ここから本文です。
大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第126号)
(答申第126号)図書館主催事業写真撮影関係文書不存在事案
(答申日 平成18年11月16日)
1 対象行政文書
中央図第16号(平成18年4月14日)に係る事業報告書の作成時における写真の廃棄票(平成14年度~17年度)
2 実施機関の決定
(1)実施機関
大阪府教育委員会(担当課 中央図書館総務課)
(2)決定内容 不存在による非公開決定
(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)
主催事業の写真撮影は担当職員が事業報告書作成の参考とするため行ったもので、当該写真は組織として利用・保存しておらず、当該写真を廃棄した際に廃棄票を作成する必要はないことから、公開請求に係る行政文書は作成しておらず、管理していない。
3 異議申立て
(1)申立ての趣旨
本件決定を取り消し、対象文書の公開を求める。
(2)理由(要旨)
実施機関は、写真に係る廃棄処理票については組織として利用、保存をしていないことを理由に挙げて、作成していないと主張している。しかし、担当者が事業記録を作成し、のちに他の職員とともにそれを供覧している状況の中で写真だけを組織として利用、保存していないとの主張は不可解である。
さらに、実施機関は、当該写真はメモがわりとして利用したので行政文書ではないと主張しているが、行政文書の解釈としては、職員が作成する文書はメモ書きであっても行政文書と解釈されている(個人的なメモは除く)。保管される状態であればそれは行政文書と考えられる。当該写真は、肖像権等の問題に係る重要な行政文書であり、実施機関が主張する管理していない理由は認められない。
よって、以上の理由から不存在との主張は理解できない。
4 大阪府情報公開審査会の答申
(1)審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
(2)理由(要旨)
ア 実施機関における文書管理について
実施機関においては、事務の適正かつ能率的な遂行を図り、及び行政文書の管理に関し必要な事項を定めるため、大阪府教育委員会行政文書管理規則を制定し、さらに、その細目として、大阪府教育委員会行政文書管理規程を発出している。
文書管理規則では、行政文書の適正な管理に関する事務を掌理するため、本庁の室課及び出先機関に文書管理者を置くこととされており、出先機関である図書館においては、その長である館長が文書管理者に充てられている。そして、行政文書の保存に関しては、文書管理者が、文書管理規則別表に定める基準に従って保存期間を定めるものとされているが、文書管理規則別表に掲げる行政文書以外の行政文書であって、一時的かつ補助的な用途に用いるものについては、保存期間を定めないことができるとされている。
また、行政文書の廃棄に関しては、保存期間が定められた行政文書については、文書管理者があらかじめ廃棄の決定を行って文書廃棄票を作成し、保存期間満了後速やかに処分することとされているが、保存期間の定めのない行政文書については、文書管理者が事務の遂行上必要があると認める期間(保管期間)の経過後、速やかに処分しなければならないとされているだけであり、文書廃棄票の作成に関する規定はない。
イ 条例第2条第1項について
行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真又はスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。
「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものを意味する。
ウ 本件請求において廃棄票の公開が求められている「写真」について
本件請求において廃棄票の公開が求められている「写真」とは、「平成14年度から平成17年度の間に図書館が主催した事業において、実施機関の職員が参加者を撮影した写真」を指すものと考えられる。
これらの写真は、事業報告書という事業の基本的な記録文書を作成するための参考資料として開館以来継続して作成されてきたものであり、また、多数の職員が関与する講座の開催当日に参加者の同意を得てまで作成されてきたものであることからすると、担当職員が個人的な必要で作成したものではなく、組織において業務上必要なものとして作成したものというべきである。また、事業報告書作成の参考資料という作成目的からすると、少なくとも、事業報告書が完成するまでは、作成した職員個人のみならず、その直属の上司など事業報告書の作成に関係する職員が組織的に利用することが予定されていたとも言える。
以上のことから、本件写真は、条例第2条第1項に規定する行政文書に該当すると認められる。
エ 本件請求に対応する行政文書の存否について
実施機関の説明によれば、本件写真については、保存期間の定めもないままに、事業報告書の作成後、速やかに廃棄しているということであり、これらの説明について、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。このような利用や管理の状況からすると、本件写真は、事業報告書の作成の参考資料という一時的かつ補助的な用途に用いるため、文書管理規則にいう「保存期間の定めのない行政文書」として作成され、管理されてきたと考えられるから、その廃棄に当たっては、(1)で述べた文書管理規則及び文書管理規程の内容からすると、廃棄処理票の作成は不要であり、実際にも、作成された事実は確認されなかった。
以上のことから、現在も廃棄されずに保存されている平成17年度第1回講座の写真についてはもとより、既に廃棄されたとされる平成14年度から平成17年度の事業に係る本件写真についても、廃棄処理票が存在しないとして実施機関が行った本件決定は、その結論においては妥当であると認められる。
しかしながら、本件決定に係る通知書に、本件写真が条例第2条第1項に規定する「行政文書」に該当しないかのごとく記載されている点は適切ではない。
大阪府情報公開審査会答申(全文)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 異議申立人は、平成18年5月9日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「中央図第16号(平成18年4月14日)に係る事業報告書の作成時における写真の廃棄票(平成14年度~17年度)」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 実施機関は、同年5月18日、本件請求に対して、不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、理由を次のとおり付して異議申立人に通知した。
(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)
主催事業の写真撮影は担当職員が事業報告書作成の参考とするため行ったもので、当該写真は組織として利用・保存しておらず、当該写真を廃棄した際に廃棄票を作成する必要はないことから、公開請求に係る行政文書は作成しておらず、管理していない。 - 異議申立人は、同年5月30日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件決定を取り消し、対象文書の公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。
本件は、実施機関が管轄する大阪府立中央図書館(以下「図書館」という。)に係る文書廃棄票の公開を求めたものである。
実施機関は、写真に係る廃棄処理票については組織として利用、保存をしていないことを理由に挙げて、作成していないと主張している。
しかし、当該職員は組織体である図書館にて勤務しており、しかもその目的である事業記録を作成し、のちに他の職員とともにそれを供覧している状況の中で写真だけを組織として利用、保存していないとの主張は不可解である。
また、実施機関は補助的な文書であるから保存していないと主張している。本件写真が補助的な資料であると文書管理者の図書館長が決定したのであれば、大阪府教育委員会行政文書管理規則第17条に定めるとおりであり、実施機関の主張のとおりである。
しかしながら、工事関係の行政文書の分類表には設計図と写真の記載があり、一概に参考的、補助的とはいえない。
さらに、実施機関は、「当該写真はメモがわりとして利用した」、したがって、行政文書でない、との主張である。行政文書の解釈としては、職員が作成する文書はメモ書きであっても行政文書と解釈されている(個人的なメモは除く)。保管される状態であればそれは行政文書と考えられる。当該写真は、肖像権等の問題に係る重要な行政文書であり、実施機関が主張する管理していない理由は認められない。当該写真について私は以前情報公開の請求を行った。それなのに今頃になってあれは間違いだった、行政文書ではないから情報提供すべきだったとするのは納得できない。
よって、以上の理由から不存在との主張は理解できない。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね以下のとおりである。
1 文書廃棄票について
実施機関における行政文書の廃棄の決定に当たっては、大阪府教育委員会行政文書管理規程第39条第1項の規定に基づき、文書廃棄票(様式第17号)を作成するものとしている。異議申立人が公開請求した「写真の廃棄票」とは、この文書廃棄票であると類推される。
2 事業報告書(平成14年度~17年度)作成の参考とするため撮影した写真について
図書館では、平成8年度(開館年度)以来、各事業を実施する際に、担当職員が事業報告書を作成するための参考として、事前に被撮影者の承認を得ることを条件に、写真撮影を行うこととしている。
これらの写真は、担当職員が事業報告書作成に際し、事業実施中のメモ替わりとして利用するにとどまるものであることから、平成14年度~17年度の事業報告書作成後は、必要な目的を達成したものとして、平成17年度図書館活用講座(第1回)(以下「平成17年度第1回講座」という。)で撮影した写真(5枚)を除き、速やかに処分している。
なお、平成17年度第1回講座で撮影した写真については、現在、大阪府個人情報保護条例に基づく異議申立てが行われたため廃棄していない。
3 本件請求に対応する行政文書が不存在であることについて
撮影された写真は、2に述べたとおり、担当職員が事業報告書作成に際し、事業実施中のメモ替わりとして利用するにとどまるものであることから、条例第2条第1項に規定する実施機関の職員が組織的に管理している行政文書に該当せず、文書の廃棄の決定に当たって文書廃棄票の作成が必要な行政文書にあたらない。
したがって、平成17年度第1回講座の写真を除く平成14年度~17年度に撮影された写真については、廃棄する際に文書廃棄票を作成する必要がないことから、公開請求に係る行政文書は作成していない。また、平成17年度第1回講座の写真については、廃棄していないため、廃棄の際に作成する廃棄票は存在しない。
なお、平成17年度第1回講座で撮影した写真については、平成17年10月31日に実施機関に対し公開請求があり、同年11月8日に部分公開決定を行い、同年11月29日に同文書を開示した。実施機関は、本件請求の対象文書は、2に述べたとおり事業実施中のメモとして位置づけており、行政文書ではないため、任意の情報提供を行う旨を請求者に説明したところであるが、請求者において、本件文書を行政文書と位置づけて公開請求を行い、条例に基づく決定を希望したものである。実施機関においては、行政サービスの観点から、請求者の希望に応じて、当該文書を特定し、決定を行ったところであるが、本来、行政文書に該当しない文書であったため、不存在による非公開決定を行うべきものであったと認識している。
4 結論
以上のとおり、本件決定は、条例に基づき適正に行われたものであり、何らの違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 実施機関における文書管理について
実施機関においては、事務の適正かつ能率的な遂行を図り、及び行政文書の管理に関し必要な事項を定めるため、大阪府教育委員会行政文書管理規則(平成15年1月31日大阪府教育委員会規則第1号。以下「府教委文書管理規則」という。)を制定し、さらに、その細目として、大阪府教育委員会行政文書管理規程(平成15年1月31日大阪府教育委員会教育長訓令第1号。以下「府教委文書管理規程」という。)を発出している。
府教委文書管理規則では、行政文書の適正な管理に関する事務を掌理するため、本庁の室課及び出先機関に文書管理者を置くこととされており、出先機関である図書館においては、その長である館長が文書管理者に充てられている(府教委文書管理規則第5条)。
そして、行政文書の保存に関しては、文書管理者が、府教委文書管理規則別表に定める基準に従って保存期間を定めるものとされているが、府教委文書管理規則別表に掲げる行政文書以外の行政文書であって、一時的かつ補助的な用途に用いるものについては、保存期間を定めないことができるとされている(府教委文書管理規則第17条第1項)。
また、行政文書の廃棄に関しては、保存期間が定められた行政文書については、文書管理者があらかじめ廃棄の決定を行って文書廃棄票を作成し、保存期間満了後速やかに処分することとされているが、保存期間の定めのない行政文書については、文書管理者が事務の遂行上必要があると認める期間(保管期間)の経過後、速やかに処分しなければならないとされているだけであり(府教委文書管理規則第2条第6号及び第18条、府教委文書管理規程第39条第1項)、文書廃棄票の作成に関する規定はない。
3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
(1)条例第2条第1項について
行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、条例第2条第1項に「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真又はスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。
「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものを意味する。
(2)本件請求において廃棄票の公開が求められている「写真」について
本件請求において廃棄票の公開が求められている「写真」とは、「平成14年度から平成17年度の間に図書館が主催した事業において、実施機関の職員が参加者を撮影した写真」を指すものと考えられる。
また、実施機関の説明によれば、図書館においては、平成8年の開館以来、各事業を実施する際に、事業報告書を作成するための参考として、事前に被撮影者の承認を得ることを条件に担当職員が写真撮影を行うこととしており、本件請求の対象となった期間においても実際に相当数の写真が撮影されたものと認められる(以下、これらの写真を「本件写真」という。)。
次に、本件写真について、実施機関は、事業実施中のメモ替わりであり条例第2条第1項に規定する行政文書に該当しない旨主張しているので、検討する。
本件写真は、事業報告書という事業の基本的な記録文書を作成するための参考資料として開館以来継続して作成されてきたものであり、また、多数の職員が関与する講座の開催当日に参加者の同意を得てまで作成されてきたものであることからすると、担当職員が個人的な必要で作成したものではなく、組織において業務上必要なものとして作成したものというべきである。また、事業報告書作成の参考資料という作成目的からすると、少なくとも、事業報告書が完成するまでは、作成した職員個人のみならず、その直属の上司など事業報告書の作成に関係する職員が組織的に利用することが予定されていたとも言える。
以上のことから、本件写真は、条例第2条第1項に規定する行政文書に該当すると認められるから、この点についての実施機関の主張は妥当ではない。
(3)本件請求に対応する行政文書の存否について
実施機関の説明によれば、本件写真については、事業報告書を作成するための参考資料として利用されてきたものであり、保存期間の定めもないままに、事業報告書の作成後、速やかに廃棄しているということであり、これらの説明について、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。このような利用や管理の状況からすると、本件写真は、事業報告書の作成の参考資料という一時的かつ補助的な用途に用いるため、府教委文書管理規則にいう「保存期間の定めのない行政文書」として作成され、管理されてきたと考えられるから、その廃棄に当たっては、2で述べた府教委文書管理規則及び府教委文書管理規程の内容からすると、廃棄処理票の作成は不要であり、実際にも、作成された事実は確認されなかった。
以上のことから、個人情報保護条例に係る異議申立てが行われたため現在も廃棄されずに保存されている平成17年度第1回講座の写真はもとより、既に廃棄されたとされる平成14年度から平成17年度の事業に係る本件写真についても、廃棄処理票が存在しないとして実施機関が行った本件決定は、その結論においては妥当であると認められる。
しかしながら、本件決定に係る通知書に付記された「公開請求に係る行政文書を管理していない理由」については、「当該写真は組織として利用・保存しておらず、・・・」と、本件写真が条例第2条第1項に規定する「行政文書」に該当しないかのごとく記載されている点は適切ではない。
4 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
塚本美彌子、福井逸治、小松茂久、鈴木秀美