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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第127号)

(答申第127号)個人情報保護審議会関係文書部分公開事案

(答申日 平成18年11月16日)

1 対象行政文書

中央図書館の弁明書(中央図第219号平成18年3月20日)に係る起案文書

2 実施機関の決定

(1)実施機関

大阪府教育委員会(担当課 中央図書館総務課)

(2)決定内容 部分公開決定

(公開しない理由)

条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、異議申立人の氏名が記載されており、この情報は、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 異議申立て

(1)申立ての趣旨

本件決定を取り消し、非公開部分の公開を求める。

(2)理由(要旨)

本文書については当該異議申立人が当事者であり、その場合は公開を拒むことができない。

本件は、実施機関が大阪府個人情報保護審議会に提出した弁明書の起案文書に記載されている当該異議申立人の氏名の公開を求めたものである。実施機関は、起案文書に記載している当該異議申立人の氏名は、条例第9条第1号に該当することを理由に非公開としている。氏名は一般には個人情報であり公開すべきものでないと解されているが、運用上、公開されているものもある。また、一方的に実施機関が当該異議申立人に相談することなく、推察の判断により決定をくだすのは、はなはだ恣意的な解釈である。

また、行政文書上に記載された個人情報を当事者が公開を求めてきた場合には拒否できないとの学説や判例がある。

4 大阪府情報公開審査会の答申

(1)審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

(2)理由(要旨)

条例第9条第1号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録されている行政文書を公開してはならないと定めている。

本件行政文書には特定の個人が個人情報非利用停止決定に係る異議申立てを行っている事実を示す情報が含まれており、その氏名は、個人を識別する情報であることから、上記ア及びイの要件に該当する。そして、当該異議申立てを行っているという事実は、通常公にすることを前提とした情報ではなく、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるため、上記ウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録されている情報については、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報であると認められる。

なお、異議申立人は、本件行政文書には個人情報非利用停止決定異議申立事案の異議申立人の情報が記録されており、当該異議申立人自身が公開請求をした場合は、自己の情報として公開となる旨主張している。

しかしながら、条例は、請求者を何ら区別することなく行政文書の公開を請求する権利を付与しており、第8条及び第9条に規定する公開・非公開の基準においても、請求者が本人である場合について特則を設けず、個人情報の本人開示に不可欠な本人確認の手続も定めていない。また、大阪府では、昭和59年に制定された公文書公開等条例においては、一般の公文書の公開に加えて、公文書の本人開示に係る規定が置かれていたが、平成8年に個人情報保護条例が制定され、同条例に自己に関する個人情報の開示の規定が設けられたことから、公文書公開等条例の公文書の本人開示に係る規定が削除された経緯もある。これらのことからすると、条例に基づく行政文書公開制度においては、請求者が誰であるかによって、公開・非公開等の決定内容に差異を設けることはできないのであり、公開請求に係る行政文書が請求者の個人情報を記録したものであるからといって、他の請求者と異なる公開決定を行うことはできない。

大阪府情報公開審査会答申(全文)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 異議申立人は、平成18年5月29日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「中央図書館の弁明書(中央図第219号平成18年3月20日)に係る起案文書」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 実施機関は、同年6月9日、本件請求に対応する行政文書として、「平成18年2月22日付け中央図第201号個人情報非利用停止決定処分に対する異議申立てに係る大阪府個人情報保護審議会に提出する弁明書について(伺い)」を特定の上、(1)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下、「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を(2)のとおり付して、異議申立人に通知した。
    • (1)公開しないことと決定した部分
      異議申立人の氏名(個人情報非利用停止決定異議申立事案に係るもの)
    • (2)公開しない理由
      大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、異議申立人の氏名が記載されており、この情報は、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
  3. 異議申立人は、同年6月22日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、非公開部分の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。

本文書については当該異議申立人が当事者であり、その場合は公開を拒むことができない。

本件は、実施機関が大阪府個人情報保護審議会に提出した弁明書(平成18年3月20日、中央図第219号)の起案文書に記載されている当該異議申立人の氏名の公開を求めたものである。

実施機関は、起案文書に記載している当該異議申立人の氏名は、条例第9条第1号に該当することを理由に非公開としている。そもそも条文には氏名という字句は記されておらず、「特定の個人が識別され得るもの」という文言の意味の解釈にゆだねられている。実施機関が述べるように氏名は一般には個人情報であり公開すべきものでないと解されているが、運用上、公開されているものもある。

また、大阪府情報公開条例の解釈運用基準(平成12年6月)には、条例第9条第1号の「・・・一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるもの」とは、一般に社会通念上、他人に知られることを望まないものをいう。なお、「正当と認められるかどうかが客観的である場合を除き、当該個人から意見を聴取するなどにより、慎重に取扱い、客観的判断に努めることとする。」と記載されており、一方的に実施機関が当該異議申立人に相談することなく、推察の判断により決定をくだすのは、はなはだ恣意的な解釈である。

前記の弁明書、それに係わる起案文書の存在を知り得るのは府職員を除いては当該異議申立人ただ一人である。したがって、「他人が請求を行った場合と同様に、個人のプライバシー情報は公開されない」との実施機関の主張は、他人でない当該異議申立人の立場からすると受け入れられない。

また、行政文書上に記載された個人情報を当事者が公開を求めてきた場合には拒否できないとの学説や判例がある(新・裁判実務大系・第9巻・名誉・プライバシー保護関係訴訟法・433~434頁)。

よって、本件決定は不当であり、当該異議申立人は実務面の配慮の点からも、当該異議申立人の氏名の公開を強く求めるものである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね以下のとおりである。

1 本件行政文書について

実施機関においては、平成17年10月29日に「図書館サービスプロジェクト」の一環として府民を対象とした「図書館活用講座(第1回)」を開催し、その際に、講座参加者の写真(以下「本件写真」という。)を撮影したところである。

平成18年1月11日に、本件写真に対して大阪府個人情報保護条例に基づく個人情報開示請求があり、実施機関においては、全部を開示する旨の決定を行い、同年1月25日に請求者に対し開示したところである。請求者からは、同日、開示決定に対する利用停止(消去)請求があり、実施機関は、同年2月22日に、当該請求に対する個人情報非利用停止決定を行ったところである。同年2月24日に、本件決定に対して請求者から行政不服審査法第6条に基づく異議申立てがあり、実施機関は、同年3月2日に大阪府個人情報保護審議会(以下「個人情報保護審議会」という。)に諮問を行ったところである。

本件行政文書は、個人情報保護審議会に対して非利用停止の理由を説明する際に、実施機関において起案をした際の文書である。本件行政文書は、起案に係る伺い文、個人情報保護審議会に提出する弁明書の案文、及び個人情報保護審議会会長名の通知文から構成されている。

2 本件決定の適法性について

(1)条例第9条第1号について

条例第9条第1号においては、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当する情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨が規定されている。

(2)本件行政文書が条例第9条第1号に該当することについて

本件行政文書に記載されている氏名は、本号が情報の公開禁止を定めている個人のプライバシーに関する情報であり、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報に該当するものである。なお、異議申立人は、「当該異議申立人が当事者であり、その場合は公開を拒むことができない」と主張しているが、条例第6条に基づく公開請求は、請求者が誰であっても同じ対応を行うものであり、例え請求者自らの情報が記録された行政文書に対する公開請求であっても、他人が請求を行った場合と同様に、個人のプライバシー情報は公開されないことから、異議申立人の主張は当を得ないものである。

以上のとおり、本件決定は、条例第9条第1号に該当し、氏名は公開してはならない情報に当たるので、異議申立人の氏名が記載された部分を非公開としたことは、妥当であると考える。

3 結論

以上のとおり、本件決定は、条例に基づき適正に行われたものであり、何らの違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)本件行政文書について

本件行政文書は、実施機関が個人情報保護審議会に対して非利用停止理由を説明する弁明書(以下「弁明書」という。)を提出するにあたり、起案した文書である。本件行政文書は、起案に係る伺い文、弁明書の案文及び個人情報保護審議会会長名の通知文(以下「通知文」という。)から構成されている。

本件について争われている部分は、本件行政文書のうち、弁明書の案文及び通知文に記載されている、個人情報非利用停止決定異議申立事案の異議申立人の氏名(以下「本件係争部分」という。)である。

(2)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録されている行政文書を公開してはならないと定めている。

(3)本件係争部分の条例第9条第1号該当性について

本件係争部分は、特定の個人が個人情報非利用停止決定に係る異議申立てを行っている事実を示す情報であり、その氏名は、個人を識別する情報であることから、上記ア及びイの要件に該当する。そして、当該異議申立てを行っているという事実は、通常公にすることを前提とした情報ではなく、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるため、上記ウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録されている情報については、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報であると認められる。

(4)異議申立人の主張について

異議申立人は、本件係争部分には個人情報非利用停止決定異議申立事案の異議申立人の情報が記録されており、当該異議申立人自身が公開請求をした場合は、自己の情報として公開となる旨主張している。

しかしながら、条例は、「何人も、実施機関に対して、行政文書の公開を請求することができる。」(第6条)と規定して請求者を何ら区別することなく、行政文書の公開を請求する権利を付与しており、第8条及び第9条に規定する公開・非公開の基準においても、請求者が本人である場合について特則を設けず、個人情報の本人開示に不可欠な本人確認の手続も定めていない。また、大阪府では、昭和59年に制定された公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)においては、一般の公文書の公開に加えて、公文書の本人開示に係る規定が置かれていた(同条例第17条)が、平成8年に個人情報保護条例(平成8年大阪府条例第2号)が制定され、同条例に自己に関する個人情報の開示の規定が設けられたことから、公文書公開等条例の公文書の本人開示に係る規定が削除された経緯もある。これらのことからすると、条例に基づく行政文書公開制度においては、請求者が誰であるかによって、公開・非公開等の決定内容に差異を設けることはできないのであり、公開請求に係る行政文書が請求者の個人情報を記録したものであるからといって、他の請求者と異なる公開決定を行うことはできない。

また、異議申立人は、条例の解釈運用基準を引用しつつ、本件非公開部分が条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」かを判断するにあたっては、本件非公開部分に氏名が記載されている当該異議申立人の意見をあらかじめ聞くべきである旨主張している。

しかしながら、本件非公開部分には、特定個人が府が保有する個人情報の利用停止を求めて異議申立てをしたという事実が明らかとなる情報が記録されており、このような情報が「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」ことは、客観的に明白と言うべきであることからすると、解釈運用基準にも明記されているように、このような場合の意見聴取は行う必要がなく、実施機関が本件決定に当たって、当該異議申立人にあらかじめ意見を聞かなかったことについて、何ら違法不当な点は認められない。

以上のことから、上記の異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

3 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

塚本美彌子、福井逸治、小松茂久、鈴木秀美

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