トップページ > 府政運営・統計 > 情報公開・個人情報保護 > 情報公開 > 大阪府情報公開審査会 > 答申 > 平成18年 > 大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第123号)その4

印刷

更新日:2009年8月5日

ページID:27932

ここから本文です。

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第123号)その4

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 事業協同組合について

事業協同組合は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うため中小企業等協同組合法(以下「法」という。)に基づき設立される法人である(法第1条、第3条及び第4条)。

事業協同組合の設立にあたっては、組合員になろうとする4人以上の者が発起人となり、組合員たる資格を有する者で創立総会の日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して創立総会を開催し、その議決権の3分の2以上で設立を決議した上で、業を所管する行政庁(異議申立人については実施機関)の認可を受けなければならないとされている(法第27条の2第1項)。

また、設立後は、定款変更について、行政庁の認可を受けなければ効力を生じないとされている(法第51条第2項)ほか、役員の氏名又は住所の変更を届け出ること(法第35条の2)、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を提出すること(法第105条の2)が義務づけられている。

事業協同組合は、基本的には、事業者である組合員の共通の利益を追求する中間法人としての性格を有するが、組合自体は営利を目的とするものではなく、法人税率が公益法人と同等程度に軽減されているほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、特定の地方公共団体の区域における一般廃棄物からの資源の回収と再資源化という公共性の高い事業を独占的に担っていることが認められる。

3 本件行政文書について

本件行政文書は、法に基づき、異議申立人から実施機関に提出された「中小企業等協同組合認可申請書」1件、「中小企業等協同組合定款変更認可申請書」4件、「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」3件及び「中小企業等協同組合役員変更届出書」3件とこれらの添付書類である。

本件係争部分は、本件行政文書の公開決定部分のうち、各行政文書の「代表理事以外の役員の氏名」及び「役員となった設立同意者の業種、許可番号」が記録された部分、「中小企業等協同組合認可申請書」1件及び「中小企業等協同組合定款変更認可申請書」1件に添付されている収支予算書の「職員給与手当」、「賞与」及び「福利厚生費」の各欄の金額と「備考」欄の全部並びに「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」3件に添付されている決算報告書の公開決定部分全部である。

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

異議申立人は、本件係争部分の公開は、「組合の事業活動に支障をきたし、組合役員等の個人情報を保護できない恐れがある」などとして、本件係争部分に記録された情報が条例第8条第1項第1号及び条例第9条第1号に該当すると主張するので、検討したところ、以下のとおりである。

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • a 法人・・・その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • b 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は、公開しないことができる旨定めている。

また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(2)本件係争部分の条例第8条第1項第1号該当性について

本件係争部分は、事業協同組合である異議申立人の情報であることから本件係争部分に記録された情報が(1)aの要件に該当することは明らかである。

次に、本件係争部分に記録されている情報が(1)bの要件に該当するかどうか検討する。

ア 代表理事以外の役員の氏名

事業協同組合には、役員として、3人以上の理事及び1人以上の監事を置くこととされている(法第35条第1項及び第2項)。事業協同組合における理事及び監事は、株式会社等における取締役及び監査役に相当する重要な役職であり、理事は組合の業務を執行するとともに、理事会を構成して組合の業務執行に係る意思決定を行い、監事は組合の財産の状況及び理事の業務執行の状況を監査することを職務とする。

このような理事や監事に誰が就任しているかという情報は、当該事業協同組合が経済活動を行う中で、取引を行おうとする第三者がその信用を判断するための重要な要素となるべき情報であって、公にすることにより、社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資することがありこそすれ、公正な競争の原理に反する結果となるとは認められない。

また、このような情報は、技術上又は営業上のノウハウや金融上、経営上の秘密等にあたらないことは明らかであり、公にすることにより、当該事業協同組合に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報であるとも認められない。

ところで、この点に関し、異議申立人は、「異議申立人の役員であるものは、通常、自ら組合員である法人の役員または個人事業主を兼任しており、広く異議申立人の役員を開示することは、当該組合員の競業他社との関係等において、上記均衡に亀裂をもたらす蓋然性が高い。」とし、「異議申立人には、その役員が誰であるかの秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、当該組合員を構成員とする異議申立人自身の公正な競争が侵害される蓋然性が高い。」と主張する。

しかしながら、事業協同組合が、法人として経済活動を行う主体である以上、役員が誰であるかという情報は、上述のとおり、公にされることによってこそ社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資するものであり、事業協同組合と同様に構成員の利益の追求を目的とする中間法人について、役員の氏名が登記事項とされていることからしても、異議申立人の主張を採用することはできない。

また、異議申立人は、「事業協同組合の代表理事については、登記簿により公開が予定されているものであるが、その他の役員については、登記することが求められていない」とし、「法律によって開示が義務づけられていない事業協同組合の役員につき、公益法人と同様もともと公示的な性格を持つという理由でもって、開示を認めることになれば、結局、法律の下位規範である条例が、法律を侵害若しくは改廃し、または法創設機能を有することになる。」と主張している。

しかしながら、法は、登記簿という形式で公示すべき情報を規定しているに過ぎないものであり、登記事項とされていない情報について、条例に基づいて公開することを禁止したものではないと解されるから、異議申立人のこの主張もまた、採用することができない。

以上のことからすると、本項の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、(1)bの要件に該当しない。

イ 設立同意者の業種、許可番号

本項の情報のうち設立同意者の業種は、公にすることにより、異議申立人の役員に就任した設立同意者が営んでいた事業の種別が明らかとなる情報であるが、このような事業者の業種に係る情報については、一般に、事業者が経済活動を行っていく中で広く明らかにされていくものである。とりわけ、異議申立人に関しては、その定款において、組合員の資格要件を特定の業を行う事業者とする旨が明記されており、異議申立人の組合員である限り、当然に当該業種の事業者であることが明らかである。

また、許可番号については、本件決定において公開することとされたものは、アにおいて氏名を公開すべきと判断した役員に就任したものが経営する事業に係るものであるところ、審査会で調査したところによれば、本件組合の組合員の資格要件として定められている業種の許可番号は、事業所を所管する警察署において、事業者の名称、代表者、所在地とともに、一般に情報提供されているものである。

以上のことからすると、本項の情報については、公にすることにより、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められず、(1)bの要件に該当しない。

ウ 決算報告書の公開決定部分(財産目録に記録されている異議申立人の取引先の名称及び監査意見書に記録されている監事の印影を除く部分)について

決算報告書は、その文書の性質上、公にすることにより、異議申立人の全般的な財務状況を把握することが可能な情報である。本件決算報告書に記録されている数値からは、様々な財務指標を算出することが可能であり、異議申立人の経営規模、資産構成、収支バランス等が把握できることが認められる。

しかしながら、本件決定においては、財産目録に記録されている異議申立人の取引先の名称は非公開とされており、本件決算報告書のうち本件係争部分に含まれる部分には、他に異議申立人の協同事業や取引行為に関する具体的な情報は記録されていない。審査会において、本件決算報告書を見分したところによっても、異議申立人の営業上、技術上のノウハウや取引上、経営上の秘密が具体的に明らかとなるような情報は含まれていないことが認められた。

さらに、事業協同組合の決算報告書については、当該事業協同組合の組合員のみならず、債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、当該事業協同組合自らが、これを閲覧又は謄写させなければならないとされている(法第40条第3項)。

また、事業協同組合は、2で述べたとおり、中間法人としての性格を有するが、組合自体は営利を目的とするものではなく、税制上の優遇措置がとられているほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、公共性の高い事業の独占的な担い手となっていることが認められ、その全般的な財務状況に関する情報は、府民の正当な関心の対象となるべきものである。

ところで、異議申立人は、法第40条は、組合と法的利害関係を有しない一般市民に公開を義務付けていないとし、本項の情報を公開すべきではないと主張している。

しかしながら、法第40条の規定は、債権者等の利益の保護のため、法人が自ら行わなければならない決算報告書の開示について定めたものであり、実施機関において提出を受けた決算報告書を条例に基づいて公開することを禁じるものではないと解されるから、この点についての異議申立人の主張は採用することができない。

以上のことを総合して判断すると、本項の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)bの要件には該当しない。

エ 収支予算書のうち、職員給与手当、賞与、福利厚生費欄の金額及び備考欄

本件の収支予算書は、異議申立人の設立及び事業内容の変更を伴う定款変更の審査資料として、中小企業等協同組合設立認可申請書(平成12年2月4日提出)及び中小企業等協同組合定款変更認可申請書(平成13年7月23日提出)に添付されているものであり、本件決定においては、代表者の印影及び職員給与手当の積算内訳を除いて公開することとされている。

異議申立人は、このうち職員給与手当及び賞与の総額と福利厚生費の総額及び積算内訳について、公開しないよう求めているが、審査会において本件行政文書を見分したところによれば、本項の情報は、異議申立人の人件費に係る予算の総額が明らかになる情報であり、人件費に関する概括的な方針が推測し得るところはあるものの、異議申立人の人事のノウハウや人事政策等が具体的に明らかになる情報であるとは認められなかった。

以上のことから、本項の情報は、公にすることにより異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)bの要件には該当しない。

以上のとおりであるから、本件係争部分に記録されている情報は、いずれも、条例第8条第1項第1号に該当しない。

(3)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • a 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • b 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • c 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(4)本件係争部分の条例第9条第1号該当性について

本件係争部分のうち、「設立同意者の業種、許可又は免許番号」及び「決算報告書」は、専ら法人たる事業協同組合である異議申立人に関する情報であり、(3)aの要件に該当しないことは明らかである。

そこで、これら以外の本件係争部分に記録された情報が、(3)aないしcの要件に該当するか否かを検討した結果は、以下のとおりである。

ア 代表理事以外の役員の氏名

本項の情報は、これを公にすることにより、特定の個人が特定の事業協同組合の役員に就任していたという事実が明らかとなる情報であり、(3)a及びbの要件に該当すると認められる。

ところで、事業協同組合の役員は、営利法人である商法上の株式会社や民法上の公益法人である財団法人や社団法人、中間法人法に基づく中間法人など、他の法令に基づく法人の役員の氏名が登記事項となっているのとは異なり、代表理事を除いては、法により、その氏名の登記が義務づけられておらず、一般に誰もが閲覧できる情報とはなっていない。

しかしながら、事業協同組合の役員である理事及び監事は、その権限や責任において、株式会社の取締役及び監査役、民法に基づく財団法人・社団法人及び中間法人の理事及び監事と同等の役職であるうえ、その組合員は、本来、当該事業を営む個人あるいは、法人の代表者であることからしても、当該事業協同組合の役員であることを秘匿すべき正当な理由があるとは認められない。

以上のことからすると、本項の情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められないものであり、(3)cの要件に該当しない。

イ 収支予算書のうち、職員給与手当、賞与、福利厚生費欄の金額及び備考欄について

本項の情報は、基本的には、法人である異議申立人の財務に関する情報である。また、職員給与手当の積算内訳である職員の人数等は非公開とされており、本項の情報のみによって、職員一人当たりの給与手当又は賞与等の額が具体的に明らかとなるものとは認められない。

以上のことからすると、本項の情報は、個人に関する情報とは言えないものであり、(3)aの要件には該当せず、他の要件について検討するまでもない。

以上のとおり、本件係争部分に記録されている情報は、いずれも、条例第9条第1号に該当しない。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

塚本美彌子、岡村周一、曽和俊文、松田聰子

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?