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第2回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要
- 日時:平成19年9月13日(木曜日)午後3時から5時
- 場所:大阪府市町村会館会議室(大阪府庁別館6階)
- 出席委員:
(座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
山下 淳 同志社大学政策学部教授
中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授
1 開会
挨拶
企画室長
- 1回目の会合では、(1)社会経済情勢の変化と道州制導入の必要性、(2)道州制の導入によって目指すべきものは何か、(3)大阪・関西にとっての道州制の必要性をどのように整理するか、などと言う点に関してご議論を頂いた。
- その中で、(1)現行の都道府県制度では対応できないのかという議論が必要、(2)国・広域自治体・基礎自治体の役割分担のあり方から道州制のイメージを固めることは出来るのではないか、などのご指摘を頂いた。
- 本日はこれらの論点に沿って、本府が直面する広域的な行政課題についての現状、道州制を導入した場合に想定しうる国・道州・市町村間の役割分担のあり方、現行制度を前提とした改革の限界などについての資料をご用意させて頂いた。これらをご参考いただき、忌憚のないご議論を頂ければと思う。
- それでは、座長に議事を引き継ぎたい。よろしくお願い申し上げる。
2 議事
国・道州・基礎自治体の役割分担について
現行制度を前提とした改革の限界について
事務局
⇒資料「第1回会合 論点整理」、参考資料集について説明
中井委員
- 事務局の資料説明において、“異なる最適化”というキーワードが出されたが、これは非常に重要な言葉が出た。広域ネットワークでの最適化と分断された地域での最適化は違うという側面で、この視点は重要なことだと思う。ただ、経済学者からすると、クラブ財という理論があり、一人当たりの費用が最少となるところを探す。このときに、エリアが広い場合と狭い場合で最適ポイントが違うという側面であるから、理論が合えば面白いと思う。例えば、近畿圏にある公設試験研究機関の所在地が資料にあったが、各府県においてワンセット主義でメニューを揃えているが、エリアが広がる府県合併をした場合には、別のワンセットがあり得るという意味で、“異なる最適化”のストーリーに入るのであろう。
- 私は関西分権改革研究会に参加していた。平成16年10月にワーキングが立ち上がり、その年の暮れに補助金の整理等の問題で、行政側は反対の方を向いていた。企業がこっちを向けといってもなかなかこっちを向かないので、「何のためにこんなことをしているのか」と座長はおっしゃっていた。私は「それは違う。今は重要なことをやっている。最初から上手く行くと思わないで欲しい。でも共通認識の危機感が出たときにこちらを向くはず。お互いがお互いのことを知ることを今始めているのだ」と話をした。この種の取り組みは企業と行政が一緒にやることは非常に難しいが、重要なことである。関西の企業が広域化に力をいれるのは総合力、関西の総合力が何とかならないかと思っているようだ。
- 当面、広域ネットワークなりワンセット主義の最適化のポイントが違うということを手がかりにして議論をするのが一番生産的、ぶれない可能性がある。これは錦の御旗ではないが、当面この辺りの議論から行かざるを得ないのではないか。
玉岡委員
- 過去の道州制の議論についてさかのぼって勉強してきた。例えば、交通網の発達のため道州制が必要という議論は昭和10年代から同じ議論があったなど、色々勉強になった。道州制に関する議論自体について分かったこと、分からなかったことを3点ばかり大雑把に話したい。
- 1点目として、前回の会議後に雑談で「関西とは何か」という話になった。ある世論調査で、「関西はどこか」という質問を東京の人に行ったときに「関西は大阪だ」という認識で、兵庫県は入っていない。神戸育ちの人に聞くと、「神戸は関西に入れて欲しくない」と言う。このような根の意識がある。関西州というときに、2府4県か、2府7県なのかだが、今日の資料からは、2府7県という印象をもった。
- 2点目として、道州制は地方分権を推進するためだと色んな報告書に書いてあるが、何が地方分権なのかという説明がなかった。つまり、目的とすべきものについてはっきりしていないことが良く分かった。徳島県の報告書は例外であったが。意思決定や財源など色んな側面があるが、道州制になれば地方分権が進むという中身について書いていないので、全く分からなかった。一番分からないのは“真の地方分権”ということである。言っている本人以外は分からないではないか。
- 3点目として、多くの報告書や議論で欠けている点は、府県、府県連合の現状と道州制の各制度のメリットデメリットは沢山議論されているが、現行制度から道州制へ移行するときの移行コストについて触れているものがなかった。仮にメリットを数量化して道州制が良いとなった場合に移行コストが高すぎて実行出来ないことも考えられる。移行コストのことも検討する際に考慮すべきだと思う。
座長
- 確かに何が“真の”なのか良く分からない。分権も手立て・手段の議論なので、そこから先にどういう社会が出来上がるのか、何のためにその社会が必要なのかという議論はなかなか明確に出てきていない。私も“分権型社会”と不用意に使ってしまうことがあるが、今の状態と比べて何が変わるのか、理想とされる生活像、地域社会像はどうなっているのかまでは思いが至らない。そこまで議論しなくてはいけないのかという話もあるが。
事務局
- “真の地方分権”という言葉を頻繁に使う立場から発言すると、自治というシステムは一応地方分権型になっている。形式的には憲法から始まり、各自治体には議会があり、知事は独立して国の機関ではないとか、一応システムは形が整えられている。一方、今のシステムが全国一律の施策の下に何も出来ないのかといえば、地域の意見は国も尊重しましょうという姿勢になっており、形式的には進んできている。
- “真の”を用いる意味合いは実体面の話である。分かりやすい例で言えば、計画の策定はそれぞれの裁量に任されているが、いざとなれば国の指導に従った計画を出さないと補助金、事業は認めないことがある。表面的には自由を認められているが、裏の実態では統制されている。多くの分野でも良くある話である。計画を作らないと「あなたの地域はどうなっているのか」と国から聞かれることもある。
- 知事や市長の中には、中央とのパイプ、中央で人脈が必要という思いがある。地域でやろうという意識までなかなか行かない。法律や形式的な面よりも、補助金、財源の面が非常に大きいというのが実感である。
中井委員
- おっしゃるとおりだが難しい問題がある。この指とまれの補助金を事例に挙げたときに、この問題が難しいのは、特定の補助金に伴う非分権的な状態は補助金改革の話である。交付税なり地方税の充実に換えれば、当面その種のひも付きの話はなくなる。しかし、都道府県制の下では、どうしてもひも付きの補助金は残ってしまうのだと。例えば、これ以上の税源移譲を求めても東京都に税が偏在してしまう。それが第2次分権改革での議論。補助金の問題といえばそうなのだが、この補助金が何故残るのかといえば、現行都道府県制の下では、税源移譲をしても、どうしても財源がこれ以上行かない地方があるという側面がある。
座長
- 自治の範囲をどう考えていくかが深刻である。確かにシャウプ三原則、あるいは自治は身近なところで出来るだけコントロールした方が良いという考え方があるが、本当に市町村が可能な限りの事務をあれもこれもひとまとめにして、そして出来ない事務を広域的な府県や道州制が何処まで何をやるのかを考えたときに、自明に自治の範囲を決める明確なメルクマールはない。地域でこれだけはやらねばならない、これが自治だというものはない。自治そのものをどう定義していくか議論の余地がある。詳細なものは必要ないが、自治をどういう観点でみていくか、極力自治に最大限の自由度を与えるような制度構成が必要だということが、仮に一定合意できれば議論していけると思うが。
- 自治の範囲はどこまでかを考えるときに、補助金の話で考えると、我が家にはそんなものはいらない、やらないということもある。そういう選択が出来るのも自治なので、このような視点から考えていかないと、現行の事務配分と現行の地方制度と、その一方で理念としての自治を掲げることの折り合いがなかなか付かないと思う。非常に難しいが、一定現行制度を踏まえつつ、そこからどれだけ理念としても適合的で、合意できるメルクマールを探すしかないというのが今の印象である。
- 次回の議論になるかもしれないが、経済、財政的に、規模の経済とか範囲の経済の話のなかで、「人口2千万人も居るとそれで十分効果的効率的だ」という話になれば、それはそれでよい。
- 今日の段階では、自治の範囲、自治の持つ意味をどう考えるかで随分変わってくるという印象を持った。仮に、自治を高める分権、その分権を進める道州という論理が成り立つにしても、その道州の自治とは何かという議論はしておかないといけない。
山下委員
- 最適化ということは気になっている。最適化を考えるとき、単に広域性、広さだけの問題ではないであろう。道州という単位で見たときに、現行の府県とはどういう観点から、ものの見方が変わってくるのかということは気にした方がよい。単に広いだけではないよね、と。道路の話がでたが、道路を考えるときに、道州というエリアで道路のネットワークを考えられるから、という話なのだろうか。そうではなく、もっと別の見方が出来るのではないか。道路網の計画を作ること、道路を造ること、道路の維持管理について全部道州が一まとめに担わないといけないという話ではない。むしろ維持管理は全て基礎自治体に任せても技術的には難しい話ではない。
- あるいは河川管理の話について、今は複数の府県にまたがるから地整局がやっているが、それが道州で出来るというだけの話なのか。そうではなくて、道州が担うと河川管理だけで留まらない河川のお守りが出来るのではないか。つまり、川周辺の環境の一体的な土地利用とか、川とその周辺を含んだ生態系の話とか、視野の拡大のような話が役割分担のところで出来ないだろうか。単にテリトリーが広くなったから、これも出来ますということではなくて、これまでとは違う役割が担える、あるいは国の出先機関とは違う対応の仕方、政策が打てるということを考えないといけない。
- ただそれをどう考えればよいか。事務局資料の「道路」「教育」「国際観光振興」の各分野の役割分担案は、従来型の事務配分を付け替えただけである。そうではないと思う。強引だが、自治の範囲の話をすると、従来であれば、国道とか府県道は、府県が造って府県が管理するという発想であった。同じ市町村を走っていても、国道、市町村道で管理者と管理方法が違うことになる。そうならば、管理は市町村が全て実施することが考えられる。しかし、道路を造ることは、技術的・財源的な問題があるので、道州が一括して担う形が取れないのか。道路網のネットワークの計画化はどう考えるか。道州が全て決められる訳ではなくて、基幹ネットワークの下に、地域ネットワークということになる。その計画間調整をどうするか。従来とは違う形で自治の量が一方で増え、一方で減るという話しも出来ると思う。
- 過疎について、事務局から「近畿2府7県では、過疎市町村は少ない」という説明があったが、過疎市町村が多くないがゆえに却って過疎地域との格差が際立つのではないか。これから人口減少となり、人口分布はまだらになるであろうが、放っておいても格差が出てくる中で、道州が過疎地域をどうするか、政策としては難しくなるのではないか。過疎地域の少ない方が政策を打ちにくいのではないだろうか。
座長
- 前段の役割分担の議論について、これまで国・道州・市町村の役割分担は既存の事務配分を前提にどこにどう割り振るかという話をしてきたが、あまり拘泥しなくてもよいのではないか。変に拘泥するから議論に囚われてしまう。
- 乱暴な意見だが、事務の範囲内で、国・道州・市町村それぞれが好きなことをやればよいという考え方もある。それでは無駄だと住民が納得しないと思うので、そこをどう統制するか、調整するだけの話かなと思うが。余裕があるところは重複して事務をするという姿もあるかもしれない。経済力との見合いがあるので、それを日本全体で容認するかという議論はあるかもしれない。
山下委員
- 重複は良いことだとは思わない。従来型の事務権限を付け替えるだけではしようがない。もっと広がりをもって、違った視点でのひねりが必要ではないか。
座長
- 従来型の役割分担について、綺麗な事務の再分配型の役割分担の議論をもう少し機能的な分担の観点から考えられないか。行政過程の中のある機能についてはが道州か府県が担い、別の機能については市町村が全てを担うという考え方もある。そこには綺麗なメルクマールはないが。
- 逆にそんなことは出来ないので、誰が何をやってもよく、むしろ競争して何が要るか要らないのか、平場で競争して頑張ったら、という考え方もある。
山下委員
- 大阪湾ベイエリアのことで、国にしてみれば、あそこまで体制は整えてやったのに一体化できていないところがある。これはもっと上手く広域連携すれば何とかなるという話なのか、それとも、現状の都道府県を前提としつつ、お互いに隣のことを良く知らず、やる気がないので、やる気さえ出せば対応できるのか。そうではなくて、きちっとした政府を作ってそこで適切かつ迅速な、しかも責任のある意思決定がいるということなのか。その辺りがすっきりしない。
- どうしても役割分担の話で広域の事例が出てくると、府県単位でやると無駄だとか、より広域な適正配置ができるという話はあるが、それが道州というガバメントを作らないといけないのか、広域連携を上手くやれば対応できるのではないかという話は残る。道州を造らないとダメだという話は何かないだろうか。
座長
- ベイエリアは明らかに一体化できなかった典型的な例である。法律まで作って、しかも国庫事業も沢山放り込んで、なおも一体的な運営が出来なかった。
山下委員
- 関西では、府県と政令市がそもそも仲良くすることが無理だから、道州を議論するのだろうか。
座長
- そういう話はあり得る。
中井委員
- 議論を聞いていて分かったことは、テリトリーが広がったときに、最初にクラブ財の話をしたのは、もうちょっといけば効率化できるラインがまだ延長線上にあるからだ。テリトリーが異なれば、異なる政策が打てて、異なる最適化になる。それが何なのかまだ具体的に見えてこないが。1+1が2になる話でなく、3になる話である。エリアが広がって異なる政策で異なる最適化が出来るとする。エリアが広がることで、手法として広域連携という手がある。広域連携は自発的に協力するという結果である。自発的に協力するという結果は、常に成立する訳ではない。経済学用語ではナッシュ均衡というが。相手が最適化している場合は私も最適化する。
- ところが、その均衡は、お互い合意しない例もある。均衡しないこともあれば均衡することもある。恐らくベイエリアの問題は自発的にそれぞれがお互いの最適化を図っていった結果は、残念ながら関西全体から見れば最適化からズレている。
- 私の定義では、分権化することは自由度が高まることである。自由度が高まったときに、最適化することもあればしないこともある。連携は自由度が高い段階でお互いに協調する話である。上手く行かない場合は、自由度の問題ではなく、強制しないといけない。ベイエリアをどうしても最適で効率的な開発をしようとするときは誰が強制するのか。残念ながら命令直下で今は国しか出来ない。
- 自由度が高くて広域連携することは理想だが、社会全体で見ると必ずしも最適じゃない。連携する限りはお互い情報交換をして参加者全ての最適化で合意することが望ましい。非効率な場合はお互い少し我慢する。それが出来なければ国が出てくる。その一例は強制された道州制もあるということである。これは辞めた方がよい。国は常に地方にとって最適な結果をもたらしてくれるとは限らない。強制された結果がダメなほど最悪なことはない。自由度が高い方が効率的な最適化からは多少ズレていても自分で決定したからと納得できる。だから、国よりも先んじて勉強しておこうというのがこの研究会である。
- 大阪湾フェニックスはあり得る話である。九州の産業廃棄物税は連携が上手くいったケースではないか。産業廃棄物税は全国的には導入されていない。どうしてもという場合は国が強制的に導入する。我々が参加している学会で「産業廃棄物税はエリア毎にバラバラなので、結論として全国一律に導入すべきだ」というある学者の報告があった。良い報告であったが、「それは分権ではないな」という反応が会場で起こった。
- 各団体が連携して合意して共通の産業廃棄物税を導入するとなれば、自由度を持った導入である。この種のものがKCで事例に上がれば、皆がああだこうだとすったもんだするときに芽が出ると思っていたが、そのような提案は出てこなかった。
- エリアが広がって1+1が3になる事例について、我々もアカデミックな観点から探してみるので、行政側も情報を多く持っているだろうから、皆がこういうことかと思えるような事例を1つでよいので集めて欲しい。
事務局
- 道路について、国交省が所管するものだけではない。農道も林道も、通勤通学に使われている。道州制を導入したときに、一般道路の役割分担だけでなく、農道や林道をどこに造るのか、鉄道があるからここに道路は造らないというような権限を持つのであれば、総合的な有り様が出来て、このことも検討資料に書くべきだと思っていた。さすれば、山下委員の問題意識にも少しは応えることができたのではないか。
- 例えば、四国4県の報告書の中で、河川管理の権限だけでなく、合わせて森林の権限と水質浄化の諸々の施策の権限をトータルで合わせれば面白いことが出来るのではないかとい書き方をしている。まさにこのような例が最適化というか、道州になればこのようなことが出来る事例と感じている。
中井委員
- 少し分かってきたのは、1+1はどうしても3にはならない。そこには権限があるのではないか。権限があって、自分達で広域的なネットワークを考えれば、違うものが出てくるということではないのか。
山下委員
- 私のイメージは、これまでは国が高速道路を考える。もちろん、都道府県と連携してだが国が所管する。国道も一部はやるが、一部は都道府県管理にさせる。都道府県道、市町村道、農道、林道それぞれがやってきたことが、もっと総合的なネットワークに出来ないだろうか。単に広域になっただけではなく、従来は政策決定において十分に考慮できなかったところまで考えた政策が打てるようにならないか。そのためには権限と財源も要るであろう。道州という政府の内部組織をどう作るのか。市町村と道州の間の連携をどうするのか。従来手が出せなかった事も組み込んだ政策なり計画が打てるようになる。テリトリーが広がり政策を打てるようになって、異なる最適化、1+1が3になることだと思う。
座長
- 例えば、道州において道路ネットワーク全体を管理するイメージを持つとする。現場での施行、維持管理は市町村が関係する。そうすると道路計画権限の道州への集権化も考えないといけない。そうした道州制を考えるときに、広域化するメリットと、それとは逆に、広域化することで狭い範囲の自治とか最適化を毀損する可能性もある。
- 別の観点から、大きなネットワークを考える、それを担う単一の主体があり得ることは、ある種の政策効果を出していく時のポリシーミックスの話があり、例えば河川をただ治水から見るのではなく、広い範囲での生活実態にあわせたコントロールの仕方は農林業や土地利用を含めて有るのかなと思う。従来とは違った総合性について考えていく必要があることは大きなポイントだと感じた。しかし、ここまでの議論は府県合併の話かもしれない。現行府県制度で例えば淀川流域の話であれば、滋賀・奈良・京都・大阪が合併すれば大抵のことは出来るかもしれない。これを超えるような議論は何処にあるのか。国全体の資源配分とか、関連する権限配分の話はあるかもしれない。
山下委員
- 道州であろうと、現行府県であろうと、結局オールラウンドプレイヤーとしての自治体があって、一体どのようにお互いの自立を配慮していくのかという話である。基礎自治体の自治をどう考えていくのか。どうすれば、自治が配慮されたことになるのか。難しい問題である。
- 道州であろうと府県合併であろうと、ポイントは、国の権限をどう取ってくるかにある。地方支分部局の仕事を取ってくるだけでは、それこそひも付き補助金を取ってくるだけである。どのように国から自分達で出来るように取ってくるか。その上で、道州なのか府県合併が良いのか。道州のメリットが何処にあるのかを示さないといけないのではないか。国との関係で、国の役割を限定して、その税財源を合併した府県に持ってきたとしたら、道州と何処が違うのか。
座長
- それは一緒だと思う。道州そのものの自治とか政府性をどう考えるかである。
山下委員
- 現行府県のままで合併しても仕方がないとは思う。
座長
- 現行府県のまま合併してもそれなりの効果はあると思う。現行の府県でも一定の権限はある訳で、ネットワークや環境管理面だけで言えば総合的な政策ミックスをやる価値はあると思う。
- それ以上の価値を付加できるとすれば、府県合併で集権化を図り、既存府県の権限のままで総合的な行政を考えて出来る範囲と、ベイエリアのように国がしっかりと金も権限もつぎ込んでくれるようなものを合わせなければ、なかなか1+1は3にはならないのではないか。
山下委員
- 今のままで府県合併をしても地方分権にはならないことははっきりしている。
座長
- 分権と府県合併の持つメリット、最適化をどう際立たせて理解するかが求められている。税財源移譲や権限移譲、国をどう小さくするのかという話の中で、道州のイメージが膨らんでいくのか。いや逆に、市町村ベースの話だろうということになれば、道州制の持つ意味が軽くなる。国から地方にではなく、国から市町村に分権するというそのようなイメージがあってもよい。
中井委員
- 同じ道州制でも、現在の府県よりは裁量権が多少大きくなるといった程度のものから、法律制定権を持つような連邦制に近いものまで幅がある。どれが良いかは未だ分からない。両極の間のどれかが必要だとしたときに、テリトリーが広がってこれまでとは異なる政策で異なる最適化が可能になるのは、これが報告書になったときに分かりやすい議論だと思う。フェニックスや道路の話でもっと具体的にどのような次元の異なる最適化が出来るのか。権限という新たな要素を加えて、1+1=3というアウトプットが出来れば、それが錦の御旗になるかもしれない。企業が言っている総合力は、行政と行政がこのようにしてくれれば上手く機能できる可能性があるというのが彼らの発想である。関西は地盤沈下でピンチが続くが、企業の人間は「ピンチはチャンスだ。ピンチだからガッといける。」という。彼らの変換関数がある側面である。それを追いかけたいと思う。
- 道州制となった場合のメリットとして分かりやすいアウトプットとしては、域内のGRPが増えることぐらいか。GRPが増えても福祉の効果は計れないことは分かった上であるが、雇用面から考えて分かりやすいと思う。あるいは、行政の二重投資が解消できれば、別の形の資源配分となり、まさに変換である。このようなストーリーを書いておいて、一つぐらいプラスポイントになるものを挙げられれば、と思う。事務局はもう少し資料を突っ込んで検討頂き、分かりやすい事例を出してもらいたい。
玉岡委員
- 広域に渡る最適化を図るときに、制約条件も増える。道州という1つのまとまりが出来ても、旧の府県区域は残ったままになる。そこの制約は増えるので、その面を考えると最適化はどうなるのかはやっかいな問題である。意思決定が簡素化される面と制約条件が増えることの折り合いをどう付けるか。道州制の議論ではメリットデメリット論がよく行われるが、これは得策ではないことは勉強して良く分かった。府県制と道州制のどちらにもケチを付けられるからである。道内の住民の一人当たりの所得が増えるとか、道内全体の累積財政赤字が減るとかの指標があればよいが、それは議論されていない。結局、道州があってその下で何が出来るか。意思決定ならば制約条件のあり方も含めてどうすればよいか。そのような議論の方が得策であることが分かった。
- 道州制の反対者で多かった意見は、「今よりも住民から遠くなる」という意見である。発想を逆転させて市町村の位置付けがますます重要になるので、そこをもっとどう近づけるかという発想が大事だと思う。道州は住民から遠くても構わないと思う。
事務局
- 道州制議論には、市町村が自治体として強化されることが前提だと思う。今も府内の市町村はしっかりしているが、さらに市町村がもっと分権の担い手として自立をする。場合によっては合併する。よって市町村が強化され、補完性の原理ではないが、出来る限りそこで住民サービスを担って頂くという前提があると思う。だから、道州制の議論が現実味を帯びてきている。
- あくまで国の権限が移譲されることも大前提である。今の状態で府県合併しても移譲されるイメージが出てこない。今のままだと中央省庁の縦割りを引きづった分権である。福祉と教育は違う省庁が担当し、枠組みの違う補助金が下りてくる状況の中では、自治体においてもその補助金があるがためにそのラインを引きづった形になってしまう。自治体の現場では省庁の縦割りは関係ないので、総合力を発揮して一体となった対応が出来る。河川管理でも、国の所管が違うことに振り回されて思うような施策が打てないことがある。省庁縦割りを切った形で権限財源が移譲されることが大前提だと思う。
- 関西ではそんなことはないが、過疎の多い地方によっては、税源移譲されても自立できない地域もあるのではないか。今、交付税問題が大揉めになっているが、所得の資源分配、最適配分がなされる前提で考えないと、関東州はますます賑わい、他の地方はどうすれば良いのかという問題になる。大枠をきちんとするのが大前提の話と思う。
山下委員
- 道州制を考えるときの前提条件として、どのようなフレームで道州があるのかは押さえておかないといけないし、そもそも論が出来ない。
- 基礎自治体との関係で、基礎自治体もこれまで以上に自治の質・量が拡大し、それを使いこなしていくだけの能力を備えるべきだということは前提であるが、道州との関係でどうなるのかという議論は残っている。
- 現在の市町村は、都道府県とか国の政策に対して言うほど関わっていない。理論的には色々出来るが、手続き的に絡むことはない。このような現状を前提とすれば、道州と市町村を考えたときに、市町村の状態は今より悲惨になるといえるのだろうか。そんなに変わらないとも思うが。
座長
- 現行の財源移転の仕組みや府県を通じた許認可が前提となっているので、その枠内で動いており、ル-ティーン化されているので、変わらないといえば変わらない。
山下委員
- 市町村の自治を意思決定のレベルの問題とするのか、違う形の自治が増えるとするのか。手続的な参加権の形で道州制との関係を整理することもできるのではないか。
事務局
- 山下委員がおっしゃったのは、道州の意思決定に市町村が参画するということか。
山下委員
- 道州がこれまで以上に総合性を高めて広域的なネットワークを道路や河川、小児医療等の分野で図っていく。ネットワークを図ることはある意味メリハリをつけた対応になることである。どこかの病院が中心となって、どこかの病院はいらないという話もある。広域的なネットワークをどう決めていくかで、基礎自治体との調整問題が出てくる。その調整問題をどう解くかが基礎自治体の自治の質・量という話になる。
座長
- そのようなアプローチもあるし、一方で道州に権限を集中させない体制での市町村のあり方を模索する余地もあるかもしれない。
山下委員
- 基礎自治体との関係で、ヘビーな道州とするのか、軽い道州とするのか。
座長
- 国からの権限移譲だけの話ではなくて、国からの移譲を受けた権限も含めて、道州と市町村との関係をどう構築していくのかという議論がある。市町村がもっと自由度の高い状態で総合力を高め結果責任を負うような形を考える選択肢もあり得る。
- 今日は役割分担の考え方も色々出た。テリトリーの問題、どういう機能がそこで上手く働くのか、それに加えて総合性の議論も出たし、国からの権限移譲を含めてそこにプラスαを考えてはどうかという議論もあった。もう一つは道州制ありきという観点でむしろ批判を潰していく方が楽だという話も出た。次回は道州制を採ることで域内GDPが増えるとか厚生関数が上がってくるという議論をするかもしれない。既存の仕組みの中で何か可能なのかについてあからさまには議論しなかったが、広域連携の可能性はあるがなかなか難しいという議論も幾つか出た。府県合併だけでは不足だという議論は一定ある。そこには国から地方へ、地方の中でも道州から市町村へという分権を前提にして大きく考えていくことで道州の意義がもう一度浮かび上がらせられるという意見も出た。既存の広域制度について、個別具体なメリットデメリットまでは入りきれなかった。次回は今日の議論を蒸し返しつつ、税財政、経済的な側面についてもデータを用いながら議論していきたいと思うが、よろしいか。
事務局
- 今日の議論はまとまりづらいので、引き続きということも考えられるが、一旦税財政の話に入って頂いた方がよろしいかと。
座長
- その方が議論はしやすいであろう。我々自体がまだ外枠の議論で道州制のことを議論しなければならないことは一致しているが、事務局とも道州制のイメージが一致しているわけではない。分権を進めることや市町村の充実ということも大前提で考えているが、どの程度の道州になるかは全く手探りで議論しているので、とにかく課題として上がっているところを一通り議論して、もう一度その中でぎりぎり理論を組み立てていかないと上手くいかない。その中で最後の拠り所は、玉岡委員の「いろいろ批判はあるが、まずやってみたらいけるのではないか」という理論を最後に役に立てたい。そのような道州制の提案が出てくれば、この研究会の一応の目標の達成ということになる。上手くいかないとなれば残念でしたということになるが、まとめる方向で頑張りたい。
日程調整
→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定
第3回研究会
日時:11月13日(火曜日) 午後6時から8時
場所:大阪府市町村会館 会議室(大阪府庁別館6階)