ここから本文です。
第4回 大阪府広域自治制度に関する研究会 資料2
道州制下における大都市制度に係る論点
1.道州制下における大都市特例の必要性
(1)大都市特例の対象となる都市
- 大都市圏域においては、人口や社会経済機能が集積し、特有の行政需要も存することから、道州制の導入に際しては、道州との関係において大都市圏域にふさわしい仕組み、事務配分の特例及びこれらに見合った税財政制度等を設けることが適当である。
- 大都市としての特性が顕著で首都機能が存する東京(現在特別区の存する区域あるいはその一部)については、さらに、その特性に応じた特例を検討することも考えられる。
(第28次地方制度調査会答申)
- (今後具体的な検討が必要な課題として)道州制の下での基礎自治体としての大都市のあり方をどうするか。特に、政令指定都市等の大都市制度が現行のままでよいのか。また、道州と首都圏をはじめとする大都市圏域との関係をどう考えるか
(全国知事会「道州制に関する基本的考え方」)
論点
そもそも道州制の下で、大都市圏域に特例的な制度が必要なのか。
- 市町村合併を進めた結果、例外的な小規模市町村を除き、ほとんどの市町村が現在の中核市・特例市並みの規模・能力を有することになると仮定するなら、あえて特例的な制度を設ける必要はないのではないか。
特例的な制度が必要としても、対象となる大都市(都市圏)は限定されるのではないか。
- 特例が必要なのは、特に大都市機能の集積する現在の政令指定都市の一部、首都圏に限られるのではないか。
関西においては、どの政令指定都市が対象となるべきか。大阪市のみか、京阪神の3都市か。
≫4政令指定都市の都市圏が連たんし、それぞれの都市圏が相互に重なり合う関西では、特定の都市または都市圏のみを他から分断するような制度(特例)は相応しくないのではないか。
(2)大都市の位置づけ
- 大都市を道州に包括される基礎自治体と位置づけるのか
- 一般の道州から独立した存在と位置づけるのか
- 東京圏においては、人や企業の活動圏や経済圏が都県の区域をはるかに越えて拡大しており、道州制の導入により広域的な課題に的確に対応する観点からは、東京都及び周辺の県の区域を合わせて一の道州とすることが基本となる。
- 一方、東京圏については、その区域についても特例的な取扱とし、東京都の区域(または現在特別区の存する区域等)のみをもって一の道州とすることも考えられる。
(第28次地方制度調査会答申)
- (大都市が一般の道州から独立する)「大都市州」の制度については、(大都市を中心とする市町村間連携や大都市と道州による連携など)新たな連携システムの構築も視野に入れ、「いかなる制度によれば住民主導・住民本位の自主的かつ総合的な行政運営が可能か」という観点から、今後更に検討を深めていく必要がある。
(指定都市市長会「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言」)
論点
- 大都市を一般の道州から独立した存在とすることは、現行制度以上に広域的な行政課題への対応を困難にさせるのではないか。
(交通機関や通信手段の発達によって、人や企業の活動圏や経済圏が大幅に拡大している現代においては、一定の市町村のみを切り分けることは、広域的な課題への一体的・総合的な対応を損なう恐れがある。) - 特に、京都、大阪、神戸、堺の4つの都市圏が連たんし、互いに重なり合う関西において、特定の市域のみを独立した道州として切り離すことは、広域的課題への関西一体となった取り組みを困難にさせるのではないか。
- 地域活力のエンジンとなる中枢都市を道州から切り離す制度は、「自立的で活力ある圏域」を実現することにつながらないのではないか。
2.道州と大都市との役割分担
(1)道州と大都市との役割分担
- 都市基盤の整備・管理など大都市特有の行政需要への対応を含め、すべて一般的・網羅的に指定都市の事務とし、かつ、当該事務については道州の関与を一切設けない。
(指定都市市長会「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言」)
- 大都市が、「真に広域的処理を要する事務」を除いたすべての事務を、一体的・総合的に処理すべき。
- 「真に広域的処理を要する事務」のメルクマール
- (1)広域的に定める必要のある基本計画、基本方針、規制基準の策定等
- (2)基幹的・骨格的な社会資本の整備・管理等
- (3)広域的な事業活動を行う法人等に対する指導監督、規制等
- (4)個人に対する資格の付与等
- (5)警察に関する事務
- 性質上、道州と市町村の双方が実施主体となる適格性を有する事務等は、道州と市町村が自主的に役割分担を決める。
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告」、「同2」)
論点
- 道州と大都市との二重行政を排除するには、どのような役割分担が適切か。
- 都市基盤整備や中小企業振興など現在の指定都市が担っている事務で、その効果や便益が指定都市の区域を越えて道州全体に深く関わるものについては、道州との協同や役割分担の再整理が必要ではないか。〔例:社会資本整備〕
- 道州が圏域を単位とする主要な社会資本の形成を担う一方で、大都市もまた都市基盤整備という名目で社会資本の形成に関わるなら、二重行政は避けられず、また戦略的な整備に支障を来たすのではないか。
(例)重要港湾の整備、空港の整備 - 大都市の施策と道州の施策の間で整合性が保てなくなるのではないか。
(例)道州の総合的な物流戦略と大都市が行う道路整備 - 便益や効果が、日常的に大都市の区域を越えてひろく周辺市町村の住民にも及ぶ社会資本は、利用者(費用負担者)の民主的統制の観点から、道州が整備や管理を担うべきではないか。
(例)地下鉄などの都市高速鉄道、都市高速道路
- 道州が圏域を単位とする主要な社会資本の形成を担う一方で、大都市もまた都市基盤整備という名目で社会資本の形成に関わるなら、二重行政は避けられず、また戦略的な整備に支障を来たすのではないか。
- 道州の役割を重点化したうえで、その部分については基礎自治体の権限が及ばぬよう制限を加えることは可能か。
(2)道州と大都市の関係
- 高度な行政能力を有している指定都市は、原則として道州の補完を必要とせず、指定都市の事務に関する道州の関与は設けない。
- 道州と指定都市の事務の重複を回避するため、指定都市の区域内で道州が本来担うべき事務以外の事務を実施することを禁止するなどの仕組みを設ける。
(指定都市市長会「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言」)
- 道州は大都市の区域においては、広域的な事務以外は指定都市から委託された事務のみを行う。
- 指定都市は、道州の担う広域的な事務や道州に委託した事務以外の事務・権限のすべてを担い、道州が定めた広域的な計画・基準や広域的な調整の下で、市域内の行政を一元的に実施する。
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告」、「同2」)
論点
- 道州との関係において、大都市をほかの市町村とは異なる扱いにすることは妥当なのか。
- 大都市の施策がその区域や都市圏を越えて、道州内の住民に日常的に効果や影響を及ぼす場合、道州と大都市間の調整が必要となるのではないのか。
(3)大都市圏における広域的な課題への対応
- 大都市圏における広域的な行政課題については、すべて広域自治体が対応すべきとするのではなく、大都市を中心とした基礎自治体間の連携による対応が検討されるべき。
(指定都市市長会「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言」)
- 市町村の区域を越える事務についても、「基礎自治体優先の原則」に基づき、すべてを道州の事務とせず、可能な限り市町村間の連携に委ねるべき。
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告」、「同2」)
論点
- 市町村の自主的な水平連携に委ねると、「連携相手として魅力のない」市町村だけが取り残されるのではないか。
- 一定の行政能力をもった大都市の「善意・余力」に基づく周辺市町村の「救済」という性格が濃くなり、効果的な課題解決にはつながらないのではないか。
- ひとつの都市圏に様々な性格をもった水平連携が、まだら模様に並存することになり、道州の施策を却って複雑・困難にするのではないか。
また、道州と市町村間の明確な役割分担に反するのではないか。
3.そのほか
(1)地域間財源調整
- 道州制の下での新たな役割に見合った自主財源を確保できる税財政制度とする。
- 具体的な方策として、
- (1)指定都市が市域内の地方税を一括して徴収し、道州の業務・権能に基づく財政需要に応じ、その一部を配分する。
- (2)個別の税目の再配分、税率の変更を行うなどが考えられる。
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告」、「同2」)
論点
現行制度においては、政令指定都市での地方税収は、全てが指定都市の税収となるのではなく、指定都市を包括する府県の税収ともなっている。この税収は府県の施策を通じ、府県内の非大都市部に配分されることで、一種の地域間財源調整の役目を果たしているが、こうした機能は引き続き必要ではないか。
(2)議会のあり方
- 道州に対し指定都市の意向を反映させるため、道州に対する意見提出権の付与や道州議会に指定都市代表の参画を求める。
(指定都市市長会「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言」)
- 道州が区域内の市町村に係る重要な意思決定を行う際には、市町村の意見が反映されるような新たな仕組みを導入すべき。
例えば、- (1)大都市圏では、圏域の中枢都市であり、その事業効果などが圏域全体に大きな影響を与える大都市が存在していることから、大都市が大都市圏を代表して、道州の意思決定に参画すること
- (2)市町村の代表者からなる評議会のような組織を設置することなどが考えられる。
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告」、「同2」)
論点
道州議会における大都市区域を選挙区とする議員の役割をどう考えるか。
(「代表なくして課税なし」の原則と、大都市区域に対する道州の権限との関係)
(3)大都市内分権のあり方
- 地域の行政機関(区役所など)に事務・権限の移譲を進める。
- 住民が地域の行政機関の政策形成に参画できるような仕組みの検討。
- 大都市内分権の推進には以下の点に留意
- (1)大都市としての一体性の確保
- (2)効果的・効率的な行政運営を考えれば、一定の広さを確保する必要
- (3)行政区を単位としてあり方を検討し、それを足掛かりにさらに狭域の分権を検討
(大阪市大都市制度研究会「新たな大都市制度のあり方に関する報告2」)
論点
- 特に規模の大きな大都市については、都市内分権(行政区を単位に権限を移譲する等)が必要ではないか。
- 大都市の機能、事務事業のうち、何を大都市内分権の対象とするのか。
(基礎自治体としての機能が対象となるのではないか) - 行政区を法人区とすることは考えられないか。