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第4回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要
- 日時:平成19年12月27日(木曜日)午前10時から12時
- 場所:大阪府市町村会館会議室(大阪府庁別館6階)
- 出席委員:
(座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
山下 淳 同志社大学政策学部教授
中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授
1 開会
挨拶
(企画室長)
第3回会合では、道州制下における地方財政制度のあり方について議論いただいた。特に財政調整制度については、国と道州、道州と市町村の関係のあり方を含め、非常に示唆に富む意見を頂戴した。
本日は、(1)道州制下における大都市制度と、(2)道州の組織(自主組織権のあり方、執行機関や議会の選出方法等)について、議論いただく予定である。
広域自治体にとって、政令指定都市をはじめとした大都市制度をどう考えるかは、色々な面で難しい問題、道州下においても様々な論点が考えられる。それぞれ簡単には答えを見出すことは出来ないと感じており、特に関西、大阪にとっては避けられぬ重要課題である。基本的な考え方や制度を組み立てる際の方向性のようなものを、お示しいただければと考える。
事務局で若干の資料を用意しているので、これらを参考にしていただき、忌憚のない議論を頂きたい。それでは、座長に議事を引き継ぎたい。
2 議事
道州制下における大都市制度について
(事務局)
⇒配布資料(資料1から資料11)について説明
(座長)
それでは、ご自由に議論いただきたい。
(中井委員)
前回の会合で「初期値を超えるサービスを行う場合、各自治体が財源を増税で自ら賄うということがある。一方、各道州が税源涵養のための施策を競い、税収を増やしていくということがある」という議論をした。これはその通りだが、日本の自治体の問題として、増税で賄うという話をしにくいことがある。財政学者にとって深刻な悩みは、財源が足りないときに自治体が自ら増税しようとしないし、法人関係税の一部を除き増税しないこと。外国人から見たら「議会で税率も決められないのに何を決めているのか」とも思うようだ。
三位一体改革の時も、国と地方の税源交換を行っただけで個人の負担は変えなかった。住民にとっては自分の負担が変わらないので全然関心がない。
一方で関心ないが思っていても、地方財政計画が2000年のピーク時89兆円から今は83兆円まで下がっているので、各自治体は行革を進めないと行政水準を維持できない。場合によっては町村では合併を進める羽目になった。それで、自分には影響ないと思っていた住民は、自分のまちが合併したり、サービス水準を下げることに戸惑うことになった。なぜ、サービス水準を下げる前に、増税の是非について住民に聞かないのか。住民は、自分の自治体の税金は高いと思っている。現実は、自治体間の税率にほとんど差異は無く、高いのではなくて税率を上げようとしていない。このまま道州制に移行すれば、国民は組織が変わっただけと思ってしまう。
ドイツでは、連邦と州が共同で税率を決定するので、所得税と法人税に関しては全国一律である。カナダは税率が違う。石弘光前政府税制調査会会長は、「カナダのように税率を変えていなければ地方分権でも何でもない」と一喝していた。確かオーストラリアでは給与税を採用しているが、税率が違うはずである。税率が違うと「何故高いのか」と初めて住民が関心を示すようになる。府民が大阪府の予算を知らない状況で、分権を進めてよいのかと思う。皆で議論するべきことだ。
(座長)
財政の自治も無いのに、何が自治だというのは当然の話である。自分の仕事を組み立てるのにお金のことも決められない。
少し踏み込んだ話をすると、そもそも国税と地方税を調整しないといけないのかが気になる。税源が一緒なので調整が必要という議論自体がそもそもおかしいと思う。各団体の構成者が別々と考えれば、それぞれの団体に構成者である住民が負担するのが当たり前と考えられないか。その団体の税源をどう確保するのか、住民が考えればよいというのが基本と思う。「税源調整が必要」という考えがそもそも違うのではないかという素朴な疑問をもっている。これは今の税体系を根本から否定することになるが。
(玉岡委員)
前回、道州が担うべき仕事、つまり初期値の話をしたが、それが基本にあるとすれば道州と都市制度の関係をパラレルに考えられるのではないか。大都市によってやりたいこと、あるいは出来ることが違うと思うので、一律に決めて良いのかどうか。任せて欲しいという大都市があれば、道州は手を差し伸べない。それが基本になると思う。
経済畑の人は、「取りあえずやってみて、問題が出れば変更したらよい」という発想である。法律畑の人は、「問題が起こってからでは遅いので、事前にきちんと決めておくべき」という発想である。物事には一律に決めて良い場合と悪い場合がある。今の道州制の議論は、国から権限を委譲して道州を創り、道州の下に基礎自治体を置こうとしている。そのときに、現行の国と府県の関係、府県と市町村との関係をそのまま持ってきても意味がない。各道州で都市設計についても自由度を持った方が良いと思う。
(座長)
道州内での地方制度はこうあるべきという議論はないかもしれない。しかし、分権や自治を原則とする以上、各地域の自治権は保障し、その具体化については各地域で自主的にインコーポレーションしていくという考え方はある。その枠の中で、極力道州の権限についても、全部出来るという自治体にはやってもらい、ココまでしか出来ないという自治体には、それなりにやってもらう。このような作り方が出来ればよい。事務の仕切りの手順を予め決めておくことは出来るかもしれない。各自治体(市町村)がどのような権限、財源を持っているかということを自主的に定めておくという考え方はあるかもしれない。
(山下委員)
道州下における大都市制度について、国全体の制度として作りこんでおくよりも、州毎に違っていて良いという議論になると思う。日本の現状を鑑みても大都市も必ずしも画一的ではないので、発想としては適切ではないか。
関西州を想定したときに、どのような大都市をイメージするのか。当然政令市は対象となるが、今の政令市を前提に議論すれば良いのか、あるいは作り直したほうが良いのか。今の政令市を想定するとしても、昔の政令市とは違ってきている。更に、政令市の下に、中核市、特例市、市町村という区分が進みつつある。この延長の中で大都市を捉えていくことになれば、大都市が一般市町村と際立って違うということではなくなる。大都市をどうイメージするかは重要な問題である。
今の政令市は、大都市圏域とは一致していない。大都市+周辺都市の水平連携という、中二階のようなものをイメージした大都市圏域まで考えておくのかどうか。それとも、大都市の区域を超えるものは、州の広域的な問題と見るのかという事とも絡んでくる。昔の大都市と今の大都市とで、単に人口や面積だけでなく、ステータスが変わりつつあることはおさえておく必要がある。
(座長)
戦後直ぐの旧5大市の時代と比べると、今の事情とは随分違っている。都市圏自体が、特に東京、大阪の大都市圏は境めなしに広がっている。ところが、行政区域は従来どおりのまま個々の市町村としてやってきたので、変てこな話になっている。
現実問題として、少し大袈裟に言えば大津市から明石市までは連たんしていてこれをどうするのかという話がある。大都市圏、大都市と言う時のイメージの持ち方が大事である。大都市の色んな機能とされているものを考えるとエリアが広がる。一方で、居住と日々の暮らしから考えると違うエリアになる。市の区域を分割するという話をこの研究会でやるとえらいことになるので、結論は出ないにしても、大都市の権限を一定引っぺがすぐらいの話はあってもよいと思う。
(山下委員)
一種の三層制のような形ですね。
(座長)
そう。イメージとしては、道州も入った広域連合のようなもので、大都市圏に広がる課題に関わってやるような。例えば、都市計画とか、公共事業とか、公共交通を管理するような組織は有り得るなと思う。ドイツのフランクフルトではそのような例があるようだが。
(山下委員)
仕事の配分を考えたときに、事業体として切り離せる部分は、それこそ大都市や周辺市、州も関わった独立の事業体がありえるだろう。問題は、企画立案、計画、経営戦略という部分を何処が担うのか。これまでの議論で、「州になれば1+1が3になる」という話があったが、州という広域エリアでネットワーク、立地の適正等を考える場合、州がどう関わるのか。この辺りの仕組みを上手く設計できれば、結構州と大都市との役割分担の話は解けるのではないか。後は話し合い、交渉で決める。事務配分を考えたときに、グレーな部分は残るので、むしろどちらと決めないで交渉事にすればどうか。ただし、広域的な見地からのプランニングは大都市抜きに作っても仕方が無い。大都市圏域だけで重要な施設を勝手に作るということでも困るだろう。この辺のプランニングをどうするか。作った後の管理は別のところがやればよい。
(中井委員)
大阪府の予算が3兆円、大阪市の予算が2兆円。構成員も850万人と250万人と違う。果たして、この違いがリアリティを持っていたのだろうか。二重行政と言われているが、府市ともに本当に同じことをしてきたという側面もあるのではないか。警察ははっきり違うと分かるが、教育になると分からなくなる。教員採用もそれぞれ行っている。
大阪市が国と二重行政をしているとは言われない。国立文楽劇場があることも二重行政に近いと思うが、問題にならない。それは構成員が決定的に違うことがある。枚方市民が“大阪”というのは、大阪府民だからなのか、大阪市民に近い大阪という意味なのか。関西州になったときに、広域的団体として大阪府とは全然違うので、大阪市と関西州の二重行政は無いと住民が思うかどうか。
(座長)
人口が1千500万人とか2千万人の関西州になった時に、大阪市との関係は決定的に違ってくるということは良く分かる。国と大都市との関係によく似ていて、喧嘩も無く、それぞれが勝手にやるという構図になるかもしれない。権限や財源の配分の問題では議論が出てくると思うが。逆に、今のような感情的な議論はなくなるかもしれない。
(玉岡委員)
道州間で競争を行う仕組みが出来たときに、同じ道州内で大都市と道州がいがみ合っていてよいのか。いがみ合わないために、大都市と道州の協議機関みたいなものが必要ではないか。大都市が勝手にやればよいという部分がある一方で、道州間で競争する場合には大都市と道州の役割分担を決める機関を持っていても良い。
(山下委員)
行政制度として考えたときに、州と大都市の関係は理屈が立つと思うが、地域の力として大都市のあり方を抜きにした州というのは考えられない。大都市の政策展開と州の政策展開がお互い好き勝手出来ない分野があるだろうから、調整する場は必要。しかし、それだけで処理し切れるのか。一方が他方の政策形成に手続き参加することで考えるのか。そのような手法が必要となる政策領域を考えておく必要はある。大都市に好き勝手やってもらって全体を引っ張ってもらう手はあるかもしれないが、それでは道州にする意味がない。その辺をどう考えるか。
(座長)
分権型道州制を採るときに、各地域が自分の力を自由に発揮できるようにすることは制度設計の基本だと思う。都市が都市として自主的・自発的に活動範囲を広げたり、あるいはサービスを通じて都市の経済力とか創造性を蓄積し、それを発揮していくかは、エンジンであると同時にその都市の持つ特性や個性が大事にされないといけない。それを型にはめてしまう協議とか計画などは違うと思う。なので、大都市圏全体でどうするか、道州が何処まで関わるかは相当自制的に考えていかないといけないという印象がある。協議あり、計画手続き参加ありという議論は逆転するという感じが個人的にある。「どうしてもこれだけはちょっと待って」ということは出てくると思う。全体の資源配分とか、関西州が出来たときに、連たんする800万から900万人の大都市圏の住民と、それ以外の住民との間のバランスをどう取るのか。あるいはそれに対応した全体のネットワークはどう考えるのか。そこだけは待って欲しいとなるかもしれない。それでも大都市の意向を基本的には尊重すべきで、どこまで都市の活動を枠にはめるようなことが必要なのか悩ましい。
(玉岡委員)
二重行政の話について。大都市が勝手に動いてそれに道州がどう関わるかだが、二重行政になっていて、その税負担が大きくなるということであれば住民が最終的に二重行政にノーと判断できるようにする。課税自主権があるという前提だが。負担が大きいと思えば、他の道州に移る人も出てくるだろう。住民の監視をどのように効かせるか担保する必要がある。
(中井委員)
大阪市と大阪府の施策が近すぎたので喧嘩するという具体例として、大阪府は阪神間の自治体と喧嘩することは在り得ない。県が違うから。戦後に、大阪府は吹田市に千里ニュータウンを作るという政策を採った。これは大阪市内の人口集中を解消するためなのか、府内の均衡を図るためなのか。奈良県にも多くの人が流出したが、奈良県民と大阪府は仲が悪いという話にはならない。しかし、堺の泉北ニュータウンを作ったときに、大阪市は「また人口を減らすのか」となった。空港についても地域の均衡を考えて、他の事情もあるが、泉州地域に空港を作った。広域自治体である府県としては当たり前のこと。しかし、神戸市が空港を作る時代に、大阪市だって空港を作る可能性はあった。リアリティはないが。大阪府と大阪市ほど行政が近くて目指すところも近く、予算規模も変わらなかったら互いに「ナンボのもんや」となる。大阪府は、府域の均衡を図るために府内での人口分散策を考えるが、県外に流出する場合はあまり問題にしない。道州と大都市の関係について、大都市は自立性を担保できるので、また道州と大都市が喧嘩するのであればよくない。
(山下委員)
ある程度、州と大都市の間に距離が出来ることはいいことかもしれない。3政令市と府県との在り様を考えると、ある程度距離がある方が楽かもしれない。
(中井委員)
大阪府は今お尻に火が付いている。堺市が政令市になったこともあり、また府と大阪市が距離的にも行政的にも近すぎてこのような結果になっている。これは関西経済全体にとって良くない。二重行政がなくなれば、1+1が3になる可能性はあるはず。指定市が元気になればなるほど、今の府県制度は弱くなる。地方の県ではこんな問題はない。県庁所在地があるだけで、政令市があるわけではない。しかし、神戸市と兵庫県、京都市と京都府、愛知県と名古屋市との関係を見ても、大きな指定都市を抱えている府県では、政令市と近いことによるトラブルがあると思われる。東京では、都と特別区は一体で捉えている。都制が良いとは思わないが。指定市が力を出せば出すほど府県は今のままでは置いて行かれる状況になっているので、大阪府のお尻には火が付いていると言ってよいかもしれない。
大阪府が府内の均衡を図るために採った政策は、広域団体としては当然であるが、果たして関西経済全体にとって良かったのかどうか。これが道州であれば違った政策を採ったかもしれない。
(座長)
大都市制度をどう考えるのかここまで自由に議論いただいた。一方で、4政令市以外にも、高槻市とか幾つか中核市があって、その上で関西州を考えるとなると、どうなのか。いっそのこと大津市から明石市まで合併してくれないかと思うが。(笑)
既存の大都市をそのまま残して考えざるを得ないという問題と、一方で、大都市圏域ということをある程度経済合理的に経営する仕方を考えないといけない。また道州全体の発展基盤づくり、道州全体の福祉も考えないといけない。
道州の役割と大都市の役割をどう区分けしていくのか、交渉の前に一定決めておかないといけないだろう。細かい部分までは議論しきれなくても、道州の役割があって、それ以外は市町村ということになるだろう。後の個別具体の分野については、大都市の特性に応じて交渉になるのではないか。
大都市の事業については、道路公団がそうだが、独立した事業体として事業運営をやってもらう手もある。政策的な部分は、道州全体の戦略をどう組み入れるかという議論も出された。特に、基盤的な施設、港湾や道路、空港は一体的に管理した方が良いという議論は既にコンセンサスになりつつある。後は協議会になるのか手続き参加になるのかは別として、仕組みが一定用意されれば交渉事という部分である。このような実態も踏まえて、道州と大都市が喧嘩をしないで、双方が満足できるような仕組みがあれば意見を出して欲しい。
(山下委員)
制度設計として気になるのは、大都市未満の都市(中核市、特例市)、それ以外の地域の拠点都市とは質的に違う都市として関係を考えるのか。それとも、大都市との関係はこうだが、大都市未満との関係はこうだ、州と都市と一連の関係の中で位置付けるのか。議論としては、大都市を想定して特別体制とするとなっているが、果たしてそれで良いのか。州の範囲が何処になるのかで変わってくるが。
(玉岡委員)
一般的な市町村について、交渉相手として大都市もあり道州もあるとすれば二重の調整が必要になるが、この辺の議論はどうなるのか疑問がある。
(座長)
市町村が道州制の運営にどう関わるかについて。ドイツの連邦参議院のような例もあるし、道州の企画部門に市町村行政が参加するという方法もある。しかし、実際扱う問題が都市間で違うのか、あるいは代表の出し方など議論をしないといけない。これまで、我々の議論としては、道州の中に大都市がある前提で進めて来た。大都市を独立した存在とすることは道州全体のメリットからも無いだろう。大都市的な力を発揮していただき、道州全体のメリットを活かすことを考えると、大都市圏とそれ以外の市町村は違った関係を作らないといけないだろう。しかし、大都市圏の範囲をどうするのか。人口規模で言うと中核市にならない、北摂辺りの都市をどうするのか。生駒とか奈良はどうするのかという議論が出てくるので、アイデアを煮詰めていただきたい。近畿のケースでは、東海道、山陽道に沿った都市的な中核地域と、それ以外の日本海、太平洋に面する農山漁村地域はくっきりと分けられるので、その2種類の行政について調和をどのように保って全体の発展を促していくかが、道州の役割であるというイメージがある。
(山下委員)
大都市以外の都市には、恐らく2種類ある。1つは阪神、北摂、生駒等の大都市近郊の都市。もう1つは、人口等は多少ばらつきがあるかもしれないが、その地域の拠点的な都市。大都市周辺の都市は大都市圏をどう設計するかと絡んできて、大都市との横の関係が出てくる。地域拠点都市は、その他の市町村と違うのかどうか、気になるところである。
(座長)
具体的に言うと、地域の拠点都市というのは、兵庫県豊岡市とか京都府福知山市とかのイメージだろうか。
(山下委員)
中核市である姫路市とか。和歌山市はどうだろうか。
(座長)
和歌山市は大阪都市圏と言えるかな。橋本市は?
(山下委員)
橋本市は大阪都市圏と言えるのではないか。
(事務局)
確かに、豊岡市、福知山市、滋賀県彦根市などは、その地域で一定の圏域を形成している。
(山下委員)
人の流れ、モノの流れを考えたときに、必ずしも大阪大都市圏に向かっている構造にはなっていない。そこをどう位置付けるのか。
(座長)
京都市や、神戸市の通勤圏内に入る都市はともかく、それより遠い都市になると別の問題として考えないといけない。
(山下委員)
道州というエリアを考えたときに、大都市圏エリアが中心に座っているのは確かだが、地域構造として大都市とその他だけにはならないだろう。地域拠点的なエリアがあるとして、それは行政エリアだけでなく、地形的、歴史的なエリアもあろう。そのような地域構造というものを活かした関西州を考えるとすると、そのようなエリアは大事ではないかと思う。そのようなエリアと周辺エリアとで行政的な対応というのも考えられるし、考えないといけない。つまり、道州と拠点都市との関係というものを。
(座長)
拠点都市とその周辺地域を含めた地域がその地域戦略を立てていくところに、道州がその戦略的観点から参加していくというスキームはあると思う。
(山下委員)
道州に大都市が参加していくというベクトルで考えることも出来るし、逆に、大都市に道州が参加していくということも在り得る。これは両方あり得る。
(事務局)
今の議論は、道州が全体として戦略をどうデザインしていくときに各都市との関係をどうしていくかということであり、大事な論点である。一方、事務局が本日の論点として考えていたのは、大都市が自ら行うべきこととして、基幹インフラや、高度な試験研究機能、産業育成など、大都市自ら出来るし、やろうとしているところと、広域を見ながら道州が行うことがどう絡んでくるのかだが、コンフリクトしないようにするにはどうしたらいいのかが大きな関心事である。中井委員の御指摘にあったように、大阪市と大阪府との近しい関係は、大都市がそのような機能を持っているが故に近しくなってくるのであり、自由度と全体のデザインとの関係でどう調整していけばよいのか。拠点都市との関係性も大事な論点だが。
(中井委員)
大阪府内には過疎地がない。千早赤阪村の人口は今6千人ぐらいで、これまで大幅な人口減が無い。過疎指定地域がない中で、府内の人口均衡を図るのは割と簡単なことである。
一方で、兵庫県内には村は存在しないが、過疎指定を受けている町があり、そこの町長と話をすると現状の過酷さが伝わってくる。大阪府には大都市問題の大変さはあっても、そのような過酷さはない。
大阪府には過疎地が無い甘さがある。道州制に移行したときに、大阪府職員が今まで経験ないが考えないといけないのは過疎地域とどう向き合うかである。
企画立案しない道州ならやらない方が良い。道州制になったときに、二重行政が解消されれば1+1が3になる可能性があるが、多くの企画立案が東京に行かないと決められないようならやらない方が良い。東京に行かないといけないのであれば、交通コストと時間コストがかかる。道州で企画立案が出来れば、1+1が3に出来る可能性が高くなる。東京に行かなくても済むような仕組みを本質論として考えておかないといけない。企画立案を自分達で行う志を行政職員は覚悟として持たないといけないのではないか。能力的にも可能である。
(山下委員)
地域開発的な要素を含めた企画立案の力は、中央政府との関係で道州はきちんと持たないといけない。その上で、道州内での行政体制を考えたときに、道州がメインで(企画立案機能を)持つのか、むしろ大都市が好きにやるのか、ということはあり得る。
一方、中井委員が指摘したように、中山間地域について、京都府や兵庫県にとっては政策的な関心事である。道州になった時に、大都市と中山間地域の両方を抱え込むわけで、広域的な視野でどんな政策展開が出来るのかは結構難しい行政を背負い込むことになる。
(座長)
それは大変だと思う。だから、基本的に道州単位の戦略や企画等は道州の重要な機能としてある訳で、道州内における州土基盤づくり等の政策は道州のイニシアティブを一定考えていかないといけない。
一方で、現実に各地域で何をどうするのかは市町村が頑張るのが基本で、大都市圏でも大都市圏がもっと自主的に頑張る。中山間地域でも一定の制約はあるが市町村が頑張ることになる。
大阪府的な観点からは、大都市部で道州の経済政策や基盤政策がフリクションを起こす可能性が当然気になると思うが、中山間地域を多く抱え込んだ道州が戦略的に大都市部でどういうフリクションを起こすのかもう少し考える必要があるのではないか。つまり、何のために大都市に二重投資をするのかを議論するときに、理屈の立て方としては、従来のように、既に大都市化した大阪市の中で大阪府が市と同じことをやるのかという議論と、そうではなく、農村的な地域を大量に抱え込んで全体のネットワークを考え、地域の拠点として大都市圏域で何かをやるという議論は全く意味が異なってくる話である。二重投資、三重投資が必要で、エンジン部分を大都市だけでなく道州も一緒に引っ張ろうというのは、実は1+1が4か5になる話かなとも思っている。道州の企画立案
をどんな範囲で何処までやるのが有効なのか等権能の議論は、今後していかないといけない。
(事務局)
大阪府的な事情というのは、中井委員が指摘している通りである。大阪府はある意味で大変特殊な府県である。狭い府域の中に、大阪市という巨大な自治体がある。大阪市の拠点性は今日でも非常に大きく、財政規模、人口規模だけでなく、中枢性という意味で府県に匹敵する政令市があることは特殊な形だと思う。大阪府が目指すものと大阪市政が目指しているものとあまり変わらない。府域が非常に狭いことや、拠点性が極めて強いことから一体化してしまっている。そのような事情も手伝って、府は道州制の議論にも比較的熱心である。他府県がさほど道州制の議論に熱心でないのは、「まだまだ役割がある」と思っているからであり、違いを感じる。大阪市とも仲が悪いといわれるのは、大阪市の巨大性というのがあると思う。
一方で、大都市に魅力がないと圏域にも魅力が無いわけで、これからも大都市は大都市として輝き続けてくれないといけない。特に、関西の場合は。大都市が権能を失えばよいと考えることは危険なものを感じる。
大阪府職員としては悔しい面もあるが、大阪市は大阪市のままで在り続けてもらうことが必要だし、京都市や神戸市も輝き続けてもらわないと圏域の魅力が損なわれる。一方、政令市がそれぞれ自分のエリアだけを考え、広域のことを考えないとロスが多くなる。政令市にも圏域全体のことを考えてもらうことを是非とも担保してもらわないと。分かりやすい例として、大阪市営地下鉄は市内のことだけでなく、もっと広い視点で考えて頂くことが必要ではないだろうか。
(山下委員)
大都市には、大都市圏域に対する配慮までは期待出来るし、期待せざるを得ない。しかし、道州全体までの配慮することはイメージできるか。それは無理だろう。府県の役割と大都市の役割は、近いと難しいので、道州になって距離が出来るとコミュニケーションが成り立つのではないか。お互いの戦略をぶつけ合う場が取り合えずの落とし処ではないか。
(座長)
道州制になった場合、従来の大阪府、大阪市の間での戦略の違いと、今議論しているような大都市圏と道州の戦略の違いは、明らかに質が違ってくる。大きな戦略の違いの中で、似たような事業をやる分には、何もフリクションにならないと想像している。
(山下委員)
お互いに自分のエリアについて戦略を持ち、それぞれの戦略を実施するところで調整することになるのだろうか。
(座長)
あるいは、それぞれの戦略の策定にそれぞれが参加する形も考えられる。
(山下委員)
まずもってお互いが戦略を持つことから出発した方が良い。
道州制の執行機関・議会について
(座長)
道州議会とか長をどうするか等について意見をお願いしたい。
(山下委員)
今の政令市を選挙区とする府議会議員の位置づけ同様の課題があり得るとの話は気になる。実際に選挙をすることを考えると比例代表ではないだろうか。
(座長)
選挙区選挙は、やると大変だと思う。政党単位で政策をまとめてもらうことが望ましい。道州のレベルになると、地元利益の話ではなくなるので、やはり政策的な展望を持って選挙で多数派を取った政党が運営する仕組みが必要であろう。当然そうなると、首長制ではなく、実質として議員内閣制に近い行政運営を考えていかないといけない。もちろん、長はシンボル的に直接公選で選んで構わないのだが。
(山下委員)
2元代表制よりは議会委員会制や議員内閣制でも良い。やはり、政党選挙のような形に持っていかないと、議論の調整もつきにくいし、道州の単位でバランスよく意見を反映できないだろう。
(座長)
もちろん、いろんな市民参加、市町村参加の手法を考えてもらって構わないが、それとは別に、政策決定や政治決断をきちんと取れる仕組みが必要である。
(山下委員)
それは当然不可欠である。それと、市民参加の仕組みも両方必要である。ただし、道州の規模で直接参加のような手法は採れるだろうか。
(座長)
むしろプロジェクト参加という形になるであろう。1千万人を超えればヨーロッパの小国と同規模だから比例代表制でいけると思う。
(事務局)
それは州毎でばらつきがあっても構わないのか。
(座長)
規律密度の問題はあるが、バラバラでもよいのではないか。要するに、首長と議員を選挙で選ぶことが憲法上の命題であるとすれば、選挙をすることのみを条件とすることも考えられる。
(山下委員)
選挙で選ばれた代表機関、正当性を持った政治的な決定機関は不可欠。2元代表にするか1元代表にするか。2元代表にするメリットはあまりない気がする。比例代表で議員を選び、その前提としてマニフェスト選挙が根付くのであれば、その政策を実行してくれる政府をきちんと作ることがベターのような気がする。
(座長)
憲法改正は必要だろうか。
(山下委員)
憲法92条は2元代表制まで予期していたのだろうか。
(座長)
アメリカ大統領制型に近い形を憲法が要求していかと言えば、そこまで読めない。もちろん、作ったときはそこまで考えていたかもしれないが。逆に、自治法がそのように定めているので、自治法を変えればよいとの考え方もある。
ただし、道州を憲法上の普通公共団体とするかどうかという議論が出てくるかもしれない。本当に自治のことを考えると、憲法上の機関にしないと座りが悪い。
(山下委員)
確かに、代表機関その他で、「自治体」であることを外せば、制度設計の自由度は広がるが、「柔軟な」制度設計がどのように使われるかは怖くて仕方が無い。そういう意味では、きちんと自治体であるほうが良い。自治体という前提で組み立てていかないと。
(座長)
自治権が制度的にきちんと保障されている方が良い、と。
(中井委員)
道州制という言葉を使っているが、何故連邦制という言葉は使わないのか。連邦制という言葉を使うと、憲法改正に近いことを想定しなければならなかったのか。あるいは語呂が良かったからなのか。
(事務局)
議論としては、憲法改正まで必要かどうか、という考え方の議論もある。一方、連邦制となれば、司法権を含めた、国家機能の根本的なものまでを分割するのかどうか。その体制は民族的にも単一に近い、狭い国土の我が国では相応しくない。だから、連邦制ではなく、道州制を主張されている人もいる。ただし、主張者によって考え方が色々なので、1つの理由によって道州制という言葉が出てきているわけではない。
(中井委員)
道州制の議論では憲法を触らなくてもよいのかなと考えていた。ただし、連邦制まで近い形に持っていかないと、特に企画立案の面では、府県を寄せ集めて普通公共団体の集まりを作ったところで、今の北海道と何も変わらない。連邦制に近く、大上段で憲法改正までしなくても実現できるのかなと思う。
(座長)
地方制度調査会の検討でも、憲法改正までは踏み込めないので、何処まで分権を徹底出来るか、連邦制に限りなく近い道州制を何処まで採れるかを議論していた。そのため、今研究会でも、現行憲法の解釈と法改正で何処まで出来るかという範囲で考えればよいと思う。
国の造り方として、連邦制となると、コンフェデレーションなので主権国家が集って別の国を新たにその上に作ることになる。しかも、主権は連邦を作る国あるいは州に主権そのものが残るので、その仕組みを採れば憲法改正をせざるを得ない。国会が国権の最高機関ではなくなる。国民主権の意味が変わってくるので、そこまでは踏み込めない。限りなく連邦制に近い道州制が選択肢の1つである。
(山下委員)
連邦制を言うときに、この国のかたちががらっと変わると直ぐ考えてしまうが、それは目に見えないものなので実際に動いている体制を考えると、道州制をとことん詰めたら連邦制とあまり変わらないということもあり得る。連邦制という言葉を使う人がどんなイメージや意味で使っているかは注意が必要である。
<日程調整>
→調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定
第5回研究会
日時:平成20年1月30日(水曜日)午後6時から8時
場所:大阪府市町村会館 会議室(大阪府庁別館6階)