トップページ > 府政運営・統計 > 情報公開・個人情報保護 > 情報公開 > 大阪府情報公開審査会 > 答申 > 平成18年 > 大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第129号)

印刷

更新日:2009年8月5日

ページID:27938

ここから本文です。

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第129号)

(答申第129号)保育所設置認可申請書部分公開事案

(答申日 平成18年11月22日)

1 対象行政文書

平成16年2月16日付けB保育園に係る保育所設置認可申請書(添付資料含む。)

2 実施機関の決定

(1)実施機関

大阪府知事(担当課:健康福祉部児童家庭室子育て支援課)

(2)決定内容 部分公開決定

ア 公開しないことと決定した部分
  • (ア)法人代表者の印影
  • (イ)施設内写真における個人の肖像
  • (ウ)経営者一覧表における顧問の氏名、個人の年齢、職業(法人の役員、施設長、公認会計士を除く。)及び住所(登記事項は除く。)
  • (エ)社会福祉法人C役員名簿における顧問の氏名、個人の生年月日、郵便番号、住所(登記事項は除く。)、電話番号、現在の職業及び役職名(法人の代表者及び役員、施設長、公認会計士を除く。)
  • (オ)役員の履歴書における個人の性別、生年月日、本籍地、現住所(登記事項は除く。)、連絡先、電話番号、学歴・職歴・社会活動歴(団体の長、法人の役員及び評議員、施設長、公認会計士、公職、民生児童委員、業を営む個人を除く。)及び賞罰
  • (カ)職員名簿における個人の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、年齢、資格の有無(保育士、調理員、用務員、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、経験年数、予定月額(本棒・諸手当等)
  • (キ)職員(施設長)の履歴書における個人の旧姓、印影、性別、生年月日、住所、電話番号、学歴、現施設へ就職以前の職歴(公務員を除く。)資格・免許等
  • (ク)職員(施設長を除く。)の履歴書全部
  • (ケ)職員の資格証明書、免許証全部
イ 公開しない理由
(ア)条例第8条第1項第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、法人代表者の印影が記録されており、これを公にすることにより、取引の安全を害する等、当該法人の競争上の地位、その他正当な利益を害すると認められるため。

(イ)条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、施設職員の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、旧姓、印影、性別、生年月日、住所、職業(法人の役員、施設長、公認会計士等を除く。)、職員の履歴書等が記録されており、これらは、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるため。

3 異議申立て

(1)申立ての趣旨

本件認可申請書のうち職員名簿における個人の氏名(以下「本件係争部分」という。)を非公開とする決定を取り消し、開示を求める。

(2)理由(要旨)

実施機関は、非公開理由について条例第9条第1号に該当するとされ、同条項は「(略)一般に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」となっているが、本件文書はこれに該当しない。

今回の請求文書はいずれも認可保育所についての文書であり、職員名はその施設内では掲示されており、原則不特定多数の者に知らせ、知られるようになっていることや、一般的に認可保育所内で職員の氏名を内密にする様な性質のものではない。こういった状態を踏まえると、「一般に知れられたくないと望むことの正当性」に欠ける。

また、認可保育所は公立・私立問わずそのいずれも、運営は補助金で行われており、認可保育所職員は公私を問わず税金で所得を得ており、当然ながら、公立保育所では、その職員名は公開の対象とされているのに対し、同じ様に税金で収入を得ている、私立保育園職員名のみが非公開とされる妥当性は全く無い。

4 大阪府情報公開審査会の答申

(1)答申の結論

実施機関の判断は妥当である。

(2)答申の理由(要旨)

ア 条例第9条第1号について

本号は、

  • (ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • (イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
  • (ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

イ 条例第9条第1項該当性について

本件係争部分に記録された情報は、個人の氏名であり、既に公開されている情報と照らし合わせることにより、特定の個人が、特定の保育園に勤務する予定であったこと及び当該保育園での職種が明らかとなる情報である。また、保育士については、特定個人が有する資格が明らかとなる情報でもある。以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、個人の職業等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものと認められ、(1)のア及びイに該当する。

また、個人の職業や勤務先については、通常他人に知られたくない情報であり、本件認可申請に係る保育所が、市立保育所の施設等を引き継いだとはいえ、私立の保育所として認可申請されたものであることからすると、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(1)のウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、条例第9条第1号に基づき、公開してはならない情報であると認められる。

なお、異議申立人は、職員名簿における個人の氏名は、保育所の施設内で掲示されていること、認可保育所の運営は補助金で行われており、職員の給与の財源は税金から充てられていることから、公立保育所と同様に私立保育園職員の氏名も公開すべきであると主張している。

審査会としても、保育所に関する情報が、入所児童の保護者等の関係者に対し可能な限り開示されることが望ましいことを否定するものではないが、一般に、保育所職員の名簿は、保護者等の関係者以外の者が容易に入手し得るものではなく、また、保育所は、保護者以外の者が自由に出入りできる施設ではないことから、施設内で掲示されていることをもって、当該情報が何人に対しても公開されるべきであるということはできない。さらに、本件認可申請に係る保育所の職員が、公務員ではないことからすると、当該保育所が補助金を受けているからと言って、公務員の氏名と同様に扱うことはできず、上記の異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

大阪府情報公開審査会答申(全文)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成18年5月2日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「(a)枚方市立A保育所廃止届、(b)社会福祉法人B保育園認可申請書」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年5月30日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、次の(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、次の(2)に示す部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を次の(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      • ア 平成16年2月2日付け枚方市立A保育所に係る保育所廃止届出書(添付資料含む。)
      • イ 平成16年2月16日付けB保育園に係る保育所設置認可申請書(添付資料含む。)(以下「本件認可申請書」という。)
    • (2)公開しないことと決定した部分
      • ア 法人代表者の印影
      • イ 施設内写真における個人の肖像
      • ウ 経営者一覧表における顧問の氏名、個人の年齢、職業(法人の役員、施設長、公認会計士を除く。)及び住所(登記事項は除く。)
      • エ 社会福祉法人C役員名簿における顧問の氏名、個人の生年月日、郵便番号、住所(登記事項は除く。)、電話番号、現在の職業及び役職名(法人の代表者及び役員、施設長、公認会計士を除く。)
      • オ 役員の履歴書における個人の性別、生年月日、本籍地、現住所(登記事項は除く。)、連絡先、電話番号、学歴・職歴・社会活動歴(団体の長、法人の役員及び評議員、施設長、公認会計士、公職、民生児童委員、業を営む個人を除く。)及び賞罰
      • カ 職員名簿における個人の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、年齢、資格の有無(保育士、調理員、用務員、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、経験年数、予定月額(本棒・諸手当等)
      • キ 職員(施設長)の履歴書における個人の旧姓、印影、性別、生年月日、住所、電話番号、学歴、現施設へ就職以前の職歴(公務員を除く。)資格・免許等
      • ク 職員(施設長を除く。)の履歴書全部
      • ケ 職員の資格証明書、免許証全部
    • (3)公開しない理由
      • ア 条例第8条第1項第1号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)には、法人代表者の印影が記録されており、これを公にすることにより、取引の安全を害する等、当該法人の競争上の地位、その他正当な利益を害すると認められるため。
      • イ 条例第9条第1号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)には、施設職員の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医を除く。)、旧姓、印影、性別、生年月日、住所、職業(法人の役員、施設長、公認会計士等を除く。)、職員の履歴書等が記録されており、これらは、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるため。
  3. 同年6月12日、異議申立人は、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件認可申請書のうち職員名簿における個人の氏名(以下「本件係争部分」という。)を非公開とする決定を取り消し、開示を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張

実施機関は、非公開理由について、「大阪府情報公開条例第9条第1号」に該当するとされているが、前述条例は「(略)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」となっている。

しかし、今回の請求文書はいずれも認可保育所についての文書であり、職員名はその施設内では掲示されており、原則不特定多数の者に知らせ、知られる様になっていることや、一般的に認可保育所内で職員の氏名を内密にする様な性質のものではない。こういった実態を踏まえると、「一般的に他人に知れられたくないと望むことの正当性」に欠け、認可保育園の職員氏名の非公開は無意味な決定となっている。

また、認可保育所は公立・私立問わずそのいずれも、運営は補助金で行われており、認可保育所職員は公私問わず税金で所得を得ており、当然ながら、公立保育所では、その職員名は公開の対象とされているのに対し、同じ様に税金で収入を得ている、私立保育園職員名のみが非公開とされる妥当性は全く無いものである。

また、これまでも認可保育園に係る様々な行政文書において、氏名非公開のまま開示されているが、一部園においては、園内における保護者への職員紹介の人数と公開資料の職員数と異なっている事もあるなど、氏名が公開されないことで、税金で運営された施設であるのに、府民としてその事実を知る事が不可能となっている。

以上により、認可保育所の職員氏名においては、公開をすべきである。

2 反論書における主張

(1)保育所の設置について本件の申立てに及んだ問題点を述べる。

本件は通常の認可とは異なった認可である。

本件B保育園については、市立A保育所の廃止が行われ、認可にいたった公立保育所廃止・民営化園であり、通常の認可園とは性質が異なる園であることの考慮が全くされていないことは不服である。

民営化にいたっては、行政と市民との間で様々な約束事が行われており、例えば、職員の配置や勤続年数もそのひとつであるため、妥当性に欠ける非公開理由になる。

行政は、市民の税金で購入した保育所土地を売却することなく、無償貸与し、税金で建てた保育所や建物内の備品等はすべて無償譲渡を行い、多くの税金をほぼ無償で、民間(社会福祉法人)に渡した。

こうした、市民負担の大きい保育所廃止民営化が、約束通り適切に行われ市民に提示した資料と府に提出された資料が同じ内容であるか否等の検証は市民として至って当然のことで市民の知る権利でもある。

また、行政は保育所廃止・民営化にあたり、「公私に何ら差が無いにもかかわらず運営費だけが高い」といった発言しているのである。

この趣旨を市民側から見た時、あらゆる条件で公私に差は無いと通常理解するのが当然であることや、別にしても保育所の運営は本来は行政の役割であるのを、行政側の問題で保育を民間(社会福祉法人)に委託しているだけで情報の透明性について、公私間に格差があることには全く妥当性を感じない。今回は民営化だけにことさらである。

多くの市民の税金が注がれ行われた民営化園の状況さえ知る事ができないとすれば、このことは、市民からすれば市民(府民)の立場に立つことなく、行政は法人の立場にかたより、制度を悪用しているとしか言いようがない。

まず、本件では通常の法人認可園とは異なった案件である実態を、加味、考慮するべきである。

(2)条例第9条第1号について

実施機関は、条例第9条の第1号に該当すると説明されているものの

  • ア 職員の給与の財源は国、府、市から運営費が充てられていること。
  • イ 実施機関の弁明書では、「職員の氏名が公になると、既に部分公開している経験年数と突合することで(略)単に経験の長短が個人の評価につながるおそれがあること(略)」としているが、この弁明におよんでは民営化時において行政側が「勤続年数をもって、保育への評価とはならない」と幾度と無く説明を行っている。
    このことは事実、一面からの評価基準に過ぎないことは社会的に多くの者が認識しており、保育の善し悪しは個々人の経験年数ではなく、全体のバランスの問題であることは、誰もが認識していることである。
  • ウ 実施機関は、保育所内職員名掲示について保育所の不審者対策が徹底されていることで、不特定多数の者が、掲示内容を知り得ることがないと弁明しているが、不審者対策と保育所内への出入りへの問題は異なったもので、今日的な保育所の役割として保育所施設はこれまでの利用者のみの施設から、地域の子育て支援施設としてその役割は年々変化してきている。
    よって、その施設内に入ることを希望する者に対して、通常であれば拒むことができる性質をもつ施設ではなく、現在の保育施設の役割やその社会的位置づけからすれば、多くの市民と保育所が関わりを持ち、保育所運営に理解を求め共に子育てをしていく・・社会的子育て支援が重要であることは当然である。
    この事から、保育所内の掲示された内容は、特定のものだけが知るような情報では決してなく、それどころか運営側の情報については、できる限り、ひろく地域へ開示を努めることの方が現在の施設の社会的位置からは必要である。
(3)まとめ

本件の認可届けやこれに限らず保育所職員名が記入されている「保育所調書」等は、児童福祉法に関わる重要な内容である。

こういった内容に関して、これまで府の指導監督内容では限界があることを常日頃感じている。例えば、今回の公立保育所廃止民営化では、保育所保護者らには行政は「保育は継続する」と説明するのに対して、府の認可届けはあくまでも「新規認可扱い」という事で、そこに日々かよう子ども達の姿を考慮する認可視点は持たないままで、最低基準のみの判断がされる。このことは、保護者側からすれば当然これまでの職員配置基準がどうであったのか、職員経験年数のバランスがどうであったのか等児童福祉法や、保育所保育指針に沿った視点での、認可措置を行うことが現在の社会状況では必要だと感じる。こういった、制度の確立や考慮がないままで現制度上のみで手続きを進めるあり方には大いに不満を感じるところである。事実、認可園には公立園と異なって運営上の疑問点が多いことが経験から感じた為、行政の対応に限界を感じ、実態としてこれまでの行政にお任せであったものを、民営化を期に市民自らも、民営化時に法人が示した内容と相違はないのか、また民営化後も不正等の問題はないのかの検証が必要となって来ているである。

現在の府の弁明はどれも、実態に則したものではなく、根拠とするには乏しく、慣例・慣行に縛られているだけである。第9条第1号の「個人の職業に関する情報」という部分では、特定された個人から職業を公開するか否かの場合であれば理解できるが、職業が特定された後での、氏名を公開するのか否かとは「(職業を)通常他人にしられたくないと望む」ことの正当性に欠き、問題は異なっている。さらに認可保育所の保育士という公的な性質の職業である以上、氏名の公開について公私間の格差がある事の妥当性はみあたらない。

さらに、社会福祉法人の運営は、寄付金、保護者負担等も含めているため、全てが公費ではないこと等で、氏名の非公開の正当性を弁明するが、保護者負担は公立でも同じであることや、弁明書でもあるとおり、運営費は委託費の位置づけであり、例えば行政が持つ審議委員等も、通常は民間人であっても審議委員として若干の報酬を得ることで氏名の公開が当然とされている事からも、(2)アであるとおり、人件費として税金から大半を充てられる保育士らに何ら区別する理由はない。

また、繰り返しになるが、保育所運営主体が、民間(社会福祉法人)中心へと変化する中で、当然税金の流れも民間(社会福祉法人)にと変化してきている。行政として、こういった実態に目を背けることなく、過去の慣例・慣行に流されず、時代に則した情報公開運営が必要であることは間違いない。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 私立保育所の設置について

本府において、児童福祉法第35条第4項の規定に基づき、国、都道府県及び市町村以外の者が保育所を設置しようとする場合は、大阪府保育所設置認可等要綱(以下「府要綱」という。)第3条第2項の規定により、実施機関において保育所設置認可申請書(様式第1-2号)等を収受し、その内容を審査した上で保育所の設置認可を行っている。

2 私立保育所の設置認可に係る審査について

保育所設置認可申請書の審査については、児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号。以下「最低基準」という。)、その他関係法令等に定めるものに加え、府要綱第5条に定める設置認可の基準により、定員設定、職員配置、設備、保育内容等の要件を書面審査及び実地調査において確認する。

3 市町村立保育所の廃止について

市町村が設置する保育所を廃止する場合は、児童福祉法第35条第6項の規定に基づき、廃止の理由、入所させている者の処置、廃止の期日及び財産の処分の内容について、府要綱第8条第1項に定める保育所廃止届出書(様式第2-1号)を提出し、実施機関において要件を確認した上で収受する。

4 本件行政文書について

(1)枚方市立A保育所に係る保育所廃止届出書について

枚方市において、保育所全体にかかる運営経費を削減し、待機児童の解消や子育て支援の充実を図るとして市立A保育所を民営化するにあたり、枚方市児童福祉施設条例の一部改正(当該保育所の削除)が可決されたことに伴う保育所廃止届出書である。

当該行政文書に、公開しないことと決定した部分はない。

(2)B保育園に係る保育所設置認可申請書について

市立A保育所の民営化に伴い、枚方市における公募を経て決定された社会福祉法人Cによる保育所設置認可申請書であり、様式のほか、図面、経営者一覧表、職員名簿、履歴書等が添付されている。

当該行政文書のうち、公開しないことと決定した部分は、本件非公開部分のとおりである。

5 本件決定の適法性について

(1)条例第9条第1号について

個人の尊厳の確保、基本的人権の尊重のため、個人のプライバシーは最大限に保護されなければならない。

特に個人のプライバシーは、一旦侵害されると、当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに鑑み、条例の前文では、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」することと明記され、また、条例第5条において、「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」ことを定めている。

そして、条例第9条第1号においては、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもの(以下「個人識別情報」という。)のうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」については、「公開してはならない情報」として、公開を禁止するという基本原則が明確に定められている。

(2)条例第9条第1号に該当することについて

異議申立人が公開を求めているのは、保育所設置認可申請書のうち職員名簿等に記録された職員の氏名であるが、その職員名簿は、保育所設置認可申請の添付資料として、最低基準上の配置しなければならない職員(保育士、嘱託医及び調理員)及び必要数等について審査するため提出を求めているものである。

なお、職員名簿にある職員は申請時点において従事予定の職員であり、最低基準を下回らない範囲であれば、職員数の変更、若しくは同等の経験、資格を有する者との交代について差し支えないものとしているため、必ずしも個人を特定して従事させる性質のものではない。

また、本件係争部分における職員の氏名が公になると、既に部分公開している経験年数と突合することで特定の個人が識別され、単に経験の長短が個人の評価につながる恐れがあること、及び当該職員が特定の社会福祉法人における職員としての勤務実態、職務内容が明らかになる。

これらのことから、通常公にすることを前提としていない個人の職業に関する情報であり、個人識別情報のうち一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるため、条例第9条第1号に該当する。

(3)異議申立て理由に関することについて

保育所内において職員の氏名を掲示していることについては、保育所を利用する保護者等の特定された者に対し、信頼関係を築くため多く実施されているが、0歳児から就学前の児童が入所している保育所に鑑み、安全性確保の観点から不審者対策等が徹底されており、不特定多数の者が保育所内に掲示された内容を容易に知り得る状態ではない。

また、民間保育所の職員を公立の場合と同様に扱うべきことについて、社会福祉法人が運営する保育所の人件費等を含めた財源は、市町村から支弁される運営費(委託費)、寄附金及び保護者負担金から成り立っており、全てが公費で賄われている訳ではないことと、保育の実施主体である市町村と民間保育所の職員との間に雇用契約は生じず、これらの職員が公務員としての身分を有することもないため、公務員の職務に関する情報と同様に扱う根拠はないものである。

6 結論

以上のとおり、本件決定は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件認可申請書について

本件認可申請書は、枚方市立A保育所が廃止され、民営化されるにあたって、同保育所の施設等を引き継ぐことになった社会福祉法人が、児童福祉法第35条第4項及び府要綱第3条第2項に基づき、実施機関に提出したB保育園に係る保育所設置認可申請書である。

このうち、本件係争部分は、職員名簿に記録されている主任保育士、保育士、調理員、用務員の氏名である。職員名簿には、B保育園において、平成16年4月1日から、保育所の業務に従事することとされた職員ごとに表形式でその職名、氏名、年齢、資格の有・無、経験年数、予定月額、備考の情報が記録されているが、本件決定においては、職名のほかは、施設長、嘱託医、嘱託歯科医の氏名及び保育士、調理員、用務員、嘱託医、嘱託歯科医の資格の有無のみが公開とされ、その余の部分は非公開とされている。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限に配慮しなければならない旨規定している。

このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(2)条例第9条第1項該当性について

本件係争部分に記録された情報は、個人の氏名であり、既に公開されている情報と照らし合わせることにより、特定の個人が、特定の保育園に勤務する予定であったこと及び当該保育園での職種が明らかとなる情報である。また、保育士については、特定個人が有する資格が明らかとなる情報でもある。以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、個人の職業等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものと認められ、(1)のア及びイに該当する。

また、個人の職業や勤務先については、通常他人に知られたくない情報であり、本件認可申請に係る保育所が、市立保育所の施設等を引き継いだとはいえ、私立の保育所として認可申請されたものであることからすると、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(1)のウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、条例第9条第1号に基づき、公開してはならない情報であると認められる。

なお、異議申立人は、職員名簿における個人の氏名は、保育所の施設内で掲示されていること、認可保育所の運営は補助金で行われており、職員の給与の財源は税金から充てられていることから、公立保育所と同様に私立保育園職員の氏名も公開すべきであると主張している。

審査会としても、保育所に関する情報が、入所児童の保護者等の関係者に対し可能な限り開示されることが望ましいことを否定するものではないが、一般に、保育所職員の名簿は、保護者等の関係者以外の者が容易に入手し得るものではなく、また、保育所は、保護者以外の者が自由に出入りできる施設ではないことから、施設内で掲示されていることをもって、当該情報が何人に対しても公開されるべきであるということはできない。さらに、本件認可申請に係る保育所の職員が、公務員ではないことからすると、当該保育所が補助金を受けているからと言って、公務員の氏名と同様に扱うことはできず、上記の異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

塚本美彌子、岡村周一、曽和俊文、松田聰子

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?