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令和6年(2024年)1月24日 知事記者会見内容
記者会見項目
豊かな大阪湾の実現に向けた大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンスの設立について
職員
ただいまから知事記者会見を始めます。よろしくお願いいたします。
初めに、知事よりご説明がございます。知事、よろしくお願いいたします。
豊かな大阪湾の実現に向けた大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンスの設立について ※この項目で使用は資料はこちら
知事
私からは1点です。豊かな大阪湾の実現に向けて、についてです。兵庫と連携した藻場の活性化についてです。
まず、大阪府においては令和4年10月策定の「豊かな大阪湾」保全・再生・創出プラン、これに基づきまして、大阪湾の奧部の水質改善であったり、あるいは魚類の生育の場となる、いわゆる藻場の再生・創出の取組を推進しているところです。
2025年大阪・関西万博は、これまでの万博史上で初めて海上でやる万博になります。海の万博とも言われますが、2025年大阪・関西万博を契機として、ブルーカーボン生態系の一つである藻場の保全・再生・創出の取組を加速させたいと思います。
まず、ブルーカーボン生態系って何なのということなんですけども、二酸化炭素を吸収・貯留する海洋生態系のことを言います。ここにありますけども、藻場、海藻ですね、アマモであったり、あるいはワカメであったり、昆布であったり、干潟等がそれに当たります。こういった藻場とか干潟などの面積、これが拡大することによって、CO2の吸収をしていこうと。CO2吸収の増加につながっていくと。そして、水中の酸素の供給によることで、供給等で水質の改善だったり、あるいは魚類の産卵と生育の場の創出になるという、そういうものであります。そういった生物の多様性の向上の相乗的な効果がある。これを増やしていきましょうということです。
大阪湾の環境保全の取組ですが、現状ですけれども、大阪湾の奥部については、人工護岸等で囲まれた生き物が住みにくいものになっています。港の南部に藻場が今ありますけれども、面積は減少傾向にあります。これを増やしていこうということです。港湾での藻場創出の実証事業であったり、水産資源を増やすための藻場の整備等、これは今、既にやっている事業です。
ここからさらに高みを目指していこうということで、大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンスを設立いたします。ここで実行していきます。
何をするかということですけれども、大阪湾沿岸を藻場などで取り囲む大阪湾MOBAリンク構想、これを実現に向けて、兵庫県と一緒になって、本日、大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス(MOBA)を設置します。
これは何かということですけれども、藻場の創出ですが、関西国際空港であったり、南のほう、ここには藻場がありますけれども、ここが減少してきているというのもあります。ただ、港の奥部については、貝塚市から上に上がった大阪湾、大阪市内のほうに入ってきて、そして神戸市の東部まで、ここは過去の埋立てによりまして、藻場はほとんど存在していません。ミッシングリンクになっています。このミッシングリンクを受けて、神戸の西から淡路島を通って、そして、ぐるっと回って大阪の南部から、関西空港から一つの輪をつくっていこうじゃないかと、ミッシングリンクを解消しようと、藻場でリングをつくっていきましょうという取組です。
この構想に賛同していただいて、そして、大阪におけるブルーカーボン生態系の創出に取り組む民間企業であったり、団体であったり、大学であったり、自治体等の取組の募集を開始いたします。規模として、当初ですけれども、少なくとも50ぐらいの団体には参加してもらおうと思っています。
例えば関空なんかでいうと、関西エアポートも藻場づくりに非常にこれまで積極的に取り組んでいますから、関西エアポートにも参入もいただき、また、沿岸の市町であったり、沿岸の港関係の企業であったり、あるいは、最近では金融機関等もこういったことに取り組んでいますので、そういったブルーカーボンの生態系をつくっていこうということに積極的な企業、民間団体に参加をしてもらう予定になっています。
そして、これは当然、神戸のほうにも入っていきます。兵庫県にも入っていきますので、兵庫県と連携して、兵庫・大阪連携会議のその中の一つでもありますが、兵庫県と連携して、大阪間におけるミッシングリンクをつないでいきましょうということです。なので、事務局は大阪府と兵庫県で担います。
2050年の大阪湾MOBAリンク構想の実現に向けて、様々な関係機関、団体等が主体的かつ連携した取組を実施していきます。構成は、先ほど申し上げた大阪湾における藻場等の創出意欲のある民間企業、団体、大学、自治体に参加していただきます。
活動内容ですけれども、会員のブルーカーボン生態系の創出の取組の活性化、情報発信・普及啓発・理解促進等の一元的な展開をしていく、会員の連携による新たな創出の検討・支援、そして、藻場創出が生物多様性に及ぼす効果の把握等を実際に実行していきます。国際的な課題解決にも貢献することになると思います。
ざっくりとした時間軸ですけれども、2030年SDGs達成、ネイチャーポジティブ(自然再興)、そして、2050年カーボンニュートラル実現ですから、2050年のカーボンニュートラル実現、このときまでにはミッシングリンクを完全につないでいこうという構想です。
この大阪湾MOBAリンク構想ですが、先ほども少し申し上げましたが、大阪湾の港の南部、泉佐野市以南あるいは西部は藻場が見られますが、減少傾向にあります。あわせて、港の奥の部分、貝塚市から神戸市東部は過去の埋立てで藻場がほとんど存在しないミッシングリンクです。この港の奧における藻場の創出、港の南の部分であったり、西における保全・再生の取組で、大阪湾沿岸を藻場などのブルーカーボンの生態系の回廊、リングでつなごうということがこの構想であります。
関係者と一体となって、大阪湾における藻場を、ブルーカーボンの生態系アライアンスを通じて創出していって、そして、大阪湾全体が藻場で一つのリングになってつながればいいなという、この計画を実行していきたいと思います。多くの企業、事業者の皆さんのご参加をお待ちしています。
私からは以上です。
質疑応答
職員
ありがとうございました。
それでは、府政・公務に関する質問をお受けいたします。質問される方は挙手の上、社名とお名前をお願いいたします。
では、最初に幹事社の日経新聞さん。
豊かな大阪湾の実現に向けた大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンスの設立について(1)
記者
日経新聞の山崎です。今ご紹介いただいた藻場の再生について質問いたします。
こちらのSDGs等の目標達成のために藻場の再生って非常に大事だと思うんですけども、こちらの取組が府民にとってどういったメリットを実感できたり、何かこの藻場の取組を、府民がどういうふうに効果を実感できるというふうに想定していたらいいでしょうか。
知事
まず、MOBAリンク構想によって、藻場を増やすことで魚等の生態系も豊かになってきます。そういったCO2を吸収する豊かな海をつくるということは、カーボンニュートラルに資することになるんだということを肌で実感してもらえればなと思っています。
具体的には、府の藻場の面積、現在84ヘクタールあるんですけれども、2050年のカーボンニュートラル、ミッシングリンク解消の目標のときには、100ヘクタールを超える藻場面積にしていこうというふうに思っています。
それから、CO2の吸収量ですけれども、海藻の種類とか密度によって具体的な算定ってなかなか難しいんですが、参考ですけども、関西空港、関西国際空港の藻場、50ヘクタールぐらいありますが、ここでは大体5年間で103トンのCO2の吸収しているというところでもあります。ですので、豊かな海をつくって、豊かな魚介類が生息できる場面、場所をつくっていくと。そしてまた、大阪産(もん)もそうですけれども、非常に豊かな海産物もありますので、そういったことに直接、命を大切にしながら触れてもらえる機会が増えればいいなというふうに思っています。
具体的に、今日設置しましたので、設置後速やかに会員の取組であったり、藻場創出における必要な情報の発信、会員同士の情報共有に着手をいたします。そして、2024年、今年ですが、万博会場周辺の海域において藻場を創出していきます。これは府補助事業で実施をしていく予定です。そして、2025年の万博開催時には民間のパビリオンであったり、あるいは大阪府のウィーク等を活用しまして、大阪湾における藻場創出の取組を見える化して、国内外に情報発信していく予定です。
民間のパビリオンでも、こういった豊かな海ということを想定しているところもありますので、そことも協力をして、海の中でCO2を吸収して豊かな海をつくるというのが大切なんだということを発信していければなというふうに思います。
そして、2030年までには港奥部の護岸に拠点となる藻場を複数創出する予定です。そして2050年、カーボンニュートラルが達成されるこの時期には、ミッシングリンクを解消して、大阪湾全体が藻場のリングで包まれて、豊かな海になっているということを目指していければなと思います。
大阪・関西万博関連について(1)
記者
ありがとうございます。
もう1点、ちょっと別件なんですけども、本日この後、大阪・関西万博推進本部会議が行われて、ノーベル賞受賞者の吉野先生がいらっしゃって、講演等行うと思います。こちらについて、吉野先生を呼ばれる意図ですとか、あと、これまで万博推進本部では、開催に必要な経費と府市の負担がどれぐらいになるか等話し合っていきましたけども、今後どういうことを万博推進本部で議論、発信していきたいかということについて、お聞かせください。
知事
まず、これまでもメディアでもそうですけれども、費用のところばかりに焦点が当たっているところがあります。これはもちろん大切なことです。3分の1は国税、3分の1は府市の税、3分の1は民間ですから、これは大切なことで、それを上げないようにしていく、しっかりとしたスキームをつくって実行していく、非常に重要なことです。それに対する経済効果がどのぐらいあるのかというのも重要なこと。だから、費用対効果というのも非常に重要ですけど、ただ、万博の意義ってそこだけじゃないよね、お金だけじゃないよねということがあると僕は思っています。
ですので、そういった観点から、ノーベル化学賞を受賞された吉野先生から見た万博というのはどういうふうに映っているんだろうかと、万博の意義とか、そういった点について、リチウムイオン電池でノーベル化学賞を受賞された、いわゆる科学者の目線から見た万博ってどういうふうに映っているんだろうか、万博の意義はどこにあるんだろうかというところを、お話をお聞きできればなというふうに思っています。
どうしてもお金の部分だけに非常に焦点が当たっているんですけど、万博って、でも、それ以上の大きな意義、効果があるよねということを吉野先生、ノーベル賞の受賞者の科学者の方と意見交換ができればいいなというふうに思っています。
実際この後やるので、僕もどんな話をされるか、まだお聞きもしてないので分からないですけれども、科学者がどういうふうに万博の意義を考えておられるのか、お話をお聞きしたいと思います。
記者
ありがとうございます。ほかに質問ある方、いらっしゃいますでしょうか。
職員
テレビ大阪さん。
令和6年能登半島地震関連について(1)
記者
テレビ大阪報道部坂と申します。よろしくお願いします。
能登半島地震に関する大阪府の対応といたしまして、1月9日から府内の住宅を無償で提供するというお話出てたかと思います。現在の申請数であったり、それを踏まえて住宅の提供数を増やすなどはありますでしょうか。
知事
現在138件の問合せをお受けしています。そして、入居希望件数として上がっていますのは54件ございます。実際に入居された件数につきましては、マンスリー1件も含めて合計で26件の府営住宅、市営住宅に入居をされておられます。能登半島地震で住宅を失って非常に厳しい状況になっている方の住居支援ができればいいなというふうに思います。確実に相談件数も入居希望件数も実際の入居件数も増えてきておりますので、この施策については引き続き実施をしていきます。
当面、大阪府、大阪市、堺市合わせて312戸を確保しておりますので、まだその枠内に収まっていますから、今の段階で増やすということは考えておりませんけども、必要に応じて、必要が増えれば当然これは柔軟に拡大をしていこうと思います。
そして、府営住宅に入居される方については、生活の家電であったり、すぐ生活を始められるようにということの準備も整えていますし、入居された方が介護とか医療とか、あるいは教育とか、必要な場面については、生活支援の窓口の設置をしています。不安も多いと思いますけれども、お気軽にお問合せをいただけたらと思います。
記者
ありがとうございます。
もう1点、教育の話も今されましたが、同様に被災地の子どもたちを府内の学校で受け入れることについて、現在の状況というのはどういった形になっていますでしょうか。
知事
現在、大阪府内において13名の小中生の受入れをしています。小学生が10名、中学生が3名です。それ以外に中学生の問合せが2件あるという状況です。教育につきましても、教育長がさきの災害支援会議で発信したとおりであります。我々としても教育の受皿というのをしっかりとつくって、柔軟に受入れをしていこうと思っていますので、まさに小中高に通われているお子さんがいらっしゃるご家族も、学びの場を準備しておりますので、大変な状況かと思うんですけれども、何なりとご相談をいただけたらと思います。
記者
ありがとうございます。
職員
読売新聞さん。
豊かな大阪湾の実現に向けた大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンスの設立について(2)
記者
読売新聞の山本です。
1点ちょっと改めての質問なんですけれども、藻場の発表項目の関係で大阪湾一円ということなので、兵庫県とも連携するということだったんですけども、兵庫と連携することにどういったメリットであったり、利点というか、そこを見通して考えておられるのか教えていただけますでしょうか。
知事
やはり海って結局つながっていますので、大阪湾について、特に埋立地等については完全につながったエリアでもあります。ですので、藻場のミッシングリンクを解消するのであれば、やはり兵庫県と連携するのが適切だと考えています。また、兵庫・大阪連携会議を立ち上げましたので、それに基づいて産業政策とか観光政策とかいろんな協力できるところはしていますが、藻場の海を豊かにするということも兵庫・大阪連携会議を通じて、より深い関係になればこれはお互いにとっていいことだと思っています。
なので兵庫県と大阪府とでも連携をしまして、兵庫県はもちろん兵庫県内の市町村とも連携していますし、もちろん大阪府は大阪府内の湾岸、沿岸の市町とも連携をしていますので、当然それを前提とした上で兵庫と大阪が連携をして、大阪から切れて尼崎に入った瞬間別というのではなくて、尼崎も大阪市のベイエリアもほぼ同じ大阪湾を構成していますので、であるならばそこは協力して藻場をつくっていく、兵庫・大阪連携して大阪湾全体のミッシングリンクを解消して、藻場のリングをつくれたらいいなと思っています。また、それがお互いにとって大きなプラスになると思っています。別々にやる必要はないという考え方です。
記者
ありがとうございました。
職員
次に、朝日新聞さん。
令和6年能登半島地震関連について(2)
記者
朝日新聞です。
能登半島地震について問題意識をお伺いしたいんですけども、幾つか質問がありまして、まず一つ目、今回の能登半島地震では被災者の生存率が落ち込むとされる発災後72時間までに能登半島も幹線道路の寸断などによって物資とか安否確認が進まない、救助作業も妨げられるという問題が生じました。例えば、同規模の地震が府内でも起きた場合に同様の問題が生じると思うか、また、起きると考える場合に防ぐためにどんな取組が必要だと思うか、現状の認識を教えてください。
知事
まず、能登半島と大きく地形が異なりますので、やっぱり半島特有の困難さもあったと思います。大阪府はもちろん半島ではありませんので、やはりもともとの地形、そして都市構造も違うところはあるだろうとは思っています。ただ、だからといって何も関係ないと言うつもりは一切なくて、やはり道路が寸断された状況で被災されたエリアに速やかにタッチしにくいところに対してどのように支援していくのかということについては、非常にこれは考えて、より深く考えるべきだと思っています。
もちろんこれはヘリコプター、陸でつながってなければまずはヘリ等で人命救助をすると。ただ、人命救助だけじゃなくて継続的に孤立地域が生じてしまうと、継続的な例えば物資の支援であったり、そういったものが必要になってきます。そこをどうするかと考えたときに、もちろんヘリという輸送手段は必要です。有効だと思います。ただ、ヘリであるとやっぱり着陸の場所であったり、燃料であったりいろんな整備であったりいろんな課題もあるので、もちろんそれを最大限に使うとした前提で空からドローン等を使って物資を輸送するというようなものをもっともっと活用すべきだろうと考えています。それについては、今、実務的に少し着手に入っています。
大阪においては空飛ぶクルマのコンソーシアムもつくっていますし、ドローン技術がある会社もあります。ですので、もし孤立するエリアが発生したときに第一義的にはヘリだと思うんですけれども、ずっとというわけにはなかなかいかない、ヘリもなかなか着陸しにくいときに、危険なところを自衛隊の皆さんに、本当にこの自衛隊の皆さんには感謝なんですけれども、いわゆる徒歩で危険な山道を進んでいただくというのは、これは本当に感謝しかないんですけれども、それ以外のより安全でかつ生産性が高くて、自衛隊の皆さんにも危険が生じないような物資搬送の仕方というのは、僕はドローンだと思っていまして、ドローンとか空中の輸送ですね。もっと言うと将来的には空飛ぶクルマというのがあり得ると思いますが、そういったより簡易簡便な、ヘリコプターよりも機動力の高い物資輸送というのはぜひ必要だろうというふうには思います。
今はまだ被災地支援の真っ最中ですから、そこに注力をしますけれども、問題意識としてもう既に僕の中で持っていますし、担当部局はここについて既に関係者との協議に入っています。ここはいずれかの段階でまたしっかりと、もし震災が起きたときに形になるように準備をしていければと思います。
記者
可能な範囲で結構なんですけど、今、ドローンの活用について実務的に着手しているということで、何か方向性だったり、それこそ新年度予算に計上する見込みだったり、そのあたり、見えているものがあれば教えてください。
知事
新年度予算というよりは、これは民間ドローンにおいて、普通に状況はどうなのかというのを撮影するためだけのドローンというのは、これはもう職員も含めて既に今やっていますので、これはそんなに抵抗なくできるんです。もちろん区域をどうするかという管轄の話があるんですけど、大事なのは、例えば10キロとか20キロのものを持って、そしてそれをドローンが運んでいくという、ここについてはそれなりのドローンとしても専用のドローンみたいのが必要になってくるということになりますから、ここは民間のドローン会社の皆さんと一定準備と協定、そういったものが必要になると思っています。それについては、今、徐々に着手に入っているというところです。
なので、まずは何をどのぐらいの能力で運べるのかということを含めて、しっかりと意見交換をした上で将来的な事業の協定、もし災害が起きたときにはすぐわーっと、これはもう時間との勝負ですから、極めて短時間で集結をして、そして極めて短時間で物を分ける、そういったことが重要だと思っています。
今回、能登半島地震の場合は地震としては非常に局所的ですので、全国の対口支援が入って、全国の自衛隊も入っていますが、南海トラフ巨大地震が起きたときというのは被災地というのは物すごく広範囲になると思いますから、やはりそういった意味では、全ての被災地に自衛隊の皆さんがくまなくというのは、なかなか難しい状況もやっぱり想定しなければならないと思っていますので、そうなってくると、例えば民間の力もうまく協力も得ながら必要な物資、あるいは薬であったり、食べ物であったり、そういったものを自衛隊の皆さんが危険なところを徒歩で山を越えて行っていただくというようなことをせずとも、運ぶことができるような技術というのは今ありますので、しっかりと仕組みをつくってルールさえ定めておけば、ここはある程度迅速に対応できるんじゃないかというふうに思っています。そういったことをやっていきます。
記者
すいません、あと二つありまして、今回の能登半島地震では過疎地かつ高齢化率が50%前後の自治体の被害が拡大しました。高齢化や人口減少で全国的にコミュニティーの担い手が少なくなる中、災害時に住民による共助の仕組みが困難になっている傾向があると考えますけども、この点に関して課題があるかどうか、課題があるとすればどのような対策が必要かお考えを教えてください。
知事
やはり特に高齢化しているエリア、そして、地域、集落においてはコミュニティーが出来上がっていますので、もしそこで震災が起きたときというのは、そこの一定の公民館とか避難所で皆さん過ごされ、そこの環境が非常に客観的に見たら悪かったとしても、やっぱりそのコミュニティーの中から出たくないとなる場合も、これは心情として、あるいは人間の気持ち、心理としてあるし、実際今、能登半島でも起きていると思います。
そういった中で、これは事前の準備、今、決定して能登半島でというのではないと思うんですけれども、今後の事前の準備とするならば、やはり一定、特に衛生環境がよくないと、もしそういった方で、高齢者の方って、感染症に感染したり、あるいは避難所の状況が悪いことで抵抗力が下がってきて感染症になるとやっぱり命にも関わってきますので、命を最優先するという発想に立てば、そこからある意味、強制的にでも移転をしていただくようなルールというのも僕はつくっていくべきだと思います。もちろんそこに帰ってこれるというのをやっぱりしっかりと、その先の見込みも立ててあげたりする必要があると思います、人間の気持ちとして。そこでずっと生まれ育った人ですから。でも、そこにいると命の危険が生じるということであれば、それをある意味ルールとして、一時的に安全な場所に移動していただくというようなものもやっぱりしていく必要がある。
そういったことをすることで、例えば避難所においても、より集約化というか、より環境のいいところでやることによって、役所自体も被災してますので、全ての避難所とか全ての集落に満遍なく完璧な人が送れるかというと、やっぱりそうじゃないので。そして、能登のような地震よりもっともっと広範囲の震災が起きたときには、より支援を集中してするというのは難しくなってくると思いますから。なので、そう考えると、これから高齢化が進む、そして人口減少して集落が点在する、そして広範囲に被害を受けたというときには、ある程度、後にきちんとこれは戻ってこれるよということも僕は重要だと思うんです。もちろんコンパクトシティの考えもあるんだけれども、災害においては、一時的に命を守るために、ある意味、ルールとして安全な場所に移転してもらうということも定めておいて、それをある意味、国民のコンセンサスにしていくことも僕は重要だと思います。
そして、支援する側の人材も限られると思いますから、そこのソースがある程度集約したところに投入できるようにすることによって、より多くの人が支援の対象になるだろうというふうに思いますし、災害関連死を防ぐことにもつながってくるというふうに思っています。
記者
すいません、もう1点だけ。府内の自治体の防災力だとか対応力についての認識についてなんですが、府内にも過疎地を抱える基礎自治体があると思うんですけども、このような自治体の防災力や発災時の対応力について、現状で課題はあると考えていらっしゃいますでしょうか。また、その課題について、大阪府として取組や方向性があれば教えてください。
知事
まず、全面的にそういったところは支援をするということです。何かというと、これは現在、我々は輪島に入っているので、そこの経験・体験も積んでいますけれども、当初は、輪島市の職員も被災している中にもかかわらず、やはり市職員としての使命感で、避難所での、非常に水が不足したり苛酷な厳しい環境の中でも市民を守ろうという使命感の中で、職務を遂行されてます。これはほとんどの職員がそれをしている。これは裏を返せば、いわゆる輪島市自身の市役所の本機能、そこの拠点機能というか、そこを形成するのが難しいということの裏返しにもなります、日々その瞬間の対応をしているということになりますので。
そう考えたときには、やはり市町村をバックアップする、これは、大阪府、都道府県として非常に重要な仕事になってくると思います。特に過疎地域の市町村については、さっき言った効率の問題も出てくる可能性もありますし、もともとやっぱり職員数も少ないというところもあります。ですので早急に、今回もそうですけれども、避難所の運営の、本来の市町村の職員じゃなくてもできるようなところについては速やかに支援・バックアップをして、そして、本来の職員が、その市町の被災状況を改善するためにやるべきいわゆる本部機能、そこにできるだけ注力できるように、これは市町村と協力をして進めていくことになるだろうと思います。
なので、そういったノウハウも、今、輪島市を支援するという形で、もちろん一義的に輪島市の皆さんを支援すると、それに最善を尽くしているわけですけども、多くの職員が入れ替わり立ち替わり入ってます。向こう1か月は合計で1,600名の大阪府内の職員が入りますので、そのノウハウはきちんと蓄積をして、そして、万一、大阪で大きな災害が起きたときに役立てるようにしたいと思います。
職員
次にご質問。MBSさん。
令和6年能登半島地震関連について(3)
記者
MBSの清水と申します。
万博と能登半島地震の件についてお伺いしたいんですけども、先日、博覧会協会の幹部が、万が一、万博の工事が地震の復興に向けた工事の妨げとなるなら考えないといけないといった趣旨の発言を記者団にしておりまして、一方で吉村知事は、年始の1月4日の囲みとかでは、万博の工事と地震の復興に向けた工事というものが二者択一のものではないというふうな発言をしていると。そうすると、この博覧会協会の幹部の発言と吉村知事との考えに、ある意味、違いがあるようにも感じられるんですけども、この万博の工事と能登半島地震の復興に向けた工事の関係というところについての、改めて吉村知事の考えというのを聞かせていただけますか。
知事
そこまで大きな違いがあるとは思いません。やはり復旧復興、能登半島における復興復旧、これが最優先のことであることは間違いないというふうに思っています。今、日本が総力を挙げて、そして政府が総力を実際挙げてやっていますし、もちろん大阪府も実際に支援活動を行っているのはもう皆さんにも報告しているとおり。これは大阪府だけじゃなくて、全国の自治体が、協力できるところは協力していこう、そして被災者の皆さんを何とか支援しよう、復旧復興の力になれるように日本全体を挙げて進めていこうというのはまさにそのとおりで、最優先されるものが復旧復興だというふうに思っています。
ただ、そこで何か万博を中止したり延期したら復旧復興が早まるかといったら、僕はそうじゃないだろうというふうに思っているので、これは二者択一にするものではないんじゃないんですかと。ただ、優先順位というのはどうですかと言ったら、当然これは被災地の復興だというふうに思っています。これは僕自身がそういう考え方ですし、もちろんこれは、政府もそうだし万博協会もそうだろうというふうに思っています。何か重ね合わせることを前提にしているんですけれども、それはちょっと違うんじゃないのかなというふうに思っています。
それから、総理が経産大臣に、この復旧に支障がないようなことにするのは当然だから、そういうふうにするようにという指示があったというふうに聞いていますし、それは僕も当然そのとおりだろうというふうに思っています。
記者
ありがとうございます。
少しちょっと話は変わるんですけども、先ほどのQ&Aの中で、こういう能登半島地震のように孤立集落というのが発生した場合に、ある意味、強制的に移転するようなルールをつくるべきというふうなところを、今、ご発言されたかと思うんですけども、ここのある意味ハードルとなるのは、恐らく憲法上の移動の自由というふうなところになるかと思うんですけども。そのあたりを地震だからということで乗り越えられるものなのかどうか、このあたりは、本当、ルールをつくるべきというふうになっていった際に、吉村知事として考える課題、ハードルってどのあたりにあるというふうに考えますか。
知事
憲法上の住居移転の自由というのはあるわけですけども、もちろん公共の福祉の場合は基本的人権というのは一部制約されることがあるよというところも、当然、憲法に規定されています。最も大切にすべきなのは、僕は命だと思っています。なので、命というのを一番大切なものとして考えたときに、そういった非常事態が起きたときに一時的な措置を取るルールをつくっておくというのは、僕は重要ではないかなというふうに思います。故郷をなくせと言ってるわけじゃないですからね。それはもちろん、そこで生まれ育った人がいて、そして、そこに思い入れってすごくあるわけだから、そういった意味で、こっちに移転しなさいというのは、僕は、それを通常のルールとしてやるというのは難しいだろうし、少しやっぱり違うんじゃないかなと思うところもあります。
実際、それを恒常的にやるというのは、簡単にはもう……。言うのはいけるかもしれないけど、実際に実行するというのは、なかなか僕は難しいと思います。これはその人の立場になって考えたら、そこでずっと本当に、70年、80年、90年、故郷を守ってきて、故郷で生まれ育って生活している人に、いや、合理性のためにこっちに移転してくださいというのは、合理的かもしれないけれども、やっぱりそれは、なかなかそうそう簡単に認めるべきものじゃないだろうとは思っています。
ただ、地震が起きて、今回みたいな状況になって、そして、水も来ない、食べ物もなかなかまともに来ない、自衛隊が崖崩れの場所を渡って物資を届ける、そんな状況になっているようなところにおいては、やっぱり一時的にはより安全な場所に移転していただくというのを、ある意味、ルールとして定めておくことは必要なことではないかなというふうに思います。それはあくまでも基準は命です。今回は、孤立集落解消のために地元の市町村の職員なんかも一緒に自衛隊の人と入って、話をしながら、同意を得て、承諾を得てやられたということで、本当に地元の皆さんと、そして市町村の職員の皆さん、また自衛隊の信頼関係の中で進んできたわけですけれども。
これからどんな規模の地震が起きるか分からないということを考えたときに、なかなか物資も十分にいかない、水も寸断されて届かない、トイレに行けばもう衛生がむちゃくちゃ悪い状態になっている、それをきれいにする水もない、感染症のリスクもあるということになったときに、とりわけこれから高齢化社会に入ってきますから、高齢者の皆さん、感染症になれば命を失う場合もあるので、そういった非常事態になったときには一時的に安全な場所に移転していただくということも、ある程度ルールとして定めておくことは、僕は重要だろうとは思っています。
記者
ありがとうございます。
職員
ほかにご質問される方は。よろしいでしょうか。
それでは、記者会見を終了いたします。ありがとうございました。マイクは幹事社のほうにお返しいたします。