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更新日:2024年7月8日

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V 水稲の病害虫防除

水稲 その2(本田防除ー病害)

いもち病

留意事項
1 病原菌は糸状菌の一種で、育苗期から成熟期まで発生する。発病部位によって、育苗中~後期の苗いもち、本田の葉いもちと出穂後の穂いもち(穂首いもち、枝梗いもち、みごいもち、籾いもち)、節いもちなどがある。
2 病原菌の菌糸や分生子が被害わら・もみ等で越冬し、翌年、種子伝染や分生胞子が空気伝染して発病する。
3 気温25~28℃、多湿で日照不足の時に多発し、降雨、チッソ過多、過繁茂などの場合に発病が助長される。
4 薬剤は基本的に発病予防効果だが、ブラシン剤は発病後の治療効果もある。

防除方法
1 種子は塩水選を行い、必ず種子消毒をする。((種子消毒の項)参照)
2 厚まきを避け、健苗の育成に努める。
3 罹病苗を本田に移植しない。
4 本田での密植は、発病を助長することがあるので避ける。
5 補植用の置き苗は発生源となりやすいので本田に放置しない。
6 チッソ質肥料の過用を避け、追肥は遅れないようにする。
7 低水温、日照不足はイネの本病に対する抵抗性を低下させるので山間部では冷水かんがいにならないようにする。
8 常発地では深耕に努め、堆きゅう肥による土作りやケイ酸質肥料(ケイカルなど)の増施を行う。
9 耐病性品種を用いる。
10 山間地等のいもち病発生の多いところでは、いもち病に登録のある防除薬剤を箱施用する。 (詳しくは箱施用剤適用病害虫一覧表のページを参照)
11 本田において、葉いもち及び穂いもちの発生が見込まれる場合には、下記の薬剤を施用する。
オリゼメート粒剤 <P2>【3~4kg/10a 散布 葉いもち:初発10日前~初発時、穂いもち:出穂3~4週間前(収穫14日前)/2回】

コラトップ粒剤5 <16.1>【3~4kg/10a 散布 葉いもち:初発10日前~初発時、穂いもち:出穂30~5日前/2回】

ゴウケツ粒剤サンブラス粒剤 <16.3>【3~4kg/10a たん水散布 出穂5日前(収穫30日前)/1回】

ゴウケツパックサンブラスパック <16.3>【(10個)450g/10a 投げ込み散布 出穂5日前(収穫30日前)/1回】

フジワン粒剤 <6>【3~5kg/10a たん水散布 葉いもち:初発7~10日前、穂いもち:出穂10~30日前(収穫30日前)/2回】

12 発生を認めたら下記の薬剤を散布する。
ブラシンフロアブル <U14><16.1>【1000倍 7日/2回】

ブラシン粉剤DL <U14><16.1>【3~4kg/10a 7日/2回】

 

紋枯病

留意事項
1 病原菌は糸状菌の一種で、高温(28~32℃)多湿時に多発する。
2 チッソ過多、密植、分げつ過多で発病が助長される。
3 キヌヒカリは本病にやや弱い。
4 前年の被害株や畦畔などの罹病雑草に形成された白色~淡褐色の直径2mm程度の菌核が越冬し、翌年の第1次伝染源となる。
5 SDHI剤<7>は耐性菌が出現しやすいので、1作1回程度の使用に努める。

防除方法
1 チッソ質肥料の過用を避け、なるべく浅水管理する。
2 畦畔、水路などの雑草を刈り取る。
3 代かき後の浮遊物には、紋枯病の菌核が多いため除去する。
4 被害わらは、完熟堆肥にして施用する。
5 過繁茂にならないようにする。
6 下記の薬剤を穂ばらみ期から出穂期にかけて散布する。

リンバー粒剤 <<7>>【3~4kg/10a 30日/2回】

7 下記の薬剤を出穂4~2週間前に施用する。

モンカット粒剤 <<7>>【3~4kg/10a たん水散布 出穂30~10日前(収穫14日前)/4回】

8 発生を認めたら下記の薬剤を散布する。

バリダシン液剤5 <U18>【1000倍 14日/5回】

モンガリット粒剤 <3>【3~4kg/10a たん水散布 30日/2回】

 

白葉枯病

留意事項
1 病原菌は細菌の一種で被害わらや河川や畦畔沿いのサヤヌカグサ等の多年生雑草の根部で越冬し、それが翌年の第1次伝染源となる。
2 台風の豪雨などで田が浸水、冠水すると多発する。
3 病原菌は葉の気孔や傷口から侵入する。常発地では浸冠水や台風直後に薬剤を散布する。
4 罹病葉を水に入れると、数分で切り口から白い糸状液(菌泥)が噴出することで判定できる。

防除方法
1 浸水、深水を避ける。
2 チッソ質肥料の過用を避ける。
3 冬期に畦畔や水路の雑草を処分する。
4 露のある時は、なるべく発生田に入らないようにする。
5 常発地では、いもち病との同時防除をかねて粒剤の予防散布を行う。

オリゼメート粒剤 <P2>【3~4kg/10a 移植活着後及び出穂3~4週間前(収穫14日前)/2回】

ルーチン粒剤 <P3>【1kg/10a たん水散布 30日/2回】

 

ごま葉枯病

留意事項
1 病原菌は糸状菌の一種で病原菌の菌糸が稲わらやもみで越冬し、翌年、空気伝染や種子伝染する。
2 苗の段階から発病し、秋には穂に発生し、穂枯れを起こす。
3 やや砂質土の珪酸分の不足するいわゆる「秋落田」に発生しやすい。
4 ごま葉枯病が多発生すると穂枯れを起こしやすくなるので、多発ほ場では出穂期~傾穂期に薬剤を散布する。
5 SDHI剤<<11>>は耐性菌が出現しやすいので、1作1回程度の使用に努める。

防除方法
1 チッソ、カリ、鉄、マンガン、ケイ素などの欠乏は発病を助長するので、ケイ酸質肥料(ケイカルなど)を施用し、土壌の改良を図る。
2 硫酸根肥料(硫安など)の連用を避け、チッソ質肥料の分施をする。
3 生わらは、早期にすき込むか堆肥として施用し、未熟な有機質資材の施用を避ける。
4 被害わらを本田周辺に放置しない。
5 根腐れを起こさないよう、かん排水など水管理に注意する。
6 種子消毒を行う。((種子消毒)参照)
7 発生を認めたら下記の薬剤を散布する。

ブラシンフロアブル <U14> <16.1>【1000倍 7日/2回】

オリブライト250G <<11>>【250g/10a 出穂10日前まで(収穫45日前)/1回】

 

縞葉枯病(しまはがれびょう)

留意事項
1 ヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病である。
2 近年、増加傾向にある。
3 本田初期に発生すると、新葉が細くなり巻いて垂れ下がって枯れ、「ゆうれい症状」と呼ばれる状態になる。本田後期の感染では、黄緑色の条斑を生じ、出穂が異常となって出すくみ症状を起こす。 
4 抵抗性品種では発病が抑えられるが、本府の現在の主力品種ヒノヒカリ、きぬむすめ、キヌヒカリはいずれも本病への抵抗性が無いので注意する。

防除方法
1 ウイルス病のため、本病に対する登録農薬はない。
2 常発地では、早植えを避けるとともに田植時期を揃える。
3 密植を避けて通風を良好にするとともにチッソ質肥料の過用を避ける。
4 本田初期の感染を防止するため、ウンカ類に登録のある防除薬剤を育苗箱施用する。 (詳しくは箱施用剤適用病害虫一覧表のページを参照)
5 6月下旬~7月上旬の感染が多いので、この時期のヒメトビウンカの防除を徹底する。
6 防除については、ヒメトビウンカの項を参照する。
7 収穫後は発病した株のひこばえを介して、越冬するヒメトビウンカの保毒虫率が高まる可能性があるため、早めに刈り株をすき込み、ひこばえを処分する。

 

もみ枯細菌病

留意事項
1 病原菌は細菌の一種で、育苗期の苗腐敗症と出穂期以降の穂枯れを起こす。
2 育苗時期、特に出芽時の温度が高い場合に発病しやすいので、30℃以下になるように、温度管理に注意する。
3 出穂期に高温で降雨日数が多いと発病しやすい。穂に白色の萎凋したもみが混在し、後に灰白色~淡黄褐色となって、稔実不良となる。
4 前年多発したほ場では適用農薬を予防散布する。

防除方法
1 種子は、無病ほ場のものを選ぶ。
2 種子は塩水選を行い、必ず種子消毒をする。
3 幼苗腐敗症(イネもみ枯細菌病菌)の防除には、育苗箱(30×60×3cm 使用土壌約5L)の覆土前に、は種した種もみの上から下記の薬剤を均一に散布する。

カスミン液剤 <24>【4~8倍 希釈液50ml/箱 覆土前/1回】

 箱施用殺虫殺菌混合剤にもは種時の使用で幼苗腐敗症に適用のあるものがあるので水稲箱施用剤適用病害虫一覧表のページを参照のこと。

4 発病ほ場の稲わらやもみがらは水田に直接還元せず、堆肥化するなどし、病原菌密度を減らしてから利用する。
5 深水や冠水状態になると発病が多くなるので、生育初期は浅水管理とする。
6 出穂前に下記の薬剤を散布する。
オリゼメート粒剤 <P2>【3~4kg/10a 移植活着後及び出穂3~4週間前(収穫14日前)/2回】

コラトップ粒剤5 <16.1>【4kg/10a 出穂30~5日前/2回】

7 出穂直前~穂揃期に下記の薬剤を散布する。
ブラシンフロアブル <U14> <16.1>【1000倍 7日/2回】

 

内穎褐変病(ないえいかっぺんびょう)

留意事項
1 病原菌は細菌の一種で、出穂前後に高温で降雨があると発生しやすい。
2 もみの内穎が特異的に褐変し、外穎が褐変することは少ないので他病と見分けやすい。
3 前年発生したほ場では発生しやすい。
4 薬剤は出穂前後2回散布するほうが効果が高い。昨年発生が見られたほ場では穂ばらみ期(出穂5日前~出穂日)に必ず薬剤を散布する。

防除方法
1 チッソ肥料の過用を避ける。
2 種子は必ず塩水選を行う。
3 発生したほ場では、稲わらや不稔もみを堆肥化してから利用する。
4 箱施用殺虫殺菌混合剤にも本病に適用のあるものがある。水稲箱施用剤適用病害虫一覧表のページを参照のこと。

5 発生が見込まれる時期に、下記の薬剤を予防的に散布する。
ブラシンフロアブル <U14> <16.1>【1000倍 7日/2回】

ゴウケツパックサンブラスパック <16.3>【(10個)450g/10a 投げ込み散布 出穂5日前(収穫30日前)/1回】

ゴウケツ粒剤サンブラス粒剤 <16.3>【3~4kg/10a たん水散布 出穂5日前(収穫30日前)/1回】

 

稲こうじ病

留意事項
1 病原菌は糸状菌の一種で、出穂前後に降雨があれば発生しやすい。
2 前年に穂にできた厚膜胞子等が田面や畦畔に落ちて越冬し、翌年の伝染源になる。
3 多発すると不稔籾が多くなり、収量低下を起こす。また、羅病籾や菌塊が籾や玄米に混入すると検査で規格外になるなど、品質低下の原因になる。

防除方法
1 種子は無病ほ場のものを使用する。
2 チッソ肥料の過用を避ける。
3 下記の薬剤を散布する。
ブラシンフロアブル <U14> <16.1>【1000倍 7日/2回】

モンガリット粒剤 <3>【3~4kg/10a たん水散布 30日/2回】

フジワン粒剤 <6>【3~4kg/10a たん水散布 出穂10~30日前(収穫30日前)/2回】

 

小粒菌核病

留意事項
1 病原菌は糸状菌の一種で、本病には小黒菌核病と小球菌核病があり、後者は湿田に多く発生する。
2 被害刈株やわら、土壌上の菌核が伝染源になり、代かき時に浮き上がりイネに感染する。
3 高温多湿時に被害が多い。
4 株元に薬剤を十分散布する。

防除方法
1 前年の被害わらは施用しない。
2 分げつ最盛期は浅水とし、排水を良好にして根腐れを防ぐ。
3 カリ肥料を十分施し、チッソ肥料の過用を避ける。
4 下記の薬剤を散布する。
フジワン粒剤 <6>【4~5kg/10a たん水散布 出穂10~30日前(収穫30日前)/2回】

 

萎縮病

留意事項
1 本病はおもにツマグロヨコバイによって媒介されるウイルス病。また、一部はイナズマヨコバイによっても媒介される。

防除方法
1 ウイルス病で本病に対する登録農薬はない。
2 常発地ではできるだけ早植えを避け、また田植時期を揃えるようにする。
3 本田初期の感染を防止するため、媒介虫であるツマグロヨコバイの防除薬剤を育苗箱施用する。防除については、ツマグロヨコバイの項を参照。 

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