけ均等化する様な税源ベースの配分をしましょう、ということか。極力調整はしない方が良い、というのが理想である。

(山下委員)

税源を均一化するときに、尺度は何になるのか。人口とか、面積とか、あるいは行政ニーズなのか、為すべき行政サービス量なのか。どういう尺度から見て、州の税財源は均等化されるということになるのか。

(中井委員)

一般的な財政学の考え方として、同じ税負担なら同じサービスが享受される事を保証するということがある。どの地域に住んでも同じ税金を納めているなら同じサービスが受けられる。これはスタンダード部分、初期値の話である。ただし、初期値のことを考える時に、北海道を基準に考えることが出来る。小泉首相がかつて「北海道は道州制になっても変わらない」と言ったが、これは良いヒントだと思う。あれこれとシミュレーションしていくときに北海道が潰れてしまう様なシステムは非現実的である。

(座長)

北海道は相当補助金が入っているが。

(中井委員)

北海道を倒産させる訳にはいかない。私の周りには「北海道に人が住まずに潰れても、皆が東京に住めばよい」と無茶を言う人が多い。このような人とは議論できない。これは財政的公平のレベルではなく、国土の話である。人が住まなくなると領土ではなくなる。北海道を潰して熊しか住まなくてもいいとのは財政学の話ではなく、もっとレベルの高い国土保全の話である。

(座長)

初期値で北海道や沖縄というのは大いに有り得る。むしろどうプラスαするかという話で、そこは自主的な増税や新税で考えればよい。その最低限を保障できる税財政システムを考えればよい訳で、むしろ良い出発になる気がする。良いアイデアだ。

(中井委員)

調整総額をミニマムにするのは賛成である。

(山下委員)

出来るだけミニマムに、出来るだけシンプルに調整するほうが良い。

(座長)

沖縄や北海道が調整しなくてもギリギリいけるように配分できれば。実際は難しいが。

(山下委員)

財政的公平というのは、単純化すると、負担と受け取る行政サービスのバランスなのか。

(中井委員)

そうだ。このときに同じコストで出来ない場合がある。そのミニマム部分を確保するのに足りない部分を国が補償しましょう、ということ。

(玉岡委員)

同じ税負担をしたら同じサービスが享受されることを考える時に、例えば、高所得者が多く住む地域で集まる税収と低所得者の多い地域で集まる税収額は違うので、そのままでは相対的なサービス量に格差が出来てしまう。これを調整しようというのが財政調整であり、我が国では地方交付税がこれに当たる。標準を考えるのか、あるいは地方税だけなら調整を考えない、という選択もある。

(中井委員)

今の話は、ブキャナンという人が50年ぐらい前に考えたことである。日本が凄いと思うのは、もともと官僚達の中にこのような発想があったこと。ミニマムを維持しようとしたら、所得水準の問題とか人口格差の問題などが発生する。戦争前後は、税率を上げることでこの格差分を維持しようとしていたので、ある時期には税率を一緒にすることが官僚達の大きな目標であった。かつて、旧自治省で次官をされた故・柴田護氏は「ようやく税率が一緒になった」と話されていた。彼らとすれば、ある種の使命感があったのだろう。農村の貧困などを何とか改善したいという思いがあったのではないか。だから、官僚達が税率を一緒にしたことは、ブキャナンが言わなくても行われた。これは財政学としては理論として入れようとなった。

公平論だけでいくと、調整論はマックスにいくこともあるから、調整は常にミニマムを目指すべき。シャウプ勧告も最初はミニマムを目指したのだ。

(玉岡委員)

本来はそうであった。都道府県に付加価値税を入れようとして訳が分からなくなって実現しなかったが。

道州の税源で何が良いかという議論のときに、応益性という言葉が良く出てくるが、現実には具体的に示すことが難しい概念である。利益をどう量るのかという問題がある。それよりは賛否両論あるが、きちんと役割分担を決めて仕事の振り分けをして各政府レベルで所要額を見積もってどのぐらい財源が必要か、というにした話の方が、ゆとりがあると思う。それに50兆円かかるのであれば、それに見合う収入額をどう確保するか。地方消費税であれば何%が妥当だと。

(山下委員)

ナショナルレベルのミニマム論なのか、それとも州のミニマム論かはともかく、事務の側から必要性を見て、それを維持できる税財源で、州毎にサービスに見合った額を貰う、ということか。

(座長)

イメージが少し湧いてきた。つまり、例えば北海道をベースにして、維持できるだけの初期値枠を作って、そこから先は勝手におやり下さい。最低限の所期の課税ベースなり必要に応じて調整財源は確保しておきましょう、と。ここの議論さえ出来れば、後は州の判断に委ねるというイメージでよいか。

(玉岡委員)

偏在性に少ないものをベースに置いて、今まで上げてこれなかった税をアップしていけば、だいたい像は見えてくるかも。

(山下委員)

北海道が初期値というときに、何処までパラメーターがいるのか。州と州内の市町村はこれだけの行政サービスを提供する、という一種のナショナルミニマム的なものを想定するイメージだろうか。

(座長)

あまり細かく考える必要は無い。むしろグロスで基準財政需要額を差っ引いて作ってしまうイメージで良いのではないか。

(山下委員)

あまりミニマムを考えすぎると、どのような行政サービスをやるのかという自由度がなくなってしまう。より単純な手法で考えるほうがいい。

(玉岡委員)

今まで事細かにやってきたので、そう簡単にいくかどうか。

(座長)

これまでと発想が逆になる。そう思うと、カナダのように人口一人当たり幾らという方がシンプルでいいなと思う。連邦と州だけでなく、州政府と市町村との関係でもそうだ。荒っぽいが明快だと思う。

(山下委員)

精緻なものにしようと思ってもどうせ百点はない。一般納税者が見て分からない、電卓を叩く仕組みよりは、この様に配分していると分かった方が受益と負担のバランスを考える時も国民一人ひとりにとってメリットがあると思う。

(事務局)

座長が述べられたカナダ的なイメージというのは、制度の初期設定を考えるときに、これぐらいの税収であれば一般的な行政需要は賄えると推測して、毎年細かく検証しない、ということか。

(座長)

そうだ。そのような対応はしない。毎年、額は計算するが。基本的な交付金は、事情に関係なく一定額が出される。特定の補助金は残るだろう。

(事務局)

「ミニマムを考えすぎると、行政サービスの自由度がなくなる」という山下委員の発言について、もう少し詳しく教えて欲しい。

(山下委員)

これまで国がやってきたことは、義務的な仕事を増やし、サービスの中味を事細かに決めて、地方にやらせるためにお金が要るというロジックが強くあった。道州では、サービスの程度や供給方法など、自由度が無ければあまり意味が無い。仕事ごとに財政需要を積み上げていってもしょうがない。そういう意味でも、より単純な手法の方が良い、という位の意味である。

(玉岡委員)

国が地方に対してやっているのと同じように、道州が市町村に対して「最低限のサービスの確保」とやると、結局横並びになってしまって、道州間で違うサービスをやるという議論と違ったものになってくる。

(山下委員)

市町村を見ていると、そんなに頑張って仕事しなくても良いと思う。大きなところは頑張ってもらったらよいが、そうじゃない所はやらないといけないことはそんなにないのでは、と思う。実際、住民もありとあらゆるサービスを提供して欲しいと期待しているのだろうか。それが今出来ない仕組みになっているので、人も抱えないといけない。それなりの財源もないと持たないといけないという風になっている。仕事を減らせばもっと楽になると思う。道州も同じように「この道州内ではこれをやらないといけない」と突きつけられると、何処も同じになってしまう。

(座長)

皆が同じことをする必要は無い。その通りだ。この議論は、事務局が作成した道州のイメージ・マトリクスで言えば「軽くて、市町村への関与が少ない」タイプになる。

(事務局)

そのようにできれば、一番理想的かもしれない。

(山下委員)

道州が軽くなると、「俺達の分は誰が担うのだ」とならないのか。

(座長)

それは市町村が担うことになる。持ちにくそうになれば、どこかで誰かが持たないといけないので、一番自由度が高いところがやるしかない。国がやるわけにはいかないから、道州内のシステムで市町村重視の仕組みにしておけば市町村がやるしかない。

(山下委員)

自由度を上げたときに、市町村が「これはやらない」という形で自由度を行使しないだろうか。そうなったときに誰が面倒を見るのか。そこまで考えてもよい気もするが。

(座長)

それはそれでいいのではないか。民主的な仕組みなので。やるかやらないかは市町村の勝手だから。本当に困ることは何があるだろうか。

(山下委員)

消防と救急医療サービスぐらいじゃないだろうか。

(座長)

それはコンセンサスが取れると思う。

(事務局)

上下水道とごみは民営化だろうか。

(座長)

それは有り得るだろう。

(山下委員)

場合によっては昔に戻って自分の所でやる。

(座長)

昭和20年代まではごみの収集サービスなんて無かったのだから。

(山下委員)

むしろ上下水道は、新しく作るよりもメンテの話だろう。ごみも大量消費、大量廃棄の時代でもないだろう。

(事務局)

ごみを収集してくれる所がないと不法投棄が増える。

(山下委員)

公営か民営かは別として、都市部でごみ収集をやらないことはない。ただ、役場の仕事はこれぐらいで良いという地域ではごみ収集は大した問題にはならないのではないか。それよりは、火事のときや医療サービスの方が切実感が強いのではないか。

(事務局)

市町村の税金で受益と負担の関係を考えると分かりやすい。初期値のサービスはこうで、プラスαをするサービスについては各自で税率を考えるというのは明確である。

州における受益と負担の関係になるとやや不明確になる。調整システムで変わってくるが。州の場合は、税を上げて良いサービスをすることもありだが、例えば、人口当たりで税が入るとすれば、人口増加政策を行って成果が出れば自然と税が増えるので、各州が自助努力するようになる。また、観光に力を入れて都市部から集客する、企業誘致をしっかりするなど、地域の魅力をアップして交流人口を増やすという、いわば中間領域において州間競争が展開されることをイメージしてしまう。

(中井委員)

受益と負担の関係よりも、州間競争に伴う税源涵養という意味だろうか。

(座長)

新しい制度発足の段階では、少なくともどの州にもミニマム的な財源とサービスが平等に在ることを前提にして、後はどのような財源調達の仕方をするか、どう競争するかは極力自由に各州自由にしようというのが今までの議論である。ただし、資源の差があるのでそれをどう勘案するか、あるいはその資源を上手く使って貿易黒字を貯め込むような州が出てくるので、均てん化していくという議論は有り得る。しかし、あとは自由競争でいいではないか、という話もある。

(事務局)

レベルの高いサービスを提供するために税金を上げるのも良いし、税金を沢山集められる政策に重点を置いてより高いサービスをするのも良い。それは各道州が民主的な方法を含めた上で自由に政策を決めればよい、ということだろうか。

(座長)

道州になれば、国税のベースである基幹税のようなものがかなり有効である。これだけ広域であれば税源として十分有効である。消費税でも、法人税でも道州の基幹税として考える。むしろ、法人税は国と分割しないといけないが。

(中井委員)

州が自助努力によって税源涵養を行うことは1+1が3になる話でもある。州になった時、これは誰が何処で生産するかという供給側の問題である。労働者、民間資本、公共資本があって、道州になったときにパッと地域の生産性が上がれば1+1が3になる話だが、これは税源涵養の話とリンクしてくる。道州になると、道路網など別の社会資本が出来る。これに、民間資本がどれだけ頑張ってもらえるかが、道州制が上手くいくか、1+1が3になるかを左右する。労働者は逃げないように確保しておく。民間企業は道州制を導入しろと行政に言っているが、民間資本が頑張らないとダメだ。また、民間資本を呼び込むには社会資本なのだから、行政にも責任がある。

初期値の話で北海道を例に挙げたが、北海道が自滅していく様では「道州制を導入したがダメだ」とまた官僚が出てくる話になる。財政調整制度の中に必ず北海道を入れる必要はない。カナダにも準州という過疎地域の制度がある。北海道だけ別立てで計算して残りの差が無いのであればシンプルにいくのが良い。

(山下委員)

地域振興政策をどう採るのかという話になってくる。そのときに1+1が3になる地域もあれば、そうならない地域もある。

(座長)

リージョナリズムはもともと経済開発だから、何のために広域でやるのかは、広域的な地域が経済的な優位、あるいは新たな生産性を出せるか競争するというのが元々の発想である。逆に言うと、条件不利地域がいずれ出てくるので、そのときにどう考えるか。一方で付加価値を付けた州も幾つか出てくる状態になる。そこで、先ほど中井委員の話のように、過疎地域に幾らか補助しようという話は出てくる。

JRのように、東海と西日本と東日本は食えるけど、四国、九州、北海道はダメなので何とかしましょうという話はあってもよい。ただし、自助努力をした後という条件を入れないと後で変になるので、最初は条件をイーブンにしておく。

(事務局)

北海道を初期値にするという話だが、面積が非常に広いので、非常にコストがかかる。初期値の設定の仕方として、単純なモデルとして何を想定して計算するのかは考えていかないといけない。

(座長)

基準財政需要額をベースにすればよい。

(中井委員)

北海道はもう十分堪えている。北海道と大阪府は全然違う。北海道は今でも危機的な状況にある。それを同じ土俵で調整するのは難しい。沖縄も九州と一緒になることは出来ないかもしれない。そのような発想もあってよい。

(事務局)

事務局内での議論は、関西をベースにするので、1+1が3というイメージを持ちやすい。広域の方が資源の最適配分も出来る感じがするし、兵庫と大阪の間で工場移転することを考えなくてよい。比較的距離が近いので、一緒になっても経済的な意味で不便を感じない地域だと思う。これを東北地方に置き換えて考えると、結構距離があり都市部が分散しているので、1+1を3にしようとして需要を捉えようとしても広すぎると思う。その究極の形が北海道で、エリアが変わらず、1+1もない状況なので、一緒に議論することは違うと思う。地域的な事情をどう加味していくのだろうか。どうしても大阪から見て考えてしまうので、我々の議論にズレがないか、大阪からみた道州制議論になっていないか、反省している。

(中井委員)

東北は北海道ほどではない。北海道は本当に大変である。大阪の横には、東京という化け物が存在する。大阪・関西は中間、つまり、富裕州と困難州の中間になる。恐らく、中部州も中間だろう。関東圏は富裕州になり、東北は困難州、北海道は極端な困難州になる。それで、中間州が物事をジョイントする意味合いが出てくる。大阪・関西は中間にいることを意識して欲しい。中間のところが1+1が3にならなかったらだめだ。本当に3になったら、0.5を他州に渡す。決して対東京の二眼レフの時代ではない。

(山下委員)

1+1が3になるかどうかではなく、3になる可能性について何を標準に考えておくかだ。東北と関西、中部では、3にする手段は違ってくるだろう。知恵の出し方を州毎に考えてもらわないと。全ての州が3になる必要は無いと思う。ただ、2以上になる可能性を持ち得る、むしろ2+α分を自分達なりの政策レベルで知恵を出して考える。そこが道州のいわばメリットになると思う。

(座長)

東北には企業は無くて、いかに行政の公共投資依存が強いか良く知っている。一方で、最低限度の前提を置いたときに東北は潰れるかといえば潰れない。産業的な基盤で言えば、2次産業は無いがサービス業も発達しているし、農業もあるので地域社会は維
持できる。道州制になった時に開発余地が一番あるので、ひょっとすれば+α部分は一番大きいかもしれないと思っている。現に、自動車産業はそのような動き方をしている。逆に言えば、これまでの東京フレーム中心では、地域で主体的に出来なかったことや動かなかったことが動き出すかもしれない。九州でも今同じような動きがある。

(玉岡委員)

道州において、受益と負担の関係で受益が分かりにくいという話があったが、負担が判るようなシステムはどうようなものか。

(山下委員)

負担はむしろ仕事面でも財源調達面でも自立してくればある程度見えてくる。問題はそれに見合うサービスかという不満は出るかもしれない。

(玉岡委員)

道州民が幾ら負担しているのかが透明ではっきりと分かるだろうか。

(座長)

今の税制の方が不透明な集め方をしている。道州制になれば極めてシンプルに出来れば。特別徴収なんかは出来なくしてしまう。

(山下委員)

徴収するのは誰が頑張るのかは考えないといけない。

(座長)

アメリカのように、内国歳入庁のような機関を道州レベルで設置して、集めるだけ集めてしまう。国税も仕事がなくなるので、道州で引き受ける。

(事務局)

一元的に税を徴収するという歳入庁を作るという議論は事務局内でしていた。

(山下委員)

受益と負担の関係では、負担の方が道州間でどうなっているのか見えやすくなる。問題は受益の方で、感覚なのでなかなか比較しにくい。実際には、このようなサービスをやるので、その財源を何処から調達するという話が出来るかどうか。トータルでの受益と負担ではなく、道州が出来て動き出したときに、サービスの見直しや新規提供のときに、財源調達の話が道州議会や道州民に見えるかどうかというかたちでだろう。

<日程調整>

→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定

第4回研究会
日時:12月27日(火曜日)午前10時から12時
場所:大阪府市町村会館会議室(大阪府庁別館6階)

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